転職をする人は毎年右肩上がりで増えています。人生100年時代と言われ、終身雇用制度が見直されつつあることを考えると、この先も転職者数は増えていくことが予想されます。
そこで重要性が増してくるのが、「企業への口コミ」です。サイトにより差はあるものの、口コミの多くはアルムナイ(退職者、OB/OG、卒業生、元社員)が書いたものだと言われています。
そして、パーソル総合研究所が調査した離職者の口コミ投稿の経年試算によると、ネガティブな口コミはポジティブな口コミの7.4倍のスピードで蓄積することがわかっています。
どうすれば悪い口コミを減らし、良い口コミを増やせるのか。その鍵を握るのが、アルムナイとの関係性です。
アルムナイ意識が低い人がポジティブな口コミを書く割合は「0%」
パーソル総合研究所は、離職した企業や同僚へのポジティブな意欲を「一緒に働きたい」「継続的に交流したい」「サービスを利用・委託・受託したい」という項目に分け、平均値を「アルムナイ意識」として指数化。
このアルムナイ意識が高い人と低い人で比較をすると、古巣に対する発信の仕方に明確な違いがあることが見えてきました。
アルムナイ意識が高い人の方が圧倒的にポジティブな評判を広め、会社のサービスや商品を利用していることがわかります(上記図・左)。
そして注目したいのが、口コミサイトへの書き込み内容(上記図・右)。アルムナイ意識が高い人の17.9%がポジティブな口コミを書いているのに対し、アルムナイ意識が低い人のポジティブな口コミはなんと0%という結果が出ています。
また、アルムナイ意識が低い人がネガティブな口コミを書く割合は、アルムナイ意識が高い人と比べて約20倍にも上ります。
つまり、アルムナイに自社への好感を持ってもらうことは、ポジティブな口コミを広め、ネガティブな口コミが増えるのを防ぐ効果があるのです。
アルムナイ意識を向上させるには?
アルムナイに自社への好感を持ってもらうにはどうすればいいのか。ポイントは大きく2つあります。
ポイント1. 退職時の体験
「終わりよければ全て良し」と言われますが、それは会社を辞めるときも同じです。退職時の体験が悪いと、会社自体の印象も悪くなってしまうことが過去のアルムナビのアンケートからわかっています。
さらに「(会社のことが)嫌いになった」と答えた人の中には、「Twitterや『カイシャの評判』などの口コミサイトに悪評を書き込んだ」という人もいました。
では、退職時の体験をどうやったらプラスにできるのか。その鍵を握るのが「退職面談時の上司の対応」「退職を早めに切り出せる文化」「『退職に関する情報開示』のすり合わせ」の3つです。詳しくは以下記事にて解説しています。
>>退職面談時の上司の対応が鍵を握る! 「部下の送り出し方」でアルムナイの会社への心象は変えられる
ポイント2. 退職後の交流
アルムナイが口コミを書くタイミングは、辞めた直後だけではありません。「A社からB社に転職後、B社から再度転職をするときに口コミサイトに登録し、A社に関する口コミを書く」というケースもあるのです。
つまり、アルムナイが辞めた時期と口コミを書くタイミングには、タイムラグが生じるということ。
例えば会社として働き方改革に取り組み、労働環境を改善していたとしても、それ以前に退職した人に「当時の記憶や体験を基に口コミを書かれてしまう」こともあるわけです。
それを防ぐには、アルムナイとつながりを保ち、会社の変化をコンスタントに伝えることが重要です。
会社の近況や新サービス、案件や求人の情報などを発信し、会社から辞めた人に歩み寄ることで、退職時に抱いていたネガティブな感情をプラスに持っていくことも可能です。また、アルムナイ自身も悪評を言いにくくなっていきます。
アルムナイへの発信方法はメーリングリスト、Facebookグループ、郵送などさまざま。人事と広報が連携してプレスリリースやメディア出演情報を送るといった工夫をする企業も。他に、アルムナイを招いてイベントを行う企業も出てきています。
>>ベネッセがアルムナイと現役社員の交流会「ホームカミングデイ」を開催! アルムナイと企業が協業するポイントとは?
>>アルムナイは退職者ではなく「パートナー」。ワンキャリアがインターン卒業生の同窓会を開いた理由
まとめ
アルムナイが100人いるとき、その100人全員が会社の敵となって悪口を言うのか、50人でも味方になり、ポジティブなことを発信してくれるのかで、世間が抱く会社へのイメージはガラリと変わります。
「退職者=裏切り者」という文化が根強い会社もありますが、今後転職者が増え、退職者も増えていくことを考えれば、「退職者=応援団」になってもらうための動きを取った方がメリットは大きいと言えます。
自社のイメージアップや採用ブランディングの観点からも、アルムナイとポジティブな関係を築くことの重要性は増していくはずです。