「自社でもリファラル採用を導入したいが、上手くやれるだろうか」……そんな不安を抱える企業も多いかもしれません。リファラル採用は近年注目される採用手法の一つですが、導入にあたってはメリットやデメリット、リファラル採用を円滑に進めるためのコツなどを押さえておきましょう。
また、リファラル採用とアルムナイ採用を混同して捉えてしまっていると、なかなか上手く進まないことがあります。記事の最後にアルムナイ採用との区別についても簡単に触れていますので、ぜひチェックしてみてください。
リファラル採用とは?
社員のネットワークを通じて新たな人材を獲得する手法
リファラル採用とは、社員の友人や知人などのつながりから採用候補者を紹介してもらう、採用チャネルの一つです。
知り合いを採用するという点は縁故採用と似ている部分もありますが、縁故採用の採用基準は血縁者であるなど、紹介者と深い関わりがあるかどうかです。一方リファラル採用は、知り合いの中から自社にフィットしたマインドやスキルを持った人を誘う手法ですから、縁故採用とは判断基準が全く異なります。
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リファラル採用が注目を浴びる背景にある社会変化
リファラル採用が注目され始めたのは、ここ2、3年のことです。もともとベンチャー企業などから自然発生した採用手法だったのが、近年は大手企業も含めて意識的に取り組まれるようになりました。
その背景にあるのは、少子高齢化による労働力不足や終身雇用の崩壊、それに伴う人材の流動化、新規事業の創出の必要性などです。転職という選択肢が当たり前になり、企業の間では中途採用で優秀な人材を獲得するニーズが高まっていきました。
当然、採用市場の競争は激化。その中で少しでも採用コストを押さえながら母集団を形成し優秀な人材を獲得するため、一気にリファラル採用の導入が広がりました。
リファラル採用のメリット
採用コストの一部を削減できる
リファラル採用のメリットの一つが採用コストの削減です。特に大きいのは、採用エージェント経由で採用した場合にエージェントに支払う仲介手数料でしょう。人材を1人採用すると、当人の年収の30~40%ほどが紹介手数料として引かれるため、中途採用を強化したい多くの企業では採用コストの高さがネックになります。
一方で、リファラル採用ならエージェントフィーは不要です。候補者を紹介した社員に対してインセンティブを払う場合を差し引いても、採用コストは大幅に下げられます。
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採用アプローチの範囲が広がる
2つ目のメリットが、これまではアプローチできなかった人材にリーチできる可能性があることです。
エージェントを利用する場合は、業界やスキルを指定してターゲットを設定することになるので、アプローチの幅が限られます。その点リファラルは、会社が想定していなかったような業界から、自社にマッチする人材を社員が見つけてくれるかもしれません。
また、リファラル採用であれば優秀な人材がエージェントに相談する前にアプローチすることも可能です。その人が「転職しようかな」というぼんやりとした考えを友人に相談し、「それならうちの会社を受けてみたら?」と言われ、そのまま入社するようなケースです。
優秀な人材であればあるほどエージェントに登録してしまうと競争率が高くなりますから、それよりも少し早い段階で採用につなげることで、採用競争を有利に進められます。
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採用の精度を高めミスマッチを防ぐ
3つ目は、ミスマッチが少ないということです。通常の採用では、採用候補者が会社のことをよくわかっていないまま入社し、ギャップが発生した結果として早期離職につながるケースが頻繁にあります。
その点リファラル採用の場合は、社員が会社の良いところも悪いところもフラットに実体験として伝えられますから、候補者も会社の実情をイメージした上で入社を判断できます。入社後のギャップが減れば、少なくとも早期離職は回避できるでしょう。
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リファラル採用のデメリット
全てが「社員次第」になってしまう
メリットの多いリファラル採用ですが、その性質上、社員の属人性が高い手法である点はデメリットです。社員にどれくらい友人がいるのか、つながりはどれくらい深いのか、そして実際にどれくらい紹介してくれるのかに依存してしまうので、会社としては採用者数などの方針が出しづらくなってしまいます。
属人性を排除するには、会社としてリファラルに関するリクルーティングの説明会などを開催し、教育を行うといった方法があります。採用候補者に社員がどのような声掛けをするのかなどリファラル採用に必要な情報をインプットして、採用活動をやりやすくするということです。
ただし、教育するにはどうしても社員や人事が工数を割く必要がありますから、その点はデメリットです。
社員の心理的負担が高くなる
友人や知り合いを会社に紹介するというのは、社員の立場からすると心理的負担が高まる可能性もあります。せっかくおすすめしたのに採用に落ちてしまったとなれば、お互いの関係性が悪くなってしまうかもしれないからです。そのため、実際に紹介に至るまでのハードルも高くなるでしょう。
就職する側としても、知人からの紹介というのは入社ハードルが上がります。仮に早期退職をしてしまうと、相手との関係性が壊れてしまう可能性があるからです。
獲得できる人材は偏る傾向にある
リファラル採用によってアプローチの範囲が広がる点をメリットとして挙げましたが、一方でどうしても社員に近しい属性の人が集まりやすいという点はデメリットでもあります。
特に、中途採用によって新規事業をスタートしたい、あるいは事業変革をしたいなど、これまで社内にいなかっ人材を獲得していきたい方針の場合は、リファラル採用で要件を満たすのは難しいでしょう。
リファラル採用を円滑に行う3つの注意点
大切なのは大掛かりな仕組みよりも社員への周知
リファラル採用自体は、特別なツールや大掛かりな仕掛けをしなくても簡単にスタートできます。インセンティブ制度の導入はその一例です。紹介コードを発行などしておけば、トラッキングも容易です。
ただし、仕組みやツールよりも大事なのが、社員に「リファラルという制度がある」としっかり周知し、常に意識をしてもらうことです。その上で、「リファラルをしてよかった」と思えるような取り組みをしましょう。意識向上のために説明会を開催したり、採用できたら表彰式を行ったりするといったことです。
採用プロセスは簡略化しないほうが安心
リファラル採用では社員が自社にマッチしそうな人物を紹介してくれるので、採用プロセスを簡略化できるという点が、メリットの一つとして捉えられることもあります。
しかし、これには賛否両論があります。特に大企業においては、社員の考えている「自社が求める人物像」が必ずしも正しいとは限りません。社員が候補者に伝える会社の情報も、偏っている可能性があるでしょう。
リファラルだからこそ、採用プロセスを社員だけに委ねるのはリスクが発生するわけです。実際、リファラルでも通常の採用と同様に会社として説明会を実施し、選考プロセスを経た上で採用をする企業は多いです。安易な簡略化は難しいと考えておきましょう。
採用プロセスを簡略化すると、縁故採用のような公私混同の採用として見られる恐れもあります。ムダな軋轢を避けるためにも、「知り合いだからとおってフリーパスではない」ということは、強く発信しなければなりません。
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社員エンゲージメントを高めることが大前提
リファラル採用が成功する企業の大前提は、社員のエンゲージメントが高いということです。自分が働いていて楽しいと思えなければ、会社を人におすすめはしないからです。
また、採用というのは放っておくと後回しになってしまうものですから、「知り合いに会ったら転職について聞いてみる」といった取り組みをしてもらうには、社員の当事者意識が欠かせません。
特に自分の部署やチームごとに採用したい人物像を明確にしておくと、リファラルへの意欲が高まるでしょう。
リファラル採用とアルムナイ採用はどう区別すべき?
リファラル採用の一環でアルムナイ採用をするのは難易度が高い
リファラル採用は企業の退職者(アルムナイ)を再雇用するアルムナイ採用と混同されがちです。例えば、企業の退職者が現職の社員とのつながりを介して再就職するような場合は、リファラル採用とアルムナイ採用の一部が重なっている状態といえるでしょう。
とはいえ、意識的にリファラル採用の一環でアルムナイ採用ができるかというと、実際のところ難しいものがあります。
難しさの要因となっているのは、デメリットでも紹介した社員の心理的負担です。社員からしてみると、「一度会社を退職した人が、再雇用のための採用で落ちたらどうしよう」という不安が生まれます。逆にアルムナイからしてみると、一度退職した企業に対する後ろめたさから、そもそも社員や上司に「再就職したい」とはなかなか言い出せません。
このようなハードルの高さがあるので、アルムナイに対する施策はリファラル採用とは切り分けて、個別に行っていくのがおすすめです。
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アルムナイと会社がつながっておくことがアルムナイ採用のベース
アルムナイ採用の基本は、採用の興味の有無に限らず、まずアルムナイと会社がつながりを持つという点にあります。その中で、ライフスタイルやキャリアプランの変化などを通してアルムナイに「また元の会社に戻りたい」という気持ちが自然発生したときに、アルムナイ採用が可能になるのです。
採用そのものは会社として案内ができるので、リファラル採用のように社員に心理的負担がかかることはありません。あらかじめつながりを持っておくことで、リファラル採用のようにアルムナイが「転職したい」と考えたときにいち早く接点を持ってアプローチできる点も、アルムナイ採用の特徴です。
また、リファラル採用の場合は既存社員と異なる属性の人材を求めるのが難しいと述べましたが、アルムナイとつながりを持っておくと、これまでとは全く別のスキル・経験を持って戻ってきてくれる可能性があります。イノベーション人材やデジタル人材の獲得の視点でも、アルムナイ制度の導入はおすすめです。