日立システムズ、アルムナイコミュニティを導入「退職後もともに働いた仲間としてつながりつづける新しい関係を築けたら」

近年、企業と退職者との新たな関係性として注目されている“アルムナイコミュニティ”。
2025年4月、日立システムズでも、アルムナイコミュニティの運営が本格的にスタートしました。
本記事では、同コミュニティの運営を担う人事総務本部人財部タレントアクイジショングループの中西律子さんと高取千鶴さんに、立ち上げの背景や、アルムナイに込めた想い、そして今後の展望についてお話を伺いました。

株式会社日立システムズ
人事総務本部人財部タレントアクイジショングループ 部長代理 中西律子さん(写真右)
人事総務本部人財部タレントアクイジショングループ 主任 高取千鶴さん(写真左)

※株式会社日立システムズに在籍していた方専用のネットワークです

人と人とのつながりを大切にする、アルムナイと会社双方にとっての新しい価値創造を実現するためのアルムナイコミュニティ

── まずは、アルムナイコミュニティの取り組みを始めた背景を聞かせてください。

中西:きっかけは雇用の流動化です。当社は経験者採用にも力を入れており、年々ご入社いただく方の数が増えております。一方で、今後のキャリアを見据えて当社を卒業される方もいらっしゃいます。人事として、終身雇用を前提とした働き方が変化していることを日々実感していました。その中で、「せっかくご縁があって一緒に働いた方々と、退職したあとも何かしらの形で関わっていけたら」という想いを抱き、退職でおわってしまっていたアルムナイとの関係を見直し、退職後もアルムナイとつながり続けることができる場をつくりたいと考えるようになったことがスタートです。

そこで、アルムナイコミュニティを立ち上げました。今後はアルムナイも含めて当社の人的資本と捉え、当社だけではなくアルムナイにとっても価値のあるコミュニティを作っていきたいです。

──単なる再雇用のためではなく、人的資本という観点からの取り組みなのですね。

高取:はい。退職後もアルムナイコミュニティを通じてアルムナイとつながりを持ち続けることができれば、退職後もビジネス上のコラボレーションが実現できたり、情報交換や人脈の拡大が見込めたり、時には再雇用の可能性も生まれます。当社は事業内容や特徴を端的に示すメッセージとして「Human*IT」を掲げ、人の知恵や情熱が融合すること、人とITのチカラで驚きと感動のサービスを届けていくことを大切にしています。そのため、アルムナイの知恵や情熱とも融合していくことができれば、新たな価値を創造していけるのではないかと考えました。「アルムナイも含めて当社の人財」と捉えていくことは、人的資本の観点からもとても重要だと感じます。

中西:また、当社では、2022年に人財戦略「SMILE∞2.0」(※)をスタートさせました。この人財戦略は、自律的成長を従業員に求め、実現するために支援する「成長機会の提供」と多様な個人が集団として力を発揮できる社風・職場を構築する「挑戦を支える職場の提供」の2つを軸に取り組み、従業員一人ひとりが持つ可能性を最大限に実現し、個人と会社双方にとっての新しい価値を創造する職場環境づくりを推進するものです。その中で重視する項目の1つとして「Communication(人と人とのつながり)」を掲げており、アルムナイも日立システムズのことをよく知る大切な人財かつ、つながり続けたい存在ととらえています。アルムナイとつながりつづけることは従業員にとっても、社外視点や情報を自身のキャリアデザインへ活用することができますし、自社の魅力の再発見につながることもあると思います。またアルムナイにとっても、ビジネス協業やビジネス機会の獲得や、他のアルムナイとの人脈拡大、今後のキャリア選択の1つに改めて当社を検討することも可能です。「つながり」から、それぞれが異なる成長ストーリーを描くきっかけにもなると感じています。そういった意味でも、アルムナイコミュニティは、人的資本の観点だけでなく、当社の人財戦略にもつながる取り組みだと思っています。

── これまでは退職者との関係はどのように維持されていたのですか?

中西: 正直なところ、退職後のつながりは、職場単位や個人間にとどまっていました。退職時に「当社からの会社情報の案内連絡を希望する」としてくださった方には、定期的に情報をお届けしていますが、どうしても会社からの一方通行な発信になりがちで、もどかしさを感じていました。

高取:そのため、今回のアルムナイコミュニティは「会社・アルムナイいずれの発信もカジュアルなコミュニケーションも可能な、双方向でつながれる場にしたい」と思っています。そのため、こちらからの発信はもちろんですが、アルムナイの方の現状やお考えなどもキャッチアップできるようにしていきたいです。アルムナイの方の視点や意見は、会社にとって貴重なヒントになるはずなので、そこはこれから積極的に拾っていきたいですね。アルムナイの生の声を聞けることは、当社がより良い会社になっていく上でもとても重要だと感じております。また、アルムナイの方にとっても、要望を踏まえた発信やイベントの開催、アルムナイ同士での交流で、ぜひ人脈を広げるきっかけにしていただけたらと思っております。異業種・同業種問わず、在籍時には出会う機会のなかったアルムナイとの出会いから共創や協業などもうまれていくことが理想です。まだこれからの取り組みですが、当社をよく知ってくれているからこそ、当社とのビジネス上のコラボレーションがうまれるような機会があってもよいのではと思っています。

アルムナイを歓迎する時代へ――想像以上にポジティブだった社内の空気

── アルムナイコミュニティの導入に対して、社内の反応はいかがでしたか?

中西:ありがたいことに、ポジティブな反応が多かったです。特に幹部層は「これからの時代、必要な取り組みだよね」と理解を示してくれました。前向きに背中を押してくれる雰囲気ですね。

── 幹部層の理解があるのは、アルムナイの方にとっても安心材料になりますね。

高取:そうですね。実は幹部だけではなく、現場からも「つながりつづけることで、何か協力しあえるような機会ができれば」といった声もあがっています。「一度でも日立システムズの仲間として働いた方々は、これからも仲間でありつづける」という考えを持って、アルムナイをポジティブに受け止めてくれている方が多いと感じています。

── 会社全体として、アルムナイに対する見方が大きくシフトしてきたんですね。

中西: そうですね。だからこそ、いまアルムナイコミュニティを立ち上げる必要があると思いました。つながりをメインとしていますが、再度当社をキャリアの選択肢の1つとして検討いただける方には、求人情報や当社のいまの姿など、情報を受け取れる場にもしたいですね。実はこれまで、退職時のアンケートに「また機会があれば戻りたい」と書いてくれた方がいても、そのあと連絡を取る手段がなく、情報は公式サイトなどから得ていただくしかなかったんです。

高取: 今後はそういった方にも必要な情報も届けられるコミュニティにしていきたいですね。

壁のない関係へ―アルムナイとともに育てる未来のかたち

── アルムナイコミュニティを今後どのような場にしていきたいとお考えですか?

高取:まずは“気軽に関われる壁のない場所”にしたいと思っています。登録しても「何か発信しなきゃ」とか「積極的に参加しないといけない」といったことはありません。情報を受け取るだけでも大歓迎ですし、ご自身のペースで関わっていただければと思っています。

中西:まずはアルムナイ同士のつながり、というところがメインにはなりますが、将来的には現役社員とアルムナイのつながりも作れるコミュニティをめざしていけたらと思っています。情報交換だけにとどまらず、共創や協業といった「価値の創出」へのつながりが生まれると嬉しいですね。現在は当社以外で活躍されているものの、当社のビジネスをよく理解してくださっているからこそ、最強のパートナーとなる得ることもあると思っています。その逆も然りですね。当社のノウハウや人脈を現在のお仕事でも活かしていただくなど、そういった協創や協業が実現できたら嬉しいです。いずれは、対面でのイベントなどを開催し、会いたい社員と繋がれるなどの機会も作っていきたいですね。

── 会社としての変化を知ってもらう場としても機能しそうですね。

中西: そうですね。実はこの数年で制度や文化も大きく変わってきていて、それを知っていただくだけでも、日立システムズに対する印象が変わるかもしれません。会社のホームページに掲載されている情報だけでなく、コミュニティを通じてさらに知ってもらえたら嬉しいですね。

高取:「今の会社の姿」を届けていくことで、退職された方にも変化を感じてもらえたらと思っています。今日もジャケットやスーツではない服装でインタビューを受けているのですが、2023年8月から自律的な働き方の推進、柔軟な働き方のさらなる実現に向けて、ドレスコードフリーになったんですよ。そういった会社の変化も含めて、「今はこんな取り組みしてるんだ」と、発見や驚きを届けられるだけでも嬉しいです。


── このコミュニティを通じてめざしたい姿を教えてください。

高取:私たちがこのコミュニティで目指しているのは、会社の“ファン”でいていただけるような関係性です。会社を離れる決断をしたことでできた溝があったとしたら、その溝を埋めて、アルムナイの方たちとの架け橋となるようなコミュニティをめざしたいと思っています。

中西: 現役の社員だけで会社がつくられているわけではなく、過去に支えてくださった皆さんがいたからこそ今の会社があります。だからこそ、このコミュニティを通して会社とアルムナイ、それぞれにメリットのある関係性を築いていきたいですね。お互いに価値を見いだせれば、可能性は無限にあるはずです。

──最後に、アルムナイの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

中西:まずはアルムナイの方々に、気軽に登録してもらいたいですね。何か特別な意志や目的がなくても、登録だけでも全く問題ありません。見るだけでもいいし、ちょっとのぞいてみるくらいでも大歓迎です。

その中で、日立システムズらしいアルムナイコミュニティに共感してくださったら、ぜひまわりのアルムナイの方にもこのコミュニティのことを紹介していただけると嬉しいです。つながりを広げることで、より豊かなコミュニティに育てていきたいと考えています。

高取:また、いまはまだスタートしたばかりの取り組みですが、アルムナイコミュニティで実現したいことの意見も遠慮なくいただけたら嬉しいですね。アルムナイの皆さんの意見も積極的に取り入れて、お互いに価値のあるコミュニティにしていけたら嬉しいです。

(※)日立システムズの人財戦略「SMILE∞2.0」について
https://www.hitachi-systems.com/sustainability/social_report/employees/index.html

※株式会社日立システムズに在籍していた方専用のネットワークです。