終身雇用が崩壊する中で、求職者は自社内だけでなく、「その会社での経験を生かして社内外でどのようなキャリアアップができるのか」を気にしています。つまり、卒業後に活躍しているアルムナイの存在は求職者に魅力を伝えるポイントになり得るということ。
過去にアルムナビが就活生に向けて実施したアンケートでも、約9割が「元社員の退職後のキャリアに関心がある」と回答しています。
そこで本記事では「採用ブランディングとアルムナイの関係」について、事例とともに紹介します。
アルムナイを採用ブランディングに生かしている企業事例
実際に自社を卒業したアルムナイについて発信し、情報を可視化することで、採用ブランディングの一部として役立てる企業も出てきています。
1. マッキンゼー
代表的なのが、マッキンゼー。『Under New Management』という書籍の中で同社のアルムナイリレーション担当者は「採用プロセスの一部でアルムナイの話をする」と語っています。

ウェブサイトにはアルムナイに関する情報が明記され、マッキンゼーを辞めた後にどのようなキャリアを歩んでいるかをチェックすることも可能です。
また、アルムナイ・ネットワークがあることにより、候補者はマッキンゼーに入社すると現社員だけでなく、マッキンゼーアルムナイとの関係性も得ることができます。それもまた魅力的な資産として採用ブランディングに寄与しています。
2. セプテーニ
こうした動きをとる日系企業も出てきています。例えばセプテーニはアルムナイの退職後のキャリアパスや転職時の年収の変化を採用ページに掲載。
他にも再入社者へのインタビュー記事を公開するなど、社内・社外の双方の視点から会社の良さを打ち出しています。
>>【まとめ】ウェブサイトに「アルムナイ向け」ページを設けている企業
大手企業のアルムナイによるワークショップも
口コミが採用ブランディングに与える影響は大きいもの。そして企業の口コミサイトに投稿された内容の半分近くは、退職者が書いていると言われています。
2019年12月に開催された学生向けメディア『HOPE by NewsPicks』主催の大規模イベント『HOPE Day』では、大手企業のアルムナイが参加するワークショップが行われました。
対話を通じて学生が希望を持って社会に出ていくきっかけを提供することを狙った『HOPE by NewsPicks』の企画であり、アルムナイが過去に所属していた企業は関与していません。
つまり口コミサイト同様、アルムナイが学生に対して自社のポジティブな面を語るか、ネガティブな話をするかは、アルムナイ次第ということ。
なお、本イベントにはアルムナビ編集部も参加。イベント参加者には高校生やすでに就職が決まっている学生など、就活生ではない人も多くいました。話を聞いてみると、「どう生きるかを考える上で、大手企業を辞める決断をしたアルムナイに話を聞きたい」という動機があるよう。
個の力の重要性だと言われるようになった今、新卒で就職する会社でずっと勤め続けようと考える学生は少なくなりました。だからこそ、「自社に新卒入社したアルムナイ」の声の重要性が増しているとも言えそうです。
アルムナイの話を聞きたいと考える人が増えていけば、こうしたイベントの他、大学のOB/OG訪問をするように、企業のOB/OG訪問をすることもあるかもしれません。採用ブランディングを考える上で、ポジティブな口コミを増やすための取り組みも念頭に置いておきたいところです。
>>企業の評判、口コミを左右するのは「退職者」との関係性!ポジティブな投稿を増やす2つの対策とは
まとめ
SNSや口コミサイトが広まったことにより、企業は自社のことを取り繕いにくくなりました。企業のアピールを懐疑的な目で見る求職者にとっても、雇用関係にないアルムナイの意見に信頼を寄せるケースは増えています。
転職が当たり前になり、さらにパラレルワークなど複数企業で働くことが珍しくなくなりつつある今、求職者へのアピールの仕方も変わりつつあります。採用ブランディングを考える際は、ぜひアルムナイの存在にも注目してみてはいかがでしょうか。