合い言葉は“帰りたくなる「わが家」”。積水ハウスがアルムナイとつながり続ける「Welcome home制度」を開始。

今回は2024年12月より、アルムナイネットワークを始動させた積水ハウス株式会社 人財開発部 人財採用室 室長の大村 宏明さんと同じく人財開発部 人財採用室の奥村典子さんにインタビューを受けていただきました。

積水ハウスは”「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンを掲げ、その実現のために従業員にとって「わが家」とも言える職場や会社を幸せにしたいと考えています。アルムナイにとっても「わが家」だった積水ハウスにおかえりなさいと温かい歓迎の意味を込めてWelcome homeという名前をつけた本制度、その発足にいたった経緯や想いを伺いました。

※こちらは過去、積水ハウスに社員・地域勤務社員、CS社員、S従業員として在籍し、自己都合又はこれに準じる理由で退職をした方専用のネットワークです

現役社員の発案から生まれた「Welcome home制度」

ーーまずはアルムナイネットワーク立ち上げの背景についてお聞かせください。

奧村:当社は2023~2025年度の中期経営計画における人財戦略のコンセプトとして「人財価値の向上」を掲げ、「キャリアの自律・人財パイプラインの強化・人財価値を高める組織風土」に力を入れています。この中の「人財パイプラインの強化」の一つに、労働力人口の減少といったマクロ環境の変化により人材獲得競争が激化する中、会社としては新たな視点で採用市場における潜在層にも目を向けていく必要があるという課題があります。
その取り組みのひとつが、退職者とのつながりを創出する「Welcome home制度」です。

この制度は、社員のアイデアをきっかけに生まれたものです。退職者の中には「一度退職したが、また戻れるならば戻りたい」と思っている方もいます。実際、これまでに個人的なつながりの中でそういった相談を受けて課題感を持った社員から、全従業員参画の創発型表彰制度「SHIP」※に「退職者が戻りやすくなる仕組みができたらいいのでは」という案が上がりました。このアイデアが形になり、これまであった退職者復職登録制度を改定して制度化に至りました。この「Welcome home制度」という制度名も、「SHIP」の発案メンバーとともに決定しました。

※「SHIP」・・・2021年より開始した、従業員による新しいアイデアやこれまでの取り組み・実績などを応募できる、全従業員参画の創発型表彰制度。

詳しくはこちら→ https://www.saiyo-sekisuihouse.jp/project/04/

社内の課題に対して社員が声を上げることができ、実現できる制度があるのは素晴らしいですね。色々な施策も考えられる中、なぜアルムナイに着目し、今回の導入に至ったのでしょうか。

大村:会社として社外の人財との接点の強化はアルムナイに限らず全方位的に取り組んでいますが、早く受け皿を整えないと、その方が転職を考える際に機会を提供することもできないので、スピード感を持って取り組み始める必要がありました。
その点アルムナイは、元々会社のことを熟知していて、当社の企業理念である「人間愛」に基づいて働いていた実績があり、積水ハウスのDNAをすでに受け継いでいる貴重な存在です。最初からベクトルが一致している方に向けた施策なので具体的な効果が見込みやすく、迷わず導入を進めることができました。

これから会社が変わっていくためにも、まずは「1番近い社外の人」である退職者とのつながりがとても大切だと考えています。

離職者からも支持される企業理念、「人間愛」

ーーアルムナイネットワークへの注目度は高まっていますが、日本の企業では「辞めた人は裏切り者だ!」というネガティブな意見が出ることもまだまだ多いと聞きます。御社ではいかがでしたか。

大村:「SHIP」での社員からの発案がきっかけだったこともあり、社内も前向きな反応がほとんどでした。もちろん企画段階ではリスクの洗い出しなども行いましたが、制度の導入自体に明確な反対意見がでることはありませんでしたね。
制度の刷新にあたり経営会議でも提案していますが、人財戦略に沿った施策であり、世の中のトレンドにも合致していますので、経営陣も後ろ向きどころか「是非やりましょう!」という反応でした。

ーーネットワークの設立に関して11月末にプレスリリースを配信されていますが、どんな反応がありましたか。

奧村:プレスリリース公表後、すぐにたくさんのアルムナイのみなさんから反響がありました。早速、登録の申請が集まっていて、本当に嬉しく思います。自己紹介に「企業理念が好きだった」と書いてくださっているアルムナイも多く、非常に驚きました。

ーー社員・アルムナイの方々にもしっかり企業理念が根付いている印象を受け、それがアルムナイの取り組みへのポジティブな反応にも繋がっているのではないかと思います。この風土はどのように育まれたのでしょうか。

大村:「人間愛」というフレーズに代表される企業理念がとてもシンプルでわかりやすいというのが要因のひとつだと思います。
また、当社の創業事業が「注文住宅」である点も影響しているでしょうね。注文住宅は、お客様一人ひとりの理想を形にするのが仕事です。お客様一人ひとり異なる理想の暮らしや人生をお客様と一緒に探求していく。つまり企業理念の根本哲学である「相手の幸せを願い、その喜びを我が喜びとする」という考え方が日々の業務を通してDNAとして刷り込まれていくのだと思います。そこが企業理念である「人間愛」と、グローバルビジョン”「わが家」を世界一幸せな場所にする”の浸透につながっているのではないでしょうか。

会社の「よい変化」を伝える双方向のプラットフォームに

ーーこれまで退職者と会社の関係性はどのようなものだったのですか。

奥村:もともと退職者復職登録制度があったのですが、登録条件も限定的であり、登録者へも年1回、復職意思を確認するメールを送付するのみで、関係性の構築ができていませんでした。人事制度改革・事業の拡大・働き方改革など、会社は確実によい方向に変化しているにも関わらず、その情報を適切に届けられていないという課題を感じていました。

ーーその課題が、アルムナイネットワークの構築により解決できると考えられたのですね。

奧村:はい。これまでも、毎年一定数の退職者が再入社されていたのですが、このうち7、8割は退職者復職登録制度に登録していない方でした。実は、この方たちは退職後も現役社員や上司と個人的につながっていて、「最近こんな制度ができたよ」、「今はこんなに働きやすくなったよ」といった形で最新の情報が伝わっていたのですね。

つまり、会社の「よい変化」についての情報提供がきちんとできれば、退職者の方にも次のキャリアの選択肢として当社を考えてもらえると気付きました。ですから、まずは社内での新しい取り組みや事業、社員や働き方の紹介といった最新の情報提供を行うプラットフォームとして活用していくつもりです。

再入社の促進だけでなく、共創や多様化の推進にも期待

ーーアルムナイネットワークではどのような活動を予定していますか?

奥村:今は、登録されたアルムナイの方が何を望んでいらっしゃるか、アンケートや交流会を通して意見やニーズを吸い上げながらつくり上げていこうという段階ですが、まずはアルムナイ同士で”元積水ハウス”という共通項でこのコミュニティを楽しんでいただきたいですね。そして、積水ハウスのファンを増やしていくこと。「積水ハウスと関わってよかったな」と思ってもらえるような交流会や情報発信を行っていく予定です。

将来的には我々運営サイド主催のイベントだけではなく、アルムナイが主体となって全国各地でエリア交流会を開催してくれるようなところまでコミュニティが盛り上がってくれたらいいですね。

ーー今後この制度をどのように広げていきますか?

大村:スタートにあたってはまず「再入社を希望する人が戻りやすい環境づくり」が主な目的でいいと考えていますが、社外で活躍するアルムナイとのコミュニケーションを重ねていく中で、単に復職という形だけでなく、ビジネスチャンスの創出であったり、新しくイノベーションが生まれたり、違った形でネットワークを活かしていけたら面白いですよね。

さらなるステップとしては、積水ハウスグループ内にもこの取り組みを展開していきたいと考えています。当社は単体で1万6千人、グループまで含めると3万人ほどの従業員がいますので、グループ全体として門戸を広く開けることで、アルムナイの中での多様性も膨らんでいくと思います。

「積水ハウスアルムナイであること」を誇りに

ーー今後、アルムナイネットワークをどのような場にしていきたいですか?

大村:積水ハウスアルムナイであることを誇りに思っていただけるような、魅力あるコミュニティにしたいですね。
今は可視化されていないかもしれませんが、積水ハウスを卒業されてから、多方面でさまざまな活躍をされている方が世の中にたくさんいるはずです。例えば「あの有名建築を手掛けたのは積水ハウス出身の建築家らしい」「あのベンチャー企業の社長は昔、積水ハウスで営業をしていたらしい」という風にキャリア事例が可視化されれば、アルムナイのエンゲージメントが上がり、ひいては社員のエンゲージメント向上、組織全体のブランディングにもつながるのではないかと期待しています。

ーー最後にアルムナイの方に向けて、メッセージをお願いします。

奧村:アルムナイのみなさんは退職されてから仕事面でなく人生においてもさまざまな経験を重ねてこられたことと思います。その経験そのものに高い価値があると考えていますので、ぜひこのコミュニティを積極的に活用していただけると嬉しいです。

「Welcome home制度」という名前には、「わが家(=積水ハウスのネットワーク)におかえりなさい」という想いが込められています。復職してもしなくても、アルムナイにとって「わが家」と思ってもらえるようなコミュニティにしたいです。

※こちらは過去、積水ハウスに社員・地域勤務社員、CS社員、S従業員として在籍し、自己都合又はこれに準じる理由で退職をした方専用のネットワークです