退職者の履歴書の保管期間はいつまで?適切な保管方法を解説

人事担当者の中には、退職者の履歴書に関する悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。履歴書の管理は法律やセキュリティを考慮しなければならず、手間のかかる業務だと思います。そこで本記事では、保管の目的から義務、期間や安全性の高い保管方法まで多種多様な疑問を解消します。

退職者の履歴書を保管する目的は?

履歴書には漏洩させてはならない個人情報が含まれています。そのため、個人情報の真偽によるトラブル回避や個人情報保護法の観点から保管は必須と言えるでしょう。

個人情報の事実確認

退職者が経歴を詐称していた場合や虚偽の情報を申請していたことが確認されたときの証拠として履歴書を提出することが可能です。履歴書を保管していないと、不正により会社に不利益が生じても事実確認ができずに、泣き寝入りする恐れがあります。

たとえ退職者であっても履歴書を保管しておくことで、このようなトラブルを回避することが出来るでしょう。

個人情報保護

個人情報保護法に基づいて、退職者であっても個人情報の保護に努めなければいけません。そこで、個人情報保護法20条を見てみましょう。

個人情報保護法20条

個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの安全管理のために、必要かつ適切な処置を講じなければならない

個人情報取扱事業者とは、個人情報を取り扱っている事業者のことを意味します。そのため、履歴書を取り扱う方であれば例外なく、安全面に配慮して適切に取り扱う必要があると言えます。

退職者の履歴書の保管義務はあるのか?

保管目的はなんとなく理解していても、法的な義務については曖昧な方もいるのではないでしょうか。保管義務に該当する労働基準法109条の記述を詳しく見ていきましょう。

労働基準法109条(記録の保存)

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

労働基準法109条において、履歴書は含まれているのか。この疑問に関して、「雇入れ」に関する重要な書類が該当します。また本法律において「保存しなければならない」と強く言及されています。そのため、退職者の履歴書であっても保管する義務はあります

とはいえ、企業を去った退職者の履歴書を、手間をかけて厳重に保管することに煩わしさを覚える方もいるでしょう。しかし、最近では大企業を中心に退職者(アルムナイ)との関係を維持するムーブメントが生まれてきています。

例えば、電通やみずほ銀行では有料のアルムナイ専門ツール(Official-Alumni.com)を導入しアルムナイを資産化する取り組みが実際に行われています。ただ法律に基づいてアルムナイの履歴書を管理しているだけの企業とアルムナイを人的資本と捉えている企業の間には、間違いなく大きな差が生まれるはずです。

>> アルムナイ制度とは?大企業が注目する令和式「即戦力」

アルムナイの履歴書を本格的に整理するこの機会に、この記事をご覧の人事の方もアルムナイ対策を検討してみてはいかがでしょうか。

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退職者の履歴書はいつまで保管すべき?

ここからは、履歴書の保管に関する事項をより具体的に見ていきましょう。保管期間の規定はどのような内容なのでしょうか。法律の規定に基づいて保管期間とその起算点について解説します。

履歴書の保管期間は?

上述した労働基準法109条にて5年間と決められています。法改正前は3年間と規定がなされていましたが、労働基準法の令和2年度改正にて、記録に関する保管期間は5年間に延長されました。

令和2年度改正の注意点として、「保管期間は当分の間3年」という記載があります。ですので、令和2年度改正で5年間に変更があったと知らなくても、焦る必要はありません。

「当分の間」がどれくらいの期間なのか具体的な記載はありませんが、この機会に認識を改めて、履歴書は5年間管理しなければならないと覚えておきましょう。続いて、保管期間の起算点について解説します。

保管期間の起算点は?

退職した日から数えて5年間保管しなければいけません

労働基準法施行規則56条3項に規定されており、「雇入れ又は退職に関する書類については、労働者の退職又は死亡の日」とされています。そのため、「雇入れ」に該当する履歴書は退職した日が起算点となります。

一連の内容をまとめると、保管期間とは従業員が退職した日から始まり5年間保管する義務が生じるということです。

退職者の履歴書を安全に管理する方法とは?

管理方法を工夫してあらかじめ考え得るリスクを軽減しておくことが重要です。そこで、履歴書を管理する際にセキュリティを向上させる方法を、紙で管理する場合と電子で管理する場合に分けて紹介します。

紙で管理する方法

紙で管理する場合に最も大きなリスクは、部外者に履歴書を見られて個人情報を抜き取られることです。個人情報を適切に保管するため、以下3つの工夫を行いましょう。

  • 履歴書を管理する場所は必ず施錠する
  • 社内で履歴書を取り扱うことができる人物を限定する
  • 保管場所は関係者以外が簡単に見つけられないところにする

履歴書を紙で管理する場合、社内で決めた管理者以外が履歴書にアクセスできないような仕組みを作ることが大切です。無関係の従業員が簡単に持ち出せないよう、管理場所や管理者を限定することで情報漏洩を未然に防ぎましょう。

もう1つ考えられるリスクは、煩雑な管理により必要な履歴書を取り出すのに多くの手間がかかってしまうことです。

せっかく安全に管理しても、どこに誰の履歴書があるかわからなくなってしまうと、探す手間が増えてしまいます。そこで履歴書をきちんと整理する方法を紹介します。

手順① 履歴書を含む退職者の重要書類は個人単位でまとめて整理する

手順② 個人単位でまとめた重要書類は50音順で並べて整理する

手順③ 鍵付きの管理場所でまとめて保管する

書類単位でバラバラに保管してしまうと、書類がまとめて必要な時に非常に不便になります。なので、重要書類を1つにまとめて個人ごとに保管することで、必要な時にまとめて取り出せるようにしましょう。

そのうえで、個人単位でファイリングした書類は氏名50音順で整理しましょう。年度別や事業部別で整理してしまうと、必要な時すぐに取り出せなくなってしまいます。取り出しやすいように整理したら、セキュリティ向上のために鍵付きの場所に保管しましょう。

従業員が多いほど、あらかじめ書類を整理しておくことが重要です。

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電子化して管理する場合

履歴書は大量に管理するため、社内のスペースを多く占めてしまうことに悩まされている人事の方も多いのではないでしょうか。紙の履歴書を電子化し、オンライン上で管理することで、社内のスペースが確保できなくても簡単に管理することができます。

とはいえ、紙で管理する場合と同じく、セキュリティ面などでリスクを考えておく必要があります。そこで、オンライン管理ならではのリスクを2つ挙げ、それらを回避する適切な管理方法を紹介します。

紙の履歴書をPDFファイルに変換する

オンライン上で管理するには、PDFファイルに変換して保存する方法が挙げられます。その場合、セキュリティ面でのリスクが考えられます。保存先の編集権限者を限定しパスワードを設定するなど、電子化して管理する場合でも同様にセキュリティ面での工夫はぬかりなく行いましょう

なお、パソコン自体のパスワードと異なるものを設定しておくと、安全性をより強化することが出来ます。また、USBメモリに保存する場合は、紙での管理と同じように物理的な安全性を向上させることが重要です。

では、具体的にどのようにすれば紙の履歴書をPDF化できるのでしょうか。基本的にスキャナーをお持ちであれば、紙の履歴書でPDF化することができます。スキャナーをお持ちでない方であっても、プリンターにスキャナーの機能がついていることがあるので、自社のプリンターの機能を確認してみてはいかがでしょうか。

また、ファイル名を「履歴書_名前」などオリジナルルールを作って統一しておくと、検索するだけで必要な時に取りだしやすくなります。どちらで管理する場合も、安全性と取り出しやすさを意識することが重要です。

クラウド上に保存する

クラウド上に保存することで、パソコンやUSBメモリの破損によって個人情報が消失するリスクを防ぐことができます

具体的には、文書管理サービスや履歴書に特化したクラウドサービスを利用するか、上述のようにPDF化した履歴書をiCloud DriveやDropboxなどのクラウドサービスに保存する方法が挙げられます。有料のサービスもあり、安全性や利便性の向上がより期待できるでしょう。

特に多くの履歴書を管理されている企業であれば、履歴書の管理の悩みは尽きないと思います。これを機に費用や使いやすさの観点から、自社に合うサービスを検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

履歴書は個人情報が多く含まれる重要な書類です。本記事では、退職者の履歴書をなぜ管理しなければならないのか、どのように管理すればよいのかについて解説しました。自社の管理は適切に行えているか、今一度考えてみてはいかがでしょうか。