七五三現象とは?中卒・高卒・大卒で離職率に差が出る理由

1990年代から2000年代にかけて「七五三現象」という言葉が話題になりました。みなさん、この言葉をご存知でしたか?

最近は聞くことも減ってきたので、知らない人も多いかもしれません。七五三現象とは、早期離職率と学歴に関わる言葉です。

今回の記事では、この「七五三現象」とは何かに始まり、七五三現象が起きる原因や対策を解説します。七五三現象への対策、ひいては離職率改善は採用競争が激化する現代において取り組むべき重要課題のひとつです。ぜひ本記事を最後まで読んで自社の人事施策に活かしてください。

七五三現象とは?

就職して3年以内に、中卒新入社員の7割、高卒新入社員の5割、大卒新入社員の3割が離職する現象を指します。

早期離職は、その後非正規雇用になったり収入が落ちたりとキャリア形成に悪影響をもたらすことが多いため社会的にも問題視されています。しかし、昨今は第二新卒市場も生まれており、早期離職の問題点やイメージは徐々に改善されつつもあり、必ずしもマイナスの要素だけではないと言えるでしょう。

現在の離職率は厚生労働省の令和2年度(2020年度)のデータによると、中卒55%、高卒36.9%、大卒31.2%。七五三現象が問題視されていた1994年頃に比べて、中卒や高卒の離職率は大きく改善されてはいますが、その反面大卒の3年以内離職率はあまり変わっていないのが現状です。

七五三現象の原因

なぜ、新入社員は離職していってしまうのでしょうか。ここからは、それぞれの属性別に離職理由を見ていきましょう。

中卒の退職理由

東京労働局職業安定部がまとめた「学卒就職者の離職状況調査結果 (平成 27 年 3 月中学・高等学校卒業者)」によると、中卒者の離職理由として「仕事が合わない」が挙げられています。この調査では中卒者のサンプル数が少なく、中卒離職者の全体の傾向を捉えたものとは言えないものの、高卒者でもこの理由での離職が最も多いことから、中卒者でも「仕事が合わない」ために離職している人は多いのではないかと考えられます。

大卒の場合は就職活動が大学を挙げての一大イベントとされており、学内で企業の担当者を招聘して会社説明会が実施されるだけでなく、様々な企業が学外でも多数の企業が集まる合同説明会を行っています。そのため、企業の情報を得やすく自分に合った仕事を見つけやすいです。しかし、大卒・高卒・中卒の中で中卒は最も就職活動をする人も少なく、企業や仕事に関する十分な情報が得られないまま就職する事が多いのが実状です。それがミスマッチに繋がり、離職率が高い一因となっているのではないでしょうか。

高卒の退職理由

中卒の退職理由の項でも紹介した「学卒就職者の離職状況調査結果 (平成 27 年 3 月中学・高等学校卒業者)」によると、高卒の退職理由としては「仕事が合わない」が全体の30.8%の回答を集め第一位となっています。次いで多いのが「家庭の事情」(11.8%)、「傷病等健康上の理由」(9.1%)でした。この他に、6.8%が「進学等のため」と回答しており、これは大卒者にはない高卒者だからこその特徴としてみることができます。

中卒者と比べると高卒で就職する人は多く、学校でのサポート等も受けられるものの、高卒の就職活動では多数の企業を受けるというよりも、専願で就職試験を受けることが多いです。志望先を決める際に仕事のイメージや自身のキャリアについてきちんと考えた上で決定できればいいですが、日本のキャリア教育は発展途上にあり、それが実現できているケースは少ないと言えます。

こうしたことから、就職活動の際に自社に合った仕事なのかを見極められず、結果的にミスマッチを起こし早期離職に繋がっているのかもしれません。

大卒の退職理由

内閣府発表の平成30年(2018年)版子供・若者白書によると、大卒者の初職離職理由としても高卒と同じく「仕事が自分に合わなかった」との回答が最も多く、43.4%がこう回答しました。後に続くのは、「人間関係がよくなかった」が23.7%、「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかった」23.4%であり、ほぼ同じ割合と拮抗しています。

高卒の場合二位、三位は家庭や健康上の理由とやむを得ない要素が強いものが並んでいたが、大卒の場合は人間関係や労働条件など自分の希望との齟齬といった要素が大きいことが特徴的です。

また、「仕事が自分に合わなかった」という回答が同じく一位ではあるものの高卒と比べて割合は13%以上高くなっています。これは、大学生活を通してキャリア教育を受けたり、インターンシップに参加したりなどした経験が自己の理想とするキャリアイメージを明確化させ、そこにそぐわないことを高卒者よりも認識しやすくなっていることが背景としてあるのではと考えられます。

七五三現象の学歴別の対策法

中卒の離職対策

中卒者の場合、最初の1年で4割前後が離職します。そのため、最初の一年間が勝負といえるでしょう。研修を充実させたりメンターをつけたりと職場や仕事になじめるよう配慮しておくことが重要です。

また、選考の段階から自社の仕事や事業内容を理解してもらえるようしっかりかみ砕いて話すことも大切になります。仕事が合わなかったというミスマッチを起こさないように、「このくらいはわかるだろう」との思い込みは捨ててしっかりとコミュニケーションを取っていきましょう。

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高卒の離職対策

高卒についても、中卒同様に仕事内容への説明が重要となるのは同じです。頻繁に同じ高校から採用しているなど高校とのコネクションが強い場合は、学校側と相談して就職活動が本格化する前に職場体験のような機会を設けるといいかもしれません。”百聞は一見に如かず”とも言うように聞くだけではわからなくとも、体験すればわかることも多いです。

それが難しい場合は、同じ学校出身の先輩との対話の場を設けるのも一手です。面接の場では「こんなことも知らないのか」と思われそうなことも本人が聞けないことも先輩なら聞きやすく、疑問をクリアにし、しっかりと仕事を理解した上での入社に繋げることができるでしょう。

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大卒の離職対策

大卒の場合は、キャリアの志向性をしっかりヒアリングし把握しておくことが重要でしょう。仕事が合わないと思う背景には、希望通りの配属先でなかったという要因も隠れていると考えられます。そういった際でも、社員の今後のキャリアのために必要な経験であることを伝えることができれば、合わないと思っていても続ける理由になるかもしれません。

また、人間関係については入ってみないとわからない要素もありますが、あらかじめ社風とのミスマッチが起きないよう現場社員と会う機会や実際に働く職場の見学などを選考フローに組み込むなどの工夫をすれば、改善できる余地があるのではないでしょうか。

労働時間や休日等の条件面についても、内定段階で互いの認識に齟齬がないかをしっかりすり合わせておく必要があります。学生はどうしても社会人生活のイメージがわきにくいものです。時間だけではなく、具体的に「通勤や食事などを引いたら大体平日自由になるのは〇時間くらい」といったところまで落とし込んで話すとイメージしやすいので一度試してみましょう。

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退職対策よりも大事なアルムナイ施策とは

以上、七五三現象の説明を通して若手社員の離職対策について解説してきましたが、最新のトレンドを考慮すると退職対策にのみ力を入れるのは時代遅れになりつつあります。

たしかに退職対策も大事ではありますが、人材獲得競争が激化する社会では、退職者(アルムナイ)に「また働きたい」と思ってもらうことや、戻ってこれる環境を作ることも重要になってきます。

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アルムナイへの取り組みには、退職者と再雇用や業務委託を通じてまた共に働くことだけでなく、退職者からのリファラルでの採用など多くの可能性があります。弊社でもアルムナイ専門サービスを提供しています。

退職者との関係を新しい有益な繋がりとしていくことに興味を持った人は、ぜひどんな方法でもいいので取り組んでみてください。

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