三菱UFJ信託銀行がアルムナイネットワークに込めた想い「社員とアルムナイ、双方にメリットがある場をつくりたい」

2023年3月、三菱UFJ信託銀行がアルムナイネットワークを立ち上げました。

人的資本経営への注目が高まる中、人事施策の一つとして同社が新たに始めたのがアルムナイの取り組みです。その背景について、人事部企画グループの皆さんに聞きました。

三菱UFJ信託銀行株式会社
中村剛雄さん(人事部 次長)
湊 基成さん (人事部 企画グループ 上級調査役 / 写真右)
益 慶子さん (人事部 企画グループ 上級調査役 / 写真左)

※こちらは過去、三菱UFJ信託銀行に在籍していた方専用のネットワークです

社内の「アルムナイ」の認知度は思った以上に高かった

——アルムナイネットワークを立ち上げた背景を教えてください。

湊:世の中全体で人的資本経営が注目されています。当社でも「人的資本経営について、何ができていて、何ができていないのか」を改めて考える中、多様な人たちを巻き込み、それぞれが持つ知見を生かしながらビジネスを活性化させることをより強化したい想いがありました。

その流れの中で出てきた施策の一つが、アルムナイネットワークです。「アルムナイとの関係構築に取り組む必要があるのではないか」という課題認識を人事部として持っており、2022年5月ごろから導入に向けて動き始めました。

とはいえ、「アルムナイ」という言葉や考え方が社内で浸透しているわけではないと思っていたので、最初はどのような反応があるか不安もあったのですが、社長をはじめ経営陣からは「今の世の中の流れを踏まえると必要だろう」と、思いの外スムーズに賛同が得られました。蓋を開けてみれば、反対意見はほとんどなかったです。

——なぜスムーズに話が進んだのだと思いますか?

湊:近年の当社の考え方の変化が大きいと思います。

従来の終身雇用を前提とした日本企業では、退職者に対する風当たりは厳しかったと思います。当社もまた、ご家庭の事情で退職した方に向けた再雇用制度は用意していましたが、転職を理由とした退職者を対象とした再雇用制度はありませんでした。その背景には、退職者へのネガティブなイメージが少なからずあったのではと思います。

一方、今回アルムナイネットワークの準備を進める中で、「アルムナイって何?」という人はほとんどいませんでした。むしろ、「アルムナイは面白い試みだと思っていたよ」という反応が多く、退職者へのネガティブなイメージが変わりつつあることを実感しています。

また、社会全体で人材の流動性が高まり、若手社員の退職が増えている傾向があるのと同様の動きは当社にもあります。そういった世の中の変化も影響している印象です。

そう考えると、タイミングの良さはあったと思います。これが5年前だったら、もしかすると賛同を得るのにもっと苦労があったかもしれませんね。

目指すは、現社員とアルムナイの交流によるビジネス共創

——アルムナイに関する取り組みをする、具体的な狙いは何ですか?

湊:大きくはビジネス共創です。まずは当社社員とアルムナイで情報共有を行うことにより、お互いが発展できるような関係性をつくりたいと思っています。所属する会社は違いますが、それぞれの会社で新しく得た知識をシェアし、お互いの会社で新しいビジネス創出の機会を生み出せればと思っています。

社外から情報を得る重要性は、近年当社が特に意識していることです。コンソーシアムに参加したり、社外出向や社外副業を進めたりと、社員が外部と接点を持てるような取り組みを強化しています。アルムナイの皆さんとの関係構築は、その手段の一つになると考えています。

そして、そうやってネットワークを活性化させていった先で、アルムナイの皆さんとの業務委託や再雇用など、再び当社で一緒にビジネスを発展させていくことにつなげられるといいですね。

アルムナイの皆さんは金融業界に限らず、非常に多様な業種で活躍されていますから、やれることの幅も広いはず。既存ビジネスに限らず、例えばデジタル関連の新商品など、そういった分野でも共創ができるのではと思っています。

益:そのためにも、まずはネットワークの人数を増やしていきたいと思っています。現状、参加者は増えてきているものの、まだネットワーク内での交流はそこまで活発化していません。

ネットワークに参加してくださっている皆さんも、どのような人が参加しているのか把握できていないと思いますので、まずは同窓会のようなイベントを開き、お互いを知る機会をつくれればと考えています。

湊:当社社員とアルムナイの皆さん、双方が「入ってよかった」と思えるようなネットワークにしていきたいですね。

アルムナイの皆さんには、当社社員や他のアルムナイの方から新しいビジネスアイデアや価値観などを得る機会にしてほしいです。それによってネットワークの価値は増すでしょうし、活性化にもつながると思っています。

——現社員とアルムナイが交流することによって、退職者が増えることを懸念する企業の声も耳にします。その点はどのようにお考えですか?

湊:確かにその懸念はあります。アルムナイの話から刺激を受け、社員が退職してしまう可能性はゼロではないでしょう。

ただ、それ以上に得られるメリットの方が大きいと考えています。

アルムナイの皆さんと個別にコンタクトを取ってみると、思った以上に当社に対して良い印象を持ってくださっているのを感じます。特にネットワークに登録してくださる方は、どちらかというと当社に良い印象を持ってくださっている方が多いように思います。

そう考えると、社員がアルムナイの皆さんと交流することは、むしろ外から見た当社の良いところを社員に伝えてくれる機会になるのではないでしょうか。中にいると気付きにくいことを改めて認識できる良いきっかけになるのではと思います。

アルムナイの想いを大切に、自社の変化も伝えていきたい

※こちらは過去、三菱UFJ信託銀行に在籍していた方専用のネットワークです

——2023年3月にアルムナイネットワークを開設し、現在はどのような取り組みをしていますか?

湊:ネットワーク内でアルムナイの皆さんを紹介するインタビュー記事を発信したり、当社の記事をシェアしたりと、隔週に1回という頻度を基本にしながら情報発信をしています。

当社はアルムナイの取り組みを始めたばかりですし、辞めた時期によっては、当社が社外との接点を増やそうとしていたり、アルムナイの皆さんと関係構築をしたりすることに対して、意外に思う方もいるかもしれません。そういった当社の変化も伝えていきたいですね。

——2カ月ほど経ちましたが、アルムナイの取り組みを行ってみていかがでしょうか。

湊:最初は発信する際に「反応がなかったらどうしよう」と心配する気持ちもあったのですが、いざやってみるとアルムナイの皆さんが関心を持ってくださっているのを感じます。

2023年3月にプレスリリースを配信して以来、登録者も着実に増えていて安心しています。今は約100名が参加してくれていますね。(2023年5月時点)

また、もともとアルムナイの方が有志で運営していたアルムナイトネットワークがあり、そちらの幹事の方が早速当社が開設したアルムナイネットワークに入ってくださいました。「ぜひネットワークを大きくしたい」という前向きな声もいただき、頼もしく思っています。

積極的に参加してくださる皆さんと一緒に、これからさまざまなことをやっていきたいですね。

益:キャリアアップのために退職した同僚がネットワークに登録してくれているのを見て、何かしら当社に対して想いを持ってくれているんだなと感じています。プロフィールを見ながら「こういう所で働いているんだな」と知ることは自分の刺激にもなりますし、各フィールドで活躍していることは素直にうれしいです。

そういった皆さんの想いを大切にしながら、ネットワークの活性化やビジネス共創につなげていきたいと改めて思います。最終的には、また当社で一緒に仕事ができたら個人的には最高ですね。

三菱UFJ信託銀行アルムナイへのメッセージ

湊:当社だけではなく、お互いが発展していけるネットワークにしたいと思っています。気軽に登録していただき、運営に対して思うことがあれば積極的にご意見をいただけると助かります。

また、外から見て感じた当社について、良いところも悪いところも、ぜひ教えてください。社員へのメッセージになりますし、当社の変えるべきところを明確にする機会にもなりますので、ぜひよろしくお願いします。

益:社員の中には当社しか知らない人も多いので、ぜひ社外に出た皆さんが感じることを聞かせていただきたいです。そういった意見を聞くための企画もやっていきたいと思いますので、積極的に参加いただけるとうれしいです。

事務局からも情報発信をしていきますが、アルムナイの皆さんからの発信も大歓迎です。せっかく登録いただいてるので、ぜひ活用してください。

中村:他社の事例を参考にしながら、当社のアルムナイを盛り上げていきたいと思います。金融業界でアルムナイの取り組みをやっている企業は他にもありますので、例えば「金融機関アルムナイ」としてさまざまな金融系企業出身者が集まる機会をつくるなど、会社を超えた動きも面白いのではと思います。

せっかく登録してくれた当社のアルムナイの皆さんにそういう機会を提供できれば、それが付加価値にもなるかなと思います。まだまだ構想の段階ですが、そういったことも考えていますので、ぜひ登録いただければと思います。

※こちらは過去、三菱UFJ信託銀行に在籍していた方専用のネットワークです