鳥取県内企業のみんなに「電通アルムナイとの協業はこんなにいいんだよ」と伝えたい

県内企業の経営課題解決のために、都市部ビジネス人材の移住就職やIJUターン就職、副業・兼業を促進している鳥取県。

その新たな取り組みとして、2020年度は株式会社電通のアルムナイ(退職者)との連携をスタート。電通アルムナイに向けて鳥取県内企業の副業案件を紹介し、8名の電通アルムナイと7社の鳥取県内企業のマッチングが成立しました。

その中から、鳥取県米子市で不動産業を営むあすとみらい株式会社の代表取締役・武良英昭さんと、同社で副業を行う電通アルムナイ・水川毅さんにインタビューを実施。

電通アルムナイと鳥取県内企業が一緒に仕事をすることには、どのような可能性があるのか。そこからどのような価値が生まれるのか。その片鱗を感じるお話が伺えました。

電通アルムナイ・水川毅さんとあすとみらい株式会社 代表・武良英昭さん
電通アルムナイ・水川毅さん(写真左)
マス広告からデジタル領域の統合プランニング、競合プレゼン請負、新規事業開発コンサル、デジタルマーケティング研修、講師、非常勤・リモートのCMO(Chief Marketing Officer)などに従事。公立大学法人 長岡造形大学 造形学部視覚デザイン学科 准教授。株式会社ひなぎく ディレクター/ マーケティング・ディレクター

あすとみらい株式会社 代表・武良英昭さん(写真右)
鳥取県を中心に地域の「あす」と「みらい」のために不動産・住宅業を展開

鳥取案件に興味を持ったきっかけは?

——まずは水川さん、鳥取の副業案件に興味を持ったきっかけを教えてください。

水川:私は日頃、都会で仕事をしているのですが、この1年で地方の副業案件が出始めたのを感じていました。自分が地方企業の力になれるのか試したい気持ちもあり、興味があったんです。

そんな時に電通アルムナイネットワークを通じて鳥取案件の紹介があったので、ぜひチャレンジしたいと思い、応募をしました。

——もともと鳥取とのゆかりはあったのでしょうか?

水川:50年以上生きてきましたけど、これまで鳥取とのご縁はなかったんです。まだ立ち寄ったこともないですし、お仕事でも関わることはありませんでした。知人や友人にも鳥取出身の方はいないんじゃないかな。

そういう意味でも今回のご縁はうれしいですね。今はまだリモートでやりとりしていますけど、これから鳥取を訪れる機会も絶対にあるでしょうし、楽しみです。

武良:今は蟹がおいしい季節ですよ。(※取材は2020年12月実施)

水川:そうなんですね。鳥取のことは知らないことばかりなので、ワクワクしています。

かに

——お二人が鳥取で会う日が楽しみですね。鳥取の案件は複数ありましたが、水川さんがあすとみらいに興味を持った理由は何でしょう?

水川:不思議とここ数年、不動産系のお仕事とご縁があって。神奈川県の中心部から外れたエリアで不動産業を営む中小企業で、マーケティングの顧問としてお仕事をしていました。

また、制作会社時代には新規事業として、アメリカ式の不動産エージェントを日本で立ち上げたこともありました。あすとみらいはまさに不動産業ですので、何かお力になれることもあるのではと思いました。

——水川さんとお話した第一印象について、武良さんはいかがでしたか?

武良:『鬼滅の刃』の伊之助の言葉を借りれば「何だコイツ!!わくわくが止まらねぇぞオイ!!」ですね(笑)

水川さんとお話していろいろな刺激をいただきましたし、自分の可能性が広がったような気がしました。信頼して会社の内情もお話できるなと思いましたし、「これからこんなことをやりたい」と相談していけると感じましたね。

あとは僕も水川さんみたいなオシャレな人になりたいと思って、ちょいワルおやじの雑誌『LEON』を購読しようかと。そんな話を妻にしたら「早速いい第一歩があってよかったね」と言われました(笑)

——公私ともに刺激があったわけですね(笑)。水川さんは武良さんの第一印象について、いかがでしたか?

水川:武良さんは非常に話しやすい方だなと思いました。私が知っている不動産関係の方よりも柔軟な発想をお持ちですし、不動産以外の領域にも幅が広く関心がある。さまざまな切り口でビジネスの話ができそうな印象を持ちましたね。

過去の経験とも、武良さんの考え方とも、マッチした

——面談ではどのようなお話をしたんですか?

武良:我々が抱えている課題を申し上げたところ、水川さんから解決策を提案いただき、その中で自分はこういうことができると、具体的なお話をいただきました。

先ほど「話しやすい」とおっしゃっていただきましたが、逆に僕の方がうまく話を引き出していただき、導いていただいた感覚があります。

——まずはどのような仕事を一緒に進めていくのでしょう?

武良:ホームページの解析を進めていただきます。まずは解析できる状態をつくって、問題点をあぶり出し、解決策をご相談させていただければと考えています。

当社は仲介業を主にやっているんですけど、正社員は3人で、全員SNSの発信もやっていません。ようやくホームページの更新を週に1回やるようになったくらいなので、そこをまずは打破したいんですよね。

その先は不動産の特性を生かした事業を生み出して、その事業を次の世代の若い人たちに渡していく。そういうステップを踏んでいくための土台となるイメージ戦略や広告戦略を水川さんにお願いしました。

水川:過去に不動産会社や建設会社で、自社サイトを通じて物件を売るお手伝いをしたことがありました。不動産プラットフォームに広告を載せる方法だと、広告費がかかって大変なんですよね。

広告費を度外視したとしても、自社サイトに人が来てくれることは基盤になります。将来的に仕事の領域を広げていく時にも、サイトが充実していると展開しやすくなりますから、そこからスタートさせていただくことになりました。

その点は私の経験とまさにマッチするところですし、武良さんとも意見が一致していますので、いろいろお手伝いができそうだと思っています。

——逆に不安なことや懸念点はなかったですか?

水川:私は特にないですね。

武良:僕は水川さんから応募があった時、経歴を拝見して「うちでいいのかな?」と正直思いました。水川さんの能力を最大限に発揮していただけるようなご依頼を、僕がつくっていかなければいけない。それは僕の課題であり、「お願いする仕事はこれでいいのか?」と自問自答しているところです。

これから日々、水川さんといろいろなお話をさせていただきながら、「こんなのどうですか?」という投げかけをどんどんしていきたいと思っています。

「この会社はどこまで大きくなれるんだろう」

——これからあすとみらいで、やりたいことを教えてください。

水川:武良さんからお話を伺って可能性を感じたのは、場所づくりです。その土地にずっといる人も、そうでない人も含めて、例えば「事業の基地」になるような場所をつくる。

そこにどんな人を呼び、どんなイベントを開くのか。武良さんと議論しながら、お手伝いできたらと思っています。本当にさまざまなことができそうだと感じていますね。

武良:水川さんには「地方と都会をつなぐ架け橋」になっていただけるとうれしいなと思っています。

不動産はまちづくりに直結しますので、米子という知名度のない地域ではありますけど、イベントなどを通じて「面白いことをやっているぞ!」という活動ができれば面白くなるはず。それを事業にしていくのは僕らの夢でもありますね。

——電通アルムナイの皆さんに向けて、鳥取の副業案件の魅力や、地方に目を向けるメリットなど、水川さんからメッセージをいただけますか?

水川:今年は電通から大きなニュースが発表されました。退職をして電通子会社と再契約をすることで独立を促進する制度ができ、これから新しい形で電通と電通アルムナイのつながりができると思います。

そんな新しいスタートを切るタイミングですから、こういう地方の案件を次の新しい仕事にしようと考えるアルムナイが生まれる時期なのだと思います。独立に不安があるアルムナイにとっても、こういう地方の仕事をこのネットワークから得られるのは大きいですよね。

私自身も今まさに新たなチャレンジをしようとしているところですが、チャンスは間違いなく、他のアルムナイの皆さんにも広がっています。「ぜひ積極的にチャレンジしていきましょう」とお伝えしたいですね。

武良:鳥取県内企業の立場としては、もう本当に、「ありがとうございます」という一言につきます。感謝の気持ちでいっぱいですね。

正直な話、これまでは米子という小さいエリアの中で一番か二番になればいいくらいに思っていたんです。

でも、最近は「この会社はどこまで大きくなれるんだろう」と考えるようになりました。水川さんの力を貸していただけたら、自分はもっといけるのかもしれない。それは楽しみでもあり怖くもありますが、これからのことを考えるとワクワクします。

この取り組みの情報がオープンになった際には、みんなに「電通アルムナイの方との協業はこんなにいいんだよ」と伝えていきたい。お力を貸していただけることを、本当に心強く思っています。

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取材・文/天野夏海