リリース初月に400名の登録数を突破。アルムナイへの価値提供に向き合い続けるパーソルキャリアのアルムナイネットワークとは。

2023年4月、転職支援や求人情報、アウトソーシングなどを手掛けるパーソルキャリア株式会社がアルムナイネットワークを発足しました。

パーソルキャリアでは、アルムナイネットワーク運営開始初月で登録者数400名を突破、その後わずか6か月で約10名の再雇用決定、約10名との業務委託契約を開始するなど、短期間にも関わらず具体的な成果が出ています。

その要因は何なのでしょうか。採用企画部の責任者である武藤さんと、アルムナイネットワーク運営を推進する砥上さんに聞きました。

パーソルキャリア株式会社
人事本部リクルーティング統括部採用企画部 武藤 梨恵さん
人事本部リクルーティング統括部採用企画部 砥上 貴恵さん

※こちらは過去、パーソルキャリア(インテリジェンス)に在籍していた方専用のネットワークです

アルムナイにとっての価値をいかに提供できるか

ーーアルムナイネットワークを導入した背景について教えてください。

武藤:2023年度にパーソルグループとして中期経営計画を発表しました。その中で事業成長のエンジンとして掲げているのが人的資本であり、一緒に働く仲間を増やすことが経営の重要テーマの一つです。

パーソルキャリア中期経営計画より引用(参照

武藤:これまで当社では通算4桁を超える中途採用を行っており、ありがたいことに採用自体はできています。ただ、今後の事業戦略を考えればさらなる採用の拡大が必要であり、新たな母集団チャネルの創出と採用ブランディングの強化をする必要があります。

そのための施策の一つが、アルムナイ採用です。これまでも退職者が再入社する事例はありましたが、会社として積極的に促進することを考えました。

その際、重要なのは「多くのアルムナイと接点を持つこと」と「アルムナイ自身のメリットを提供すること」です。再雇用を拡大するにはより多くのアルムナイと接点を持たなければなりませんが、アルムナイにメリットがなければ人は集まらず、スタートラインにも立てません。

そこで重視したのが、ただアルムナイを集めるのではなく「ネットワークにすること」です。最近はリファラル採用ツールでアルムナイ採用を行うケースもありますが、当社とアルムナイの1対1のコミュニケーションだけでは単なるタレントプールになってしまう懸念がありました。

一方、アルムナイネットワークを通じて当社とアルムナイ、あるいはアルムナイ同士のつながりをつくり、交流の場を設けることができれば、「多くのアルムナイと接点を持つこと」と「アルムナイ自身のメリットを提供すること」の両方をかなえることができます。

そもそもアルムナイネットワークによって実現できることは再雇用や業務委託のみならず、当社とアルムナイとのビジネス連携や人材開発など多岐にわたります。そういった再雇用以外の関わり方も想定し、アルムナイネットワークを導入することになりました。

砥上:実際にアルムナイネットワークを立ち上げる際も、「アルムナイにとってのメリットをいかに提供できるか」を意識していました。ネットワークの準備段階から退職予定者に対し、「どのような情報が得られるとうれしいか」といった、アルムナイニーズを把握するためのアンケートを実施したり、すでに退職した元社員にもディスカッションに協力いただきました。

結果、アルムナイ同士のつながりや交流を期待する声はやはり多く、他にも「業務委託の案件が知りたい」「再雇用の情報が欲しい」といったニーズも高いことがわかりました。

思った以上にポジティブな印象でしたが、人事に転身したり人材業界内で転職したりする人も多いので採用や業務委託の情報への関心が高い人が集まっているという当社ならではの特性も影響していると思います。

そういった特性もあり、アルムナイネットワークの取り組み自体に関心を持ってくださった方も一定数いましたね。プレスリリースを出してからは毎月のように「話を聞かせてほしい」という打ち合わせが入っており、アルムナイの取り組みへの関心の高さも感じています。

プレスリリース(参照

業務委託として「社外メンター」をアルムナイに依頼

ーー2023年4月にアルムナイネットワークの運営を開始し、具体的にはどのようなことに取り組んできましたか?

砥上:ネットワークに関心を持ち、親しんでいただくきっかけをつくるには、登録直後に何かしら仕掛けがあるといいのではと考え、まずは登録時のウェルカムアンケートを用意しました。

パーソルキャリアの入社年次、転職先の業界や職種、興味がある情報などを聞き、回答の一部をネットワーク内でシェアすることで、アルムナイの皆さんにもどのような人が登録しているのかわかるようにしています。

また、再雇用や業務委託に関する情報のニーズが高いことが事前調査でわかっていたので、ネットワークを立ち上げて早々にそれらの情報提供も行いました。

業務委託の案件は、業務の一部を依頼するものと、現社員のキャリア支援に関するものの大きく2種類があります。前者は営業資料の作成など具体的な業務をお任せするいわゆる業務委託で、後者のキャリア支援は社外メンターのようなイメージですね。

ーーアルムナイが現社員のメンターを担うのも、それを業務委託として有償で依頼することも、どちらも珍しいと思います。なぜそのような取り組みを行うことになったのでしょう?

砥上:現場の課題として、若手社員のフォローがあります。

業務を一人で回せるようになった頃に、漠然と「このままでいいのだろうか」とキャリアに悩み、その結果として離職につながってしまう、あるいはこれから組織を牽引するリーダーとして活躍を期待されていた社員が、社内異動で組織外に出てしまうなどの問題がありました。

もちろん社内でも上司が1on1などを通してフォローはしているものの、社外のことも知っている元社員から当社でキャリアを積むメリットを話してもらうことでより腹落ちしやすくなる効果もあるのではと考えたことから、アルムナイに社外メンターを依頼することになりました。

メンター自身が無理なくこの業務を継続いただくこと、また業務の品質維持を目的として、有償で業務をお願いしています。

ーーアルムナイからの反響はいかがでしたか?

砥上:「こんなに応募が来るのか」と驚きました。立ち上げ当初は積極的なアルムナイの割合が多いのもあると思いますが、皆さんポジティブに協力してくださっています。

アルムナイメンターに相談した社員からも、「このまま営業を続けていくことにモヤモヤしていたけど、社外の先輩と話したことで続けようと思えた」「マネジメントを志す覚悟ができた」「パーソルキャリアのことがより好きになった」など、ポジティブな声が届いていますね。

今のところ狙い通りの結果が出ており、非常に良い取り組みになっています。多様なアルムナイに協力いただくことで、さまざまな社員に合ったメンターをアサインできる体制をつくっていきたいですね。

わずか6カ月で「再雇用10名、業務委託10名」の要因

ーーアルムナイネットワーク運営開始からわずか6か月で、すでに10名の再雇用と、約10名との業務委託契約が決まっていると聞きました。具体的な成果が出ている要因は何だと思いますか? 

※こちらは過去、パーソルキャリア(インテリジェンス)に在籍していた方専用のネットワークです

武藤:再入社に関しては、アルムナイネットワーク経由のほか、社員からのリファラル採用や採用HPからの直接応募も含みます。

従来のリファラル採用制度はアルムナイの紹介にはインセンティブが発生しないルールでしたが、アルムナイネットワーク導入に伴い、その制限を撤廃したことで紹介数が増えているのだと思います。

それによって社員がアルムナイに連絡をするきっかけになりますし、再雇用にいたらなかったとしても、アルムナイネットワークに登録してもらえれば今後も接点が持てます。良い循環が生まれそうだと今後も期待しています。

砥上:私は当社に新卒入社しているので個人的につながりがあるアルムナイも多く、個別に連絡を取ってフィードバックをもらうなど、ご協力いただくことで動けているなと思います。

あとはサービス運営企業の担当者の方のサポートも助かっていますね。アルムナイの取り組みに関する先行事例は少なくノウハウが得にくい面もあり、四苦八苦していますが、当社に合った施策などを提案いただいています。

武藤:他社ではアルムナイネットワーク運営担当者の他業務の比率が高く、ネットワークの運用に割ける時間がなかなか取れないという話も耳にします。

一方、砥上はアルムナイネットワーク運営の業務比率が4〜5割。アルムナイからの問い合わせに即レスしたり、登録直後の熱が高いタイミングで情報発信をしたりと、タイムリーな運用ができているのも大きいと思います。

砥上:会社としてそれだけアルムナイネットワークを重視しているのであり、そこを任せていただいている以上はしっかり成果を出したいですね。

それに個人的にも、長くこの会社にいるからこそアルムナイの皆さんの存在の大きさを実感しています。外を経験した上で「またパーソルキャリアで働きたい」と戻ってきてくれる人がいることも、社外で活躍するアルムナイとして「パーソルキャリアで働いてよかった」と言い続けてくださる人がいることも、現社員にとって本当に誇らしいことです。

武藤:だからこそつながりを深めていきたいですし、そういうアルムナイを増やせれば、回り回って当社のブランディングにもつながると思っています。

アルムナイの皆さんは『人々に「はたらく」を自分のものにする力を』という当社のミッションに共感し、当社で働いた経験がある方たち。そんな皆さんとつながり続けることは、『「はたらく」を自分のものにする力』を持つ人を世の中に増やす上で非常に重要だと思っています。

アルムナイネットワークが「自社の強み」を実感する機会に

ーー今後予定している取り組みについて教えてください。

砥上:10月に対面で初のアルムナイ交流会を実施しました。交流会は大盛況で、アルムナイ同士やパーソルキャリア社員との繋がりを期待いただいている声が多かったので、今後もアルムナイ属性でセグメント分けした小規模な交流会や社員との座談会などのイベントも仕掛けていきたいですね。 

現状は1990年代から2020年代入社まで幅広いアルムナイの方にご登録いただいているので、多様な人がいる面白さがある一方、気軽に発信ができないと感じる人もいると思っています。

「こういう案件の相談に乗れる人はいませんか?」といった投稿が上がるなど、アルムナイからの自発的な動きは出始めていますが、そのハードルを下げる工夫はしていきたいです。アルムナイの交流会がその一つになればとも思っています。

他に、アルムナイを対象としたサーベイの実施も検討しています。アルムナイの皆さんは当社を離れたからこそ分かる「パーソルキャリアの良し悪し」をフラットに見ていただける存在ですので、年1回サーベイを行うことで就業環境の改善や離職防止に活かしたいと考えています。

ーーアルムナイネットワーク運営開始からこれまでを振り返り、どのような発見がありましたか?

武藤:当社の強みを再確認する機会になりました。当社を辞めた人たちが口をそろえて言うのは「人が最高」ということ。登録人数やネットワークへの反響を見て、改めてエンゲージメントが高い方が多かったのを感じています。

例えば、「アルムナイと継続してつながり続けることで、ビジネス協業を通じた新たな価値の創出のほか、優秀な人材の確保につなげていきます」というプレスリリースをご覧になったアルムナイの中には、「常に新しい経営アジェンダに飛び込むパーソルキャリアの姿勢を誇りに思っています」「それができる会社だと信じています」とコメントを寄せてくださった方がいました。

離れてからも当社の姿勢を感じ取っていただき、期待をしてもらえるのはありがたいこと。本当にうれしいですし、大きな励みになっています。

砥上:ウェルカムアンケートのフリーコメントや業務委託の応募動機に、「辞めてからもパーソルキャリアのことが大好きです」「ビジネスパーソンとしての基礎をつくってくれたパーソルキャリアに恩返しがしたい」といったメッセージを書いてくださる方も多いです。

また、アルムナイ交流会を検討中である旨をネットワークに投稿したところ、「運営に協力したい」と手を上げてくださった方もいました。

これは当社の強みであり、アルムナイがアルムナイネットワークに登録し、そういうポジティブな声が出てくる事実が、新規採用でも「良い会社」という説得力を持つのだろうと思います。

武藤:再雇用に関しても、ただ採用ができるだけでなく、さまざまな波及効果があるのを感じています。

企業の中には再雇用に対して、「転職先でうまくいかないから戻ってくる人」という印象を抱いている人もいるかもしれませんが、実際に戻ってきている方は真逆です。

外で活躍してるけれど、さらに成長するためにパーソルキャリアに戻り、離れている間に身に付けたスキルや経験を生かしたいという想いを持ってくださっている方がほとんど。だからこそ再雇用は企業ブランディングにもなるのだと思います。

ーー改めて、アルムナイの皆さんとどのような関係性を築いていきたいですか?

武藤:会社としてアルムナイネットワークを運営する以上、再雇用を増やすといった目標を掲げてはいますが、最も大切にしたいのは「アルムナイの皆さんとWin-Winな関係で居続けること」です。

アルムナイの皆さんには当社に力を貸してほしいですし、当社もまたアルムナイの皆さんにメリットを与え続けられる存在でありたい。それが当社のアルムナイネットワークで目指す姿です。