出戻り社員が人事領域で注目を集める背景と大企業の再雇用事例

旧来の採用慣習とは異なり、一度退社した社員が他社勤務を経て、元の会社に戻るというキャリアも決して珍しい事例ではなくなってきました。ここ十数年では、大企業においても出戻り社員(アルムナイ)の積極採用が目立ち、そうした採用手法がHR領域で大いに注目を集めています

この記事では、各企業の出戻り社員再雇用への取り組みを紹介するとともに、出戻り社員の再雇用がもたらすメリットやデメリット、さらにどういった企業に適した採用スタイルなのかという点も掘り下げていきます。

出戻り社員が人事・HR領域で注目を集める背景とは

出戻り社員が人事・HR領域で注目されるようになった背景としては、まず社会全体の慢性的な労働力不足が挙げられます。少子高齢化の進展とともに労働人口の減少傾向は続き、2019年の有効求人倍率は約1.6倍とバブル期を上回る水準を記録しました。コロナ禍も絡み、2020年以降の倍率は1.1倍程度に下落したものの、労働人口自体は2030年頃まで減少の一途をたどる見通しです。

こうした中長期的な人口構成の事情から、人事が採用に苦慮する状況が当分の間は続くと解釈せざるをえません。そこで、自社で勤務経験があり、スキルや人物像を概ね把握できている出戻り社員(アルムナイ)の再雇用は、売り手市場に直面する採用側にとって注目すべき選択肢となります。

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さらに、かつては日本企業の慣例であった終身雇用制度が崩れ、人材の流動化が進んでいるという事情も大いに関わっています。個々の労働観も変化し、退社後、大学院などを経てキャリアアップを目指すケース、育児が落ち着いてから再就職するケース、副業を始めるケースなど、多様な働き方が社会全体に浸透してきたのも事実です。人事・HR領域は、新卒採用に止まらず、流動性の高い労働市場において、自社のニーズを満たす人材を臨機応変に確保しなくてはなりません

そうした中で、かつては例外的だった出戻り社員の再雇用に、前向きに取り組む企業が増加傾向にあります。2000年頃からは、国内の大企業でも制度的に出戻り社員を採用するケースが出ています。そうした大企業の事例が増えることで、出戻り社員再雇用は単なる縁故採用ではなく、戦略的な採用プランの1つと捉える見方が広がってきました。

出戻り社員の大企業における再雇用事例

上述したように、大企業においても出戻り社員の再雇用を積極的に進める動きが目立っています。ここでは、特に注目に値する具体的な事例を紹介していきます。

トヨタ自動車(株)

トヨタ自動車(株)は、2005年より事技専門職以上を対象に「プロキャリア・カムバック制度」を導入し、一定の条件を満たす元社員の再雇用制度を推進してきました。21世紀初めのタイミングなので、大企業の中でも、比較的早期に出戻り社員の受け入れ体制を整えた事例と言えるでしょう。

この制度を利用する場合は、まず退職理由が「配偶者の転勤」もしくは「介護」に限られ、退職前に予め同制度へ登録申請しておく必要があります。退職後の適用期間に制限はなく、本人が希望するタイミングで再雇用申請を提出することが可能です。

(株)明治

(株)明治は、ダイバーシティへの取り組みの一環として、退職後、多様な知識や経験を得た元社員を、再度戦力として迎え入れるための「リ・メイジ制度」を2020年より導入しています。実は、2014年以降、再就職制度自体は設けていたものの、退職理由や事前登録制といった条件の厳しさもあり、明治は再雇用実績の伸び悩みに直面していました。

リニューアル後は、正規従業員で3年以上勤務という単一条件を満たせば、誰もが活用できる制度へと変容。退職理由や退職後の経過年数も不問のため、再雇用対象者が大幅に拡大し、社内の活性化や新たな価値創出が期待されています。他の大企業事例と比較しても、ここまで条件を緩和した再雇用制度は斬新な部類に入ります。

アクセンチュア(株)

アクセンチュア(株)は、出戻り社員を積極的に受け入れる会社として知られています。そうしたアプローチを支える確かな基盤となるのが、「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク」と呼ばれる会社と元社員の強固なつながりを維持する独自ネットワークです。同コミュニティには、アクセンチュア自体の組織規模も相まって、30万人超の卒業生(アルムナイ)メンバーが在籍。オンライン・オフラインを問わず、アルムナイ同士やアクセンチュアの現社員が交流することで、知識や革新的アイディアを共有し、お互いを高め合える有意義な関係性を築いています。もちろん、アクセンチュアへ復職を検討する際には、募集ポジション・条件など最新の採用情報へのアクセスもスムーズです。

(株)スープストックトーキョー

(株)スープストックトーキョーは、退職者の中で希望者向けに「バーチャル社員証」を発行し、他社とは一線を画すアプローチで卒業生と会社との絆を育んでいます。バーチャル社員には、スープストックトーキョーの最新情報や社内イベントへの参加、優待価格での食事など魅力的な特典を提供。必ずしも再雇用だけに注力した取り組みではないですが、価値観を共有できる緩やかな繋がりを保ちながら、結果的に会社理念に強く賛同する元社員が復職する事例も増えているようです。

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出戻り社員を再雇用するメリットとデメリット

ここで、出戻り社員を再雇用するメリットとデメリットを整理していきましょう。

メリット

1つ目のメリットは、採用ミスマッチのリスクを軽減できるという点です。新卒・中途を問わず採用活動を行っていると、入社した人材が、配属先での仕事や企業風土にギャップを感じて早期退職してしまうことがあります。また、即戦力と見込んで採用したものの、現場に馴染むまで想定以上に時間がかかるケースもあるでしょう。

その点、出戻り社員を採用すれば、実際のスキルや人物像などを予め把握できているので、採用後にミスマッチが起きる可能性を大幅に軽減できます。再雇用される社員側も、良い点・悪い点も含めて、会社の実情を理解しており、新規人材を雇うより職場環境へのスムーズな適応が期待できます。

出戻り社員の再雇用は、外部で得られた新たなスキルを社内に還元できる点もメリットです。転職先で培われたキャリアや経験は、自社にはない+αの要素をもたらし業績アップにも貢献してくれるでしょう。もちろん、一般の中途採用プロセスでも、魅力的なスキルを備えた候補者が見つかるかもしれません。

しかし、出戻り社員であれば、自社での働き方やノウハウを熟知しているので、職場に慣れるまで時間やコストがかからないという強みもあります。

さらに、採用コストの抑制も注目すべきメリットです。そもそも、人材を新規採用する過程では、幅広いコストが発生します。求人広告費や会社説明会の実施に関わる費用、人材紹介会社への報酬などが重なり、社員1人の採用に付き100万円近くの出費を余儀なくされてしまいます。採用後は、業種などで差はあるものの、戦力として活躍できるまでに研修費の負担も避けられません。

その点、出戻り社員を雇う場合は、会社と求職者双方がお互いをよく知る状況下で採用プロセスが進むため、採用に要する時間と諸経費を大幅にカットすることが可能です。

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デメリット

出戻り社員を再雇用する際のデメリットとしては、既存社員との関係性に注意する必要があるという点が挙げられます。例えば、出戻り社員が極端に良い待遇を受けていると、既存社員の不平不満やモチベーションの低下を招く可能性があります。好条件の提示は優秀な出戻り社員を採用するには有効ですが、一方で、既存社員とのバランスにも配慮しなければなりません。

そして、出戻り社員は、在籍時の体験に基づき、会社のルール・仕組みや働き方に精通しています。しかし、外部で働いていた数年間で、一部業務内容が変わったり、組織改編が行われていたりするケースもあるでしょう。そうした場合、出戻り社員の「経験者」という自負が、職場環境への適応をかえって妨げてしまうかもしれません。即戦力として期待できる出戻り社員ですが、それでも一定のフォロー体制は事前に整えておく必要があります。

さらに、出戻り社員採用の事例が増えることで、既存社員間で退職への安易なイメージが定着するおそれがあります。「一度退職しても、この会社ならいつでも戻れる」と退職志向ばかりが高まっては、会社にとって望ましい状況とは言えません。そうした事態を防ぐため、実情に合った制度設計や離職対策にも取り組む必要があります。

出戻り社員を再雇用すべき企業とそうでない企業

続いて、出戻り社員の再雇用は、特にどういった企業が実践すべきなのかを解説していきます。

まず、確かな即戦力人材が必要な企業は、前向きに出戻り社員の再雇用を進めるべきです。出戻り社員最大の強みの1つは、過去に在籍経験があり、現場での働き方や企業風土を一通り理解していること。大幅な組織改編などが行われていない限りは、出戻り社員ほど安心して業務を託せる存在は見当たらないでしょう。

もちろん、労働市場をリサーチすれば、会社のニーズにマッチしたハイスペックな人材にアプローチできる可能性はあります。

しかし、キャラクターや会社との相性は未知数であり、従来の実績通り自社でも活躍できるという確証はありません。このように、採用ミスマッチのリスクを減らしつつ即戦力を採用したければ、出戻り社員の再雇用は最有力の選択肢です。

他には、研修や教育のコストを抑えたい企業も、出戻り社員の再雇用がお勧めです。特に、エンジニアなどのIT系専門職や、独特の社内システムを採用しているケースでは、いくら有能な人材を雇っても、相当の時間とコストをかけて研修や教育を提供しなければなりません。しかし、出戻り社員を積極的に採用すれば、職場環境に適応させる複数のステップを大幅にカットすることができます。

それでは、出戻り社員を再雇用すべきではない企業とはどのようなケースでしょうか。

再雇用をお勧めできないのは、年功序列や終身雇用の人事制度が色濃い企業です。年功序列や終身雇用の働き方が基本となる環境下では、既存社員にとって継続勤務こそが会社への貢献の証という認識が広く浸透している可能性があります。

その一方、途中で退職してしまった社員は、会社の設けた評価スキームを既に外れた存在という印象を持たれがちです。そうした中で、1度会社を抜けた社員が戻り、好待遇を受けるようなことがあれば、多方面からの不満や反発を招くことは想像に難くありません。

また、短期間で従来の業態や組織構造が一変した企業も、安易に出戻り社員を再雇用すべきではないでしょう。例えば、抜本的に新規事業に参入したケース、合併や買収が行われたケースでは、出戻り社員がかつて活躍した時期とは、高い確率で労働環境が様変わりしています。もっとも、再雇用に慎重になった方がいい理由は、出戻り社員の過去の経験が業務に活かしづらくなるからです。自社での勤務実績に関わらず、出戻り社員が会社にとって魅力的なスキルを有しているならば、十分に採用を検討する価値はあります。

出戻り社員の採用に特化したサービス

ここまでの説明を通して、出戻り社員の再雇用に前向きな印象を持たれた方もいるのではないでしょうか。実は、効果的に出戻り社員を再雇用するにあたり、便利な専用サービスが一部で提供されています。

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離職後もゆるやかに続くアルムナイとの交流は、企業にとって離職率改善に役立つ情報収集にも寄与し、退職者と良好な関係にある企業姿勢は採用ブランディング強化に繋がります。

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