縁故採用を禁止する企業が増えた理由 | 導入デメリットと実態

求人広告、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用、アルムナイ採用…採用難易度が上がっている現在、たくさんの採用手法が活用されています。数ある採用手法の中でも、昔から用いられていたのが縁故採用。

しかし、皆さんの中にも、”コネ入社”と揶揄されることもある縁故採用にはマイナスなイメージがある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際に縁故採用には多くのデメリットがあり、禁止している企業も多いのが現状です。

今回の記事では、縁故採用の実態とデメリットを紹介していきます。

【結論】縁故採用を禁止する企業は多い

縁故採用を禁止している企業は多くあり、有名企業が禁止している事例もあります。

例えば、キーエンスでは募集要項に「社員・役員と三親等以内(子、兄弟、甥姪、孫など)の者は応募できない」ことが記載されています。この他に、三井住友海上火災保険株式会社でも、二親等以内の応募は禁止となっています。

このように、縁故採用に繋がる親族の応募を制限という形で縁故採用を禁止している企業は多くあるのです。

縁故採用を禁止する企業が増えた理由

昔から使われてきた縁故採用ですが、なぜ禁止する企業が増えているのでしょうか。ここからは、その理由に迫っていきます。

縁故採用の実態

実際に自社が縁故採用を行っていないと実態はどうなのかわかりませんよね。縁故採用にも、比較的採用がしやすかったり応募者の身元や実績などについて信頼性が高かったりといったメリットはあります。しかし、それ以上にデメリットが多く問題が発生しやすいというのが実態なのです。

禁止される理由①イメージダウンに繋がる

縁故採用は自分の志望企業に親族がいる求人のみが対象となる採用手法で、機会平等の点からいうと不公平と言わざるを得ません。「親ガチャ」といった言葉が話題となる現代において、こういった生まれた環境によって左右される手法については、疑問や反発を持つ人も多いと思われます。

実際に、2012年に岩波書店公式HPにて、採用の条件として「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」と記載され、賛否両論を巻き起こしただけでなく、東京労働局が聞き取り調査を行う事態に発展したことがありました。

こういった世の中の動きを背景に、縁故採用を行わない企業は増えてきています。

禁止される理由②多様性が無くなる

縁故採用の場合、どうしても紹介者と似たような性質の人が集まってくる傾向にあります。それ自体は悪いことではありません。安定した組織を作りたいのであれば、ひとつの方法でしょう。

しかし、VUCAの時代と言われる現代では、変化に耐えられる多様性を持った組織が強い傾向にあります。そのため、企業としても多様な人材を採用する機運が高まっており、同質な人間が集まりやすい縁故採用を行う企業は減ってきているのです。

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禁止される理由③問題の起きるリスクが大きい

「社長の親戚だから…」と評価が他の人に対してよりも甘くなったり、はたまた役員が親類にこっそり特別待遇を与えていたりといった問題が起きがちなのも縁故採用の特徴のひとつ。

こういった出来事が発覚すれば他の社員のモチベーション低下に繋がります。また、組織の雰囲気が悪くなってしまう恐れもあります。社員のモチベーションや組織の雰囲気は業績にももちろん影響しますので、倒産に繋がるリスクもゼロではないでしょう。

こういったリスクの大きさから、縁故採用はしないと決めている企業も多くあります。

縁故採用を導入するデメリット5つ

ここからは、縁故採用のデメリットを解説していきます。

不採用にできない

縁故採用の場合は、自社が求めるスキルに足りていない人やカルチャーマッチしていない人でも採用せざるを得ないことが一般的です。しかし、そういった人を採用してしまうと、業務が滞り生産性が落ちたり、会社の雰囲気が変わってしまって企業の魅力が損なわれるなどの問題が起きる可能性があります。企業の成長や良好な組織運営のためには、あまりおすすめできない手法といえそうです。

社員の不満がたまる

縁故採用でなく正式に定められているルートで入った社員が不満を持ち、会社への愛着が薄れてしまう可能性もあります。既に入社している社員の場合、新入社員が縁故採用でも自分と同じ選考フローでも特に自分が損をすることはありませんが、それだけで割り切ることができないのが人間の性です。

特別扱いに不公平感を感じ、不満が高まることで業務効率が落ちたり、これをきっかけに転職を考えてしまったりと、デメリットは大きいと言えるでしょう。

入社した本人も退職しづらい

受け入れる側の企業や社員だけでなく、入社した本人にとってもデメリットがあります。人の紹介で入った会社というのは入社後に自分に向いてない、合わないと感じても辞めづらいものです。これを読んでいる読者の方にも、会社ではなくとも友人や知人の紹介で入った部活やコミュニティを抜けづらかった経験はあるのではないでしょうか。

そうした合わないと感じている人材がだらだらと在籍しているのは、本人の時間ももったいないですし会社としてもいいことではありません。

時代遅れの企業だと思われる

現代では、機会平等や本人の努力や実績だけで評価することを良しとする社会です。そうした社会の中で、親族や知人の力を借りることが前提の採用手法は、時代遅れな企業という印象を持たれることは免れないでしょう。

また先述の通り、現在は多様性の時代でもあります。そうした中で広く人員を募集するのではなく、現在の社員の縁故で採用しようとすることも、時代にそぐわない印象を与える可能性が高いです。

多くの人数は採用できない

当たり前のことですが、親類の数には限界があります。また、親類が多くいたとしても、その中で就職活動や転職活動をしている人はほとんどいないのが現実ではないでしょうか。このため、縁故採用だけで多くの人数を採用するのは難しいといえます。数年に一度にしか採用をしない企業であれば問題はないかもしれませんが、毎年複数名採用しようとする企業にとっては、縁故採用だけでの採用は現実的ではありません。もし縁故採用を行いたい場合も、他の手法との組み合わせが必須となるでしょう。

縁故採用の上位互換として注目される採用方法

ここまで縁故採用のデメリットを紹介してきましたが、縁故採用には「紹介だから信頼できる」という大きなメリットがあります。ここでは、そんな信頼感を担保した上でデメリットも克服できる、新しい採用手法を紹介します。

アルムナイ採用

まず紹介するのは、アルムナイ(退職者)採用です。

>>アルムナイとは?人事・HR領域で注目される背景と大企業の導入事例

アルムナイ採用は、以前自社で働いていた実績があるので信頼に足る人物であるとすぐに判断できること、新規雇用者に比べて研修や育成のコストが抑えられることがメリットとして挙げられます。

>>アルムナイ採用を導入するメリットとデメリット

また、一度離職して、自社の問題点や他の環境の良さも知った上で、「それでもこの会社がいい」と入社しているため定着率の高さも期待できるでしょう。アルムナイ採用に興味がある方は、当社のアルムナイ専門サービスである「Official-alumni.com」を導入した電通・クラレ・中外製薬・荏原製作所4社分の事例集をおすすめします。今後の採用施策の選択肢の一つとしてご参考ください。

>>アルムナイ採用を導入した大企業4社分の導入事例集を無料ダウンロード

リファラル採用

続いて紹介するのはリファラル採用。

社員の紹介という点は縁故採用と同じですが、両者は似て非なるものです。大きな違いは、縁故採用が紹介された時点で採用が決定していることが多いのに対して、リファラル採用の場合は紹介後もしっかり選考が行われること

こうすることで、社員の紹介であるという信頼性の高さは保ちつつ、スキルやカルチャーマッチした人材を採用することができるのです。

>>リファラル採用のメリット・デメリットと導入時の注意点を徹底解説

まとめ

今回の記事では、縁故採用を禁止する企業が増えた理由やデメリットを紹介しました。

社員の不満が高まる、組織に多様性が生まれない、時代に合っておらずイメージダウンにつながる可能性等が、縁故採用が減っている大きな原因です。縁故採用のメリットである、信頼できる人材を採用できる点を残しつつ、時代に合った採用手法として、アルムナイ採用とリファラル採用が挙げられます。みなさんもこの機会に、新しい採用手法を始めてみるのはいかがでしょうか。