「会社が好きなのに辞める人」の退職理由、把握できてる?人事データ活用のプロに聞く「退職データ」の必要性

11月24日、オンラインセミナー『【プロが教える人事データ入門編】「若手社員の離職」を防ぐデータ活用事例とは』が開催されました。

登壇者は、BtoAの中村亮一さん。人事データ活用のプロが教える、退職にまつわるデータの必要性とは? セミナーの一部をご紹介します。

株式会社BtoA VP of Business Development 
中村亮一さん
大学卒業後、 日立製作所に入社し、 人事総務を担当。 2017年4月よりピープルアナリティクス専門部門を立上げ、 心理学を用いたエンゲージメント研究に従事。 2018年10月よりソフトバンクにてHR Tech・ピープルアナリティクスの社内導入など、 人事部門のデジタルトランスフォーメーション推進を担当。 2020年3月、 エンプロイー・エクスペリエンス・プラットフォーム『BetterEngage』を提供する株式会社BtoAに入社
>>中村さんのALUbum『【日立製作所・アルムナイ】退職後、日立への想いは「好き」から「尊敬」に変わりました』はこちら

同じ会社であっても「離職率」は算出方法によって変わる

実は離職率の計算方法は、各社で異なります。

厚生労働省の定義は「離職率=離職者数÷在籍者数×100」ですが、期間をどこで区切るかは各社さまざま。離職者自体は「その年に辞めた人」なのですが、在籍者数は期初や月平均、期末の人数など、会社によって変わります。

そうなると、時期に応じて以下のように在籍者数も離職者数も変わりますから、同じ企業であっても当然離職率に差が生じます。

  • 期初:その年の採用者や離職者は分母に含まれない
  • 期末:採用者も離職者も含まれる
  • 平均:採用者も離職者とも含まれるが、平準化される

例えば新卒一括採用が色濃い企業の場合、期初で計算した方が離職率を低く見せることができます。

一方でベンチャーなど積極的に採用をしている企業の場合、期初の人数で計算すると離職率は11.61%ですが、採用数が多いので期末の人数で計算すると9.38%と、2.23%もの差が発生します。

重要なのは「何のために離職率を可視化するのか」

離職率を考える上で「何のために離職率を可視化するのか」を明確にすることは非常に重要です。

「離職率の実態を把握したい」のであれば、年ごとに退職率がどのくらい増減しているのかを見る。「適切な人員計画を作りたい」のなら、例年の傾向から退職者数を予測する。

「離職率を下げたい」場合は、新卒社員であれば年別の離職率からアクションの対象を決めることができますし、入社何年目に退職者が増えるかがわかれば、離職につながっている要因を考える際のデータにもなります。

入社月がバラバラな中途社員であれば、「入社何カ月目に離職率が上がるのか」がわかれば、その前に手を打つことができますよね。

各社の退職に関するデータを集め、比較できる状態をつくりたい

今僕は、こうした退職に関するデータの定型化ができないかと考えています。その一つとして取り組んでいるのが、「退職アンケートの定型化」です。

離職者向けのアンケートは、オンラインで行う企業もあれば、紙で行う企業もある。直接インタビューをしているけれどデータとしては残していない企業も少なくありません。退職理由を把握するための手法も、項目も、現状は企業によってバラバラです。

退職リスク分析をするにあたっては、分析用のデータを集約する必要があります。この時に退職アンケートのデータが使えないと、ここでつまずいてしまいますよね。それをなくすためには、属人的な作業や過去に導入された目的不明のアンケートを見直すなど、退職業務のフローを確認する必要がある。そうやって新たにデータを収集し、退職リスクの分析をしてリテンションにつなげていくことが重要です。

退職の原因は「エンゲージメントの低下」であると考えることが多いと思います。ただ、実際は「エンゲージメントが高いのに辞める人」もいる。そして人事担当者が辞めてほしくないのは、この「エンゲージメントが高いのに辞める人」なわけです。

でも、そういう人たちがなぜ辞めてしまうのか、正しく把握し切れていない企業がこれまではほとんどだったと思います。

退職には、会社視点と退職者視点の2つがあります。会社側は「引き止め可能なのか」「なぜ辞めるのか」「今後もつながりを持つことはできるのか」を知りたいけれど、聞き方やタイミングによっては退職者側が本音を言いにくいこともある。

こういった双方の視点を加味した上で、退職アンケートの定型化や、やり方のフローを作っていく。そうやって各社のデータを集めることで、「この会社にどんな問題が起きているのか」を比較できる状態をつくりたいと考えています。

退職につながる要因が特定できれば、在籍中の体験を向上させることが可能になります。また、退職を決定してから退職するまでの体験を改善できれば、退職後の関係構築にもつながるはずです。

個人側で考えた時に、70歳まで働くとして、一つの会社でずっと働き続けるのは無理ですよね。複数の会社で働くでしょうし、時には古巣の会社に戻ることもあるわけです。だからこそ、退職をネガティブに捉える今の状況を変えなければいけない

そして、そのためには退職の価値と、企業と退職者の関係を見直す必要がある。その一つの手段として、まずは退職アンケートの取り組みを進めることで、「会社を辞める=悪いこと」というイメージを変えていきたいと考えています。

>>退職アンケートの無料モニター応募はこちら

>>セミナー動画の視聴をご希望の方はこちら