今回話を伺ったのは、ワンパーパス株式会社代表取締役の米澤智子さん。米澤さんは、新卒で株式会社横浜銀行(以下、横浜銀行)に入行後、債権管理や銀行全体の総務に関する企画業務に従事していました。
横浜銀行を退職後は、中小企業支援機関と投資型クラウドファンディング会社を経て、2021年に中小企業診断士として独立、2022年11月に現在の会社を立ち上げました。
横浜銀行とはアルムナイネットワークの登録をきっかけに再びつながりを持ち、現役行員のキャリア開発に繋がるコラボレーションが生まれました。コラボレーションのきっかけやその内容、米澤さんが期待する今後の横浜銀行やアルムナイとの繋がりについて話を聞きました。
※過去に株式会社横浜銀行、浜銀ファイナンス株式会社、浜銀TT証券株式会社、株式会社浜銀総合研究所に在籍していた方専用のネットワークです
本部でのプロジェクトがきっかけで中小企業診断士の道へ
——これまでの経歴を教えてください
大学卒業後、横浜銀行に新卒で入行して、配属先の相模大野支店で債権回収と創業融資を担当しました。債権回収は、返済のめどがつかない中小企業経営者のもとへ伺い、融資契約の変更手続きを進めるのが主な仕事です。創業融資では、新しく事業を始める企業に対して、事業立ち上げに必要な資金融資を行います。債権回収と創業融資はどちらも、当時総合職で配属された新入行員が経験していた業務の一つです。
その後本部に異動し、有人店舗やATMの店舗企画をする部署を経て、総務部門に配属になりました。株主総会の運営や災害対策に関する備蓄物資の配備など、幅広い業務に携わるようになりました。その中でも、中小企業診断士を目指す大きなきっかけとなったのが、テレビ会議システム導入プロジェクトです。
——テレビ会議システム導入プロジェクトはどういったプロジェクトだったのですか?
海外を含めた全営業店約200箇所にTVシステムを導入するという大規模なプロジェクトです。接続拠点の決定、設置場所や台数の選定、使用時の手順やルールの策定、有事に備えた接続訓練など、テレビ会議導入に必要な業務のほとんどを担当しました。予算や取引先業者の選定は上司が行いますが、私はプロジェクト管理や進行を任されていたこともあり、経営陣への報告と説明が必要な場面がありました。
経営会議で役員から「ROI(投資利益率)はどうなってるの?」と聞かれたとき、何も答えられなかったんです。経営陣の会話にまったくついていけず、「経営について知らないと、説明することさえできない」と気づきました。そこで、経営に関する幅広い勉強ができる中小企業診断士の資格を取ろうと思い、約1年間、勤務時間外の出勤前や退勤後、土日に勉強して中小企業診断士試験に合格、実務補習を経て2016年に診断士登録を行いました。
——そこから、中小企業診断士としての新たなキャリアがスタートしたのですね。
合格後、独立した中小企業診断士として活躍する方に会う機会が増え、「中⼩企業⽀援の現場に近い仕事をしたい、ゆくゆくは独立したい」と想うようになりました。そこで、まず中小企業支援の実務経験を積むべく、中小企業支援機関へ転職しました。
その後、2021年に中⼩企業診断⼠として独⽴し、現在は行政の創業支援施設で起業前後の方の経営支援を行っています。また、会社員時代の支援先に認知度向上に課題を抱える中小企業が多かったことから、自身が起業した会社(ワンパーパス株式会社)では、自社で広報人材を確保することが難しい、BtoB中小企業に向けた広報PR代行やコンサルティングなどを行っています。
2024年10月にPRTIMES公認プレスリリースエバンジェリストに認定いただいてからは、中小企業や行政に対するプレスリリースセミナーのお仕事も増え、プレスリリース発信文化を広める活動にも力を入れています。
広報業務はクライアント企業を始め、メディア関係者との調整が多く生じるので、横浜銀行で支店や本部各部と数多くの調整をした経験が、今まさに生きています。当時指導いただいた上司や先輩方には大変感謝しています。
アルムナイネットワークを通じて横浜銀行との協業が実現
——アルムナイとして、横浜銀行と協業を行っていると伺いました。具体的な協業の内容を教えていただけますか。
過去2回、横浜銀行の現役行員向けのセミナーや勉強会を実施しました。1つ目は、2024年4月に行った「行員向け中小企業診断士試験突破セミナー」です。一次試験に向けた過ごし方や最新の試験傾向と対策、銀行業務と試験勉強を両立する方法などについてお話させていただきました。
2つ目は2024年5月に行った「行員向け補助金基礎知識セミナー~ものづくり補助金編~」です。法人渉外に従事してから年数が浅い方や、役職者として若手行員の指導を行う行員向けに、中小製造業が設備投資等に活用する補助金の基礎知識について解説しました。
補助金の種類は数百以上あります。さらに、実施年度によって補助金の内容が変わったり、自治体によって申請要件が異なったりするなど制度設計が複雑で、補助金を活用するのは決して簡単ではありません。
補助金は後払いなので、金融機関には入金までの間を保つ「つなぎ融資」ニーズが発生します。銀行員が補助金の基礎や仕組みを正しく理解することで、取引先への事業計画策定支援や、渉外業務の提案活動にも活かすことができます。
——どのような経緯でセミナーや勉強会の実施に至ったのでしょうか。
もともと、中小企業診断士としての知識や経験を横浜銀行に何かしらの形で還元できれば、と思っていました。そんな中でアルムナイネットワークの運営事務局の方とお話する機会があり、想いやアイディアを伝え、今回の実施に至りました。想いが実現できてとても嬉しく思っています。
同じ文化を経験したアルムナイという立場だからこそ伝えられることがある
——実際に現役行員向けのセミナーや勉強会を実施してみていかがでしたか?
「行員向け中小企業診断士試験突破セミナー」には、部長クラスの行員やアルムナイの方も参加してくださり、中小企業診断士のニーズの高さを感じるのと同時に、資格取得に向けて真剣に取り組む姿が印象的でした。時代は違っても同じ環境で働いていた経験を持つアルムナイという立場だからこそ、共感できることや伝えられることがあると思っています。
——今後、アルムナイネットワークに期待することは?
アルムナイネットワークを通じて、新たなビジネス連携の可能性を探ることができればと考えています。というのも、弊社の広報RP事業について、ありがたいことに多くの企業からお声がけをいただいておりますが、私一人では対応しきれない状況です。アルムナイの皆様にもお力添えいただき、広報PRに関心がある方がもしいらっしゃれば、ビジネス連携につなげていけたら嬉しいなと思います。
※過去に株式会社横浜銀行、浜銀ファイナンス株式会社、浜銀TT証券株式会社、株式会社浜銀総合研究所に在籍していた方専用のネットワークです