経営者が注目する「アルムナイ」

「アルムナイ」という言葉を辞書で引くと、だいたいこのような説明が見つかります。

“alumni 【名】alumnusの複数形。(男子)卒業生、 同窓生、 校友”(Weblioより)

※別の記事で詳しく説明しますが、より詳しく言うと、卒業生である必要はなく、ある学校や組織の出身者を意味します。卒業生だけに限る場合は、Graduateを使います。

これまで「アルムナイ」という言葉を聞いたことがあるという方は、大学の卒業生を意味する場面が多いかもしれませんが、アルムナビでは、学校の「アルムナイ」ではなく、コーポレート・アルムナイ、つまり企業の卒業生・OB/OG・退職者と企業のリレーションに関する最新情報を発信していきます。

働き方の変化にともなう「アルムナイ」への注目

人生100年時代における人々のライフスタイルやワークスタイルが大きく変わる中、以前と比較すれば転職は当たり前になり、「パラレルワーク(兼業)」や「フリーランス」といった、同時に複数の企業の仕事をするという働き方も徐々に増えてきています。

このような「組織主義」から「個人主義」へのシフトは一見「集団主義」から離れるように見えますが、そうではなく「集団」という概念が一つの「組織」のみに「雇用」されているだけではなくってきていると言えます。

とはいえ、一般的に「サラリーマン」の数を語るときに参照される統計局の2017年4月労働力調査でも、6500万人の就業者のうち89%(5757万人)が雇用者(パラレルワーカー含むいわゆるサラリーマン)となっていて、日本においてはまだまだフリーランスは10~15%程度と言われています。

統計局調査結果の非雇用者11%には、企業に属する取締役なども含まれますし、今は非雇用者に属する方でも今までの人生で一度も企業に属すことなくフリーランスとして活躍している方はそんなに多くないでしょう。

就業者の大半がどこかの企業のアルムナイである可能性が高いのはもちろん、就業者でない主婦などの大半もどこかの企業のアルムナイであると言えます。

一方で企業は慢性的な人材不足に悩んでいて、常に優秀な人材を探しています。そこで、個々人の多様な価値観の変化に対応しながら、せっかく多くの時間と労力をかけて採用したものの退職してしまったアルムナイを業務委託や再雇用というかたちを通じで活躍してもらおうという動きがアメリカを中心に強くなってきています。

これがアルムナイが注目されている理由の一つです。

アルムナイ・リレーションの活用

アルムナイが注目を集めているのは人事的視点だけではなく、ビジネスに直結しているセールスやマーケティングの面もあります。

それぞれのメリットについては別の記事で詳しく説明をしていきますが、以下のようなねらいで、アメリカではアルムナイ・リレーションズという専任担当者を設ける企業も出てきています。

  • お互い良く知った即戦力タレントの再雇用やアルムナイ経由のリファラル採用
  • ナレッジシェアやメンター
  • パートナーとしての協業
  • 自社のアンバサダー
  • アルムナイ経由のビジネス受注

Win-Winの関係

アルムナイ・リレーションの構築を成功するために重要なのは、お互いにメリットがあるWin-Winの関係を築くことです。

つまり、企業側のメリットを求めるだけではダメで、アルムナイの状況やそのニーズをしっかり把握したうえで、アルムナイに対してポジティブなエクスペリエンスを提供することが重要です。そうすれば、中長期的にはギブ・アンド・テイクが成立し、リレーションが確立できます。

アルムナイの中には、同じ業界内で転職した人、異業種に転職した人、大企業に転職した人、スタートアップに転職した人、独立して起業した人、フリーランスになった人、育児や介護に専念している人、配偶者の転勤などで引っ越した人、大学などに戻った人など、様々な人がいます。

このように、その人のライフイベントや家族の状況などによって、ニーズや古巣への期待は異なってきます。また、辞め方・時期などによっても、心情・心境は千差万別でしょう。

そのため、企業は「テイク」ではなく、まずはアルムナイを理解して、アルムナイに対してポジティブなエクスペリエンスを「ギブ」することから始めるのが、Win-Winの関係を築く近道になるのです。

それぞれ詳しい背景やトレンドなどは別の記事で紹介をしていきます。