「海外育児、MBA…どんな転機も、銀行時代の経験が“羅針盤”になった」

三菱UFJ銀行は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)が人的資本経営の中で掲げる「社員一人ひとりが活き活きと活躍し、社会・お客さまに貢献するグローバル金融グループ」の実現に向けて取り組んでいます。その重点課題の一つである「多様な人材の活躍」を推進する施策として、一度は同じ会社で働いた仲間である卒業生同士をつなぐネットワークの強化を図るとともに、希望に応じて復職の機会も提供できるような「アルムナイネットワーク」を構築しています。このネットワークを通じて、退職後も三菱UFJ銀行やアルムナイ同士がつながり続け、相互に刺激を与え合える関係性の構築をめざしています。

三菱UFJ銀行のアルムナイである榎本里実さん。2007年に三菱UFJ銀行へ新卒入行し、12年間にわたって法人RMとして幅広い企業を担当。中小企業から大手・外資系企業まで、希望を叶えながらキャリアを築く。出産を機に専業主婦となり、夫の駐在に伴いタイへ移住。
現地での出産・育児と並行し、英語で学ぶエグゼクティブMBAに挑戦。卒業後はMURCタイ法人にてコンサルタントとして再びビジネスの現場へ。現在は帰国し、自分らしい働き方を模索している。榎本さんは、どのような行動・決断によってキャリアを切り拓いてきたのでしょうか。

※こちらは過去、三菱UFJ銀行に在籍していた方専用のネットワークです

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法人RMの専門性と総合力高めた12年間

ーー三菱UFJ銀行に在籍していた時の仕事内容を教えてください

新卒で三菱UFJ銀行に入行し、12年間にわたり法人営業(RM)を担当していました。日系の中小企業からスタートし、大企業、外資系企業、最終的には欧州系の金融機関との取引まで、様々なクライアントと向き合ってきました。

なかでも印象に残っているのは、本邦初となるゴルフクラブを担保にしたファイナンススキームへの関与や、欧州系金融機関との新規取引をまとめあげた経験です。規模や構造の大きな案件に取り組むなかで、日々刺激を受けながら成長していけたと感じています。

案件を進めるうえでは、社内外の関係者との調整や、各部門との連携も重要でした。ときには海外拠点とのコミュニケーションや政治的な配慮が必要となる場面もあり、単なる営業にとどまらない総合的な力が求められる仕事でした。

榎本さんが三菱UFJ銀行在籍時 ラグビー大会にご招待された時のお写真

ーー退職した経緯は何だったのでしょうか。

夫の駐在に伴いタイへ移住し、出産を機に一時的にキャリアを中断することとなりました。しかし、専業主婦として過ごすなかで「このままキャリアが終わってしまうのでは」という不安を抱くようになったのです。

もともと、法人RMとして多忙な日々を送っていたなかで「一度自分の知識を整理し直したい」「体系的に学び直す時間が欲しい」と考えていたこともあり、MBAの取得に挑戦する決意を固めました。

タイで見つけたエグゼクティブMBAコースに週末通学というスタイルで入学し、育児と学業を並行。2年間かけて修了できました。産後の体力的な不安や、英語力のブランクなど乗り越えるべき壁も多くありましたが「今だからこそできる挑戦」と捉えることで前向きに取り組めました。「自分自身に再びインプットの時間を持たせたい」という思いが、行動の原動力になったと思います。夫も初めての海外勤務の中、時間に融通をつけて早めに帰宅するなど、協力してもらえたことで卒業まで何とか乗り切ることが出来ました。家族の支えに感謝しています。

三菱UFJ銀行で身につけた「立ち上げ力」や「行動力」で、異なる環境でも活躍する

ーーMBA取得後のキャリアを聞かせてください。

MBA修了後、現地のエージェント経由で三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)のタイ法人に入社し、コンサルタント職に就きました。

主な業務は、日系企業の東南アジア進出・撤退支援に関連する市場調査や企業調査、M&Aにおけるビジネスデューデリジェンスなどです。業種も不動産から製造業、IT、物流までさまざまで、それぞれのクライアントニーズに応じたアプローチが求められる点に非常にやりがいを感じていました。

榎本さんがエグゼクティブMBA卒業式に出席された時のお写真

三菱UFJ銀行での経験は、直近の仕事にどのように活きていますか?

銀行で身につけた「立ち上げ力」や「行動力」は、異なる環境でも十分に活かせるものでした。特に、情報が限られる海外現地で必要な情報を収集・整理する力や、様々な関係者との調整を円滑に進めるスキルは、RM時代に培った土台が大きかったと感じています。

また、日本語資料のチェックや現地発行誌の記事執筆、セミナー運営、出張時のロジ対応など、幅広い業務にも携わっていました。小規模な組織ならではのフレキシブルな働き方や、スピード感のある意思決定に触れられたことも貴重な経験だったと思います。三菱UFJ銀行での経験は、本当に全てが直近の会社で活きていると感じています。

自分の中にあった“ブレーキ”を外すことで、新しい道を切り拓く

ーーキャリアの再構築を経験して、今どのように感じていますか?

一度キャリアを止めたことで、「もう元に戻れないのではないか」と感じた時期もありました。しかし、実際には自分の中にあった“ブレーキ”を外すことで、新しい道が開けることを実感しています。

「今の場所で、今できることから始めてみる」。そう意識を変えるだけで、未来へのつながりが見えてきました。同じような境遇にいる方にも、まずは小さな一歩を踏み出していただきたいと思っています。

特に、駐在妻や育児中の方のなかには、「もう社会とつながる自信がない」と感じている方も少なくないかもしれません。私自身もそうでしたが、行動を起こせば、きっかけは意外なほど身近にあることに気づけるはずです。「今の自分」にできることに意識を向けることからすべてが始まるのだと、今では確信しています。

ーー今後のキャリアビジョンについて教えてください

2025年2月にMURCタイを退職したので、帰国を予定しております。まずは日本での育児や生活環境の整備に注力し、その後は再就職やフリーランスとしての活動など、柔軟な選択肢を検討していくつもりです。

帰国後は、海外経験やコンサル業務で得た知見を活かしながら、企業や個人が海外展開を行う際の情報支援や調査サポートといった分野でも貢献できればと考えております。業務委託やプロジェクトベースでの働き方も含め、自分らしい働き方を模索していく予定です。何よりも、自分自身のリズムを大切にしながら、無理なく長く続けられる仕事の形を見つけていきたいと思っております。

最近は三菱UFJ銀行もアルムナイ採用に取り組んでいると聞いていますが、社内文化の理解や共通言語がある上で新たな挑戦ができるという観点で、再入行はキャリアの選択肢の一つとしてよいものだと思っています。

三菱UFJ銀行出身という共通点が、大きな信頼の土台になる

ーーアルムナイネットワークへの期待を教えてください。

三菱UFJ銀行出身という共通点は、再就職やビジネス連携において非常に大きな信頼の土台になると感じております。今後、士業や専門職の方々とのマッチング支援や、再就職支援の充実がより進めば、より実践的で有意義なプラットフォームになるのではないかと感じています。

「ママ」「地域」「働き方」など、参加者の属性に応じたテーマ別交流会があれば、さらに参加しやすく、深い連携にもつながるのではないでしょうか。また、フリーランスや起業を目指す方にとって、同じバックグラウンドを持つ仲間と情報交換ができる環境は非常に心強いものです。アルムナイ同士で信頼感のあるやりとりが生まれやすく、心理的なハードルが低いことも大きなメリットだと実感しています。

ーー同じような境遇の方へメッセージをお願いします

駐在妻、専業主婦、出産・育児など、ライフステージの変化によってキャリアを一度止めたご経験のある方もいらっしゃるかもしれません。私自身もその一人でした。

ですが、振り返ってみると、自分の中にあった「できないかもしれない」という思い込みを少しずつ手放し、小さな行動を積み重ねることで道がひらけていったように思います。

これまで積み上げてきた経験や想いは、きっとどこかで活きてくるはずです。私の経験が、ほんの少しでも励みになれば幸いです。

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榎本里実さん
直近のお仕事:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
2007年に三菱UFJ銀行へ新卒入行し、12年間にわたって法人RMとして幅広い企業を担当。中小企業から大手・外資系企業まで、希望を叶えながらキャリアを築く。出産を機に専業主婦となり、夫の駐在に伴いタイへ移住。

現地での出産・育児と並行し、英語で学ぶエグゼクティブMBAに挑戦。卒業後はMURCタイ法人にてコンサルタントとして再びビジネスの現場へ。現在は帰国し、多様な働き方を模索している。

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※こちらは過去、三菱UFJ銀行に在籍していた方専用のネットワークです