KPMGコンサルティングのアルムナイイベントをレポート!アルムナイコミュニティ開設から1年半、30名が「再入社」する会社と退職者との関係性は?

2023年3月9日、KPMGコンサルティング(以下、KC)の第2回アルムナイイベントがオンラインのバーチャル会場にて開催されました。2021年9月に正式にアルムナイコミュニティの運用が開始されてから2回目となるイベントです。

イベントは2部構成で、第1部では講演、第2部では交流会を行いました。その一部をレポートします。

第1部. 「KC Update」&「Alumni Career Update」

イベントの第1部は、宮原社長による「​​KC Update」からスタート。

「KCが順調に成長できているのは、これまで支えてくださったアルムナイの皆さんのお陰でもある」という宮原社長の感謝の言葉とともに、現在の従業員数や売上の推移、組織体制のほか、新しく策定したCI(コーポレートアイデンティティ)や新たに導入された各種制度と働き方に関する取組みなどが紹介されました。アルムナイ以外には社外公開していない限定情報もあり「会社を卒業しても、アルムナイは仲間である」という同社の想いを感じます。

KCアルムナイの会員数は、開設後約1年半で約400人に達しました。KCは、2014年設立の若い会社なので、退職者の多くがKCアルムナイに登録していることになります。

そして驚くべきは、再入社した社員の人数。アルムナイ立上げと同時に正式に制度化した「Welcome back制度(再入社制度)」で同社に戻ってきた人は約30名にのぼります。前回のアルムナイイベントがきっかけとなり、再入社へつながったケースもあるといいます。

「イベントでは、『やっぱりKCで働きたい。戻ってもいいですか?』と、アルムナイメンバーから直接声を掛けてもらったこともありました。結果的に、イベント参加者から5名が再入社してくれましたね」(宮原社長)

また、前回のイベントでは、KCとの協業を提案してくれたアルムナイもいて、KCとのコラボレーションでアプリ開発が実現した事例もあるそうです。

「そうやって再入社だけでなく、社外のKCファミリーとして、一緒にコラボレーションしたりビジネスや業界のトレンドについて熱く語り合ったり情報交換したりと、つながっていられる素敵な関係性を、これからも温め大切にしていきたい。アルムナイが何かアクションを起こしたいと思ったときに、KCが選択肢の一つとしてそのアクションを後押しする力になれたらうれしい」と、KCアルムナイ事務局(以下、事務局)は話します。

事務局では、卒業してもKCをいつでも気軽に立ち寄れるキャリアのホームグラウンドのような存在に感じてもらうことを目標に、アルムナイ同士が自由に交流できるチャットルームの開設や、KCの近況を届けるコンテンツのSNSへの投稿、そして今回のような交流会企画など、さまざまな取組みを実施しているといいます。

続いて、第1部の後半では「Alumni Career Update」をテーマに、卒業生によるトークセッションを実施。

KC在籍時にクライアントであった大手メーカーへ転職した山口さん(KCの前身の会社を含めてKPMG歴15年を超える)と、新卒で入社し、社会人3年目でスタートアップ企業への転職を決めた園田さんの2名が登壇。

以下ではトークセッションの一部を紹介します。

Alumni Career Update「“KCイズム”は今も生きている」

事務局:まずは退職の経緯からお伺いできますか?

山口:転職活動は全くしていなかったのですが、たまたまご縁が重なり、転職することになりました。

転職先の企業は、今後事業規模を2倍以上に成長させる長期目標を掲げており、そこに経営企画として携わるという大きなチャンスとご縁をいただいたと思っています。

園田:僕もKCが好きだったこともあって転職は考えていなかったのですが、今の会社の代表が大学の先輩で、声をかけてもらったことが転職のきっかけでした。

事業内容と会社が目指している方向性に共感し、「どうしてもやりたい」と思ったものの、当時はまだ設立1年目のスタートアップだったこともあり、数カ月悩んで転職を決めました。

事務局:転職後にKCでの経験などは役立ちましたか?

園田:KCには新卒で何も分からない状態から育てていただき、社会人としての基礎を築いてもらったと思っています。その中でも一番大きいのは、いろいろなことに挑戦させてもらえたことですね。

新卒1年目の新人が全社員の前でプレゼンする機会をいただいたり、ブロックチェーン先進国のエストニアに海外研修に行かせてもらったり。スタートアップは挑戦し続けないと潰れかねないので、KCで挑戦する経験を重ねられたことは今の自分にとても活きていると感じます。

あとは、マインドセットの部分ですね。お客さまに寄り添うなど、コミュニケーションの部分は今も本当に役立っています。

山口:KCを離れたことで「KCはめちゃくちゃ良い会社だったんだな」と改めて思います。僕が今の会社でやれているのは、KCで育ったからこそですし、先ほどの宮原さんのプレゼンテーションを聴きながら、自分の中にKCの言葉や考え方が染みついているのを感じました。

1000人を超える組織なのに、KCには、「それいいね。じゃあ来週からやろうよ」みたいなノリがあるじゃないですか。

事務局今も変わらずありますね。

山口:そんな“KCイズム”のようなものは、今も生きていますね。今の会社では、部署を超えてさまざまな人を焚きつけることが僕の役割ですから。

事務局:今でもKCメンバーと会っていますか?

園田:僕は新卒入社で、かつ社内イベントが好きなタイプなので、今でも月2〜3回ペースで同期と会っています。この間はゴルフをしましたね。

山口:仕事で何かがあると連絡して、意見交換をさせてもらうことがあります。KCのパートナーに、今の会社でマインドセットを高めてもらうための相談にのってもらったこともありますね。友達というよりは、戦友のようなイメージだなと思います。

第2部. 交流会

第2部は交流会。参加者はバーチャル会場でアバターを使い、それぞれが自由に交流を行いました。会場には宮原社長以外に現役社員も参加し、主役であるアルムナイが目的に応じて話をしやすい仕掛けづくりも。

会場には参加者が好きに話せるスペースを多数設けて、現在取り組んでいるプロジェクトについて話したり、KC退職後のキャリアについて語り合ったり、話題のChatGPTを業務にどう活かすか議論したりと、さまざまな話題で盛り上がりました。

当日はオーストラリアやヨーロッパから参加しているアルムナイもいて、「こういうイベントを通じて、たくさんの旧知の仲間だけでなく、新しい仲間にも出会える」と、うれしそうに話しているのが印象的でした。

今回のイベントを通じて感じたのは、社員とアルムナイの垣根のなさ。もともとコンサルティングファームにアルムナイ文化が浸透しているというだけでなく、会社としてアルムナイとの接点を持ち続けているがゆえにお互いの距離が近く、「自分は辞めた人間だから」といった後ろめたさもなく、アルムナイがKCや現役社員と接点を持てるのだろうと感じました。

そして、それが再入社のハードルを下げることにつながっているのだと思います。アルムナイコミュニティができてから再入社者が数倍にも増え、Welcome back制度で30名も戻ってきていることは、まさにそれを裏付けているでしょう。

アルムナイと企業の関係性を確立した先の理想のかたちが垣間見える、KCのアルムナイイベントでした。