日清食品グループがアルムナイ・コミュニティを導入。目指すのは「柔らかく自主的なコミュニティ」

2023年8月25日、チキンラーメンの65回目のバースデーに日清食品グループがアルムナイ・コミュニティを立ち上げました。

人材の流動性の高まりと、人的資本経営への注目が高まる中、同社は新たにアルムナイの取り組みを始めました。経営戦略を実現するために「人」を重要視しているという同社が、今、アルムナイ・コミュニティを導入したのはなぜか。執行役員・CHROの正木 茂さんに聞きました。

プロフィール

日清食品ホールディングス株式会社 執行役員・CHRO 正木 茂さん(左)

1993年、日清食品に入社。経理課からキャリアを始め、人事部を経て、米国日清にてCFOとして勤務。帰国後、基幹業務システム刷新プロジェクトリーダーを務める。2018年に財務経理部長に就任し、翌年人事部長へ異動。2021年4月CHRO、2022年4月に執行役員就任。

日清食品ホールディングス株式会社 人材戦略部 副参事 比企 正樹さん(中央)

1991年、日清食品に入社。当時発足したばかりの冷凍食品事業部の企画課からキャリアを始め、即席めんの営業、新規事業営業(法人・ネット通販等)を経て2013 年に人事部へ。給与関連のマネージャーを務める。一度早期退職したが、2022年に再入社。アルムナイ・コミュニティの事務局を担当する。

日清食品ホールディングス株式会社 人材戦略部 主任 石橋 俊介さん(右)

2012年に情報通信業の企業に新卒で入社。営業を経験した後、労務・人事の部署に異動し、給与計算、異動、評価、登用、制度企画などの業務に携わる。2023年5月に日清食品に入社し、アルムナイ・コミュニティの事務局を担当する。

立ち上げの背景にあるのは、人材の流動性の高まり

ーーアルムナイ・コミュニティを立ち上げた背景を教えてください。

正木 茂さん(以下・正木):これまで、日清食品グループのOB・OG会等のアルムナイに対するオフィシャルのコミュニティは存在しませんでした。個人的なつながりを持っている人はいて、人がハブになって小さいコミュニティが点々と存在している…そんな状態でした。私の例でいうと、米国日清駐在員コミュニティがあり、同じ釜の飯を食った仲間が時々集まることはありましたね。ただ、会社全体でのオフィシャルなものはなくて寂しいなと思っていたので、いずれできたらいいなと思っていました。

実際に立ち上げるきっかけの一つになったのは、人材の流動性が高まってきたことです。これは大きな環境の変化で、私たちが何も活動しなくても優秀な人が集まってくることはなくなりました。「会社にとって必要な優秀さ」とは何かを定義し、働く側にとってのメリットを提示し、会社の中で成長して力を発揮してもらう。そして「日清食品をあなたの働く場所にしてくれませんか?」とアピールしていかなければいけません。それは新卒生、キャリア採用の方、アルムナイ、誰に対しても同じように発信していかないといけないだろうと感じていました。

経営戦略を実現するためには、やはり「人」の力が必要不可欠。会社には、経営戦略を実現する能力を持っている人が必要です。そもそも会社、特に上場企業は企業価値を向上し続ける義務があります。企業価値とは、大胆にいってしまえば、金額と時間を掛けて算出される、どれだけ儲かり続けられるかという数字です。この数字をより大きくしていくことを目指しています。

これまでは、縦軸の金額ばかり重視していました。しかし、今は数字だけでは企業の価値はわかりません。だから人的資本経営が注目されているんです。企業がどれだけ儲かり続けられるか、投資家が企業を評価する観点がESGです。人的資本は、ソーシャルまたはガバナンスに含まれるとされ、企業が人材にどの程度投資しているかで、企業の成長性が評価されます。環境、社会、ガバナンスがきちんとできている企業ほど、相手にしてもらえないリスクが減るんです。企業にとって今人的資本経営が声高に叫ばれるようになったのは、「あなたの会社は儲かり続けられるのかどうか、説明してください」と問われているんですね。

そこで、儲かり続ける鍵を握るのが「人」です。能力のある人が会社にい続けてくれることこそが、利益を出し続ける可能性を高めることになります。アルムナイの中には、ライフイベントで一旦離職したり、成長機会のタイミングが会社になく離職したりした人もいるかもしれません。でも、今もしその機会が日清食品にあると感じてもらえたら、ぜひ戻ってきてほしいです。このようにアルムナイにも門戸を開くことが、今の私たちには必要だと感じています。

アルムナイにもファンであり続けてもらいたい

ーー再入社の場合、アルムナイに期待する役割は何でしょうか。

正木:既存事業でも新規事業でも、当社のどの事業においても優秀さを発揮してもらえる可能性はあると思います。社外で働いたからこそわかることがあると思いますし、社外のものと組み合わせてイノベーションを起こし、お客さまに喜んでもらえる製品を生み出せるのではないかと考えています。

ーー再入社は考えていないけれども、コミュニティに参加してくださっているアルムナイに対しては、どんな役割を期待していますか?

正木:私たちは、入社されてもされなくても、潜在的なお客さまだと捉えています。私も採用面接をする際は、お客さまだと思ってやっています。アルムナイのみなさんも当然お客さまであり続けますし、当社のファンでい続けてもらえることを目指しています。

同じ会社で働いた経験があるというのは、単純に縁じゃないですか。縁がある人の役に立ちたいですし、青臭いかもしれないですけど、そういう方たちの人生がより良くなればいいなと思いますから。会社からアルムナイのみなさんに対しては必要な時に何かサポートし、アルムナイのみなさんからは日清食品を応援してもらうーーそんな関係性でいられたらいいなと思います。

目指すのは柔らかく自主的なコミュニティ

ーーアルムナイ・コミュニティの中で、今後やってみたいことはありますか。

正木:情報発信です。現在は3ヶ月に一度、定年退職者には機関紙をお届けすることはありますが、そこでまとめられていないような情報等も発信して、アルムナイのお役に立てばいいなと思います。もし今何かやろうとしている人が、日清食品グループからの情報を見て、自分のキャリアの方向性としてもぴったり合うかもしれないと感じたら、「1回話してみない?」とつながっていく……そういうことが起こる情報交流ができるといいですね。ほかにも、テーマ毎にトークルームの場を設けるなど、そういう小さい輪をポンポンと作っていければとイメージしています。

比企:私は退職される方に退職説明をする立場でもあり、これまで何名もの先輩方とお話をさせていただきました。また一度私が退職した際には先輩方に本当に助けていただきました。先輩方からは、「退職したら会社の情報がわからなくて寂しい」、といった言葉もお聞きしていました。そういったことを通じて、退職後も先輩方や会社とつながっていることの大切さを痛感し、再入社後、このコミュニティを立ちあげたいという強い気持ちを抱くようになりました。アルムナイのみなさまにとって、このコミュニティが人生を豊かにするひとつとなっていただけるよう、情報発信や企画を実施していきたいと思っています。

石橋:私は最近中途入社した身ですので、過去に日清食品グループで勤務されていたアルムナイの方から当社の歴史を聞いてみたいです。私は会社を知るにはその会社の歴史を知ることが重要であると考えています。当社は中途入社の社員も増えてきており、そのような社員に対し、今の日清食品グループを作ってきたアルムナイの方から学べる機会を作りたいです。

ーーアルムナイへメッセージをお願いします。

正木:縁あって同じ会社で働いた人には幸せになってもらいたいと考えています。辞めた後もどうなっているのか気になりますし、応援したいと思っています。そういう中で、ゆるいつながりを持っていられる、コミュニティでありたいなと考えています。自分から行けば情報が取れて、会社からは情報提供がある。そんな柔らかく自主的なコミュニティの中で、お互いに関心を持ち合い、気軽にやりとりが行われていくといいなと思います。