
株式会社JTB(以下、JTB)はこれまで数多くの優秀な人財(※1)を輩出してきました。しかし、退職者との関係は、個々のつながりはあるものの、組織的なネットワークとしては十分に機能していませんでした。今、JTBはその関係性を根本から見直し、新たなつながりを生み出そうとしています。
本日は、JTBのアルムナイネットワーク構築の背景や狙いについて、常務執行役員 人事担当(CHRO)である大八木勢一さんにお話を伺いました。
(※1)JTBグループでは、”人材”は「企業や組織の成長を支える財産となる大切なリソース」であるという意思を込め、”人財”と表記。
※こちらは過去、JTBに在籍していた方専用のネットワークです
アルムナイとの関係性の変化について
― これまでの退職者との関係性について、どのように捉えていますか?
JTBでは退職後5年以内であれば再入社が可能な仕組み『ジョブリターン制度』(※2)を導入しています。また、退職者同士の親睦を目的とした『JTBグループOB・OG会(BOB会)』も存在し、各地域で交流が続いてきました。しかし、あくまでも個人的なつながりを主としたもので、これまでは退職者との関係を積極的に広げるような組織的な取り組みには至っていませんでした。
実際、JTBの文化として“退職者とは距離を取る”という風潮が根強く残っていました。しかし、私はその考えを根本から変えたいと思っています。JTBを辞めたからといって関係が切れるわけではないし、むしろ外で経験を積み、新しい知見を得た方々がJTBにとって重要な存在になると考えています。
(※2注)指定事由により社を退職した社員が、定められた離職期間内での再雇用を希望した場合、一定の条件を満たす社員に対して、そのキャリア形成に資する再雇用(復職)を支援する制度。
JTBにとっての人的資本経営とは
― 人的資本経営の考え方について教えてください。
「10年先のあるべき姿」の実現に向けて、社員のエンゲージメントを高めていくことが、JTBの人的資本経営の根幹であると考えています。エンゲージメントにはさまざまな側面がありますが、特に『The JTB Way』や『ONE JTB Values』といったパーパスへの共感を高めることが大切だと捉えています。
その前提として、今後急速に変化していく環境を想定し、社員、会社双方の視点で体制を整え、会社として、また、社員としてあるべき姿を論じていく必要があります。従来のビジネスポートフォリオの目指す先と人的資本をマッチさせるためには、事業部門とコーポレート部門で人財ポートフォリオを策定し、人的資本の構成を可視化していきたいと考えています。その上で、社員の能力を最大限発揮できる仕組みづくりを進めていくことが、JTBの人的資本経営の基本的な考え方です。
― アルムナイネットワークは、 JTBの人事戦略全体の中でどのように位置づけていますか?
JTBの人的資本経営において、アルムナイネットワークは社内外の知見を結びつけ、組織の成長を促す重要な役割を担っています。これまでは社内での人財育成を中心に据えていましたが、今後は社外とのつながりを強化し、多様な視点を取り入れることで、より柔軟で持続可能な人財戦略を構築していく必要があります。
アルムナイはJTBのDNAを持ちながらも、外部環境で新たな経験を積んだ貴重な人財であり、その知見をJTBの成長戦略に活かすことで、より強固なネットワークが構築できます。短絡的な採用手法として捉えるのではなく、社外との共創を生み出し、新たな価値を創出する上で、今後必要不可欠なものになると考えています。

アルムナイネットワークを立ち上げた背景
― アルムナイネットワークを立ち上げようと考えたきっかけについて教えてください
時代の変化とともに、企業と個人の関係も大きく変わってきました。以前のように“一つの会社で定年まで勤め上げる”という考え方は、もはや過去のものです。これからのJTBは、社内でのキャリアパスを提供するだけでなく、社外とのつながりも活かしながら、新たな価値を生み出していかなければなりません。
特に、アルムナイの皆さんは多様な業界や職種で活躍されており、その知見をもってJTBの未来に貢献いただける機会は数多くあります。今までは“新卒から育て上げる”という人財戦略が中心でしたが、それだけでは今後の成長は難しい。だからこそ、アルムナイとの連携を戦略的に強化し、JTBの内外で活躍いただくことが不可欠だと考えています。
実際に、10年後のJTBの人財戦略を策定するにあたり、過去に退職し再び入社してくれた社員に参加してもらい、コントロールタワーとしてリードしてもらっています。外部で培った経験を活かし、新しいJTBの未来を創る役割を担っていただくことを期待しています。
目指すアルムナイネットワークの姿
― 具体的に、どのようなネットワークを構築していく予定ですか?
アルムナイネットワークは、単なる情報共有の場ではありません。JTBとアルムナイの双方にとって価値をもたらす、実のあるつながりを作っていきたいと考えています。特に、アルムナイの知見を活かし、新規プロジェクトの共同開発やビジネス連携を進めることで、より大きな価値を生み出したいと考えています。また、アルムナイが持つ専門性を活かせるような、JTBグループ内外における適材適所で活躍できる機会を創出していきます。そして、ツーリズム産業全体の人財基盤を強化し、業界のさらなる発展に貢献することも視野に入れています。
また、JTBは今後、グローバル展開を加速させていきます。その中で、海外で活躍するアルムナイともつながりを強化し、より広範にわたって共創を生み出したいと考えています。
このネットワークは、単なる過去のつながりではなく、未来を共に創るプラットフォームです。JTBが変革していく中で、アルムナイの皆さんにもぜひ関わっていただきたいですね。
アルムナイの皆さんへのメッセージ
― 最後に、アルムナイの皆さんへメッセージをお願いします。
JTBは、アルムナイの皆さんに対してオープンかつ積極的に情報を発信していきます。かつてのJTBとは異なり、より柔軟な関係性を築いていきたいと考えています。ぜひ気軽にネットワークに参加し、新しい発見やつながりを楽しんでいただければと思います。
また、再入社を検討される方には、JTBは大きく変わっていることをお伝えしたいです。働き方や制度も進化し、多様なキャリアパスを実現することが可能になっています。そして、私たちは10年後のJTBの未来を共に創る仲間を求めています。この変革の波に、ぜひ一緒に乗っていただければと思います。

※こちらは過去、JTBに在籍していた方専用のネットワークです