2023年5月、SMBC日興証券株式会社がアルムナイネットワークをオープンしました。
この取り組みはアルムナイだけにとどまらず、現役社員、そして社会全体に対する同社のメッセージだといいます。
今回はキャリア観からアルムナイコミュニティの具体的な活用方法までお話いただきました。
※こちらは過去、SMBC日興証券に在籍していた方専用のネットワークです
社内一丸で、アルムナイとの関係を変えていく
——アルムナイネットワークを立ち上げた背景を教えてください。
林 克哉:一番の目的は当社退職者の再雇用です。企業カルチャーを変革していく人材を育成・確保することを目的に、従来の延長線上にはない新しい人事施策の検討を続けておりましたが、その中で、今まで社内になかった経験や新しい発想を引き出せる人材の候補として、アルムナイに注目するようになりました。
社会全体のデジタル化の浸透や、証券業務における専門性の高まりを受け、当社でも多様な人材の確保がいっそう重要となっています。その中で、別のフィールドで様々な経験を積んだアルムナイに再び当社で活躍してもらうことに期待しています。
元々、当社には多様なバックグラウンドをもつ社員が集まっていますし、組織にも様々なルーツや歴史があります。多様性のある雰囲気ができあがっており、アルムナイの再雇用を受け入れる素地はあると感じています。
——以前から多様なバックグラウンドを持つ人を受け入れる社風があり、自然な流れでアルムナイの再入社を促す試みが始まったのですね。
須藤:当社に再入社というケースはこれまでもなかったわけではないんです。ただ、再入社が制度化されておらず、退職者に認知されていなかった。今回のネットワーク立ち上げを機に、当社としてアルムナイの方を受け入れたいという前向きなメッセージを打ち出すことができればと考えています。
——これまでの退職者との関係性について教えてください。
早田:これまでは、退職者と会社が直接かかわりを持つケースはほとんどありませんでした。そのため、退職を機に関係が途切れてしまうことも多々ありました。
制度としては、2014年にウェルカムバック制度を創設し、育児や介護、配偶者の転勤といった家庭の事情によりやむを得ず退職された方に対して、正社員として再入社いただけるようになりました。ただ、ある種セーフティネットのような趣旨の制度ですから、対象となる退職理由が限られており、活用が限定的だったのも事実です。
一方で、他社に転職した方にお話を聞くと、「日興っていい会社だった」「人が良かった」と言ってくださる方もいます。アルムナイの方の中には当社への良いイメージを持ってくださっている方がおり、そういう方とぜひとも繋がりを築いていきたいと考えています。
——アルムナイに対する取り組みは、社内にも浸透させていきたいお考えですか。
林 慧:そうですね。ウェルカムバック制度は今までどおりセーフティネットとして活かしつつ、アルムナイとの関係については、より一層会社側から働きかけていくものだと考えています。
アルムナイのネットワーク化自体は人事が行う施策ですが、退職者は一緒に働いていた現場の同僚との関係が続いていくことが多いと思います。そのため、社内で一丸となってアルムナイへの取り組みを進めていくことが重要ですので、この取り組みの意義をきちんと発信し、認知してもらいたいですね。
最近、毎日のようにどこかの会社がアルムナイ制度を導入したというニュースが流れてくるようになりましたが、当社でも取り組みをスタートするにあたり、流行りのものに乗っかって始めたということではなく、どのような意義があるかを理解してもらえるよう、丁寧にコミュニケーションを取っていきたいです。
当社の強みって何だろう、と成長の原点に立ち返ったときに、「社内に多様な人がいること」というのも昔から脈々と続いてきた大事な魅力の一つだと思うのです。「人の繋がり」を大事にしていくという観点で、アルムナイの取り組みは当社にフィットする施策です。
——このアルムナイへの取り組みは、御社の戦略の中でどのように位置づけられるでしょうか。
須藤:従来、人事施策の範囲は「採用から退職まで」でした。その中で社員エンゲージメント向上や評価制度、報酬や異動のあり方を整えてきましたが、退職した後の話は今までスコープから外れていたのです。しかし昨今、より長期的なキャリア形成について社員に自律的に考えてもらうことが重要となってきました。
近年は社員のキャリアデザイン支援に力を入れており、社内公募制度などに自ら手を挙げて参加する社員が増えています。社内の枠を飛び越えて自分の可能性を広げていく人が出てくるのは、ある意味自然なことなのかもしれません。それを無理に引き留めてしまうと可能性を潰してしまうかもしれず、かといって簡単に関係を切ってしまうのも違う。そうなると、辞めた後も会社と社員が繋がりを持ち、心の拠りどころや出発点、故郷のような存在になれると良いのかなと思うんです。
他方、我々が施策として行うにあたり、会社にとってのメリットも考える必要があります。社員が退職した後のキャリアについて、我々のビジネスにとってもプラスとなる部分を考えると、アルムナイが経験や新しい視野をもって再入社してくれること、再入社とならずとも協業という形で関わりを持つことに期待をしています。
さらに視野を広げると、アルムナイが当社で得た知見を生かして別の場で活躍してくれることは社会全体にとってプラスですし、それが当社にもプラスの影響を及ぼすと考えています。そのような観点でも、従来の施策の延長ではない、新しい前向きな人事施策のひとつの柱になると考えています。
人とのつながりを大事にする価値観を、アルムナイに、社員に伝えたい
——今後アルムナイとどのような関係を築いていきたいか、また、どのようなネットワークを作っていきたいか、展望をお聞かせください。
早田:退職された方にも改めて当社のことを意識していただき、緩やかに繋がっていきたいですね。アルムナイと会社の双方にwin-winな関係を目指したいです。
当社はスローガンとして「いっしょに、明日(あした)のこと。」を掲げています。このスローガンを、今後はアルムナイの皆さんとも一緒に実現していきたいと思っています。一緒に話して一緒に未来を共有していきたいです。
会社と社員の関係は一期一会のご縁だと思っています。いままではそのご縁が退職によって途切れてしまうことが多かったのですが、今回のアルムナイネットワーク化をきっかけに、退職後の方とのご縁も大切にしたいと思っています。
須藤:アルムナイとの関係を築くこと自体が大切な取り組みですが、この取り組みは今いる社員へのメッセージでもあります。在籍している社員に対しても、当社が社員を大切に思っていること、「今後たとえあなたが退職しても、それで関係が終わるわけではないですよ」というメッセージを伝えられれば嬉しいです。
——アルムナイだけでなく、現役社員も対象に、会社としてメッセージを発信されていくのですね。
須藤:当社には創業以来大切にしている価値観の中に、「共存共栄」というものがあります。「共存共栄」はまさに人と人の繫がりを大切にということですが、退職した社員との繫がりを作るということは、この価値観が基盤になっている取り組みですね。
また、「健全な資本市場の発展を、豊かな人生・社会の実現につなげる」というのが我々の社会的使命です。とても壮大なミッションを掲げているのですが、これは社員だけで頑張るのではなく、退職した方も含め、様々な人と関わる中で達成していくものだと考えています。
——今後はアルムナイネットワークの中でどういった発信をされる予定ですか。
林 慧:まずは、改めてSMBC日興証券のことを思い出してもらう、当社の現状を知ってもらうことが大事だと思っています。定期的に私たちが今取り組んでいることについて情報発信をしていきたいですね。
足場が固まったら、アルムナイの方から現役社員に対して発信して頂くなど、相互のコミュニケーションを作っていきたいです。アルムナイの声を聞くことで社員はSMBC日興証券の客観的な姿を知ることができますし、それが刺激となり、アイデアの種が生まれるような機会をどんどん作れるといいですね。
——昔の日興証券さんしか知らない方々に対して今を知ってもらえるのは面白そうですよね。会社から発信をすることで、アルムナイの方と相互にコミュニケ―ションを取れる場となるのを期待しています。
アルムナイへのメッセージ
早田:アルムナイの方の中には、退職をしたことで会社に対して後ろめたい気持ちを持っている方もいらっしゃると思います。一方で、社内の現場レベルでは、「(ネットワーク立ち上げのニュースを見て)登録してくれたらいいね」と楽しみにお待ちしている状況です。ですから、先ずは前向きにご登録いただければ幸いです。
林 克哉:会社としてはこの取り組みに大きな想いを込めており、社会に対して責任を果たしていくという大きな枠組みの中で制度を捉えています。ぜひお一人お一人にご協力いただき、ネットワークを魅力的な場にしていきたいと思うので、よろしくお願いします。まずは気楽に参加していただきたいです。
須藤:辞めた後もやっぱり仲間は仲間なので、同じ価値観を共有できると思うんですよね。また繋がり続けることで、互いに刺激や気付きを得ることができ、その結果として社会全体に少しでもプラスの影響があれば嬉しいですね。
ネットワーク設立の目的などをここまでお話ししましたが、会社もアルムナイもメリットばかり考えず、まずは懐かしいな、緩やかに繋がっていようという、人と人との繫がりを大切にしていければと思います。
※こちらは過去、SMBC日興証券に在籍していた方専用のネットワークです