滋賀県をアルムナイと盛り上げる。滋賀銀行頭取が語る「地方銀行」がアルムナイに取り組む価値

株式会社滋賀銀行
取締役頭取 久保田真也さん(写真左)
人事部  山田大介さん(写真右)

滋賀県において預金・貸出金ともに高いシェアを誇る滋賀銀行は、これまで地域住民から大きな信頼を得て、滋賀県の発展に寄与してきました。

一方で、人口減少、地域経済の縮小、働き方や価値観の多様化、デジタル化の進展といった時代の変化の中で、従来の金融仲介業としての役割から進化する必要があると滋賀銀行は言います。

滋賀銀行では、今年4月に「『三方よし』で地域を幸せにする」というパーパス(存在意義)が新たに制定され、第8次中期経営計画では、基本戦略の1つに「ヒューマンファースト(人的資本の最大化)」という項目が掲げられています。

今回は、この「人的資本」という観点から、滋賀銀行が具体的にどのような変革を行っているのか、また、アルムナイネットワークを発足した背景や人的資本を最大化させる人事戦略について、久保田真也頭取にお話を伺いました。

※過去に株式会社滋賀銀行に在籍していた方専用のネットワークです

地方銀行として、地域と次世代のためにアルムナイとつながる

——アルムナイネットワークを立ち上げた背景について教えてください。

今回アルムナイに取り組むにあたって、中期経営計画の「人的資本の最大化」という基本方針が大きく関係しています。

人口減少や人口構成の変化、 働き方や価値観の多様化など、社会全体から個人レベルに至るまで、大きく変化していく中で、お客さまのニーズも多様化、複雑化しています。そのような状況に対応できる組織であるためには、アルムナイを含めた、多様な社外人材とのつながりが重要だと考えています。

私自身、この外部環境の変化、特に労働観については大きく変わってきていると肌で感じています。

当行では職員から退職の申出があった際、人事部との面談機会を設けていますが、後からそのやりとりを聞いて「何かが噛み合っていない」と感じることが多々ありました。従来の価値観に準じた形式的な退職理由だけが述べられていて、本当の理由を掴みきれていないのではないかと考えています。本当は、希望するキャリアが当行では実現できないと思われたのかもしれませんし、自己成長の機会が得られなかったり、働きがいが見いだせないと思い退職を決断されたのかもしれません。

いずれにせよ、労働観の変化にともない当行が変わらなければいけない点について、アルムナイとの交流や意見交換を通じて分析・改善していく必要があると思います。

——久保田さんご自身は退職やアルムナイについてどのように捉えておられるのでしょうか。

私自身は退職をネガティブには捉えていません。やはり自分で決めたことを自分でやりきることが仕事のやりがいにつながると思いますから。もちろん、当行でずっと働きたいと思ってもらえれば嬉しいですし、やりたいことを中途半端にやり残して辞めて欲しくないです。そのためには、ここで頑張りたいと思える環境や、やりたいことに挑戦できる機会を提供していく必要があると思っています。

「投資しても辞めてしまうなら積極的な人的投資はできない」という意見も聞きますが、それを恐れていたら会社として成長できません。

もし退職したとしても、当行で学び・経験を積んだ人材が社外で活躍して、また当行に戻ってきてくれる可能性もあると思います。それにアルムナイとしてつながり続けていれば、社外の情報や人材ともつながりやすくなります。当行を退職して外で学んだことや得たものを当行や地域に還元してくれると思えば、何も惜しくないです。

——アルムナイを含めた多様な人材へのアプローチについてどのようにお考えでしょうか。

当行がこれからの社会でより良い会社になっていくためには、これから活躍していく次の世代の視点を持つことが非常に重要だと考えています。

そのため、まずは私たちの世代が、世代間ギャップを認識し、これまでの当たり前を疑い、これからの世代は「自分とは違う価値観を持っている」と自己認識する必要があります。そうすることで、多様な業種や幅広い世代が集まった、変化に強く多様な価値観が共存する組織になっていけると思います。

もう1つの視点として、ゆるやかではあるものの確実に減少している滋賀県の人口課題を見据えた時に、「滋賀県に人材を呼び戻す」という意味でもアルムナイとつながり続けることは重要です。

家業を継ぐため、親の介護のためなどを理由にUターンする話は聞きますが、それだけでなく、都心に転職した若い世代が積極的に地元へ帰ってきたいと思える地域になるためにどうすればいいのか、当行も他社も知っているアルムナイの声を大切に拾っていきたいと思っています。

専門知識だけではない、地方銀行に求められる「人」への投資

——「人的資本の最大化」に向けて、具体的にはどのような人事戦略をお考えですか。

今年度から開始した、第8次中期経営計画で、基本戦略の一つに人的資本の最大化に取り組む「ヒューマンファースト」を掲げており、従業員エンゲージメントの向上も重要なテーマとしています。これは、「人」こそが企業価値の源泉であり、当行がパーパスとして制定した「『三方よし』で地域を幸せにする」ための原動力として、今まで以上に「人」にフォーカスをあてた経営をしたいと思ったからです。

「人」への投資でいうと、これまでも業務研修などの知識への投資は、かなり実施してきたと思います。しかしながら、人材の内的な部分や、金融知識だけではない多面的なスキルへの投資は不十分だったと考えています。

この部分を強化するべく、第8次中期経営計画では、「Design人材」の育成を目標に掲げています。

「Design人材」とは具体的には以下2つを指しています。

  • お客さま、そして地域の課題を創造し、解決策をデザインするとともに、実現まで結び付けられる人材
  • 自らのキャリア(=ありたい姿)をデザインし、その実現に向け挑戦し続ける人材

これらの人材を育成するために、金融知識だけでなく、デザイン思考、ロジカルシンキング、ファシリテーションスキルなど、多面的なスキルが獲得できる環境や成長の機会を提供していきたいと考えています。

他にも、中期経営計画では、外部企業への出向を5年累計100名に増員することや、「人材育成投資額」を2023年度対比約2倍に増額することなども目標に掲げるなど、人的資本の最大化に取り組んでいきます。

これからも大事にしていきたいアルムナイとのつながり

——アルムナイネットワーク立ち上げ前は、滋賀銀行とアルムナイはどのような関係でしたか。

社外から声を聴く機会として個人的なつながりや、定年まで勤続した人の会、当行を一度退職された女性が集まる会などアルムナイとのつながりはかねてより大事にしてきました。

アルムナイと意見交換するだけでも、外から見た当行の姿や、お取引先から見た当行の姿がわかるなど、社内から見えるものと比較することができます。社内にいると気づけない学びが多く、アルムナイとの交流は当行にとって多くの気付きをもたらしてくれます。

そういったアルムナイからの意見を聞くことで、当行の課題や注力するべき点がクリアになってくるのではないかと考えています。

アルムナイとつながることに今まで多くのメリットを感じていた一方で、運営の負担が大きいという現状もありました。そこで今回は社外からシステム提供と運営コンサルティングの支援を受けることで、持続的かつ具体的な価値創造につながる取り組みにできるのではないかと期待しています。

アルムナイは滋賀を良くするパートナー

——今後、会社としてアルムナイとどのような関係性を構築していきたいですか。

会社としては、滋賀銀行でもう一度働いてほしいという気持ちは大きいです。社外の経験を積んだアルムナイの皆さんだからこその強みがたくさんあると思います。ですが、たとえ戻る先が当行でなかったとしても、滋賀県内の別の会社で働いてくれたり、たまに滋賀県に帰省した際に当行の社員と再会してくれたり、少しでも当行や滋賀県と関わりを持ち続けてくれると嬉しいです。

私たち地方銀行はその地域と一心同体です。地域経済が盛り上がれば、我々のビジネスも伸びていきます。だからこそ、地域へのコミットは第一の使命であり、滋賀県企業に滋賀銀行のアルムナイが転職することは再入社と同等の価値があると考えています。

また、独立や起業しているアルムナイとは、協業もしていきたいです。一緒に新しいビジネスを創造したり、お取引先を紹介したり、協力し合えるパートナーのような関係性を築けると良いですね。

変わろうとしている「今」を知ってほしい

——最後に、アルムナイへのメッセージをお願いします。

滋賀銀行は今、事業や制度など様々な面で大きく変化しようとしています。その変化をぜひアルムナイの皆さんに知っていただきたいです。

新しい滋賀銀行を知った上で、もう一度滋賀銀行で仕事をしたいと思っていただけたら嬉しいです。そのときはぜひ気軽に連絡してください。

もちろん銀行だけでなく、様々な業界、専門性がありますので、私たちの想いに共感していただける人は、ぜひ一緒にビジネスをして、滋賀銀行とアルムナイの皆さんで地域社会を盛り上げていきましょう。

※過去に株式会社滋賀銀行に在籍していた方専用のネットワークです