オフボーディングとは?退職者対応を改善する4つの効果

終身雇用の時代は「定年前に退職する人=裏切り者」のイメージも強くありましたが、人材の流動性が高まる今、転職は当たり前になりました。

そのような中、重要性を増しているのが「オフボーディング」です。

オフボーディングとは?

オフボーディングとは、従業員の退職の意思表明から、退職が完了するまでの一連の施策のこと。

退職者の退職体験向上を目的に取り組むもので、入社から戦力化までの一連の施策「”オン”ボーディング」の反対語とも言える言葉が「”オフ”ボーディング」です。

【退職者の資産化で新たな価値を】
●退職者の再雇用
●退職者への業務委託
●退職者分析で離職率低下
●退職者採用でブランディング強化
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オフボーディングが注目される背景

終身雇用が終わりを迎え、人材の流動化が進む中、組織や雇用の在り方は変わりつつあります。

かつて個人は社員として1社で長期間勤めるのが当たり前でしたが、複数回転職をしたり、パラレルキャリアを実践したり、フリーランスになったりと、個人のキャリアも多様化。

そのような中、過去に所属した企業と協業したり、再入社したりするケースが増えています。企業側が再雇用を強化したり、退職者も対象として副業募集をしたりする動きも。

ところが、アルムナビが実施したアンケート調査では、55.4%の退職者が「退職の意思を伝えてから実際に退職するまでの間に、不快な思いをしたことがある」と答え、さらにそのうちの過半数が企業に対する気持ちについて「好意が薄れた」あるいは「嫌いになった」と回答しています。

その結果、再雇用や副業人材としての採用機会の損失、口コミサイトや転職先での退職者口コミによるブランディング悪化など、企業にはさまざまな悪影響が生じています。

これは「ピーク・エンドの法則(※)」に当てはまる現象。
※最も良い瞬間と終わりの経験が、その体験への印象を大きく左右する傾向を表したもの

従業員の自社での体験への印象を左右するのは、在職期間中の最も良い瞬間と、退職時の経験。つまり、在籍中にどれだけ満足度が高かったとしても、オフボーディングがうまくいかなければ「その会社での体験=悪い印象」になってしまいかねないのです。

オフボーディングを改善する4つの効果

オフボーディングを見直し、質を改善することで、主に以下4つの効果が見込めます。

1. 退職率の改善

退職面談で退職者の本音を聞き出すことで、退職につながる不満を把握することが可能に。従業員の満足度を上げるためにすべきことが明確になるため、定着率の向上につながります。

2. 突発的な退職の防止

退職予定の従業員へ真摯な対応を行い、「退職=悪いこと」というイメージを変えることで、従業員は「辞めようと思っている」という退職の検討段階での相談をしやすくなります。

辞めたい要因を払拭できれば、退職を引き止められる可能性も高まります。突発的な退職の防止にもつながるため、人員計画が立てやすくなる効果も。

事実、アルムナイ研究所の調査結果によると、勤務先の「退職予定の従業員への対応」の良し悪しで、「退職を視野に入れたキャリア相談ができるか」の回答に2倍以上の差が生じています。

3. 企業ブランディング効果

良い退職体験は、自社への感謝の気持ちを醸成します。そのため、口頭や企業の口コミサイト、SNSでポジティブな評判を増やすなど、退職者が企業のアンバサダー的な役割を担ってくれる効果が期待できます。

なおアルムナビのアンケートでは、オフボーディングの過程で同僚からしてもらってうれしかったことがあると回答した人の4割強が「会社への好意が増した」、1割が「反感を持っていたのが改善された」と答えています。

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4. 現社員のロイヤリティ向上

現社員に対してやるべきことがたくさんある中、退職者に向けたオフボーディングの優先順位は低くなりがちです。

ただ、実はオフボーディングの改善は、現社員にもプラスの影響があります。

例えば、退職者から引き出した本音を基に職場環境を改善することは、現社員の働きやすさや満足度アップにつながります。他に、退職者からの評判が良いことは、現社員のロイヤリティーを向上させる効果も。

オフボーディングのワークショップも登場

2月17日(水)には、13〜16時の3時間にわたり、株式会社ハッカズークと株式会社ディプレが共催するオフボーディングワークショップがオンラインで行われました。

従業員の退職体験を改善することを目的に、適切なオフボーディングについて学ぶもので、中外製薬、ダイドードリンコ、臨海、⼩学館集英社プロダクションの4社に勤める有志計14名が参加しました。

ワークショップでは、まず退職体験の構成要素や、退職面談後から最終出社日までの一覧の流れのポイントなどのノウハウが紹介されました。

従業員から退職の意思を聞き、その後面談をするまでのポイント(オフボーディングワークショップ資料より)
退職予定の従業員の引き継ぎ期間から、最終出社日までのポイント(オフボーディングワークショップ資料より)

また、コロナ禍でリモートワークが進んだことで、退職時の対応も簡素化。対面での面談や手続きの機会が減った状況でのポイントについても説明がありました。

コロナ禍のオフボーディングのポイント(オフボーディングワークショップ資料より)

後半では、上司役と退職者役に分かれ、ロールプレイを実施。退職者役が退職を切り出す気持ちを擬似体験することが主な目的です。

実際に退職者役を経験した参加者からは「辞めるだけだから簡単かと思ったら、気が重かった」「ロールプレイとはいえ憂鬱な気分になった」といった声が上がりました。

>>オフボーディングワークショップの詳細はこちら

オフボーディング改善とアルムナイとの関係構築は両輪

転職が当たり前になり、人材の流動化が進み、さらには少子化で労働人口が減少する中、企業が従業員を抱え込むことも、新しく優秀な人材を採用することも、難しくなりました。

終身雇用の時代の人的資産は自社で働いている従業員でしたが、アルムナイ(退職者)と良好な関係性を築ければ「自社で働いたことがある人」全てが人的資産になります。

そして「自社で働いていた事実」は生涯変わらないため、かつて退職と同時に失われていた資産は、年々増えるストック型の資産に変わります。

その鍵を握る要因の一つが、今回ご紹介したオフボーディングです。世の中が変化する過渡期の今、新しく目を向けてみてはいかがでしょうか。

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ABOUT US

アルムナビ編集長
2009年株式会社キャリアデザインセンターに新卒入社。求人広告営業、IT派遣コーディネーターを経て、働く女性向けウェブマガジン「Woman type」の編集者として勤務。2015年末に退職し、フリーランスに。2019年4月、業務委託でアルムナビ編集長に就任し、2020年10月より運営元の株式会社ハッカズークに“8割正社員”として入社。現在もキャリアデザインセンターの各種媒体の企画・編集・執筆にアルムナイとして携わる。