今の自分があるのはサントリーのおかげ。起業後に感じた「人間力の重要性」

2008年にサントリーへ入社し、2018年に起業のために退職したアルムナイの堀尾さんにお話を伺いました。
サントリー在籍時に学んだことがどう起業後に活きているのか。
そして現在サントリーのメンバーとどのような関わりを持ち、今後どのようなビジョンを持っているのかを語っていただきました。

サントリー入社後、起業を決意させた「課題解決の本質」

‐まず初めに、堀尾さんの経歴を教えてください。

2008年にサントリーへ入社し、北海道支社で1年半家庭用量販店を担当しました。
その後、業務用の外食企業の担当となり、札幌の卸店や酒販店、飲食店へサントリー商品の提案を行いました。主に外食チェーンの新規開拓部門で経験を積み、さらにその後首都圏担当として横浜エリアで同様に営業をしました。

‐そもそもなぜ、1社目にサントリーを選んだのでしょうか?

私は業務用営業がやりたいという思いがありサントリーへ入社しました。

私は「外食には喜怒哀楽全てのシーンがある」と考えています。
嬉しい時に仲間と盛り上がったり、悲しんだ時に誰かに相談したりなど、単なる食事の場ではなくシーンを作る空間こそが外食の魅力だと思っています。

実は、私はお酒が全く飲めないのですがこの想いを就活の軸として構えていました。

‐飲食業界に対する想いのもと、起業を決意したときのことを聞かせて下さい。

当時、20代前半そこらの若造が一国一城の主人である飲食企業の社長と密に接点を持てることは、とても良い環境でした。商品を売るというよりかは、社長と話すことが好きで色々な接点を持っていましたが、最終的には、サントリーの営業マンとして商品を販売し会社に貢献することがミッションです。

もっと広い視野で見た時に真に顧客のためとなる提案は他にもあるのでないかと思うこともしばしばありました。飲食店の本質的な課題解決という視点から見た時に、独立してサービスを提供した方がお客様のためになると思ったことが起業を決意した理由です。

日本が誇る外食産業が、このまま舐められてはいけない

‐退職後、起業してからのお話を聞かせてください。

現在創業5年目となる株式会社トリプルスリーという企業を経営しています。

「日本の外食産業に革新を」というミッションのもと、クライアントの90%が外食企業です。サントリー時代に担当していた5~30店舗規模の地場チェーンを成長させる方法と向き合い、中小規模の外食企業へ人財領域のI Tサービスを提供しています。

‐中小規模の外食企業に対して、具体的にはどのようなサービスを展開していますか?

TRIPLE PAGEという、オウンドメディアリクルーティング支援サービスを展開しています。よく見かける求人広告にお金を払って採用をするのではなく、自社の魅力を自社のページで伝え、企業そのものに人財が集まるような仕組み作っています。

前提として、ストレートに言うと日本の外食企業は”舐められている”と私は感じています。世界規模で見ても日本の外食はレベルが高いにもかからず、就職の際に人気がなかったり、給料が低かったりすることも事実です。

日本が誇る産業なのに世間からはまだまだ舐められている、この常識を根底から覆すために、まずは外食企業で働く「人財」にフォーカスして事業を展開しました。

‐人財を軸にしたビジネス以外に、何か今後展開する予定のサービスはありますか?

起業したからには、業界にインパクトを与えるだけの力を持ちたいという意志があります。そのために、外食企業の人財領域においては採用から入社、定着までカバーできるソリューションを開発中です。

現在私も、外食企業に対してアルムナイとの関わり方について提案しており、魅力のある企業に人が集まる流れを作ろうとしています。

‐堀尾さんもアルムナイを提案しているんですね。アルムナイで解決できること以外に、どのような課題が外食企業に残っていますか?

外食企業では非正規雇用も含めると入社3カ月以内に退職する人の割合がかなり高く、これが常識として浸透しています。私はそもそもこの常識から変えていく必要があると思い、人材の定着を促進するために研修用の動画マニュアルだったり、教育システムも開発しています。

最終的には「外食企業の人財に関する悩みは、トリプルスリーに相談すれば良いよね。」そう思ってもらえるポジションにしたいと思っています。

サントリーに入社して芽生えた「業界を根本から変える」決意

‐外食企業に対するその熱烈な想いは、どのタイミングで形成されたのでしょうか。

サントリーでのキャリアの後半辺りからだと思います。
最初のうちは自分の仕事に必死でしたが、後半5年ほどは余裕も出てきました。

そこで単なる酒類営業ではなく、ビジネスや業界全体を見渡してお客様と話すことも増えてきました。サントリーでは「お酒を売るのは売上を作るのではなく、文化を作ること」という認識が浸透しています。私はこのマインドセットに共感しており、今でもこのマインドでクライアントと関わっています。

‐それほどまで、起業した後もサントリーで学んだことが活かされているのですね?

活かされていると思います。現在、サントリー様と連携・協業してお付き合いさせていただいている企業が弊社クライアントの8割を超えており、全エリアのセールスと連携し企業の開拓を行ったり、全国で説明会を行ったりと、今でもサントリーのメンバーとは密に繋がっています。

‐8割がサントリー関連は多いですね。なぜサントリーと今のような関係が築けたのですか?

もともとサントリーのメンバー同士は絆が強いと思います。
私が独立当初持っていた武器は、サントリーで培った営業力だけでした。そのため自社プロダクトを作れるようになるまでの間、外食企業のためになる他社のプロダクトを代理店として販売していました。

その時に、サントリーのメンバーから「この企業困っているけど、なにか良いソリューションない?」と相談を受けることがあり、それに応え続けた結果、徐々に現在の自社プロダクトへ発展していった感じです。

‐では、サントリー時代の経験で、今一番活かされていると思うことは何でしょうか?

一番大きいのは営業力ですね。

創業から今に至るまで、20以上のプロダクトを販売してきましたが、正直サントリーの営業と比べるとそこまで難しいとは思いません。

サントリーの時は、すでに他メーカーのビールを使っている企業からサントリーのビールに切り替えていただく提案をしていました。すでに契約しているメーカーをひっくり返す、こんなに難しい営業は他に無いと思います。

結局商品だけではなく、顧客と深く繋がりを持つ人間力や信頼関係が大切になってくるため、そのあたりのスキルが現在最も活きています。
サントリーのメンバーは愛社精神が強く「自分たちの商品なら売れる」と信じて営業をしているため、営業として”売る力”はサントリーでの経験があってこそだと感じますね。

圧倒的愛社精神と、その裏にある組織力の必要性

‐サントリーを退職し、外から見たサントリーの魅力とは何だと思いますか?

先ほど少し話した通り、やはり愛社精神と人ですね。自分の会社もサントリーのように愛社精神を育めるような環境と、それを持った人が活躍できるような会社にしたいと思っています。

‐では一方で、サントリーを離れてみて改めて気づいた気になるところは何でしょうか。

組織が大きく、マネジメント経験を積むまで時間がかかる点でしょうか。

私は33歳までサントリーに在籍し、プレイヤーをしていましたが、外の世界に出てみると私の歳だとほとんどの大手企業ではマネジメントを経験しています。

自分はマネジメントスキルを身につける前に退職したなと感じました。

‐マネジメントが重要だと気づき、どうキャッチアップしましたか?

コミュニケーションやリーダーシップに関する知識をインプットし、資格を取得しました。また共に起業した副社長が、もともと70名規模の支社長としてマネジメントしていた経験があったため、マネジメントの型を教えてもらっています。

ただ裏を返すと、サントリーはひとりひとりの営業力があるからこそ、早期にマネジメントを行う必要がなかったのかもしれませんね。

同じマインドを持つ人同士、繋がったときの絶大な力を発揮する

‐アルムナイとしてサントリーと良好な関係を築いている堀尾さんからみて、今後ほかのアルムナイとどのような取り組みを行いたいですか?

情報交換や繋がりを作れれば良いなと思います。これはサントリーの特徴ですが、退職した後もサントリー魂が強く残っている人が多い気がします。

‐ビジネス的に見ても、人脈を広げることが重要ということでしょうか?

うーん、そのあたりは難しいですね。
私としては、あまりビジネス面だけでは考えていません。ビジネス面で繋がりを持つと、お客様という立場になるため、感覚的になんともいえない部分を感じます。

ただ実際にアルムナイで起業したサントリー同期の古荘さん(株式会社GiFT)と協力した際は爆発力を感じました。もともとサントリーで培ったマインドを共通で持っているため、いざビジネスを展開するとなると、発揮できる力は凄まじいです。

‐たしかにその際のスピード感は早そうですね。では、今後アルムナイネットワークにどのような機能があればよりよいと思いますか?

メンバーの情報をもっと知りたいですね。
DMを送るにしても、簡易的なプロフィールだけではまだ躊躇してしまうこともあります。事前に人となりが分かれば、より接点を持ちやすいと思います。

‐最後に現役サントリアンへメッセージをお願いします。

私はサントリーで働き、みなさんと一緒に酒文化をつくってきたことに誇りを持っています。中でも、業務用という世界で社内外の皆様とたくさん関わり、成長させていただいたことは人生において大きな財産だと思っています。今後もサントリーと共に外食産業のステージアップに貢献していきたいと思いますので引き続きよろしくお願いします。

‐本日は貴重なお話ありがとうございました。