DOWAホールディングス株式会社(以下DOWA)は、1884年の創業以来、140年以上にわたり非鉄金属の製錬を基盤に、環境・リサイクル、電子材料、金属加工、熱処理といった多様な事業を展開し日本のものづくりを支えてきました。
2025年9月、同社は「DOWAアルムナイコミュニティ」の運用を開始しました。その背景や今後の展望について、この取り組みを推進する、DOWAホールディングス人事部、栗田 哲さん、安富 良輔さん、福田 莉菜さんに伺いました。

人事部 人材開発室 栗田 哲さん(写真中央)
人事部 人材開発室 安富 良輔さん(写真左)
人事部 人材開発室 福田 莉菜さん(写真右)
キャリア採用の成功が拓いた、アルムナイとの新たな扉
――今回、貴社がアルムナイコミュニティを立ち上げた背景を教えてください
栗田さん:弊社は歴史ある非鉄金属メーカーということもあり、新卒社員の定着率が高く、もともとキャリア採用社員は少ない企業でした。また、中途退職されたアルムナイとの接点は個人的な関係に限定され、復職制度もあるものの活用はされておらず、ある種閉鎖的な文化が根付いていました。
しかし、事業の変革期を迎え、外部の新たな知見やスキルを持つ人材の獲得が急務となり2024年に採用チームを新設。キャリア採用を本格化した結果、採用人数は前年度の5名から約40名へと、実に8倍に増加しました。数字だけではなく、「素晴らしい人材が入ってくれた」「新しい視点が加わり、職場に良い風が吹いている」といった社内からのポジティブな反響が多く生まれたことが最大の成果だったと捉えています。こうした声に触れ、私たちは外部の知見を持つ人材との間で生まれるシナジーこそが今後会社の成長に不可欠であると強く再認識しました。
一方で、転職市場の活況や採用コストの高騰という課題に直面するなかで、自社を深く理解し、即戦力となる人材を継続的に確保することの難しさも予感していました。解決策を模索する中で、私たちは「アルムナイ採用」が注目されていることをしり、「自社と他社の両方を知るアルムナイこそ、最高のパートナーになり得るのではないか」と考えました。事業環境がめまぐるしく変化する今、多様な経験を持つ人材の力なくして会社の成長はあり得ません。その想いが、このコミュニティを立ち上げた最大の原動力です。
――取り組みの開始にあたり、どのようなハードルがありましたか?
栗田さん: 最も大きなハードルは、社内に前例がなかったことです。何から手をつければ良いのか、そして何より「一度会社を辞めた人を呼び戻すことに、どんなメリットがあるのか」という周囲の疑問が出た場合に、どう答えるべきなのか明確な解がなく悩みました。また、一部の現役社員が「再雇用」という言葉の持つイメージに抵抗感を抱くのではないかという懸念もありました。
しかし、ハッカズーク社とリフカム社(※)のアルムナイとリファラルに関するセミナーで「採用することに固執せず、まずはコミュニティを立ち上げることから始めれば良い」という考え方に触れ、復職してもらうことだけがゴールではないのだと、視界が開けました。情報交換やビジネスでの協業など、緩やかなつながりの中から新しい価値が生まれるかもしれない。そう考えれば、採用という枠を超え、DOWAへのエンゲージメントを高める活動にもなり得ます。
その発想の転換のおかげで、心理的な負担が一気に楽になりました。社内の理解を得るプロセスでは、まずこの「コミュニティ」という概念から丁寧に説明しました。最初は不安もありましたが、やるべきことが明確になってからは、自信を持って推進できるようになりました。
※2025年03月、株式会社リフカムは株式会社ウィルオブ・パートナーに社名変更しました

「社内外に開かれた会社」へ。アルムナイとの関係構築が組織変革の起爆剤に
――アルムナイとの関係構築は、会社全体の成長にどう繋がりますか?
栗田さん: 私たちは先般公表した中期計画2027において「経済的価値と社会的価値の両立を図り、成長し続ける人と組織をつくる」という2030年のありたい姿を設定し、その実現に向けて「社内外に開かれた会社」になるという方針を掲げています。アルムナイコミュニティは、まさにこの目標を実現するための重要な鍵だと考えています。アルムナイは、私たちの会社の良い点も課題も、そして外の世界の常識も知る、他に代えがたい貴重な存在です。
そのような方々と再び繋がり、コミュニケーションを取ること自体が、組織の自己変革を促します。キャリア採用で入社された方々がもたらしてくれたように、アルムナイとの交流は、私たちに新しい視点や気づきを与え、組織文化を活性化させる「起爆剤」になると確信しています。これは単なる採用戦略ではなく、DOWAが未来に向けて成長し続けるための、組織開発そのものなのです。この取り組みの意義は社内でも広く共有されており、会社全体で大きな期待を寄せています。
――現役社員には、どのような良い影響が期待できますか?
栗田さん: アルムナイとの交流は、現役社員にとって自己成長の絶好の機会になると考えています。キャリア採用で入社された方々を見ていても、彼らが前職で培った経験や固定観念にとらわれないアプローチは、周囲に大きな刺激を与えています。例えば、私たちの部署では採用サイトの全面リニューアルを、他部署では組織運営や部下育成の手法変革を、キャリア採用社員が中心となって進め、目に見える成果を上げています。
福田さん:一つの組織に長くいると、どうしても視野が狭まりがちです。しかし、DOWAを知った上で一度外の世界を経験したアルムナイと対話することで、現役社員は自らの仕事やキャリアを客観的に見つめ直すことができると思っています。「こんな考え方があったのか」「自分たちの強みはここだったのか」といった新たな発見は、日々の業務へのモチベーションを高めるだけでなく、個々のキャリア形成においても重要な指針となるはずです。アルムナイとの繋がりは、現役社員が社内にいながらにして、外の世界と接続し、学び続けることを可能にする、貴重なプラットフォームになると期待しています。

復職だけではない。共に未来を創る「ファン」との多様な関係へ
――これからアルムナイと、どのような関係を築いていきたいですか?
栗田さん: 私たちが目指すのは、復職だけをゴールとした関係ではありません。もちろん、再び仲間として一緒に働いていただけるならこれほど嬉しいことはありませんが、まずは業界動向についての情報交換やビジネスパートナーとしての協業など、多様で緩やかなつながりを広げることから始めたいと考えています。
そのために、まずは「DOWAは今、変わり続けている」ということを、アルムナイの皆様にお伝えしたいです。働き方改革、福利厚生の拡充、新たな人事制度の導入など、アルムナイの皆様が在籍されていた頃とは会社の姿も大きく変化しています。例えば、結婚・育児・介護などの理由がある場合、現在の勤務先が属するエリアで引き続き勤務することができる「リージョナルワーキング制度」や、男性育休の取得促進など、ライフイベントに柔軟に対応できる環境を着実に整えています。
こうした会社の“今”をお伝えし、まずはDOWAの「ファン」になっていただきたいと考えています。そして、ウェブ上のトークルームや懇親会などを通じて気軽に交流する中で、皆様の知見をお借りしたり、あるいは私たちの挑戦を応援していただいたり、そんな双方向の関係を築いていくことが理想です。
――最後に、アルムナイと現役社員へメッセージをお願いします。
安富さん: アルムナイの皆様には、ぜひ一歩引いた視点から、改めてDOWAを見ていただきたいです。在籍時には関わることのなかった事業や、会社の新たな取り組みを知ることで、「DOWAはこんなこともやっているんだ」という発見があるはずです。そこから、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいなと思います。現役社員の皆さんにも、このコミュニティを社外のプロフェッショナルと繋がる機会と捉え、自身の視野を広げるために積極的に活用してもらいたいです。

福田さん: この取り組みは、アルムナイと現役社員、双方にとってプラスになると考えています。社外で得た新たな知識と、社内で培われてきた知見が交わることで、個人の成長はもちろん、事業の成長にも繋がる化学反応が生まれるはずです。このコミュニティが、社内外の皆様にとって新たな価値創造のきっかけとなることを願っています。
栗田さん: 私たちは、社員一人ひとりが誇りを持ち、生き生きと働ける組織を目指して、本気で変革に取り組んでいます。「くるみん」「えるぼし」「健康経営優良法人」といった外部機関の認定を取得し、働きやすい環境づくりを進めています。今回のコミュニティは、その私たちの想いを形にするための一歩です。本当に気軽な、ゆるやかな繋がりで構いません。ぜひこのコミュニティにご参加いただき、これからのDOWAが創る未来に、関心を持っていただけることを心から楽しみにしています。
