採用計画の正しい立て方と見落としやすい5つのポイント

少子高齢化が深刻な日本。2040年には2017年と比較して労働人口が20%減ると予測されています。更にリモートワークや副業・複業やフリーランスのような多様な働き方が広がっており、この流れはこれからも加速していくと見られています。こういった社会状況から、社員採用はますます難しくなっていくことは明白でしょう。

そんな中で採用を成功に導くための肝となるのが、採用計画。この記事では採用計画を立てる上でのポイントから役立つツールまで紹介します。

採用計画の必要性とは

採用計画とは、企業の事業戦略から逆算して、採用人数や採用手法・採用納期などを決めたものを指します。いわば、採用活動の方向性を示す地図のようなものです。

地図がなくては、目的地に行くのに遠回りをしてしまったり、それどころかたどり着けなかったりしてしまうかもしれません。さらに、これまではわかりやすい道であった採用成功への道も、今では迷路のように複雑になっています。

採用計画は、そんな中で採用目標を達成するために必要不可欠なのです。また採用計画を作っておけば、進捗管理や定量的な振り返りもしやすく、採用活動のブラッシュアップにも役立てることができます。

採用計画で見落としやすい5つのポイント

採用活動には必須とも言える採用計画ですが、採用計画を作る上で、多くの人が見落としてしまっているポイントがあります。本章で紹介するポイントを見落としてしまったことで、採用計画を立てたものの上手くいかずに終わってしまうことも。

せっかく作った採用計画を最大限役立てるためにも、計画策定の際は漏らさず考慮しましょう。

採用課題の把握

見落としがちな一つ目のポイントは自社の採用課題です。

まず、自社の採用の歩留まりがどこにあるのか把握した上で計画を立てましょう。同じ採用が上手くいっていない企業でも、そもそも応募が少ないのか、それとも選考中の辞退が多いのか、はたまた内定承諾率が悪いのか、企業によって抱えている問題は異なります。

特に採用というと、応募獲得に目が行きがちですが、選考中の歩留まりが問題であれば媒体の予算を増やしたり、スカウトに注力したり等の施策で応募を増やしたところで、劇的な改善は見込めないでしょう。このケースであれば、選考フローを再設計した方がいいかもしれません。

このように、現在自社が抱えている問題点によって効果的な施策は変わっていきます。効果的でない施策に取り組んでしまい、いたずらにリソースを消費しないためにも、採用課題の把握は必須です。

新たな採用チャネル

採用チャネルは年々多様化し、激しい変化を見せています。

これまでの採用は求人媒体が主流でしたが、昨今はダイレクトリクルーティングやSNSを使った採用に力を入れている企業も増加傾向に。

特に、近年注目を集め始めたリファラル採用やアルムナイ採用などの新しい採用チャネルは、人事担当者が見落としがちな領域です。また、存在は知っていても「同業他社もしていないし」「うちには効果がなさそう」となんとなく俎上に載せることなく終わっている場合も。同業他社が取り組んでいない今こそ、逆にチャンスかもしれません

新しいチャネルだからと敬遠することなく、多角的にチャネルを検討していきましょう。

>>アルムナイとは?人事・HR領域で注目される背景と大企業の導入事例

新入社員へのヒアリング

採用現場だけで計画を立ててしまうと、企業側の視点に偏ってしまう可能性が高いです。

求職者側の視点も取り入れるために、現在自社にいる社員の中で、求職者の気持ちが最もわかるであろう新入社員へのヒアリングは必ず取り組むべき項目です。

自社のどんな点に惹かれたのか、選考においてよかった点も大事ですが、さらに重要なのが選考で不安に感じた点や、もっとこうならよかったと感じた点です。魅力のヒアリングに注力しがちですが、不満をヒアリングし改善することで、よりよい候補者体験を設計することができ、採用成功へと繋げられるのです。

採用競合リサーチ

同業他社をリサーチしている人事担当者は多いですが、採用競合までリサーチできている人は少ないです。しかし、意外と重要なのがこの採用競合リサーチ。

自社に応募する人が他に応募している企業や、新入社員が自社以外に受けていた企業の採用活動をリサーチすることは、自社の差別化ポイントや求職者に魅力的に思われそうな要素を考える上で大いに参考になります。

新たなポジションの採用等で、新入社員やこれまでの求職者から採用競合が割り出せない場合は、きっと採用競合になりそうという仮説ベースでも問題ありませんので、採用競合のリサーチをしてみましょう。

アウトソーシング

採用計画のような初めて取り組むこととなると、詳しい人に頼んだ方がいいかもとアウトソーシングしてしまいがちです。

しかし、全てをアウトソーシングしてしまうと、自社にノウハウが蓄積されず、ずっと分からないままの状況になってしまいます。またコストも長期的にかかる可能性が高いです。

アウトソーシングする際は、全てを頼んでしまうのではなく、自社でできることはないかと一つひとつ検討してからにしましょう。採用は今後企業の重要課題となっていくため、できるだけ自社にノウハウを持てるよう、アウトソーシングは最小限にするのがおすすめです。

採用計画の正しい立て方と具体的手順

ここからは、実際の採用計画の立て方を解説します。前章のポイントを踏まえた上で、立てていきましょう。

採用人数の策定

まず決めるべきは、計画のゴールとなる採用人数です。この時、期限も同時に決定します。

もし3名~5名または6月から8月など幅がある場合は、人数であれば多い方、期限であれば短い方をゴールとして設定しましょう。ここで決めたゴールにたどり着くにはどうするのが最適かを逆算し、ここから細かい計画を立てていきます。

採用ペルソナの設計

採用ペルソナの設計イメージ

採用人数と採用期限が決まったら、採用したい人物像、採用の実現可能性を加味して採用ペルソナを設計します。

「30代、IT業界経験者」など年齢層や職業に幅を持たせる採用ターゲットとは違い、採用ペルソナの場合は、「34歳、SEとして自社プロダクトの開発に携わっている」といった形で一人の人物を想像して作っていきます。

この時、家族構成や趣味、現在の悩み・よく見るサイトなどまで想像して、解像度の高い人物像を決定すると後々の採用施策の決定や魅力の打ち出しを的確に行えます。直近入社した社員の特徴を参考にしつつ、設計していきましょう。

設計する採用ペルソナは1つであることが多いですが、属性の違う人を複数人採用したい場合など、状況によっては2つ設定するのもよいでしょう。ただ、あまり増やしすぎると方向性がブレてしまうので、2つを上限とするのがおすすめです。

自社の魅力の洗い出し

この段階では、まず自社の魅力を徹底的に洗い出します。注意点は洗い出す段階からペルソナには響かなさそうと魅力を絞り込まないこと。そう思っているのは採用担当だけで、実は魅力的に映っていることも考えられます。

洗い出した魅力をリスト化したあと、ペルソナが魅力に感じそうな点をピックアップしていきましょう。リストを作っておくことで、訴求していた魅力があまり響いていないと分かった時も、新たに訴求するべき魅力を見つけやすくなります。

もう一つ注意する点は、求職者視点で選ぶことです。人は「自分がいいと思うものは他者もいいと思うだろう」と考えてしまいがちです。自分が魅力的に感じるものでなく、求職者がどう思うかを考え抜きましょう。分からなくなってしまった場合は、新入社員やペルソナと似た属性の社員にヒアリングしてみると、糸口を掴めるかもしれません。

使用する媒体や施策の決定

ペルソナと訴求するべき魅力が決まったら、いよいよ使用する媒体や施策を決定します。

例えば、企業文化が魅力ならYouTubeやTikTok、Instagramなどの視覚的にどんな雰囲気かわかるものがいいかもしれません。また、ペルソナが20代であるのに、40代・50代の利用者が中心のFacebookを使用するのは効果的とはいえないでしょう。

キャリアアップできる環境が魅力であれば、実際にキャリアアップを実現した社員にインタビューしたり、その社員自身に記事を書いてもらい採用サイトに載せたりするのもよいでしょう。

また、歩留まりの多いフェーズに合わせて施策を決定するのも有効。例えば、活躍できるイメージが持てなかったという理由で内定辞退が多い場合は、選考の終盤に現場社員との面談を組み込むなどの施策を考えてみましょう。このように、自社の課題・自社の魅力・ペルソナに合わせてプランを決定していきます。

目標数値の設定

施策を決定したら、最後に目標数値を設定します。

面接数、応募数はもちろんですが、そのための各媒体のPVや、コンテンツの投稿数なども設定しておきましょう。

ここを細かく設定し、都度振り返りをしていくことで採用計画をブラッシュアップし、より良いものにすることができます。効果的だと思って始めた施策よりも他の施策の方が効果が出ることもありますし、実行可能だと思っていた施策が実際に始めると工数の問題で難しいこともあるでしょう。目標設定を細かくしておくことで、どこに問題点があり、どこを改善するべきなのか的確な判断が可能になります

ただ、効果が出るのに時間がかかる施策もあるので、あまり短期的に判断しすぎないように注意です。半年か1年かで判断するのが良いでしょう。

採用計画で重宝する無料テンプレート・フォーマット

最後に、採用計画で活用できる無料のテンプレートを紹介します。

エクセル

自社を分析する際に使えるテンプレート

魅力を洗い出す時に有効です。

自社の強み・弱み・機会・脅威について考えてみましょう。

各施策の進捗管理に使えるテンプレート

採用計画を実行するフェーズでの、施策の進捗管理にはこちらがおすすめです。

各施策の簡単な効果検証まで一つのシートに集約すると便利かもしれません。

スプレッドシート

● プロジェクトのタイムライン

まずおすすめなのが、公式で用意されている「プロジェクトのタイムライン」です。これまで紹介してきたように、採用計画の立案には多くのフローがあります。そうした数多くのフローを管理するのに適しているのがこちらのテンプレートです。

候補者管理におすすめのテンプレート

候補者管理におすすめなのが、こちらのサイトで紹介されている「顧客管理表テンプレート」です。顧客管理用のテンプレートですが、項目をカスタマイズすれば候補者管理として使えます。

基本的な個人情報だけでなく、選考フェーズや現職など、採用課題の特定やペルソナ設計に今後役立てられそうな項目も盛り込んでおきましょう。

まとめ

今回の記事では、採用計画の立て方と立てる際のポイントを解説してきました。

採用計画は採用を成功させるためには欠かせないものです。手間のかかる作業も多いですが、しっかりと取り組めば、採用を成功に導き大きなリターンを得られる可能性の高い計画です。

もし採用計画を立てる中で、アルムナイ(退職者)との関係を強化したいと思った人には、当社のアルムナイ専門サービスもおすすめです。今後の採用施策の選択肢の一つとして頭の片隅に置いて頂けると幸いです。