マルホ株式会社がアルムナイネットワークを立ち上げました。
※こちらは過去、マルホに在籍していた方専用のネットワークです
同社は既存のカムバック制度のリニューアルに伴い、アルムナイネットワークを導入しました。なぜ制度を変えるだけでなく、アルムナイとの関係づくりに取り組むのでしょうか。
カムバック制度をリニューアルし、アルムナイネットワークを導入
——アルムナイネットワークを立ち上げた背景を教えてください。
上杉:一番の目的は新たな採用チャネルの創出です。
会社の規模や知名度などの当社が置かれている現状と、労働人口が減少していく世の中の流れを考えると、この先採用はどんどん難しくなっていくと思います。
そのような中でも、事業戦略を達成するために必要な人材をタイムリーに採用することが人事のミッション。そのためには採用チャネルを増やす必要があります。その一つとして、当社を退職した元社員に着目をするのは、人材の流動性が高まる時代において必然だと思います。
上杉:
この仕組みは一度当社で働いたことがある人たちが対象なので、即戦力としての活躍が期待できます。何より人柄がわかる分、安心して採用ができるメリットは大きい。
そうした背景から、当社にもともとあった「カムバック制度」というやむを得ない事情でご退職された方々に再入社いただく制度を「ウエルカムバック制度」としてリニューアルするかたちで進めました。
——従来のカムバック制度と、新しいウエルカムバック制度は何が違うのでしょうか。
上杉:カムバック制度では、介護など家庭の事情で実家に帰らなければいけなかったり、配偶者の転勤だったりと、働き続けたいけれど辞めざるを得ない人を対象にしていました。
一方、新しいウエルカムバック制度では、制度の対象を転職者にまで広げたのが大きな違いです。
——カムバック制度をリニューアルするにあたって、名称を変えて対象者を広げるだけでなく、同時にアルムナイネットワークをつくったのはなぜですか?
上杉:制度の対象を転職者にまで広げるのであればアルムナイネットワークもセットだろうと、当たり前のように考えていましたね。
同時に、退職者と会社の関係性自体を変えていかなければいけないという想いもありました。
——これまでの退職者との関係性について教えてください。
山科:退職によって関係性が悪くなることはなかったと思いますが、退職によって会社と元社員とのつながりは断たれてしまっていました。
私自身を振り返っても、仲が良い元同僚以外とのつながりは退職と同時になくなってしまっています。そのような現状に対して、もったいないと思う気持ちはありました。
寺田:個別のつながりはあっても、非公式の関係性ですから、そこから再入社やビジネス協業など、新しい何かは生まれにくかったと思います。
アルムナイネットワークを通してこうした現状を変えたいですし、これまで切れてしまっていた会社とアルムナイの関係性を、新たに構築していきたいです。
上杉:辞めていく人を見ていると、「マルホは嫌じゃないけれど、なんとなく働き続けるのは不安」と思っていたところに、機会があって他社に転職した方が多い印象です。
そういう人たちが一回外を見て、その上で「やっぱりマルホがいいな」と思うこともあるでしょう。それなら戻ってこられる環境を整えたいですし、アルムナイの皆さんから「またマルホで働きたい」と思ってもらえるような会社でありたいとも思います。
また、製薬業界は業界内で人が動くことが多いですから、そういう意味でアルムナイネットワークの仕組みは馴染みやすいとも思います。
——競合他社に転職した人に対して、裏切られたように感じてしまう企業もいると思います。その点についてはいかがですか?
上杉:実際に競合他社に引き抜かれた人も過去にはいますが、会社として「裏切られた」という感覚はないと思います。
むしろ人事としては、当社の環境が物足りなかったのかもしれないという、反省の方が強いですね。活躍してもらえる環境を用意できなかったことへの申し訳なさがあります。
山科:もちろん競合他社に行った方からのウエルカムバック制度への応募も大歓迎です。実際に外資系の製薬会社に転職し、再入社した人もいます。
会社とアルムナイは対等。アルムナイだから選考に有利なわけではない
——アルムナイネットワークを導入するまでの検討スケジュールについて教えてください。
上杉:まずは人事部内でメディアに掲載されたアルムナイネットワークに関する情報をシェアするなどしながら、4〜5カ月ほど掛けて骨子を作っていきました。
その後、経営層との会議で提案したところ、理解が得られ、直ちに承認されました。経営層にも人材の流動化への危機感はありましたし、もともとある制度のリニューアルでもあったので、比較的スムーズに進んだと思います。
製薬業界全体として再入社はよくある話ですし、当社でも実績がありましたので、少なくとも否定的な意見は出なかったですね。
——取り組みを進めるにあたって苦労したことはありますか?
山科:10月に制度の名称を変更し、アルムナイの皆さんにご案内をしていますが、改めてつながりがある方がほとんどいないことを痛感しています。それは課題ですね。案内の仕方は考えなければいけないと思っています。
あとは、ウエルカムバック制度の伝え方に難しさを感じています。
ウエルカムバックという言葉には「いつでも入社を歓迎している」というニュアンスがありますが、実際には再入社を希望する場合、キャリア採用の選考を受けていただきます。
誰もがいつでも当社に戻れる制度ではないので、そこはイメージとのギャップがあるのかもしれないと懸念しています。
上杉:あくまで会社とアルムナイは対等です。アルムナイだから選考に有利なわけではなく、同時期に応募があった通常のキャリア採用の候補者と比較をした上で、当社が求める人材の要件と照らし合わせて判断をすることになります。
他社で積んだ経験を当社に還元してほしい想いがありますので、「再入社してからどのような仕事ができるのか」が前提になるとは思いますね。
——お互いに選び、選ばれる関係性ということですね。
上杉:アルムナイの皆さんにはいろいろなキャリアの選択肢がある中の一つとして、マルホへの再入社を考えていただければと思いますし、当社もまたさまざまな採用候補者がいる中の一人として、再入社を希望してくれるアルムナイの皆さんと向き合いたいと思っています。
その機会を逃さないためにも、アルムナイネットワークを通じて普段からゆるくつながっておくことが、お互いにとってプラスに働くのではと考えています。
それぞれが心地良くつながれるネットワークにしたい
※こちらは過去、マルホに在籍していた方専用のネットワークです
——今後、アルムナイの皆さんとどのような関係性を築いていきたいですか?
寺田:長く、ゆるくつながりたいと思っています。退職したとしても、もう一度当社で働いたり一緒に協業をしたりと、再び交わるタイミングが来るかもしれません。そのタイミングをつかむためにも、まずは長くつながることが必要です。
とはいえ、頑張りすぎると大変じゃないですか。たまにネットワークを覗くくらいでも構いませんので、それぞれのペースに合わせて、心地良いつながり方をしてもらえればいいなと思います。
山科:「〜をすべき」ではなく、交流するのが楽しいからアルムナイネットワークに参加しようと思ってもらえる場にしたいです。当社に再入社する、しないに関わらず、仕事上の意見を聞いたり、育児の相談をしたりと、気軽に使っていただければと思います。
上杉:お互いがアルムナイネットワークをうまく活用できればいいですね。新たな採用チャネルの創出を目的に始めたものではありますが、絶対に戻ってきてほしいとは思っていません。転職先で充実した仕事をしているのであれば応援したいです。
将来的には再入社に限らず、当社が求める技術やサービスなどをネットワーク上で公開して、アルムナイの方々から「うちの会社のこの技術ならどう?」みたいなやりとりができると面白いのではとイメージしています。
——具体的にやりたいことはありますか?
山科:まずは、会社の最近の取り組みなどを発信したいですね。例えば当社では、社員が指定の組織・団体に寄付をしたら、同額を会社も寄付する仕組みがあります。
こういった取り組みが始まる前に辞めてしまった人もいると思いますので、当社の今をお伝えしていければと思います。
寺田:退職時にヒアリングをしていますが、辞めた後だからこそ本音が言える面もあると思っています。退職に至ったということは何かしら当社に改善すべき点があったと思うので、これからはアルムナイネットワークを通じて、それを見つけていきたいと考えています。
また、外の世界を経験したからこそわかるマルホの良さや改善点を教えていただく機会も、アルムナイネットワークができたことで増えるのではと期待しています。アルムナイの皆さんの意見も聞きながら、マルホをより良い会社にしていきたいですね。
アルムナイへのメッセージ
山科:一緒に楽しい場をつくっていきましょう。退職時は遠慮したり気後れしたりするような気持ちもあったと思いますが、今ならもう少し本音も言いやすいのかなと思います。ぜひ気兼ねなく参加していただけるとうれしいです。
寺田:まずは気軽に参加してほしいです。皆さんにはアルムナイネットワークをうまく利用してほしいですし、われわれも皆さんからいろいろなことを教えてもらいたいと思っています。長く持ちつ持たれつの関係で、それぞれにとって無理なく、このネットワークを有益な場にしていきましょう。
上杉:お互いにうまくアルムナイネットワークを使っていきましょう。何かを強制するようなものではありませんので、必要な時に利用してもらえればと思います。
とはいえ、つながりを持たなければ、機会もつかめません。そのために、ぜひゆるくつながっていただければうれしいです。