NECソリューションイノベータが目指す、アルムナイネットワークでの新たな価値創造「技術でつながる場所にしたい」

多岐にわたる領域でシステムインテグレーション事業を展開するNECソリューションイノベータが、2022年3月にアルムナイネットワークを立ち上げました。

「在籍中だけではなく、退職後にも技術を理解する者同士として価値があることに我々は目を向けるべき」と語るNECソリューションイノベータ。技術者集団が考える、アルムナイネットワークの価値について伺いました。

※こちらは過去に同社NECソリューションイノベータに在籍していた方専用のネットワークです

NECソリューションイノベータ株式会社
青木謙一さん/HR戦略室 タレントアクイジショングループ シニアマネージャー(写真中央)
金井美玲さん/HR戦略室 タレントアクイジショングループ プロフェッショナル(写真右)
鈴木智博さん/HR戦略室 タレントアクイジショングループ 主任(写真左)

再雇用をアルムナイネットワークの目的にしてはいけない

——これまでの退職者との関係性について教えてください

青木:当社は2014年にNECグループの全国各地にあるソフトウェア会社7社が統合し、その後さらに2社が合流してできた会社です。統合前の各社の状況全てを把握しているわけではありませんが、結婚や育児、配偶者転勤などで退職した方に対する再雇用制度はございましたが、少なくとも私が属していた会社では転職理由で退職した人の再雇用制度を明確に謳ったものはありませんでした。

転職理由で退職した人の再雇用に対する考え方は、各社で異なっていたと思います。キャリア採用で応募があった場合に再雇用をする会社もあれば、積極的に認めていない会社もあった筈です。

——統合後のNECソリューションイノベータとしては、どのような考え方だったのですか?

青木:統合直後は転職理由で退職した人の再雇用に対する考え方は定まっていませんでした。

統合前の9社は、それぞれが数百名〜数千名規模の会社で、それぞれの地域に根ざした会社であり、地元のコミュニティのような雰囲気もあったと思います。地域で採用され、メンバーシップ型雇用で育成をしていましたから、辞めることで属していた組織に対してわだかまりが残ってしまうケースも全くなかったとは言えません。

これに対して、統合後の当社は約1万3000人規模の会社になりました。9社の人材が集まる多様な組織でもありますから、退職者が戻ってきたとしても、元の部署に応募するとも限りませんので、もはや通常のキャリア採用者と近くなっています。

実際に統合以降に転職理由で退職した人の再雇用は増えており、「一度辞めた人が再びNECソリューションイノベータで一緒に働く」という考え方はそれなりに浸透しつつあったと思います。
そういった流れもあって、2020年3月に再雇用制度に「退職事由を問わず、当社退職者を対象とする」一文を加えて、再雇用制度の対象者を拡大しました。

NECソリューションイノベータプレスリリース

——アルムナイネットワークを始めるのも、そういう流れの中での判断だったのでしょうか。

金井:たしかにアルムナイネットワークを検討した最初のきっかけは再雇用でした。当社で学び、さらに成長しようと外に出た人たちが再び戻ってきてくれるのであれば、これほど魅力的な即戦力人材はいません。

ただ、2021年ごろから情報収集を進め、実際にアルムナイネットワークを運営する企業から話を聞くうちに、再雇用を目的にしてはいけないのだと気付きました。それでは企業側のメリットの押し付けになってしまう。企業とアルムナイの双方にとってのWin-Winな関係づくりを第一に考えなければいけないのだと、理解を改めました。

そこから「アルムナイ=再雇用」ではないと、社内の理解を得て、方向性を変えていくのは大変でしたね。目的を整理して、とにかく地道に伝え続けました。

事業内容の変化に伴い、アルムナイへの新たな期待が生じている

——どのようにアルムナイネットワークの目的を整理していったのですか?

金井:社内に向けては、「NECソリューションイノベータへの理解がありつつ、客観的に外からの視点で当社を見られる人材としてのアルムナイ」の重要性を伝えていきました。

当社の採用活動上の課題として、新卒入社者が多い故に、NECソリューションイノベータの魅力を客観的に候補者に伝えることが難しいということがあります。また、採用担当者の一部で転職経験が少ないことから、求職者目線に立つことが難しいという問題もありました。

金井:そのような課題を持つ中で、社内中を知る内部視点と客観的な外部視点の双方を持つアルムナイの存在は、キャリア採用を活性化する上で非常に重要なのではないか。そういった切り口で整理をしました。

青木:そもそもキャリア採用を強化している背景として、当社の事業内容の変化が挙げられます。

これまで当社は、メーカー系SIerとしてNECのハードウェアを使い、スクラッチ開発でお客様のシステムを構築してきました。そのために必要なNECグループの開発手法を新人の頃からしっかり育成してきましたから、外で学んだ人の力を生かせる場面は限られていました。

ところが今クラウドネイティブな構築に移行してきており、従来のスクラッチ開発技術だけでなく、クラウド上の部品を組み合わせた構築が一般的になってきている。そういった意味で外部の知見が必要になってきている。そういった意味で社内外のメンバーが一緒になってイノベーションを起こせるような、新たな組織文化をつくろうと考えています。

そういう中でキャリア採用を積極的に行っていますが、同時にアルムナイへの新たな期待が生じています。

青木:アルムナイは当社の経験を持ちながら、外部の知見を得ている人として、再入社する/しないに限らず、外部人材として事業連携をするなど、一緒にビジネスを行うことができると思っています。

また、退職にあたり感じていた課題のフィードバックをいただきたい想いもあります。アルムナイの皆さんから意見を募り、それを提言としてまとめて社内に共有するなどして、会社を良い方向に変えていきたい。そうやって当社が発展することは、アルムナイの皆さん自身のブランディングにもつながると考えています。

確かにアルムナイネットワークを検討した最初のきっかけは再雇用でしたが、戻ることだけがこの活動の目的ではありません。この活動によって当社が更に良い会社になれば採用はうまく回るでしょうし、アルムナイの皆さんとは再雇用に限らない、良い関係性を築いていきたいと思っています。

技術コミュニティのようなアルムナイネットワークを目指したい

——アルムナイネットワークの検討にあたり、懸念点などはありましたか?

金井:大きく二つありました。一つはリスク管理の問題。参加資格や条件の設定、コミュニティ内での不適切な発言等のトラブル対応、情報漏洩の防止など、整理する必要がありました。ただ、この点については過度に心配する必要はないと、他社の話を聞く中で考えが変わりましたね。

——二つ目についてはいかがでしょうか。

金井:ネットワークの活性化の問題です。実際に2022年3月から運営を始めていますが、それほど大きな動きはなく、静かな印象です他社の話を聞いてイメージしていた雰囲気とのギャップは感じています。

青木:ただ当社の場合、活発な交流がなくてもアルムナイネットワークは成立するのではと思っています。

というのも、当社に入社する人のほとんどは、IT技術が好きです。真面目で妥協しない、エンジニアとしてのプライドを持っている人たちが集まっています。その想いや特性は当社から離れても続くものですから、今後はアルムナイネットワークを「技術コミュニティ」のような場所にできれば、新たな価値を創造できるのではと思っています。

当社の事業範囲は多岐にわたりますので、アルムナイの皆さんの現在の会社での事業内容とも何かしら関わる部分があるはずです。当社のアルムナイネットワークがそれぞれの経験を持ち寄る場になれば、広い技術情報が得られる。それはアルムナイの皆さんにとっても大きなメリットですよね。


そうやって情報交換をする中、人づてで新たな仕事につながることも最近は増えています。先端技術であるほど狭い世界ですから、気軽に情報のやりとりができる関係性ができるといいなと思っています。

——具体的にはどのような取り組みを考えていますか?

金井:6月から定期的なコンテンツ配信を始めました。外には出ていない社内の様子を発信し続けることによって、アルムナイの皆さんに当社とのつながりを感じてもらえたらいいなと思っています。

また、今年度中を目処に、アルムナイの方々による社員向けの講演など、何かしらアルムナイの皆さんと社員が交流できるイベントを形にしたいです。

青木:例えば社内向けに行っている新技術に関する勉強会の内容など、アルムナイの皆さんにも提供できるといいですよね。当社で学んだ経験がある人たちですから、当社内で実施している教育との親和性も高いと思います。

そういう意味では、技術コミュニティとしてアルムナイネットワークを運営するためのコンテンツは、すでに社内にあると言えます。もちろん企業機密もありますが、うまくアルムナイネットワークにも展開できたらと構想しています。

「会社にいる間だけ」ではもったいない

(過去に同社に在籍していた方専用のネットワークです)

——改めて、NECソリューションイノベータとしてアルムナイとの関係構築に取り組む意義をどのように感じていますか?

金井:将来的には、新卒入社やキャリア入社、再雇用入社など、そういった垣根は世の中全体からなくなっていくと思います。 当社しても、こういった変化をいかに早く受け入れるかが重要だと考えています。

そういう意味で、アルムナイネットワークは従来の人事や採用の在り方を変える一歩だと思いますね。

今後ビジネスモデルや技術が変わろうとも、当社にとって人が重要であることは変わりません。人材の流動化が高まる中、退職後も細く長く関係性を継続させることは、当社のビジネスに直結する重要な考え方です。

青木:ふと思い出したのは、外国人採用を始めた頃の外国人との関係性です。日本人採用は無期雇用が前提で、ほぼ辞める人もいない中、外国人採用は退職率が高いことが課題でした。

それに対して、当時のグローバルの事業部長が「外国人社員が在籍している間、われわれがどれだけ影響を受けたのかというプラス面に注目すべきだ」と言っていて。その通りだなと思ったことを覚えています。


これからはさらに一言、「退職後にも技術を理解する者同士として価値があることに我々は目を向けるべき」と付け加えなければいけないと思います。

当時と比べて、当社だけでなく、日本社会全体の人材の流動性も高まりました。それなのに「会社にいる間だけ」ではもったいないですよね。もっと欲張って、ご退職された後も含めて関係性が広がるように変えていきたいです。

そんな現状において、中と外をつなぐアルムナイネットワークの可能性は大きいのではないでしょうか。当社は「イノベータ」を冠した会社ですから、アルムナイネットワークを通じた新たな価値創造の可能性を探っていきたいと考えています。

NECソリューションイノベータアルムナイへのメッセージ

左から青木さん、金井さん、鈴木さん

鈴木:まだ規模が小さいので発言しづらい人もいると思いますが、これから人数を増やし、それぞれが今の環境でやっていることを共有したり、相談したりと、アルムナイ同士もWin-Winな関係性を築けるネットワークにしたいと思っています。

当社はたとえ同期であっても何百人といますから、アルムナイネットワークを通じて初めて出会う人もいると思います。そういった出会いのきっかけの場になればいいですね。

実は私自身、今年4月にキャリア入社したばかりです。前職のつながりが支えになっているのを感じていますし、今の会社以外の居場所があることで、安心できたり、別の視野が得られたりするかなと思います。

せっかくのアルムナイネットワークなので、そんなに構えず、ゆるくつながりを持つような気持ちで参加していただけるとうれしいです。

金井:これまでお話しした通り、会社としての目的があってアルムナイネットワークをつくりましたが、アルムナイの皆さんにはむしろネットワークをうまく利用してほしいと思っています。

いろいろな経験や技術を持った人が集まる場所であり、事務局としても領域や年齢を超えた出会いの場をつくっていきたいと考えています。ぜひ今のご自身の成長につなげられる場所として、活用してください。

青木:「アルムナイネットワーク」や「技術コミュニティ」と言うと、やり取りが多くて面倒臭いとか、乗り遅れてしまったかもとか、そんな風に思う人もいるのではと思います。

でも、当社のアルムナイネットワークはそういう場ではありません。

月刊誌を一つ購読しているぐらいの感覚で、事務局から発信している当社の情報やメンバー同士のやり取りを見ているだけでも構いません。気軽に入ってもらって、細く長く退職した会社とのつながりを持ってもらえたらうれしいですね。

退職した会社は、ずっと自身の経歴の中にありますから、その会社の今を知れる場として、活用いただけたらと思います。