進学塾『臨海セミナー』を運営する株式会社臨海は、2020年9月にアルムナイネットワーク『Rinkaiアルムナイ』を発足しました。
立ち上げから3年が経ち、「最近はアルムナイからの発信も増えてきた」という同社。これまでの取り組みを振り返っていただきました。
人事部 社員採用課 上席課長 小島 大介さん(写真中央右)
人事部 管理課 専門総合主任補佐 小野 咲也絵さん(写真中央左)
人事部 アルバイト採用課 平瀬 圭さん(写真右)
人事部 社員採用課 大池 雄一さん(写真左)
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臨海セミナーが退職者ネットワークを発足「“共育”できる、新たな居場所をつくりたい」
アルムナイから自発的なアクションが起こる理由
——2020年9月に『Rinkaiアルムナイ』ができて、約3年がたちました。これまでの主な取り組みについて教えてください。
小野:取り組みについては、「アルムナイの声を積極的に聞くこと」と「アルムナイの声を発信すること」の2つを心がけてきました。
アルムナイの皆さんの声を聞くことに関しては、個別のインタビューとオフ会が中心です。インタビューでは現在のお仕事や、臨海の経験がどう活きているかなどを聞かせていただき、記事にまとめてアルムナイネットワークで発信しています。
オフ会は、毎回5〜10名ほどの規模で開催しています。コロナ禍はオンラインでしたが、最近は対面でも行っています。直近では昨年末にクリスマス会としてオフ会を実施し、臨海の良いところ、改善した方がいいところなど、忌憚のない意見を聞かせていただきました。
——アルムナイの声の発信についてはいかがでしょう?
小野:アルムナイの方に就活生向けイベントへご登壇いただきました。2023年2月に行った学生向けの就活セミナーでは5名のアルムナイの方にご協力いただきましたね。
また、2023年夏にはアルムナイ主催のイベントも実施しています。現在の活動とも紐づけて、「教育の未来を考えるオンラインセミナー」と題して、教育について語り合っていただくイベントが行われました。有志のアルムナイが企画から登壇者への依頼、参加者募集、当日の資料準備まですべて行ってくださいました。アルムナイの皆さんがお互いに発信しあうなど、アルムナイが自発的に、アルムナイネットワークを交流の場として活用してくれたのはうれしかったですね。
実は、アルムナイ主催のイベントは、これまで事務局が開催したどのイベントよりも参加率が高かったんです。同じアルムナイの企画だからこそ、参加しやすかったのかもしれません。
平瀬:最近もアルムナイから、勤務先の人材募集に関する投稿がありました。その方はRinkaiアルムナイのつながりからすでに1名を採用しており、さらにもう1名募集をしたそうです。
他のアルムナイからも勤務先の人材募集の投稿があったり、ビジネスで新しくつながるチャンネルとして積極的にアルムナイネットワークを使っていただいているのはとてもうれしいことです。やはりかつて一緒に働いていたからこそ、信頼が置けるのでしょうね。
小野:先ほどのRinkaiアルムナイのつながりで採用されたアルムナイと募集したアルムナイに、接点は全くなかったそうです。年次も違いますし、在籍期間も被っていない。在籍時に接点がなかったアルムナイ同士が、このコミュニティで繋がれるのはすごいことだなと思います。
——アルムナイからの発信がないことに課題を感じている企業は少なくありません。Rinkaiアルムナイから自発的な発信があるのはなぜだと思いますか?
小野:アルムナイの発信に対して返信をする、いいねを押すなど、見ていることをきちんと示すためのアクションは必ず取るようにしてきました。
ただ、実際にアルムナイから発信が見られるようになったのはここ1年くらいです。思ったより時間がかかりましたね。
振り返ると、アルムナイの声を聞く活動から、徐々にアルムナイの声を発信してもらう活動へと主軸を移行していったことで、アルムナイ自身が「発信していいんだ」と思うようになったのかもしれません。
小島:あとは、2年ほど前に取り組みに積極的なアルムナイをサポーターとして任命したのも大きいと思います。
それまでアルムナイネットワークは「臨海のオフィシャルなもの」というイメージだったと思いますが、サポーター制度を導入したことで「アルムナイも自由に使っていいものなんだ」というメッセージを伝えられたように思います。
——前回の取材では、「最初にアルムナイネットワークに興味を持ったきっかけは再雇用」と聞きました。その点はいかがですか?
小島:結果は出始めています。ただ、再入社を希望する人が増えたというよりは、「戻りたいけど、どうしていいか分からない」という潜在層がアルムナイネットワークを用意したことで戻りやすくなった印象です。
小野:実際にアルムナイネットワークへ登録後に、ダイレクトメッセージで「戻りたいと思っている」と連絡をいただいたことで再入社に至った例もありますね。
戻ってきてくれた人たちは外部の視点で臨海を見ることができます。社内に様々な視点が増えることで新たな発想を得られるのを感じています。
中堅企業だからこそ、ほぼ全員のアルムナイがわかる
——臨海の従業員数は約1550名。アルムナイの中にも顔見知りの方は多いですか?
小島:そうですね。事務局は人事部門の4名が務めていますが、採用から退職までわれわれで全て対応しています。私は採用を担当していますが、人事部門が全ての選考を行っているので、ほぼ全員と接点がありますね。
小野:私は退職手続きを行っています。辞める人一人ひとりと話ができるのは中堅企業の強みだと思いますね。
大池:アルムナイの取り組みもやりやすいですよね。顔見知りだからこそインタビューや登壇の依頼も引き受けてもらいやすいと思いますし、思い出話で盛り上がることもできます。
——他社と比べて、アルムナイネットワークの雰囲気もカジュアルなのかもしれませんね。
小野:そもそも「退職者=裏切り者、会社を去っていく人」というイメージを払拭する施策の一つがアルムナイ制度ですので、退職しても変わらない関係性を築くことを意識しています。それが良い意味でのフランクさにつながっているかもしれないですね。
——約3年がたって、退職への考え方に変化を感じる瞬間はありますか?
小島:会社全体への意識共有はまだまだですが、人事部と人材育成部門においてはかなり変わったと思いますね。
平瀬:私は新卒採用を担当していますが、説明会や面接でアルムナイ制度の話をするようになりました。その結果、「アルムナイ制度がある」ことが学生の志望動機の一つになることも少なくありません。
退職で関係が途切れるのではなく、その先もアルムナイネットワークを通じてつながり、再雇用やアルムナイ同士の新たな交流が生じていることを具体例とともにお伝えすることで、臨海でファーストキャリアを築くメリットを学生に感じていただけているのを感じます。
採用、入社後の研修、退職後のアルムナイネットワークと、一気通貫してつながりが強く、人を大事にしている姿勢が伝わっていると思いますし、その点を臨海の魅力の一つと捉えてくれる人が思った以上に多いのを実感しています。
——どの企業も「人を大事にしている」と言いますが、アルムナイネットワークがあることがその裏付けにもなっているのですね。一方、新卒採用で退職の話をすることに抵抗がある企業も少なくないですが、その点についてはどう考えていますか?
平瀬:もちろん長く勤めていただきたい思いはありますが、人生100年時代と言われる今、教育、仕事、引退というステージにおいて、仕事の期間が長くなっています。
その期間を1社で勤めあげることもできるし、別の選択肢もある。どちらも選べることが、今の新卒採用ではプラスになると感じています。
「アルバイトとして戻る選択肢」は塾業界のメリット
※臨海で働いていた元社員限定のネットワークです
——これまでを振り返り、アルムナイネットワークを運営して良かったと感じることはありますか?
小野:アルムナイネットワークを通して、「外から臨海がどう見えているのか」を知る機会になっています。
例えばアルムナイの皆さんは「臨海で新卒として教育を受けられたのが大きかった」とセミナー登壇時などで話してくださることが多く、「臨海で受けた研修が良かったから、今の会社の新卒育成の参考にしたい」と相談をいただくこともあります。
当社では入社後1年近く、週1回の研修を受けてもらいます。これは当社では当たり前のことですが、外から見るとそこまでしっかり研修を行うのは珍しいようで、臨海の特徴なんだと気がつきました。もちろん育成に自信を持っていましたが、客観的にも良い制度なのだと再認識できました。
また、当社は民間教育機関ですから「どう生徒を増やすか」という営利的な要素も必要になります。臨海では教室ごとに集客や満足度向上の施策を考えますので、そういった経験が臨海卒業後に活きているという話も聞きますね。
小島:今後は集客のアイデアをアルムナイの皆さんからいただけるといいですよね。
小野:先日のクリスマス会でそういうお話も少し出ました。最近は四大生だけでなく、卒業後のキャリアを見越して専門性を得るために資格取得を考える学生も増えているので、そこへ対象を広げるのもいいのでは、といったアイデアを聞かせていただきました。
今後もさまざまな業種・職種で働いている皆さんから多様な意見が聞けるようなプラットフォームづくりをしたいと改めて思いました。
——塾業界ならではのメリットを感じることはありますか?
平瀬:私はアルバイト講師の採用も担当しているのですが、正社員で塾講師をしていたアルムナイの中には、アルバイトとして戻りたい人もいます。
本来、講師としてデビューするには必ず研修を受ける必要がありますが、アルムナイは即戦力。ライフスタイルが変わった時にアルバイト講師として、フレキシブルな働き方で戻る選択肢を用意できるのは、塾ならではの良さだと思います。
小島:校舎が500校以上と非常に多いので、辞めた時に在籍していた校舎以外で働けるのも塾業界の特性ですね。同じ場所に戻ることに対して、心理的な負担を感じる方もいるでしょうから。
あとは、アルムナイが顧客になるケースもあると思います。アルムナイのお子さんが塾に入る年齢になった時に臨海を選んでもらいやすいと思っています。
実現まで少し時間はかかるかもしれませんが、今後は「お子さんの授業料半額」という社員と同等の福利厚生をアルムナイにも提供できればと思っています。
Rinkaiアルムナイネットワークの今後の展望
——今後アルムナイの取り組みに関して、やりたいことがあれば教えてください。
大池:アルムナイの独立開業支援をしたいです。実際に独立開業したアルムナイから「臨海の教材を買いたい」というご相談をいただいたこともあります。会社は違えど、良い教育の輪を広げていって、アルムナイと一緒に教育業界全体をパワーアップできればいいなと思います。
平瀬:2つあります。1つ目は社内への周知を進めること。現状は退職時に初めてアルムナイネットワークの存在を知る人が多いですが、知っている状態で働くことでどのような変化が生じるのか気になっています。
2つ目は、アルムナイネットワークの登録対象をアルバイト講師まで拡大することです。現状は正社員のみを対象としていますが、アルバイトの方が圧倒的に人数が多いため、対象となれば広がりが出るのではと期待しています。
例えば大学1年生でアルバイトを始め、途中で辞めてから3年生になって「再び戻りたい」という連絡をいただくことも結構あるんです。そういった受け入れもアルムナイネットワークで仕組みを整備できればと思います。
小島:先ほどお伝えした福利厚生の他に、スポットでアルバイトができる仕組みが作れたらいいなと思っています。
講師が体調不良で急遽お休みになった場合、代講の講師が必要になりますが、「明日、授業の担当できる方いますか?」とアルムナイネットワークで募集をかけられたらいいなと。アルムナイの皆さんにとってもスポットで働き、対価が得られるのはメリットではないでしょうか。
小野:私は社員とアルムナイの交流の場を作りたいです。アルムナイと接点を持つのは現社員にとってもプラスになる部分が大きいと思っています。これまでのオフ会よりも大きなイベントをやれたらいいなと思います。
そうやって「退職してもつながれる」という認識をアルムナイと社員の双方に持ってもらえるようにしたいですね。
あとは、あらゆるアルムナイが参加しやすい環境を作りたいです。ネットワーク内で発信したり、イベントへ参加をしてくれるアルムナイはある程度固定されつつあります。登録したものの様子を見ている方も一定数いると思っています。
もちろん見て楽しむのも一つの利用の仕方ですが、もう少し交流を深めたいと思ってくださっている方のハードルをどう下げるか、考えていきたいです。
※臨海で働いていた元社員限定のネットワークです