新卒の売り手市場が続いています。新卒採用の競争が激化する中で、学生からの応募を集め、動機付けをするのに知恵を巡らせている採用担当者も多いのではないでしょうか。
そこで今回は採用コンテンツの新たな可能性を探るべく、就職の本質を考えるキャリア研究サイト「type就活」に登録している大学生・大学院生に「アルムナイ(退職者)」に関する意識調査を実施!
「退職後もアルムナイと良好な関係を築く」という考え方がHR界隈では注目されていますが、学生はアルムナイへの取り組みを進めている会社をどう思っているのでしょうか?
7割以上が「元社員と交流がある会社は印象が良い」と回答
まずは「元社員と交流がある会社への印象」について聞いてみると、「印象が良い」が70.2%と最も多い結果となりました。
その理由としては「個人を尊重していそう」「多様なキャリアを認めているから」「人間関係を大事にしていると思うから」といった意見が目立ちました。その他の回答は以下の通り。
「会社の透明性が高そうだから」
「やめた会社が嫌いなわけではないことを示しているから」
「少なくとも喧嘩別れのような形になっていない社員がいるため」
「ブラック企業という理由で退職したわけではなさそうだから」
「仲間うちの意識が強すぎるのは問題だと思っている。輪の外にいる人たちや会社から出て行った人たちを締め出すのではなく、彼らも含めて誰とでも交流を深めていけるような、互いを認め合えるような環境が良い」
「去っていくもの、去っていったものに対して寛容である企業はよくある『○○さんがいないと仕事が回らない』という依存状態の経営をしていないイメージがあるため」
「自分が転職を通してスキル・年収アップを図りたいこともあり、そういった価値観を認めてくれる会社に入社したいと考えるため」
元社員との交流が企業の柔軟な考え方を示し、ブラック企業ではないことの証明にもなると判断している学生が多数見られました。また、「印象が悪い」と回答した人はわずか0.7%であることから、少なくとも「元社員との交流がマイナスに作用することはほとんどない」と言えそうです。
8割以上の学生が「退職をする社員=裏切り者」な会社の印象が悪いと回答
企業がアルムナイと退職後も良い関係を続けていくためには、アルムナイの辞め方と会社側の送り出し方が重要です。そこで退職を申し出た社員に対する企業のスタンスについても質問してみました。
「退職を申し出た社員=裏切り者とみなす姿勢の会社」に対して「印象が悪い」と答えた人は8割以上、「退職を申し出た社員を否定せず、その後のキャリアを応援する会社」に対して「印象が良い」と答えた人は9割にも上りました。
一方でQ.2に対して印象が「良い」と答えたのも、Q.3に対して印象が「悪い」と答えたのも、わずか0.7%。退職をする社員に向き合い、誠実に対応する姿勢にほとんどの学生が好感を抱いていることがわかります。
「退職を申し出た社員=裏切り者とみなす姿勢の会社」への意見
「他にも昔の慣習を続けている可能性が高いため」
「そのような会社では、普段から社員の人間関係があまり良くなさそうだから。
「排他的考えが社内に浸透していて働きにくそう」
「退職してしまった人も含めて全ての人の考えを尊重できる会社が良いと思うから」
「社員が転職するのが嫌なら、企業はそれをきっかけに人事制度などを見直すべきだと思う」
「それだけ仲間意識があるってことだと思うけど、一方で選択は自由だと思う」
「感情論に流されて、合理的な考えができなそうだから」
「終身雇用は終わったと言われていて転職が当たり前の時代になっていくと思っているので、その時代の波を読めていないという点で印象が悪い。時代に沿って企業が変わっていかないと業績も上がらないと思うので、将来性がないのかもしれないと思う」
「退職を申し出た社員を否定せず、その後のキャリアを応援する会社」への意見
「人のキャリアを尊重できる姿勢に、人を大切にしている企業風土を感じるから」
「止めるならわかるけど否定するのは少しどうかと思う。応援してあげる方が良いチームだと思うしそういう場所で働きたい」
「個人の成長を後押ししていると感じるから」
「心理的に応援している会社とは、退職者も次のキャリアで関わろうと思え、長期的に見れば会社にとっての期待値がプラスになると思われるから」
「会社自体にも余裕があるのかな、と思う」
「社員のキャリアを応援する会社が社員を否定しないことで、その人は堂々と次のステージに進めると思うから。これからの企業は、社員を企業の一員ではなく、一人の人間であることを前提に自社や社会のあり方について考えるべきだと思う。逆に強烈な引き止めがあったりすると、その企業は自社のイメージを落とすかもしれない(ブラック企業ほどその傾向が強いので)」
「退職を申し出た社員=裏切り者とみなす姿勢の会社」については「古い考えの企業だと感じる」といった意見が、「その後のキャリアを応援する会社」については「社員を一人の人として大切にしていると思う」という意見が多数見られました。
ダイバーシティが重視される時代だからこそ、企業の価値観をアップデートし、個人を尊重することが「学生から選ばれる会社」になるために重要なようです。
定年まで働きたい学生でも「アルムナイに好意的な会社」に好感を持っている
ここまでのアンケート結果から、学生はアルムナイに好意的な企業に対して、概ね好感を抱いていることが見えてきました。
ただ、入社3年以内に3割の新卒が離職するとも言われている中で、「回答している学生はそもそも最初に就職する会社に長く勤める気がないのでは?」という疑問も出てきます。
そこで「1社目に定年まで勤めたい」と希望している学生20人と「10年以上勤めたい」学生26名に絞って集計をしてみました。
結果は全体の傾向と大差なく、Q.3の「『退職を申し出た社員を否定せず、その後のキャリアを応援する会社』をどのように思いますか?」に関しては定年まで勤めたい学生全員が「印象が良い」と答えています。
転職をしようと思っている学生も、新卒で入った会社で長期的に勤めたいと思っている学生も、「アルムナイに好意的な企業」に好感を持っていることがわかりました。
これから社会人になる学生にとって、企業とアルムナイの良好な関係はプラスに働くことがアンケート結果から見えてきました。もちろん会社側としては長く働いてほしいというのが大前提ではあるものの、1社に生涯勤め続けるのが現実的ではなりつつあるからこそ、退職する社員への考え方をアップデートする必要があるのも事実。
後編ではもっと具体的に、「学生はアルムナイの何に関心を持っているのか」を探っていきます。
>>後編はこちら
【アンケート調査概要】
調査方法:就職の本質を考えるキャリア研究サイト『type就活』会員に向けたWebアンケート(「THE世界大学ランキング日本版2019」上位100大学の学生の回答率78.9%)
調査期間:2019年10月2日~10月8日
有効回答者数:141名
企画:天野 夏海、築山 芙弓 文:天野 夏海