「2.5プレイス」のような場所を目指して〜さくら情報システムアルムナイが築いていく新たなアルムナイネットワークの形とは

さくら情報システム(以下SIS)は2021年に企業主体でアルムナイネットワークの運営を開始。その後、2024年12月に、企業からアルムナイ有志に事務局を引き継ぎ、有志による新たなアルムナイネットワークとして再出発しました。

今回は、アルムナイが主体となって運営を担うことになった背景や、今後の展望について、島さん、友野さん、田中さん(仮名)にお話を伺いました。

過去、さくら情報システムに在籍していた方専用のネットワークです

―まず初めに、皆さんの自己紹介をお願いできますか?

島:
現在、HR系のベンチャー企業でITを担当しています。IT分野では、従来のSIerのアプローチとは異なり、100%SaaSのみを組み合わせて事業に必要なITシステムを構築していることが特徴的です。

SIS時代の最終所属は、技術開発部イノベーショングループで、テクノロジーの融合によるイノベーション創出を目的とした部署の立ち上げと運営を約3年間担当しました。その前は、金融業界の企業におけるSIプロジェクトに約3年間外部常駐し、PMOや全体のアーキテクチャ設計・開発を担当。さらにその前は、プログラマーやSEとしてシステム開発に携わったほか、技術研修の企画・運営にも従事しました。また、Linuxをはじめとしたオープンソースソフトウェアを活用した開発が始まった際には、その立ち上げも担当するなど、さまざまな役割を経験しました。

現在もITの世界にどっぷり浸かりながら、多岐にわたる業務に取り組んでいます。

友野:
新卒でSISに入社して以来、一貫してエンジニアとしてのキャリアを歩んできました。主に、受託開発や自社サービスのプロジェクトでアーキテクチャ設計やアプリケーション基盤の実装に携わっていました。SISには約9年間在籍し、その後、創業3年目のリーガルテック領域のスタートアップに転職。そこでテックリードとエンジニアリングマネージャーを兼務していました。

私がジョインした当時は、事業拡大に向けてプロダクトを再構築する初期段階でしたが、4年8ヶ月が経って再構築もようやく落ち着き、自分の中で「やり切った」という感覚を持つようになりました。そんなタイミングで、もともと関心のあった教育業界のSaaSベンダーに勤める方に声をかけてもらい、今年3月に転職しました。新しい環境で日々プロダクト開発に取り組んでいます。

田中:
もともと文系で、ITとは無縁の学部出身でしたが、初期配属で幅広い業務を扱う部署に配属され、そこでエンジニアとしての基礎を学びました。

その後、島さんが冒頭でお話しされていた金融業界の企業における案件に、島さんのもとで携わる機会をいただき、さらにインターネット通信会社への外部常駐も経験しました。

その後、大手通信キャリアに転職し、APIの保守・開発をメインとする業務に従事。約3年半勤務した後、現在は 楽器メーカーのIT部門に所属し、クライアント向けのシステムやアプリ、プラットフォーム開発などの領域を担当しています。

ー有志によるアルムナイネットワークの運営がスタートしました。SISアルムナイネットワークに対する想いやどのようなネットワークにしていきたいか教えていただけますか?

島:
以前は、会社を辞めたら職場の人との関係は切れるものだと思っていました。せいぜい、飲み友達としてつながる程度。しかし、実際には仕事仲間としてのつながりが、辞めた後も価値を持つことに気づいたのです。それがきっかけで、SIS在籍中にアルムナイネットワークを立ち上げました。

実際、前職で新規事業を立ち上げていた際、社内の知識だけでは解決できないことがたくさんありました。例えば、ある業界に参入するためにどんな人と組むべきか、どんなリスクがあるのか、どんなポイントに気をつけるべきか。こうした情報を知るには、社外の人脈が必要でした。

周りを見渡すと、多くの方が別のIT企業へ転職していましたが、そうでない方も多くいました。例えば、会計システムを作っていた方が事業会社の会計担当になったり、起業する人やベンチャー企業に転職したりする人もいました。

もしそのような方々とつながっていれば、「あの人は別業界で活躍しているから話を聞いてみよう」と思えますし、飛び込みにくい新しい環境にもアクセスしやすくなります。また、それがさくらアルムナイであれば、より相談しやすくなるのではないかと思いました。

アルムナイのイメージとして、毎週イベントがあって賑やかに交流する場という印象もありますが、私は「自分のタイミングで顔を出せば、誰かと気軽に交流できる場」があれば十分だと思っています。たまに誰かがイベントを企画したり、飲み会を開いたりするくらいのゆるい関係性が理想的です。「サードプレイス」という言葉は昔からよく使われますが、完全に仕事と切り離された場所というイメージが強いですよね。アルムナイネットワークは、その中間の、いわば「2.5プレイス」のような場所なのかなと思っています。

今回、SIS主体でのアルムナイネットワークは一旦終了しましたが、確実にアルムナイネットワークはどの企業にとっても必要不可欠なものとなると考えています。有志によるアルムナイネットワークとして運営を継続することで、その発展に少しでも寄与できればと考えています。

友野:
さくら情報システムに在籍していた際、いくつかのエンジニアコミュニティに所属していました。当初は、ただインプットを受ける立場でしたが、コミュニティは参加して終わりではなく、受けた恩を次の世代に還元することでさらに活性化し、周囲にも良い影響を与えるものだと次第に考えるようになりました。自分自身の知見を共有し、次のチャレンジを応援するようなイメージです。

これを「アルムナイネットワーク」の文脈に落とし込んで考えると、単なる知り合いではなく、自分のバックグラウンドを理解している人がいる点に価値があると感じます。例えば、私が個人開発などでアーキテクチャや設計の考えがまとまらず、壁打ちをしたいときに、元同僚と「こんな感じでいいんじゃない?」と気軽に雑談できる場があるだけで、前に進めることができるかもしれません。しかし、全く関係性のない人とは、こうしたフランクな会話は成立しづらく、興味関心よりもむしろ仕事の受発注の関係になってしまうこともあります。一方で、業務では案件として正式に進むため、コストや期限などの制約が強く発生してしまう。その中間的な存在として、純粋に技術やアーキテクチャを楽しみながら学び合い、結果的にそれがビジネスにもつながる場があると理想的です。そうした環境があれば、新しいチャレンジの後押しにもなるでしょう。

今のところ、アルムナイネットワークを通じて具体的に何ができるかは明確ではありませんが、試行錯誤を重ねながら、より良い形を模索できる余地があると考えています。ただ、根本的なモチベーションとしては、かつて自分が先輩たちから学んだように、次の世代へと知見を伝えていくことが重要だと思っています。

メンタリングなどを通じて後輩を支援できる環境が整えば、アルムナイネットワークの存在意義がより明確になるはずです。そうした環境を作り上げることが、私の思い描く理想的な形だと考えています。

田中:
私自身、会社を辞めた今でも、島さんや友野さんといった先輩方の存在が大きかったと感じています。

アルムナイ活動に参加する前は、基本的に社内の先輩を今後のキャリアにおいてのロールモデルだと考えていました。ですが、社内の人だけをキャリアモデルとした場合、少し視野が狭くなる部分があるように感じていました。

SISアルムナイには、ベンチャー企業や大手企業で活躍する人、フリーランスとして独立した人など、さまざまなキャリアを歩んでいる方がいます。その経歴を見るだけでも、「こんな道もあるんだ」と気づかされ、自分の中で選択肢が広がるのを実感します。

こうした気づきを得られる場があることは、とても価値のあることだと思っています。

―今後どのような取り組みを行なっていきたいですか?

友野:
どのようなトピックであれ、アルムナイ同士で集まれるイベントを開催できたら面白いなと思います。また、何かしらの形でアルムナイとSISが交流できる機会があれば良いなと考えています。

実際、私も退職後にSISのインターン生と関わる機会をいただいたことがありました。インターン生にとってアルムナイと直接話せる機会は貴重ですし、アルムナイ側にとっても新しい発見や気づきにつながるはずです。

こうした取り組みが実現できれば理想的ですね。

島:
私の知人にSISを辞めて起業した方がおり、その方に講演していただけたら面白いのではと思っています。起業に至った経緯だけでなく、現在の状況や価値観の変化など、さまざまなお話を伺ってみたいです。

ITエンジニアは比較的起業しやすい職種ですが、華やかな成功例だけでなく、リアルな経験を共有してもらうことに大きな意義があると感じています。私自身も聞いてみたいですし、他のエンジニアや起業を考えている方々にも参考になるはずです。

対象はSISの社員に限らず、アルムナイや起業志望の方など、幅広い層に向けたものにできれば、アルムナイネットワーク参加のきっかけにもなるのではと考えています。 

―アルムナイへのメッセージ

島:
先日、とあるアルムナイに個別にDMを送ったら返事が来て、「ちょっと話しましょう」となり、Zoomで30分ほど話しました。そういう形でお互いの近況が分かるのはすごくいいなと思っています。

皆さん同士のつながりが増えれば「この人とこの人をつなげたらいいかも」という場面が増え、それが積み重なれば自然と広がっていくはずです。だからこそ、オープンな場ではなく個別のやり取りでも良いので、皆さんには「ゆるくつながっていてほしい」と伝えたいですね。

運営に関しては「みんなでイベントを企画しよう!」といった形ではなく、やりたい人がやりたいときにやるくらいの自由な感じがいいと思っています。自分からは色々仕掛けていこうと思っていますが、メンバーには「気負わず、自分の気持ちに従って参加してほしい」というスタンスです。

最後に、まずは「1年で50人」を目標にしたいと思っています。人が増えれば、それだけ想定していなかった新しいコミュニケーションが生まれる可能性が高まりますし、「50人からDMが来る!」なんてことが起こったら、めちゃくちゃ嬉しいですね。その目標に向けて、自分に何ができるかを考え、状況に応じて「これをお願いしたい」と皆さんに協力を仰ぐ場面も出てくるかもしれません。まずは、皆さんに気軽に参加してもらうことを大切にし、運営もできるだけ柔軟に、ゆるやかにしていければいいなと思っています。

田中:
私も島さんに同感です。積極的に発信したい方はどんどん発信していただいて、そうでない方も気軽にゆるく参加できるコミュニティだと思いますので、これから更に人が増えて、盛り上がっていけばいいなと期待しています。

友野:
気が向いたときにふらっと立ち寄って、一言二言話して、またそれぞれの世界や本業に戻っていく。そんな気軽に参加できる、ゆるやかな場だと思いますので、ぜひ一人でも多くの方に参加いただけると嬉しいです。

過去、さくら情報システムに在籍していた方専用のネットワークです