円満退職につながる“在籍中”の行動「大切なのは辞め方だけじゃない」【私の退職体験記.7】

連載「私の退職体験記」
みんなの会社の辞め方を深掘り!円満退職できた人、悔いの残る辞め方をした人……。いろんな退職体験談から「よりいい会社の辞め方」のヒントを見つけましょう!
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連載7回目に登場するのは、老舗の大手メーカーに新卒入社した中山太一さん(仮名)。

営業として5年間働いたのち、円満退職。今でもかつての同僚と交流があり、転職先のサービスを古巣企業に営業するなど、良好な関係が続いています。

「納得いく退職の仕方をするのに大切なのは、辞め方だけじゃない」と振り返る中山さん。その理由とは?

「退職体験記」連載7回目
中山太一さん(仮名)
新卒入社した老舗の大手メーカーで営業として勤務。5年間ほど勤務した後、退職。複数社を経て、現在はIT系スタートアップ企業に勤務

退職のきっかけと退職までのスケジュール

——まずは退職体験をお話いただく老舗の大手メーカーでどのような仕事をしていたのか、教えてください。

工場向けに、部品のルート営業をしていました。

——退職のきっかけは何だったのでしょう?

きっかけとなったのは、「ここでの営業は自分には違うかもしれない」と思ったことと、会社に限界を感じたことです。

営業に関して言うと、もっと頭を使って周りを説得できるような仕事をしたくて。私がやっていた営業は、顧客の工場を回って現場の方々と仲良くなって発注をいただくスタイル。「新卒入社から管理職になるまで約20年かかる。ということは、この仕事をあと15年やるのか……」と入社5年目のときに思ってしまいました。

後者の会社に限界を感じた点でいうと、私は会社の仕組みや仕事のやり方などにいろいろと意見していたのですが、「もう少し偉くなってから」と言われてしまって。

実は入社3年目の頃に一度「辞めます」と切り出したことがあるのですが、そのときは「もっと自分が実績を出せば、若手であっても会社を動かせるかもしれない」と思って踏みとどまったんです。でも、結局は実績を出しても変わらなかった。それで、5年目のときに退職しました。

——退職を切り出してから辞めるまでのスケジュールを教えてください。

あまり覚えていないのですが、半年くらいはかかったと思います。転職先が決まる前に営業所長である上司に退職を切り出し、その後に支社長と次長、人事と面談をしました。

——退職を切り出したときの上司の反応はどうでしたか?

「いつ辞めるの?」という感じで、特に驚いた様子はありませんでした。

——なぜそのような反応だったのだと思いますか?

定年まで勤めることを前提に入社したわけではなく、いつか辞めることも視野に入れて入社をしていました。よく会社について上司を含めさまざまな方に提言をするような社員だったので、上司としても「やっぱりな」という感じだったのだと思います。

一方で、普段そんなにコミュニケーションをとる機会のなかった支社長や人事からは、面談でいろいろと質問いただきました。

ちょうど若い世代が辞めることが続いていたので、「なんで辞めるのか」「会社として何がだめだったか」など聞いてくださり、私も思っていたことを伝えた上で辞めることができました。当時の会社の対応は、とてもありがたかったですね。

退職を振り返って思うよかった点、反省点

——今振り返って、納得のいく辞め方はできましたか? 

はい、納得のいく辞め方はできたと思います。会社に対して思うことはあったものの、正直に退職理由を伝えることができましたし、私の想いに耳を傾けていただいたことで、言いたいことを言い切ることができました。

——お話いただいた辞め方をして、特によかったと思うことはありますか?

引き継ぎをしっかりできたことは良かったですね。1カ月ほど引き継ぎ期間があったので、担当していたお客さまには直接ごあいさつをすることができました。

——反対に、後悔していることは?

他部署の方に、退職を伝えるのが辞める直前になってしまったことです。会社の決まり上、引き継ぎの必要がある同じ部署のメンバーを除き、他部署に対して退職をオープンにするのが遅く、最終出社日当日のメールでの報告になってしまいました。

私は仕事上で他部署の方とやりとりすることも多かったですし、早めに言いたかったのですが……。退職メールを送ると多くの人から電話をいただき、最終日の夕方はずっと電話をしていました(笑)

送別会も開いていただき、嬉しかったですね。

これから退職する人へのアドバイス

——辞めてから7年ほどたちますが、今は古巣企業と関わりはありますか?

退職後もいくつかの会社に勤務したのですが、その中の一つの会社のサービスを、古巣企業に営業する機会がありました。残念ながら、導入には至りませんでしたが。

また、知人へお祝いするときのプレゼントには前職の商品を購入しています。やっぱり前職のことは好きですし、感謝しているので。

あとは当時の同僚と今でもつながっていて、年に1回は飲みに行ったり、連絡がきたり。所長とは毎年年賀状のやりとりをするなど、ゆるくつながっています。

——お話いただいた退職体験を踏まえて、もしも次にまた退職をすることがあったら生かしたいことはありますか?

この体験の後も何度か退職は経験していますが、毎回ここまで納得のいく退職ができていたかどうかは正直分かりません。でも、やっぱり大事なのは辞め方だけじゃなくて、会社や関わる人とちゃんと向き合って、在職中に関係を作っておくことだと思います。

退職に至る以前にしっかり上司や同僚、お客さまと向き合ってきたからこそ、退職を決めたときも「なんで?」とはならなかったんだと思います。

——最後に、これから会社を辞めようとしている人に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします!

繰り返しになりますが、在籍中にちゃんと会社や仕事で関わる人たちと向き合うこと。

とんでもないブラック企業も中にはあるので、向き合えないほどつらい状況なのであれば逃げたらいい。でも、まだ向き合える余地があって、社内に話せる人がいるのであれば、きちんと向き合って話した上で辞めた方がいいと思います。

そうすることで、最終的に辞めると決めたとしても「できることはやった」と自分が納得できる辞め方になるんじゃないかと思います。

円満退職のポイント

  1. 自分なりに「やりきった」と思えるまで、在職中に会社や仕事で関わる人たちと向き合うこと
  2. 同時に、その人たちとの関係をしっかりつくっておくこと

取材・文/築山 芙弓