株式会社横浜銀行(以下、横浜銀行)が、2023年2月に「横浜銀行グループ アルムナイネットワーク」の運営を開始しました。
横浜銀行では、同行グループを退職後、他社・他業態等でキャリアアップした方が、更なる活躍のフィールドとして同行グループを選択し、力を発揮してもらうために本ネットワークを構築することとなりました。
今回は横浜銀行 人財部 仁平純一部長に詳しくお話を聞きました。
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※こちらは過去に横浜銀行グループに在籍していた方専用のネットワークです
「もう一度横浜銀行グループで働きたい」に応えるために
ー 地方銀行として初となるアルムナイネットワークを立ち上げた背景について教えてください。
従来から、元行員を再雇用する「ジョブ・リターン制度」を設けていました。結婚や出産などライフイベントを機に退職した行員が主な対象でしたが、ここ数年は20代~30代前半くらいの若手行員が転職した後に「やっぱり横浜銀行で働きたい」と戻ってきてくれるケースも出てきました。
外でスキルを磨いた社員が帰ってきて力を発揮してくれるのは、当行グループとしても大変嬉しいことです。現在、銀行では様々な分野の業務で高い専門性を求められ、人財ポートフォリオの転換を余儀なくされています。即戦力となる専門人財を採用するために積極的に経験者採用をおこなってきましたが、それに加え、再入社を希望する元社員の登用を促したいと考え、アルムナイネットワークを立ち上げました。
これまでは会社公認でアルムナイと繫がるという仕組みはなく、退職者が個人的に元同僚とプライベートで連絡を取り合うくらいでした。今回、ネットワーク化によりアルムナイと持続的な関係性を確立することで、再度当行グループに戻って来られるよう、橋渡しができればと考えています。
行員の多様なキャリアパス構築を応援したい
——業務で高度な専門性が求められるようになり、行内の人財ポートフォリオの転換が迫られていると伺いました。行内でのキャリアや人財についての考え方の変遷を教えてください。
昨今ではお客さまに高度なサービスやソリューションを提供するため、銀行内でも様々な業務に高い専門性をもって取り組むことが求められています。
また、従来のメンバーシップ型・単線型のキャリアパスだけでなく、自らの専門性を高めることで自己実現をしたいという若手行員も増えてきていることから、ジョブ型・複線型のキャリアパスを描ける仕組みを取り入れることが重要と考えています。 行内で専門人財を育成し、行員に多様なキャリアパスを用意するために、様々な取り組みを並行して始めています。
——顧客ニーズの高度化や、キャリアに対する考え方の変化が背景にあるのですね。具体的にはどのような取り組みをされているのですか?
たとえば新卒採用では、昨年から専門コースによる採用をスタートしました。総合職採用では従来のオープンコースに加え、デジタル戦略、データサイエンス、ICT推進の3つの専門的な採用コースを設けました。入行後の配属先もそれぞれのスキルセットに配慮した部署に決まっています。
また、若手・ミドル層の多様なキャリア形成を推進するための制度も拡充しています。行内公募制度では、キャリアステージを問わず希望する分野での業務や出向により、主体的なキャリア選択を後押しします。
さらに、2021年には「キャリア・イノベーション支援制度」を新設し、社外での兼業・副業を解禁しました。たとえば私の部下は、週のうち4日は当行に勤務しますが、残り1日は地元異業種の他社で、中期経営計画を作る業務をしています。別企業の仕事を通じて当行とは違うカルチャーを経験し、そこで得た視点を行内業務にも活かしてもらえればと期待しています。
「キャリア・イノベーション支援制度」には、一定期間休職して「学び」に専念する「イノベーション支援休職」と、当行での就業時間外で「学び」 の時間を一定期間集中的に確保する「イノベーション支援勤務」もあります。企業経営の体系的な知識を集中して学ぶためにビジネススクールへ通学する、公認会計士や税理士など銀行の業務に直結する資格の取得をすることなどはもちろんですが、外のカルチャーを体験するという趣旨に沿っていれば幅広く認めたいと思っています。豊かなセカンドキャリアを作ってもらうための準備運動としても活用してほしい制度です。
このように、多様なキャリアパスを選択できるよう、まずは制度の整備を進めています。若手行員の離職が昔と比べ増えている今だからこそ、転職しなくても行内やグループ企業で成長し、自己実現ができる組織への変革が必要です。今後は行員自身がチャンスをどんどん掴んでいき、「こうなりたい」と思う自分を目指すような風土を創っていきたいと考えています。
アルムナイをネットワーク化し、再入社に繋げる試みも、複線型キャリアパスの提示と専門人財確保の取り組みの一環です。企業の人財育成においては越境学習の重要性が指摘されていますが、退職後に戻ってきてくれるアルムナイはまさに越境学習で知識・スキルを身に付けた人財です。外での経験を、当行グループで発揮してくれることを期待しています。
——銀行業界の中でも先進的な視点を持ち、柔軟な発想で人事制度の改革に取り組まれているのですね。このような柔軟性は、横浜銀行さんのカルチャーなのでしょうか?
近年は特に、若手の声を反映するようにしています。あとは銀行業界に留まらず、他業界の取り組みを意識するようにしています。人事領域では女性の活躍推進やダイバーシティなど、相当努力をして取り組まなければ人財を確保できない時代です。我々が率先して業界の風土をオープンに変えていき、銀行に関心を持ってくれる学生を増やし、行員のエンゲージメントを高めていきたいと思っています。そのためにも、今は様々な施策にチャレンジしていく時期ですね。
——社内の理解を得るのに苦労されたことはありますか?
入行以来ずっと当行グループを支えてくれている社員と温度差が生じないよう注意して進めています。アルムナイとして再入社される方には、退職後、他流試合、越境学習を通じて培った市場価値に応じて活躍してもらいたいですが、同時に周りの行員が納得感を持てるよう配慮が必要です。
そのためにはマーケットバリューや培ったスキルを可視化して評価できる仕組みが不可欠で、今後整備を進めていく必要があると思っています。戻ってくるアルムナイ、受け入れる行員ともに納得性のある仕組みにしていかなくてはと考えています。
まずはロールモデルを
——今後アルムナイとの関係の中で取り組みたいこと
横浜銀行だけでなくグループ企業全体のアルムナイを対象としているので、多様なバックグラウンドを持つ皆さんの参加を期待しています。今後、当行を退職した方が、アルムナイとしてグループ内で他の企業に再入社することもあるかもしれません。グループ全体で取り組むことで、シナジー効果を高められればと思っています。
ネットワークを立ち上げ、一気に再入社を募るというよりは、まずはロールモデルを作っていきたいですね。デジタル分野や証券・マーケット運用、国際営業といった専門性の高い分野の方々とのコミュニケーションに期待しています。その中で離職防止やアルムナイへのアプローチに関するヒントを得られたらと考えています。
アルムナイとのかかわり方については、目下検討しています。アルムナイネットワークについては他社の取り組み事例がどんどん出てきていますから、それらを参考にしつつ、当行に合った運用にチャレンジしていく予定です。
アルムナイへのメッセージ
アルムナイの皆さんにとって、「また戻りたい」「力を発揮するなら横浜銀行グループで」と思える企業であるために、行内での改革に取り組んでいます。いったんは当行の風土が自分に合わないと思って退職された方であっても、アルムナイネットワークを通じて発信される様々な情報をもとに、当行や当行グループが日々進化していることを実感いただきたいです。アルムナイの皆さんとの交流を楽しみにしていますので、ぜひネットワークにご参加ください。お待ちしています。