「東北・新潟に貢献するために」東北電力が目指すアルムナイとのイノベーション

東北電⼒グループは、1951年の創⽴以来、「東北の繁栄なくして当社の発展なし」という考え方のもと、低廉で安定した電力供給により東北地方および新潟県の発展に寄与してきました。

一方、電力の⼩売全⾯⾃由化による競争の激化や、人口減少・少子高齢化による社会構造の変化により、電力供給という従来の役割を超えた変革が必要になってきたといいます。そんな中、同社が注目したのが、アルムナイネットワークでした。

新しい変革の時を迎えた同社が、アルムナイネットワークを発足した背景や人事制度の変革について、ビジネスサポート本部人財部(人事)課長の千馬さん、同じく人事グループの佐々木さん、佐藤さん、関さん、石川さんにお話を伺いました。

東北電力株式会社 ビジネスサポート本部 人財部 (人事)
課長 千馬 英俊さん(写真中央左)
副長 佐々木 聡洋さん(写真中央右)
主査 佐藤 泰亮さん(写真左)
 関 孝司さん(写真右)
  石川 香也子さん(写真中央)

※こちらは過去、東北電力および東北電力ネットワークに在籍していた方専用のネットワークです。

社外知見を取り入れてより一層東北・新潟に貢献する

ーー東北電力は今、転換期にあると伺いました。この先の時代における展開について、具体的にどのようなビジョンを掲げているのでしょうか。

千馬:東北電力グループは、2030年代のありたい姿として「東北発の新たな時代のスマート社会の実現に貢献し、社会の持続的発展とともに成⻑する企業グループ」を掲げています。

東北6県・新潟県への電⼒供給を担い続けるとともに、お客さまの豊かさの最大化や社会課題の解決に資するべく、東北からスマート社会の実現をリードすることを目指しており、そのために経営資源を戦略的に投入していくことで、⾃らのビジネスモデルを大きく転換させていきます。

ーなぜ、ビジネスモデルの転換という大きな決断に至ったのでしょうか。

千馬:ビジネスモデル転換の背景には、電力小売事業の自由化による競争の激化があげられます。これまでの電力会社はいかに安定的に電力を供給するかが求められてきました。しかし、電力の⼩売の全⾯⾃由化をきっかけに、どのように価値提供してお客様に選ばれ続けるかを考える必要性が出てきました。こういった市場の変化を背景にビジネスモデルの転換が進んでいます。

加えて、特に東北地方に顕著な少子高齢化の問題も大きく関係しています。確実に少子高齢化が進んでいくなかで、経済市場の縮小を見据えたサービス転換は喫緊の課題です。高齢人口の増加を逆手にとって、高齢者のニーズに応える新しいサービスなどを考えていくといった今までに無い切り口での市場開拓も必要になってきました。

こういった状況下で、求められるのは社外の知見です。外部の方のフラットな視点から見たら、既存事業の改善の余地や新規事業のタネになる切り口はまだまだ見つかるのではないでしょうか。ただ、全くの社外の人の意見を取り入れることは現実的に難しかったりするので、社内外両方を知っているアルムナイにご意見いただくことが効果的だと感じています。

アルムナイは東北電力の財産

ーーアルムナイネットワークを立ち上げた背景を教えてください。

千馬:「イノベーションは辺境で起こる」と言われているように、今までにない価値提供をするためには、既存事業とは異なる考え方・アプローチが必要になると考えています。

もちろん日常的に生じる業務をいかに改善していくかも大事ですが、当社とは場所も規模も事業も全く異なる領域で活躍している人材と繋がり刺激をもらうことで、既存事業とは全く異なる切り口の価値提供が生まれることを期待しています。

ーーこれまでは、アルムナイとの関係性はどのようなものだったのでしょうか。

千馬:手前味噌ですが、当社は東北の中で企業規模も大きく、ネームバリューもある会社です。それゆえに当社や東北に対する想いが強く、退職やアルムナイに対してネガティブな印象を持つ社員もいたのではないかと思います。

一方で、役職者の中にはアルムナイと個人的つながりを通じて、アルムナイ10数名との懇親会を実施するなど、自発的にアルムナイと繋がり続けようとする動きもありました。

ーー上位の役職者の方々が積極的にアルムナイの取り組みを牽引しているのでしょうか。

千馬:その者たちは新規事業を始めとする協業の観点からネットワーキングに積極的だったのだろうと思います。しかし、ただの採用プールではなく、当社の資産としてアルムナイを位置づけ、東北・新潟に貢献できるような双方向のネットワークを作ろうという想いを持った役員や社員がいることは事実です。

また、一度退職した後、上級の管理職として再入社して活躍している者もいます。こうした事例があったため、会社としてアルムナイと繋がり続けることの価値はよく理解していました。

そして今後は属人的な繋がりだけでなく、会社公認のアルムナイネットワークを通じて、アルムナイとの繋がりを会社の財産にしていきたいと考えています。

新しい人事制度で、よりチャレンジしやすい風土へ

ーー再入社するアルムナイに期待する役割は何でしょうか。

千馬:アルムナイには退職後に得た社外の知見を活用してくれることを期待しています。

例えば、当社を退職後、ガス会社で働いた経験があれば、「電気×ガス」という当社の中で希少性の高い人材ということになりますよね。既存社員に「電気×○○」のような掛け合わせのスキルをもった人間は少ないので、そうした人材のスキルやアイデアはスマート社会の実現のために必要になります。

ーー今の東北電力にはないスキルを持った人材の活躍に期待されているのですね。

千馬:その通りです。そして、当社はアルムナイに戻ってきていただく上で、存分にそのスキルを発揮いただける環境が準備できていると思います。

実際に2024年4月から新しい人事・賃金制度を運用しています。例えば、人事制度で言うと本人の希望で働く場所を限定できる「勤務地域限定コース」を新設したり、高度な専門知識・スキル・経験を有する従業員に対する「スキル加算手当」を導入するなど、一人一人ののキャリアプランに応えられるようにアップデートしています。評価・処遇制度も能力の発揮に応える賃金制度へ見直したり、賞与における評価額割合を拡大したりと、働きがいのある環境の実現のために大きく変化しています。

在籍当時よりも、働き方の選択肢が増えたり、ご自身のキャリアやスキルを活かしやすい組織になっていると思うので、こういった変化もアルムナイネットワークを通じて伝えていきたいと考えています。

ーー再入社は考えていないものの、コミュニティに参加してくださるアルムナイに対しては、どんな役割を期待していますか。

千馬:大前提として、再入社を考えていなくてもコミュニティへの参加は大歓迎です。そういった方には、他社との協業におけるパイプ役になってくれたら本当にうれしいです。

東北電力という社名を聞くと、堅苦しいイメージをもたれる方も多いかと思います。ですが実際は、新しい挑戦を歓迎する社風があり、組織や人事制度も大きく変化しています。そうしたアルムナイだから知る実状を現在所属されている会社に発信してくれることで協業がスムーズになると思います。

他にも、アルムナイ専門アプリ「Official-Alumni.com」のアンケート機能を使い、新規事業におけるアイデアの初期段階の検証もしてみたいです。例えば、当社から「地域も巻き込んでこんな事業アイデアを考えているのですが、率直にどう思いますか。」とヒアリングをしたり、アルムナイから「今私がやっている事業と東北電力でこんなコラボできないですかね?」と逆にご提案いただくなど、双方に壁打ちができるコミュニティになっていけるといいなと思います。

これは新規事業に限らず、従来から行ってきた電力供給事業などにおける課題に対しても有効だと考えています。

例えば、数多くある設備を巡視点検するといった作業は、長年人の労力を多く費やして行っておりますが、人口減少社会やテクノロジーの進展を前提にした際、もっと効率よく行う必要があるように思います。こういった既存事業の「当たり前」になっているアプローチに対しても、外の視点で見ると新しい突破口や、効率化のヒントが得られるのではないでしょうか。

共に東北・新潟を盛り上げられる関係性へ

ーーアルムナイネットワークの中で、今後やってみたいことはありますか。

千馬:まずは「コミュニケーションの頻度を増やすこと」に取り組みたいと考えています。というのも、デジタルコミュニケーションのメリットは時間や場所の制約がなく、頻繁にコミュニケーションを重ね、関係性を深められることです。

デジタルの場でコミュニケーションを重ねることで、リアルに会った時により深い話ができたり、楽しい体験にすることができるのではないでしょうか。

ーー仰る通りですね。この点はぜひ事務局を推進している佐藤さんと関さんにもお伺い出来ればと思います。佐藤さん、関さんはいかがでしょうか。

佐藤:意見交換するだけでも多くの気づきを得られると思っています。先日たまたまアルムナイと話す機会があったのですが、「社外からは東北電力はそう見ているのか」と意外に思ったことがいくつかありました。このような気づきはアルムナイ同士でも生まれると感じており、例えば、退職後に感じた苦労であるとか、社外で活きたスキルは何であるとか、アルムナイならではの共通していることはたくさんあると思っています。そういった会話が自己認識を改めたり、キャリアを考えたりするきっかけになれば嬉しいです。

関:私は在籍10年目となり、同期入社の中にもアルムナイとなった方は何名かいます。一社員の目線からすると、「退職してみてのリアルなキャリアの話」は聞いてみたいですね。転職が当たり前になっている今、正しく社外の情報を得られることには非常に価値があると思います。それに、人事の目線からしても、「東北電力で叶えられないことは何か」「何が変わったら戻りたいと思うか」などの率直なフィードバックは東北電力がより良い会社になるヒントになります。そのため、アルムナイのリアルな声を聞く機会をいつか作りたいです。

ーー最後に、アルムナイへメッセージをお願いします。

千馬:アルムナイの皆様は、当社を退職してから貴重な経験を積まれていると想像しています。東北電力として、新しいアルムナイとの関係性を作りたいと思ってこのコミュニティを発足したので、是非、私共の取り組みにお力を貸していただき、東北電力と一緒に新しい価値を生み出していただけると幸いです。また、東北電力として何か力になれることがあればお気軽にご相談ください。お互いが助け合って共に東北・新潟を盛り上げる関係性になれれば嬉しいです。

※こちらは過去、東北電力および東北電力ネットワークに在籍していた方専用のネットワークです。