ゲームやライブコミュニティ、スポーツなど、多岐にわたる事業を展開する株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)。
卒業生とのつながりの世界「DeNAギャラクシー」を描き、起業への支援や再入社のオープンな受け入れなど、日々さまざまな形でアルムナイとのつながりを広げています。
ここでは、株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部の八森未央さんと、ご自身もDeNAの卒業生で、DeNA発のベンチャーキャピタルであるデライト・ベンチャーズ*で投資を行う加古静香︎さんにインタビュー。
「DeNAギャラクシー」が生まれた背景や、創業者でもある南場会長が抱く“人”への情熱についてなど、たっぷりとお話を伺いました。
*2019年7月に立ち上がった、DeNA発ベンチャーキャピタル。DeNAのリソースを活用しつつ、日本から世界で活躍するスタートアップ・起業家へ投資、支援を行う。
星座のようにつながりながら“Delight”を届ける「DeNAギャラクシー」
─ DeNAの目指す世界観として浸透している「DeNAギャラクシー」。まずはこの言葉が生まれた背景や、そこに込められた想いなどをお聞かせください。
加古:DeNAはもともと社員の独立・起業が多い文化にありましたが、会長の南場自身、そういったOB・OGたちといつまでもつながりを持っていたい。そして、外の世界での活躍を応援し続けていきたい、という思いを強く持っていました。
それはかねてより、南場の「ザクロ経営」という言葉によって語られています。
ザクロをひっくり返すと、中に入っているたくさんの粒が外へ飛び出すように、DeNAで育った人材やその才能をオープンにして、それぞれが外へ出ていくことも奨励をする。「事業リーダー」「スペシャリスト」と並んで「独立・起業」というキャリアパスも用意し、社員がそれを選択したときにも積極的に支援していこう、というスタンスです。
そして、そんな「ザクロ経営」への思いが礎となって生まれたのが「DeNAギャラクシー」です。当社の持つさまざまな事業と卒業生たち、それぞれを星に見立て、星と星がつながってまるで星座のようになる…。そうやって、私たちDeNAと卒業生も含めたさまざまな人材とでつながりながら、日本の社会に“Delight(喜び)”を届けていきたい。そんな願いが込められ誕生しました。
─ 社外のOBOGも含め“人的資本”である、というお考えなのですね。この 「DeNAギャラクシー」について、社内の反響はどのようなものでしたか?
八森:そもそものカルチャーとして起業する人が多かったので、そこはスムーズに受け入れられた印象です。また「Delightの総和を最大化していこう」と日々南場からも発信を続けているので、その浸透はより図られているのではないでしょうか。
加古:また南場には、いわゆる“出戻り”に対しても温かく迎え入れる気持ちがあるんですよね。たとえば、退職して新しいフィールドへ出てみるも思うようにいかなかったり、修業を積んだうえでの再チャレンジを望んだりする人は決して少なくありません。そういった方たちも含めてみんなが仲間。助け合いたいし、戻ってきてくれればうれしいし…という思いなんです。
実際に私自身も、とある交流会で南場から直接「出戻り歓迎だよ!」と声をかけられたことがきっかけでデライト・ベンチャーズにジョインすることになりました。
─ アルムナイに「また戻りたい」と思わせるDeNAの魅力は、どのようなところだと感じていますか?
加古:一人ひとりの主体性がきちんと認められ、裁量を持って働くことができるところではないでしょうか。たとえば別の部署に何か仕事をお願いしたいとき、会社によっては上長を通さなければ許可が下りないようなこともありますが、当社は「なぜ必要なのか?」と目的がしっかりと共有されれば、メンバー間で進めることができます。このように、現場の自走力が圧倒的に強いんですよね。
よく「打席が多い」と言いますが、“永久ベンチャー”として失敗も含めいろいろな経験を重ねている会社なので、それによって新しい挑戦への自信をつけている人も多いのだと思います。
卒業もカムバックも奨励しながら一人ひとりがハッピーになれる舞台を
─ アルムナイとのつながりを大切にされてきたなか、2022年に「DeNA ALUMNI(アラムナイ)」を立ち上げられました。ここであらためてネットワーク化した背景はどのようなものだったのでしょうか?
加古:もともと有志によるSNSグループがあり、デライト・ベンチャーズからの投資の機会なども含め、アルムナイとのつながり・交流を育んでいました。
そこでの活動のひとつとして、アルムナイをゲストに招きトークセッションをする「DeNA Galaxy Night」というオンラインイベントを始めたのですが、このイベントを定期的に継続するうえで、アルムナイとのとつながりをより広げていきたい、となったんです。そこでDeNAとデライト・ベンチャーズの共催で「DeNA ALUMNI(アラムナイ)」が誕生しました。
コミュニケーションツールのSlackを使って、個別でのやり取りやいろいろな告知などもできるように。もちろん「DeNA Galaxy Night」も継続中で、ここには現役社員、そして南場も必ず参加しています。
─ 現役社員を巻き込んだ施策においては、退職のフックが生まれるのでは?といった懸念もよく聞かれますが、そのあたりはいかがですか?
八森:「DeNAギャラクシー」が世界観として浸透しているからこそ、そういった懸念はないですね。仮に退職者が出てもそれは“流出”ではなく“循環”であり、Delightの総和はこうして高まっていくものだと思っています。なかにはアルムナイが起業した会社に転職するメンバーもいて、同じ釜の飯を食べた仲間がまた別の形でチャレンジをしようとしていることに、むしろお祝いムードです。みんなで応援しよう!というスタンスに変わりはありません。
─ それぞれの挑戦を認めていて“いつでも仲間”というマインドなのですね。
加古:そうですね。「一人ひとりの舞台を作りたい」と常々口にしている南場は、ひさしぶりに会うと必ず「最近どう?元気?人生楽しい?」と声をかけてくれるんです。
それぞれがハッピーであってほしい。そしてその人にとってのハッピーがここではなく次の舞台なのであれば、それは応援するよ!というスタンスなんですね。
それだけに、当然DeNAのなかで良い舞台を作らなければという気持ちも強いのですが、出ていくことも戻ってくることも奨励しながら「オープンにつながっていこうよ」と。そんなマインドで間口を広げています。
─ かつての仲間がカムバックしたときの社内のムードも、とても温かそうですね。
加古:それはもう「ナイストライ!」という感じですね。たとえば、独立したもののうまくいかずにここへ戻ってきたとしても、とてもリスクの高い“起業”というものに挑戦したこと自体がすばらしいことです。私たちにとって、失敗は減点じゃなく加点。そこで得られた経験でレベルアップしている、という考え方ですね。
八森:実際そういった方々が再入社後に活躍する姿を何度も目にしてきました。いろいろと経験したうえで、うちへ戻ってきて来てくれてありがとうと、そんな気持ちでいっぱいになります。
アルムナイはDeNAのアンバサダー。つながり、発展をこれからも
─ 「DeNA ALUMNI」の発足からまもなく丸2年。この2年間でどのような交流が図られてきましたか?
加古:たとえばイベント告知や人材紹介をはじめ、それぞれの好きなことで自由にチャンネルを作ったり、南場も参加する「大人のピアノチャンネル」なるものができたりと、その交流は本当にさまざまです。
八森:現在Slackの登録者数は700名以上。まだ一堂に会する機会はないのですが、今後はそういったイベントも開催したいと思っています。
─ 最後に、今後アルムナイと一緒に取り組んでいきたいことがあればお聞かせください。
加古:周年祭のような定期的なイベントや、起業したりスタートアップに転職したりしたアルムナイを中心に、ビジネスカンファレンスのようなものが開催できたらおもしろそうだな、と思っています。
あとは、デライト・ベンチャーズの動きとして投資先やアルムナイが活躍しているスタートアップへ人材を紹介していくような機会は、より広げていければと。「次はどんな仕事をしようかな」と思ったときに、ここへ来たら次のチャンスが広がる…。そんな場にしていけたら良いですね。
八森:アルムナイのなかにはDeNAを卒業したことを誇りに思い、さまざまなところでその思いを語ってくれる方も多く、まさにそれは当社のアンバサダー。そんな大切な仲間とこれからも「DeNAギャラクシー」としてつながり続け、互いに発展していきたいです。