トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、2022年3月にアルムナイネットワークの活動を始めました。
今では500名以上のメンバーが参加するまでに成長したトヨタのアルムナイネットワーク。その成長の背後には、人事部門の若手有志で構成された運営事務局の存在がありました。(※トヨタでは各事業部に人事機能があり、横の連携を取っている組織体制となっています。アルムナイ事務局も、通常業務では全く別の部門に所属しているメンバーで構成されています)
今回は、事務局メンバーである種林 萌子さん、石田 大知さん、河野 祐梨奈さん、大西 遼祐さんの4名に、アルムナイネットワークへの想いや今後の展望についてお話を伺いました。
※こちらは過去にトヨタ自動車に在籍していた方専用のネットワークです
目次
- 若手の有志メンバーが事務局メンバーに立候補したワケ
- アルムナイ設立の背景とこれまでの活動
- トヨタで働いた経験は、1つの財産に
- アルムナイとともに、「幸せの量産」を実現したい
<事務局メンバー>※2025年1月インタビュー時点の情報です

種林さん(写真左上)
医療系コンサルタントからキャリアチェンジし、2023年7月に入社。入社後は、生産本部人事室にて技能系社員の個別人事を担当。2025年1月より上郷工場と下山工場を担当。
石田さん(写真右上)
2019年に入社し、 高岡工場にて要員管理を担当。現在はパワートレーン統括部で、技術系社員の個別人事や採用などを担当。
河野さん(写真左下)
2022年4月に新卒入社。以後2年間、カスタマーファースト統括部にて新卒採用を主に担当。2024年1月より、個別人事業務を担当しながら、新卒採用活動のサポートを行う。
大西さん(写真右下)
2024年4月に新卒入社。本社人材開発部で事務系の新卒採用を担当。選考や採用イベントへの登壇、インターンシップの運営に携わる。
若手の有志が事務局メンバーに立候補したワケ
――トヨタのアルムナイネットワークは人事の有志メンバーで構成されていますよね。立ち上げ当初からメンバーも世代交代をしつつ、運営をされていらっしゃいます。まずは皆さんが事務局に参加されたきっかけを教えてください。
種林:ある時技術員の同僚から、現在の仕事に不満はないものの「自分の技術は外の世界でも通用するのか」という悩みがあると聞きました。私はキャリア入社なのでトヨタを他社と比べられて良さや強みについての納得感がありますが、実際に働いている方の中には、不安や自信の無さのようなものを抱えている方もいるということがとても意外でした。そんなとき、アルムナイ活動の一環として、アルムナイの方と現役社員が話すお悩み相談のような取り組みをしていると聞く機会がありました。外の世界を知るアルムナイとトヨタの現役社員が交流することで、トヨタで働く人にとっての自信につながるのではないかと考え、そのサポートをしたいと思い2023年の11月に参加しました。
石田:私は育休開けの2024年の1月からアルムナイネットワークに携わっています。種林と同じく、社員にトヨタの外を見てほしいという思いに加えて、新卒からずっとトヨタで働いてきた自分自身も、事務局の活動を通して、外の世界を見る機会が得られるのではないかと思い参加しました。
また、若手主導で組織の垣根を超えて一緒に取り組めるのも大きかったですね。トヨタはカンパニー制のため、組織を横断してプロジェクトを進める機会は貴重ですし、純粋に楽しそうだなと感じました。
河野:私は2024年の11月から参加させていただいています。参加した理由は2つあります。1つは、退職した同期がアルムナイコミュニティに参加したことです。同期の話を聞いて、アルムナイの方にとって他の退職者の活躍やトヨタの現況はすごく興味深い情報なんだと知りました。人事をしている私だからこそ、同年代や若手の現役社員やアルムナイの方がより活躍するための情報提供やサポートができるかもしれないと思いました。
もう1つは、この取り組みが自分自身の成長につながると考えたからです。同じ人事職であっても違うエリアや部署で仕事をしている仲間や、トヨタの外で活躍するアルムナイの方と接することで、異なる価値観や考え方に触れる機会になると思い立候補しました。
大西:私の場合は、学生時代にアルムナイに興味を持っていたことがきっかけです。卒業論文でスペシャリスト人材に特化したリテンションマネジメントをテーマに執筆し、その中でアルムナイネットワークの可能性についても取り上げました。ジョブ型雇用が一般的である米国で活発に行われているアルムナイネットワークの取り組みが、日本の雇用環境の中でどれだけ通用するのかという点に関心がありました。
入社後にトヨタのアルムナイネットワークの活動を知り、トヨタほどの会社でどのくらいアルムナイネットワークが活用されているのかという興味や、再雇用だけに留まらない社外人的資本としての活用に関心があったことに加え、直属の先輩である李さん(編集注:2024年8月まで事務局メンバー)がアルムナイネットワークの事務局をされていたご縁もあり、立候補しました。
トヨタアルムナイ設立の背景とこれまでの活動
――あらためてトヨタアルムナイネットワークの立ち上げの経緯はどのようなものだったのでしょうか?
種林:トヨタアルムナイネットワークのスタートは2021年にさかのぼります。
人事の若手メンバーを中心とした全社の人事に関するプロジェクトが発足し、モビリティカンパニーの実現に向けた「外の世界との関わり方」の施策の一つとしてあがったのが「アルムナイ」の取り組みです。2021年10月にアルムナイネットワークの立ち上げを決定、翌年3月に小規模での活動をスタートして、試行錯誤を重ねてきました。
正直なところ、最初は社内でもこの取り組みが「遠心力」として作用してしまうのではないかなど、さまざまな声がありましたが「これは将来に向けた種まきです」と立ち上げ時の事務局メンバーが根気強く説明し、必要性を理解していただきながら活動を続けてきました。
大きな転機となったのが、2023年7月のメディア公開です。このことをきっかけに参加メンバーが大きく増え、現在では500名ほどの方々にご参加いただくコミュニティに成長しました。
――これまではどのような活動をされてきたのでしょうか?
石田:多くの方々からアドバイスをいただきながら、アルムナイの方々へのヒアリングやインタビュー、交流会などさまざまな取り組みを推進しています。2023年11月には初めて、オフラインでの交流会を開催しました。来月(2025年2月)には事業開発本部とアルムナイの皆さんとのオフラインイベントも予定しています。
また、2024年からは退職体験を改善するためのオフボーディングの取り組みも開始し、退職者との関係構築に向けた仕組み作りをはじめています。退職者へのアンケートや面談によって退職理由を深堀ることで、退職者の声を組織に還元していきたいと考えています。
トヨタで働いた経験は、1つの財産に
――これまでの活動を振り返って、特に印象に残っている点を教えてください。
石田:現在計画している事業開発本部とアルムナイの交流イベントです。どういったフローで関係部署と調整をするのかなど、あらゆる点を試行錯誤しながら準備を進めてきました。大変でしたが、当日をすごく楽しみにしています。
また、退職者アンケートを職場環境の改善につなげるために、従来活用していたサーベイと同じように人事部内で共有できるように可視化しました。初めての取り組みだったので、ビジュアルの部分など細かい点まで事務局メンバーと相談しながらつくりました。大変なこともありますが、みんなで話し合いながら主体的に活動できるのは、トヨタのアルムナイ事務局のすごく良いところだと思います。
種林:私は、アルムナイの方々と交流を重ねて行く中で、トヨタのことを好きでいてくれる方、トヨタは良い会社だと言ってくださる方が本当に多いことに驚きました。
現役社員としてとても嬉しく思っています。ただ同時に、それでもさまざまな理由で退職を選ぶ方がいるという現実もあります。前向きに退職される方もいらっしゃる一方で、働き方や様々な事情で折り合いがつかずに退職をされる方が一定数いらっしゃることも見えてきました。「トヨタは好きでも退職されてしまう」と、もどかしく感じている部分もあって、もう少しそれぞれに寄り添うことができるようになるとトヨタも変わっていくのではないかと感じています。
――事務局での活動は、ご自身のキャリアには何か影響はありましたか?
石田:退職についての考えが大きく変わりました。
以前は退職が最後の選択肢だと考えていましたが、外の世界も見たうえでトヨタを選んでもらえる環境をつくりたいと思うようになりました。外の世界を知ったうえで働く場所を選ぶことで、やりがいを感じていただけるのではないかと思っています。また、自分自身ももっと外を見る経験や機会が必要だなと感じています。
種林:視野が大きく広がりました。人事の業務では技能系の社員に関わっているのですが、事務局の活動を通してアルムナイや事務職、技術職の方とも接する機会が増えたためです。また、アルムナイの活躍を目の当たりにして、トヨタで働いた経験は1つの財産になると感じています。キャリアチェンジを前向きに捉え、新しい挑戦をするという時代の流れを感じられる場所に携われていることを嬉しく思います。
アルムナイとともに「幸せの量産」を実現したい
――今後アルムナイネットワークでチャレンジしたいことを教えてください。
種林:アルムナイと現役社員の交流をもっと増やしたいです。そのために社内でのアルムナイネットワークの認知度向上にも力を入れていきます。
石田:トヨタでの経験を活かして活躍するアルムナイの方々を、採用活動などでも積極的に発信していきたいです。退職がネガティブなものではないという認識を広げ、現役社員やこれからトヨタで働きたいと考えている方にも良い影響を与えることができると思います。
河野:アルムナイの方々が持つ知見を、より良いトヨタづくりに活かしていきたいです。外からの新しい風を取り入れることで、トヨタが掲げるミッションである「幸せの量産」の実現につながると考えています。
大西:事業連携の強化が目標です。アルムナイの方々は、トヨタのことをよく理解したうえで、外の世界を知っています。ライトな情報交換や協業の機会をさらに増やし、より豊かなネットワークを築けるよう取り組みます。
――最後にアルムナイの皆様へメッセージをお願いします!
大西:アルムナイの皆様、ネットワークへのご参加ありがとうございます。より良い事業連携・情報交換の場となるよう、周りの方々やお知り合いのアルムナイの方にもぜひこの取り組みを広めていただければ幸いです!
河野:アルムナイの方々とトヨタの社員をつなぐ架け橋となれるよう、今後もサポートさせていただきます。
種林:トヨタとの共通言語を持ち、外の世界も知るアルムナイの皆様は、現役のトヨタ社員にとって外の世界を知る大切な“窓”のような存在だと思っています。これからもあたたかく見守っていただけると嬉しいです。
石田:いつもご協力ありがとうございます。一生、OneTeamでお願いします!
※こちらは過去にトヨタ自動車に在籍していた方専用のネットワークです