2023年2月、進学塾『臨海セミナー』を運営する株式会社臨海が、学生向けの就活セミナーを開催しました。臨海の採用説明会ではなく、就職活動を控えた学生に向けたセミナーとして、まだ志望業界を決めきれていない学生を対象に企画されたイベントです。
特徴的なのは、メインプログラムが「アルムナイによるトークショー」であること。幅広い業界・職種で働く社会人の姿を見せるために、臨海を退職し、さまざまな分野で活躍するアルムナイ会員が登壇しました。
本記事ではトークショーの一部と、学生、アルムナイ、臨海人事部の皆さんの感想を紹介します。
>>臨海のアルムナイネットワーク発足の経緯はこちら
臨海セミナーが退職者ネットワークを発足「“共育”できる、新たな居場所をつくりたい」
トークショー「アルムナイの現在の仕事」
小野:新卒で臨海に入社し、退職後にさまざまな業界で活躍しているアルムナイの皆さんをゲストとしてお迎えしています。まずは臨海にいた当時のことと、現在のお仕事について教えてください。
(お名前は本人のご希望により一部 仮名使用)
北澤:臨海では5年間お世話になりました。
就活をしていた当時、なんとなく教育に関する仕事がしたい想いはあったものの、いきなり学校の教員になるのは違うような気がしていて。そこで、まずは塾講師として教育業界に身を置いてみようと思い、最初に内定が出た臨海に入社しました。
臨海を退職した後は、学校の教員になりました。転職後の5年間は担任を持っていましたが、今は主に学校経営の仕事をしています。私立の学校の人材開発室で、教員の採用や育成、労務管理を行うのが主な業務です。
これは塾も学校も同じですが、教育の質は人に依存します。人の質を高めるには、教員が自ら学び、成長できる環境や仕組みづくりが必要です。
現状、日本の多くの学校には教員を育成する仕組みがありませんが、まずは今の学校で仕組みを作り、それを他の学校に広めていきたいと思っています。
今井:私は臨海で小学3年生から中学3年生までの授業を担当していました。
臨海に入社する決め手となったのは、同期の存在です。会社を作るのは人だと思っていたので、2次、3次と選考を重ね、残っている就活生と話す中で、「こういう人たちと一緒に働きたい」という想いが芽生えました。
今はプロバスケットボールチームを運営する会社で、幼稚園児から高校生までの子どもたちを対象に、バスケットボールを教えています。週に1回通う、バスケットの塾みたいなイメージですね。
塾講師時代と同じように、自分が教えたことによって上手になったり、できなかったことができるようになったりと、子どもたちが笑顔になる瞬間に一番やりがいを感じます。
幾世橋:私は大学時代にアルバイトで塾講師をやっていて、ファーストキャリアに臨海を選び、小学3年生から中学3年生の生徒の指導をしていました。
仕事をしながら成長するにはある程度の会社規模が必要だと考えていたので、売上や合格実績で臨海が全国トップテン以内に入っていたことが入社の理由になりました。研修制度が整っていて、最短3年目で管理職を目指せる環境があることも魅力でしたね。
あとは、選考時の対応も大きかったです。面接の結果は電話やメールで簡単に伝えられることがほとんどでしたが、臨海は結果を伝えるための面談を設け、「ここが良かった」「ここはもっと頑張ろう」と、面と向かって説明してくれました。「成長できる環境だな」と素直に思えたことが最終的な入社の決め手です。
今は生命保険会社に転職し、生命保険の営業をしています。お客さま一人一人のライフプランや夢を伺い、必要なお金を一緒に考えながら保険の提案をしています。
佐藤(仮名):臨海では小学3年生から中学3年生の授業を3年担当した後、育成専門の部署である人材育成センターで2年間新卒採用と入社後の研修を担当しました。
私はもともと塾講師を希望していて、未経験であっても体系化された授業が行える、講師育成のカリキュラムが整っており、集団塾の講師として授業力を高められる環境があることから臨海を選びました。
また、臨海はやりたいことをやるということを良しとする社風で、実際に入社後もさまざまな企画をやらせてもらったのも良い経験でしたね。
臨海を退職後は人材企業に営業職として転職し、さまざまな業界の採用支援を行ったのち、今はシステム開発を行っている会社の人事として、システムエンジニアの新卒採用を担当しています。
自分が採用に関わった方が入社後に活躍している姿を見ると、やはりとてもうれしいですね。
神田:私は現在、臨海で働いています。そんな私がなぜアルムナイの皆さんと一緒に登壇しているかというと、一度臨海を退職し、再入社したからです。
臨海を辞めてからは、父が関わっている貿易会社で働いていました。その仕事をやってみたいという想いは幼い頃からあり、実は新卒で臨海に入った当初から、ある程度働いたら辞めるつもりでいました。
希望通り転職をしたものの、現実は厳しく、1年後には辞めたくなってしまったんですね。そこで約1年間オーストラリアに留学し、英語を学びつつ、現地の日本語学校でボランティアをしました。その際に、やはり自分は教育が好きで、この仕事が向いているのだと気付かされ、帰国後に臨海に戻ってきたという経緯です。
ちなみに、新卒で臨海を選んだ理由は、1次選考が筆記試験ではなく、いきなり模擬授業だったことが大きいです。この会社は学力で人を見るのではなく、人そのものを見るんだと思ったことが決め手でしたね。
臨海の経験がそれぞれの仕事に生きている
小野:臨海での経験は、今のお仕事にどのように生きていますか?
幾世橋:一つはプレゼン力です。集団授業で多くの人の前で話をしてきたわけですから、場数は圧倒的に多いですよね。
授業では子どもを相手にしていますが、保護者向けの説明会など、大人に向けて話をする機会もあります。資料作成も含めて、幅広い相手に対して分かりやすく説明する力は身に付いたと思います。
また、保険の営業はお客さまの人生に寄り添う仕事です。お話を伺う際の傾聴力も、臨海で多くの生徒や保護者と関わってきた中で培われたと思います。
今井:二つありまして、一つ目は社会人としてのマナーです。最初に入る会社でどれだけ教育をしてもらえるかは非常に重要です。その環境があると思ったことも臨海を選んだ理由の一つでしたが、イメージ通り学ばせてもらったと感じています。
二つ目は、子どもと保護者への対応の仕方です。今も仕事で接する相手は主に子どもと保護者ですので、そこはとても役立っていますね。子どもだけでなく、保護者と直接関わる機会があるのは教育業界ならではだと思います。
北澤:僕は教員なので、やはり授業ですね。一般的に、学校では4月1日に教材を受け取り、初回の授業を行うまでに1週間ほどしかありません。
その点、僕は臨海の経験があるので、授業の基本動作は身に付いています。授業の準備にかける時間を短縮できる状態で学校教員になったことは、初年度の勤務に非常に生きたと思います。
もし将来的に学校の教員になりたいのであれば、ファーストキャリアに塾を選ぶのはいいんじゃないかと思いますね。そこで授業の基礎を作ってから学校に行った方がスムーズだと思います。
佐藤(仮名):臨海での5年間は、生徒や保護者、学校の先生など、地域のいろいろな皆さんからお話を聞かせていただき、非常に勉強になりました。同時に、コミュニケーションスキルを高めることができたように思います。
あとは、マルチタスク能力ですね。私は塾講師、営業職、人事職と三つの職種を経験しましたが、どの仕事もコア業務以外の細かな業務が多くあります。
現在担当している新卒採用でも、全体を管理しながら学生さんにアピールをしたり、連絡を取ったりとさまざまなタスクを並行して行っています。どういうタイミングで、どの業務を、どう優先順位を付けてやっていくのか。その計画を立てるスキルは、授業だけでなく、保護者との面談やチラシ作り、各種企画など、臨海でさまざまな経験をさせていただいたことが役立っていると思います。
小野:神田さんは一度臨海を辞め、他の会社を見てから再び臨海に戻ってきました。外の世界を経験し、考え方に変化はありましたか?
神田:再び臨海に戻ってきた今思うのは、まず仕事があることの素晴らしさです。前職では自分でお客さまを探し、お客さんが求めるものを自らメーカーに問い合わせ、仕入れ先を見つけてこなければいけない。それは私にとって本当に難しいことでした。
一方、塾講師の仕事は、時間通りに授業が始まり、時間通りに終わります。生徒さんが来たり、来なかったりということも無く、授業が急に無くなってしまう等の心配はありません。とはいえ、同じことを繰り返すのではなく、そこには毎年異なるストーリーがあります。そこは大きな魅力であり、常に飽きずに仕事ができる楽しさがあると思います。
もう一つ、時間感覚が変わりましたね。前職は国内外の出張が多く、家にいる時間はほとんどありませんでした。会食も多く、遅くまでお客さまと飲むこともあったのですが、それがつらくなってしまったんです。
塾講師にも拘束時間が長そうといったイメージがあるかもしれませんが、出勤は遅めですし、出張もありません。実はそれほど拘束時間は長くなかったのだなというのは、外に出て初めて気付いたことでしたね。
満足度は100%!結果的に臨海に興味を持った学生も
トークショー後は学生参加型の自己分析コーナーを経て、アルムナイへの質疑応答タイム。「なぜ金融業界に転職したんですか?」「再入社するハードルはなかったですか?」「塾と学校の違いって?」など、率直な質問が多く寄せられ、予定時間を超えてしまいそうなほどの盛り上がりを見せました。
大学2年生から大学院生まで、約20名が集まりましたが、興味の無い業界だから等と集中力に欠ける学生は一人もおらず、参加者は熱心にメモをとっていました。
それを裏付けるように、終了後のアンケートでの満足度はなんと100%。学生にとって、多様な業種・職種の社会人の話を聞く貴重な機会になったようです。
「とても和やかな雰囲気でさまざまな業界のお話を聞くことができ、とても充実した時間になりました」
「塾講師を経験したさまざまな職種の人のお話を聞けるという内容が目新しかったです」
「正直興味がなかった業界のお話も聞けたので、貴重な時間だったと思います」
また、登壇したアルムナイからは次のような感想が寄せられました。アルムナイにとっても新鮮な機会となったようです。
「働いていた時代に育ててもらった恩返しをする機会になった」
「他の業界の話を聞きたかったし、多様な業界に興味がある学生と触れ合えてよかった」
「自分を省みる機会になった」
「教育業界以外に興味がある人へのアプローチの仕方を考える機会になった」
主催した臨海の人事部からは次のようなコメントが。
「企業ブランディングを目的としたアルムナイイベントを初めて実施できました。アルムナイネットワーク事務局の念願がかない、大変うれしく思っています。
まだ志望業界を絞れない学生が多いからこそ、教育業界に限定せず、さまざまな業界の話が一度に聞ける機会は学生の皆さんにとって貴重だったのだと思います。そういう機会が作れたのは、多様なジャンルで活躍するアルムナイの皆さんの存在があってこそ。
臨海で培った経験やスキルが次のキャリアでどのように生きているのか、具体的に伝えられたことにも価値があると思っています」
今回の就活セミナーを振り返り、人事部長の黒田さんはこう語りました。
「今回、実は、採用増・売上増など、会社にとって「直接的」なメリットを得るために企画を実施したわけではございません。
その中で1つ挙げるとしたら、これまでの「退職」という概念を変えていきたいという思いです。退職する人も、その周りの人も、会社も、退職を何となく「悪いこと」という認識があるように感じています。
これからの人材確保の上でこれらを突破することはとても大切なことだと考えています。
少しずつでも、そのイメージを変えていくことができれば、「長期的ビジョン」として会社の利益につながるのではと考えています。」
臨海への愛着はありつつも、あくまで外の人間であるアルムナイが忖度なく語る内容には、説得力と信頼性がありました。
今回は臨海の採用セミナーではなかったものの、「人や成長を大事にするという話を聞き、臨海の選考を受けてみたくなった」という学生の声も。
企業の退職者のその後のキャリアに関心がある学生は約9割という調査結果もありますが、実際に魅力的なアルムナイを就活生にアピールすることの可能性を感じるセミナーとなりました。