【JBICアルムナイ】グローバルスタートアップへの投資を通し、日本経済の復興を目指す

株式会社 国際協力銀行(以下、JBIC)アルムナイの山田 昌平さんにお話を伺いました。

2008年にJBICに入行し、約14年半にわたり幅広い金融業務に従事。ニューヨーク駐在、JBIC IG Partners等を経て退職し、2022年にSBIインベストメント株式会社に転職した山田さん。

その後、投資部部長として国内外のスタートアップへの投資などを手掛け、日本発のスタートアップを世界に送り出すことを目指されてきました。2025年2月の取材後にはSBI Holdings USAのCEOとして、米国はシアトルに居を移し、北米スタートアップへの投資を行うファンドの運用を行うとともに、日系スタートアップ米国進出支援も行われています。

JBICでの経験がどのように現在の仕事に活きているのか、そして今後の展望について語っていただきました。

山田昌平さん

※過去、JBICに所属していた方専用のネットワークです。

JBIC時代に培った海外ビジネスの知見が投資業務に活きている

──現在はSBIインベストメントで活躍されていると伺っています。どのような業務を担当しているのかお聞かせください。

投資部部長として、国内外のスタートアップへの投資を担当しています。投資だけにとどまらず、国内外のベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンドなどとの資本提携にも携わっています。スタートアップ投資をしたくてJBICから転職したので、まさにやりたいことができています。

SBIインベストメントには2022年10月に入社し、最初に投資を実行したのは、2023年の4月で、日本を代表する核融合スタートアップ企業のHelical Fusionに投資をしました。その後はロボットベンチャーとして知られる株式会社Mujinへの個別投資などを行いました。

その後、JBIC時代の縁もありアフリカ企業に投資をしたいという若手が入社したことをきっかけに、アフリカのスタートアップへの投資にも注力をしました。2023年11月には、アフリカ最大手のベンチャーキャピタルであるNovastarとの戦略的資本提携が実現し、1年間で約3件の投資を実施しました。

最近は採用活動も行いながら、JBICのつながりを起点とした幅広いネットワークを活かして、業務を進めています。

──グローバルに活躍されているんですね。JBICでの経験は、現在の仕事にどのように活きていますか?

一番大きいのは、海外投資を担当した時に学んだ海外での情報収集の方法です。例えば、アフリカやアジアの新興国に投資する際は、まずJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)等の政府系機関に連絡を取り、現地の政治・経済情報を収集するというアプローチをします。JETROは各国に拠点があり、現地の最新情報を駐在員が日本語でまとめているので、入り口として最適です。追加で関係者にヒアリングすることで、必要な情報をある程度集められます。こういった勘所はJBICで培われたものだと思います。

大企業との関係構築の方法も、JBICでの経験が基礎になっています。産業投資・貿易部での武田薬品工業株式会社のShire買収などのM&A案件へのファイナンス経験を通じて、大企業の中でどの部署の誰にアプローチすれば良いのか、どのように案件を持っていけば効果的かといった知見を得ました。現在のファンド運営でも大きな強みとなっています。

さらに、財務部財務課での財務省主計局との予算折衝の経験も活きています。現在、スタートアップ支援において政府の補助金や予算に関する知識が必要となる場面が多く、官公庁との折衝経験は他では経験できないJBICでの貴重な業務経験ですね。

その他、世界中のさまざまな業種・役職の方々とのお付き合いを通してビジネス全体を理解できたこと、海外勤務を通して先進国と新興国の仕事の進め方の違いを肌で感じられたことなど、JBICの14年間半では本当に多くを学べました。

日本のスタートアップが世界で成功する足がかりをつくりたい

──今後の取り組みについてお聞かせください。

今はAIやAIエージェント、ロボット、半導体といったディープテックに注目しています。ディープテックは、世界的な課題を解決できるポテンシャルがあり、今後ますます成長が期待できます。国や地域でいいますと、アメリカやアフリカの企業への投資に力を入れています。

2025年3月からはシアトルに赴任し、現地で北米を対象としたファンドとインキュベーション事業の運営に携わります。シアトルは、Microsoftの本社やAmazonの本社などがあり、さまざまな産業が集まるポテンシャルの高い場所です。その一方、ベンチャーキャピタルはまだまだ根付いていません。

ベンチャーキャピタルは突き詰めれば、ローカルビジネスだと思っています。現地に根を張り、適切なパートナーと組み情報戦を制していく必要があります。そして、有望なスタートアップをどこの誰にスムーズに紹介できるかが勝負です。今回のプロジェクトを成功させることで、野心的ではあると思いますが、日本のスタートアップがアメリカのマーケットにスムーズに参入できる環境を整えたいです。

私は2011年から2014年にかけてJBICのニューヨーク事務所に駐在していました。そこでアメリカの西海岸を中心としたスタートアップが、アメリカの経済を変えているのを目の当たりにしたんです。当時の経験から、日本発の大きなスタートアップがアメリカで成功すれば、マーケットは大きく変わり、ひいては日本経済の復興につながると考えています。

人生もビジネスも大切なのは縁。つながりを大切にしたい

──JBICのアルムナイネットワークに期待することをお聞かせください。

これからも多くの方と交流したいですね。多方面で活躍されているアルムナイの皆さんが参加しているので、さまざまな意見を交換するなかで、気づきを得られることが多いんです。そのつながりがいつかビジネスのきっかけになるかもしれないと期待しています。

キャリアも含めて人生は、人との縁で左右されるところも大きいと思っています。私自身のキャリアを振り返っても、若手時代の管理部での努力を見ていた周囲からの評価もあり、その結果としてニューヨーク駐在のチャンスをもらえました。

また、JBIC時代のつながりが、SBIインベストメントでのビジネスの助けとなる場面も少なくありません。プライベートでもJBIC時代の同期とは今でも非常に仲が良く、退職した今も現役時代と変わらない頻度で付き合いが続いています。アルムナイの皆さんとの縁も大事にしたいと思っています。

※過去、JBICに所属していた方専用のネットワークです。