早期離職の原因と対策!新卒・若手社員の離職を防止する4つのコツとは

2020年度の有効求人倍率は1.18倍。新型コロナウイルスの影響で低下はしたものの、依然1を超えており、売り手市場が続いています。読者の方にも、採用に苦労している方が多いのではないでしょうか。

そんな苦労して採用した人材が、早期離職してしまうとその労力が水の泡になってしまいます。また、上司からの評価に影響が出る可能性も。こういった様々な理由から社員の早期離職はできるだけ避けたいものですよね。

今回の記事では、早期離職の実態から、原因、さらに防止のコツまで解説します。ぜひ貴社の早期離職を防ぐ一助としていただければ幸いです。

数字で見る早期離職の実態

ではまず、早期離職の実態からみていきましょう。

退職者全体の離職率

厚生労働省が発表した「令和2年雇用動向調査結果」によると令和2年(2020年)の離職率は14.2%。前年よりも1.4%低下しました。

新型コロナウイルスの影響もあり、転職したり新しいことに挑戦したりするよりも今いる環境で留まろうという人が増えたのかもしれませんね。

参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/dl/gaikyou.pdf

男性社員

男性のみの離職率は12.8%でした。

また、マクロミル社が転職した男女に対して実施した離職理由に関する調査によると、男性は女性に比べて、給与や福利厚生や上司との人間関係に対する不満を理由に離職しているとのこと。

参考:https://report.jobtalk.jp/research/detail/id=338

男性の場合、家計の中心となることも多いため給与や福利厚生を重視する傾向があると考えられます。また、出世やステップアップを目指す上でも上司との関係は重要になってくるため、離職の理由として多く挙がっているのでしょう。

女性社員

女性の場合は、離職率は15.9%と男性に比べると3%ほど高い水準です。

同じくマクロミル社の離職理由に関する調査では、同僚との人間関係に対する不満、やりがいがない、社風が合わないなどを離職の理由として挙げた回答が多く、どちらかというと条件面を重視していた男性に対して感情面の理由が多いのが特徴的です。また、労働時間への不満を理由とする離職も男性より多く、家事や子育てをメインですることが多い女性だからこその結果といえそうです。

新卒若手の離職率

前章では日本全体での離職率をみてきましたが、続いては新卒・若手の離職率を紹介します。

厚生労働省による「新規学卒者の離職状況」に関する調査によると、新卒の3年以内の離職率は、中卒が55%、高卒が36.9%、短大等卒が41.4%、大卒は31.2%となっています。(※平成30年のデータ)

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000845627.pdf

全体の離職率が14.2%であったことを考えると、とても高い水準ですね。1年目、2年目、3面目の内訳を見ると全体を通じて1年目の離職が最も多い傾向にあり、中卒の新規学卒者において最もその傾向が顕著です。また、大卒の新規学卒者が最も年数ごとの差が少なく、続いて高卒、短大等卒の順になっています。

一般的に大学生が最も就職活動の期間が長いことが、自分に合った職場を見極められることに繋がり、離職率も低くなっているのでしょうか。もしくは、就職活動期間が長い分、「あんなに内定まで時間や労力をかけて入った会社だから長く働こう」という心理が働いているのかもしれません。

男性社員

さて、ここからは男女別の若手の離職率をみていきます。

先程も出てきた厚生労働省が発表している「令和2年雇用動向調査結果」内の「年齢階級別入職率・離職率」によると、男性の離職率は、19歳未満が38.7%、20歳〜24歳が29.1%、25歳〜29歳が15.8%となっています。

先程の学歴別の離職率で中卒の離職率が最も高く大卒の離職率が最も低かったことと、連動した結果ですね。

ちなみにこのあと、50歳〜54歳までは年齢が高くなるにつれ離職率は下がり続けています。50代前半の6.4%で底を打った後は定年退職等の影響もあってか、上昇を見せ、65歳以上の離職率は25.4%となっています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/dl/gaikyou.pdf

女性社員

女性の場合は、19歳未満が36.2%、20歳〜24歳が28.4%、25歳〜29歳が19.4%となっています。

20代前半までは男性より離職率が低いものの、20代後半になると逆転しているのが特徴的です。その後、多くの男性が定年退職を迎える60代前半までは女性の方が高い離職率となっています。出産や子育てといったライフイベントが関係していると思われますね。

また、50代前半で底を打つのは男性と同じでした。最も低い50代前半の離職率は10.1%、最も高いのは19歳以下の36.2%です。

早期離職の主な原因

これまでみてきたように、他の年代に比べて多い若手の離職。夢や希望を持って会社に入ってきたはずの若手が、なぜ早期に離職してしまうのでしょうか。本章では、その理由に迫っていきます。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成28年に実施した「若年者の能力開発と職場への定着に関する調査」によると、早期離職の原因として「肉体的・精神的に健康を損ねたため」「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」「人間関係がよくなかったため」といった項目が男女共通して上位を占めています。

参考:https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/164.html

肉体的・精神的に健康を損ねたため

女性の34.3%がこの回答をしており、女性の早期離職理由として第1位となっています。男性においても、29.9%が理由に挙げており、後述する「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」と並んで2位の理由です。

労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため

男性も女性もほぼ同割合の人が選んだのがこちらの理由。

男性では34%、女性も33.2%の人が労働時間や休暇の条件を理由にして離職しており、男性の離職理由としては第一位となっています。

特に新規学卒者の場合、社会人として働くのが初めてであるため「その条件であることは知っていたけれども、想定していた以上に負担が大きかった」というギャップもあると考えられます。

人間関係が良くなかったため

人間関係は、男性では27.5%、女性は29.7%の人が理由に挙げています。職場の人間関係は、入社するまで実態がわからないことも多く、ギャップやストレスを生みやすいポイントです。この結果から、女性の方が人間関係を重視する傾向にあることが見て取れるため、女性社員を迎え入れる場合は職場の雰囲気に合いそうかを男性以上に注意して見た方がよいでしょう。

早期離職の防止策4選

様々な理由があることがわかった早期離職。減らしていくためには、どのように対処していけばいいのでしょうか。

1.退職理由の把握

本記事でも早期離職のよくある理由を紹介しましたが、それが必ずしも貴社にあてはまるとは限りません。早期離職を防ぐためには、自社に合った取り組みをすることが必要です。

例えば、キャリアアップをするために離職する人が多い企業で、人間関係をよくする取り組みをしたとしても、離職を減らすことは難しいでしょう。

もし、すでに早期離職者が多く発生している場合は、まずその理由を突き止めることから始めるのがおすすめです。退職を伝えられた段階でのヒアリングや、可能であれば離職した元社員にコンタクトを取ってみましょう。エグジットサーベイ(退職者アンケート)を実施するのも効果的です。

関連記事:退職者アンケートの重要性とは?エグジットサーベイで分かる退職者の本音

2.職場の雰囲気を伝える

離職理由としても男女ともに多数の人に挙げられていた「職場の人間関係」。

職場での人間関係の悩みには、特別嫌な人がいるというわけではなく、雰囲気やカルチャーが合わない場合も多くあります。

こういったミスマッチを起こさないためには、選考の段階で現場社員複数人に会ってもらう、1日体験入社や職場見学をするといった実際に働く雰囲気を体感してもらうのが有効です。

3.仕事内容や条件の擦り合わせの徹底

特に男性に多い離職理由として、希望と違う仕事内容や条件に関する不満が挙がっていました。とはいっても、条件や仕事内容を変更するのは現実的ではありませんよね。

こういった場合には、入社前に条件を徹底してすり合わせていくことが重要になります。入ってみて「こんなはずじゃなかった」とならないよう、内定時にお互いに納得できるようにしておきましょう。

また、本人の希望と現実に乖離がある場合は、希望を実現するために必要なことやロードマップを明確にすると、この会社で頑張って実現しようというマインドが芽生えやすいです。

4.ライフイベントと仕事を両立しやすい会社作り

「女性社員の離職率を下げたい」「女性に長く働いてもらいたい」という場合は、ライフイベントがあっても働き続けられる会社づくりが必要不可欠です。産休育休制度の整備はもちろんですが、その他の代表的なものとして、時短勤務やリモートワーク制度、社内託児所を作るといった取り組みがあります。自社にできるところから始めてみるのはいかがでしょうか。

早期離職対策と並行して即戦力の確保も

ここまで早期離職の理由や対策について解説してきました。しかし、早期離職対策は会社の制度を変える必要があるなど規模が大きく一定の期間が必要な施策も多いです。

そこで早期離職防止の施策と並行して、離職者(アルムナイ)との関係づくりに取り組んでみるのもおすすめです。離職者は、ブランクがあるとはいえ自社の価値観や仕事のスタイルも理解しているため、新規雇用者に比べて、再雇用時もスムーズに仕事を任せることができます。

また、離職理由を聞いた上でそれに合った改善施策を打つなど、離職対策にも有効。他にも採用ブランディングやビジネス連携など多くの価値を生み出せる可能性のある離職者との関係強化。一度検討してみてはいかがでしょうか。

関連記事:アルムナイとは?人事・HR領域で注目される背景と大企業の導入事例