ライオンがアルムナイネットワークを設立。アルムナイはライオンの“隠れた人的資本”。

2025年8月、ライオン株式会社(以下、ライオン)がアルムナイネットワークを設立しました。背景には、組織能力の強化を掲げた中期経営計画「Vision2030 2nd STAGE」の人事戦略があります。「人とのつながり」を大切にする企業文化を活かしながら始まった今回の取り組み。ネットワーク設立に込めた思いや、社内の反応、そして今後目指す姿について、人材開発センターの春田敏伸さん、合田正輝さんに伺いました。

人材開発センター キャリア開発グループ マネジャー 春田敏伸さん(写真右)
人材開発センター 合田正輝さん(写真左)

※こちらは過去にライオンに在籍していた方専用のネットワークです

制度の枠を超え、アルムナイとの新たな関係性構築へ

--御社は2019年に「ライオン流 働きがい改革」を宣言され、ここ数年で加速度的に社内制度を変革されていますよね。そうした中で、今回アルムナイネットワークを設立された背景を教えていただけますか?

春田:今回のアルムナイネットワーク設立の背景には、2025年より開始した当社の中期経営計画「Vision2030 2nd STAGE」の中で、人的資本向上のための人事戦略を策定したことが挙げられます。「Vision2030 2nd STAGE」では、戦略のテーマとして「収益力の強靭化」を掲げています。これを実現するには、事業ポートフォリオのマネジメント強化が必要です。それを人事戦略に落とし込んだ結果、戦略を遂行できる組織能力をより向上させていくため、人材ポートフォリオに基づいた採用を実行することが重要だと考えています。

人材ポートフォリオを充足させるためには、重点分野への人材の確保が最優先です。従来のキャリア採用にとどまらず、様々な可能性を探る中で、選択肢の1つとして出てきたのがアルムナイとの関係構築です。

合田:ライオンはパーパスとして、「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」と掲げています。今後はこの「習慣づくり」をより進化・拡大させていかなければならないと考えています。そのためには、様々なバックグラウンドや経験、スキルをもった人材が必要です。ライオンに対する理解やパーパスへの共感を持ちながら、ライオンにはない経験やスキル、知識も持っているアルムナイは非常に魅力的なため本格的にアルムナイとの関係構築を始めることになりました。

もともと当社には「ジョブ・リターン制度」や「キャリア・リターン制度」といった、退職者の方がエントリーできる採用の仕組みがありました。しかし、これらの制度を活用した採用は年間で若干名にとどまり、実際に再入社された方も、社員との個人的なつながりを通じて戻ってこられたケースがほとんどでした。制度として十分に機能していなかったのが現状です。そこで、アルムナイの方々との関係性を改めて見直し、ネットワークを構築することで、再入社に限定せず、知見や経験の共有、新たな協業の機会など、さまざまな価値を創出できる可能性があるのではないかと考えました。

--アルムナイの取り組みを開始するにあたって、社内からはどんな反応がありましたか?

合田:比較的スムーズに理解を得ることができました。社内で提案した際にも「これは絶対に必要な施策だよね」「面白そうだね」といった、ポジティブな声が多くありました。おそらく様々なアルムナイの方の顔を思い浮かべながら、提案を聞いてくれていたのだと思います。例えば、あの人とつながって、本社で一緒にイベントができたら楽しいんじゃないか--そういった情景が思い浮かんだのかもしれません。

--アルムナイの方の具体的な顔を思い浮かべられるというのは、御社の退職者との関係性を象徴するようなエピソードですね。人とのつながりという観点では、職場での人との関わり方はどのようなものでしょうか?

合田:つながりは非常に大事にしている会社だと思います。例えば、数カ月間ある新入社員研修は、同期と一緒に過ごすことで絆が深まりますし、配属後も様々な研修やプログラムがあり、同じ部所内での“ヨコ”の関係はもちろん、“タテ”や“ナナメ”のつながりも築くことができるような設計になっています。

春田:そういった当社の風土が好きな社員は多く、ありがたいことに退職した後も「ライオンの雰囲気が良かった」という声はいただきますね。

アルムナイはライオンの“隠れた人的資本”

--今回公式にアルムナイネットワークを発足されましたが、これまでアルムナイとの関係はどのようなものでしたか?

合田:つながりの強い会社なので、これまでも退職者と現役社員のつながりはあったと思います。ただ、従来は個人同士のつながりに限定されており、同期同士や同じ部所の人同士で、退職後もSNSなどでつながっているというケースがほとんどでした。

また、先ほどお伝えした「ジョブ・リターン制度」や「キャリア・リターン制度」はあったものの、関係構築という観点で、こちらから能動的に情報発信などができなかった結果、あまり活用されてこなかったのだと感じています。

春田:実際に当社に再入社していただいた方は、当社での過去の経験をもとに、早期に活躍してくださっている印象があります。当社での経験と社外での経験、両方の視点を持って、客観的に仕事を進めてくれています。アルムナイの方々は当社での経験と、社外での経験それぞれの財産をお持ちです。そう捉えると、アルムナイの方々と私たちが関係を構築することによって、当社の“隠れた人的資本”との新たなつながりを創出することにつながるのではないかと考えています。そしてこれは、これまで見過ごされてきたライオンにとって大きな力となり得る存在だと考えています。

--アルムナイネットワークは、現役で活躍されている社員の方々にとっては、どのような影響をもたらすと考えていますか?

春田:これから様々な可能性を探っていくのが正直なところですが、例えば、商品開発の際にアルムナイの方々にモニターとして協力していただいたり、外部の声を聞いて知見を獲得する機会にしたりといった関わり方ができると考えています

まずはアルムナイの方々にこのネットワークの存在を知っていただくことが最優先ですが、アルムナイだからこそ一緒にできることはたくさんあるはずです。アルムナイの方々とも対話を重ねながら、それぞれの声やニーズをもとに、どんなことができるかを一緒に考えていきたいと思っています。

「サードプレイス」のような場を目指して

--今後、アルムナイとどんな関係性を築いていきたいですか。

合田:アルムナイネットワークが、ライオンアルムナイの方々にとってサードプレイスのような場になればと考えています。活動の場が変わっても、心地よさや懐かしさを感じられて、リラックスして参加できるようなコミュニティにしていきたいです。その中で、アルムナイの方々とはフラットな関係性で、ゆったりと緩やかなつながりを築いていきたいですね。

もちろん、積極的に何かアクションを起こしていただけるのも嬉しいです。そうでなくても、当社のCMを見て思い出した時に参加してもらったり、ちょっと疲れた時にアルムナイネットワークを見てみたりと、気の向く時に参加してもらえたらと思います。

--アルムナイネットワークを通じて、どのような価値を提供していきたいですか?

合田:アルムナイの方のキャリアや人生にとって、少しでも良い影響が与えられるような情報や機会提供できるようにしたいですね。具体的には、こちらから何か情報を発信したり、イベントを企画したり、協業できるような仕組みも構築できたらと考えています。コミュニティですので、双方にとってWin-Winになれる仕組みを築いていけたら理想的ですよね。

そういった体験を通じて、アルムナイの方々のキャリアや人生に豊かさや彩りを添えることができたら嬉しいですし、ライオンにまた魅力を感じてくれる方が出てきてくれたらとも思っています。

春田:2023年に本社が移転したり、ここ数年で働き方が変わったりと、ライオンでは様々な変化が起きています。例えば、フルフレックス制度やテレワークもそうですし、服装もTPOに合っていれば自由です。最近は、そういった点に魅力を感じて入社される方も多くいらっしゃいます。

私たち社員も以前は、ライオンは堅い会社だというイメージを持っていました。アルムナイの方も退職した時期によっては、過去の働き方をイメージしている方が多いのではないかと思います。“キャリア自律”の一環として、ライオンでは様々な変革を行っています。そうしたライオンの進化を伝えられるような情報発信やイベントもしていきたいですね。

--最後に、アルムナイへのメッセージをお願いします。

合田:年代や在籍時の職種などに関係なく、フラットでゆったりとした関係性のネットワークを構築していきたいと考えています。そして、みなさんが安心して、リラックスして参加できるようなネットワークにしていきたいと思っています。

アルムナイネットワークが、みなさんの人生やキャリアを少しでも豊かにする一助となれば幸いです。ぜひお気軽に多くのアルムナイのみなさんのご参加をお待ちしております。

ライオンアルムナイネットワーク運営事務局の皆様
人材開発センター キャリア開発グループ マネジャー 春田敏伸さん(写真右)
人材開発センター 合田正輝さん(写真中央)
人材開発センター 川原昴さん(写真左)

※こちらは過去にライオンに在籍していた方専用のネットワークです