AI面接・潜在層採用がもたらす“採用の未来” ― パーソルアルムナイ人事が学ぶHRテクノロジー最前線

第3回人事交流会開催の様子

2025年8月28日、「パーソルキャリアアルムナイ職種別交流会」の「第3回人事交流会:最新HRサービスを学ぶ」が開催されました。
本イベントは、HR領域で最前線のプロダクト開発・事業運営に携わるアルムナイを招き、実際のサービスやテクノロジー、活用事例を通じて知見を深めることを目的としたイベントです。転職潜在層へのアプローチを支援する「AUTOHUNT」を手がける岸川さん(株式会社XAION DATA)と、対話型AI面接官を開発する砂田さん(株式会社PeopleX)の2名が登壇。それぞれのサービスに込めた思いや業界の最新動向について語りました。
パーソルキャリアのアルムナイネットワークでは、ただ学び合うだけでは終わらない「ビジネスにつながる」交流が確実に生まれ始めています。

登壇者も参加者も、同じ企業文化を共有した“仲間”であることから、互いの課題感や現場イメージが手に取るように分かる。だからこそ話は早く、深く、率直になる──。その空気が、内容の解像度を一段と上げ、通常のイベントでは得られない実務的な学びを生み出していました。
そして何より特徴的なのは、学びの後に実際のビジネスに繋がっているという事実です。今回のイベントから複数の商談・契約が成立しており、「アルムナイ同士だからこそ、余計な探り合いをせず本質的な話ができる」というネットワークの強みが成果として可視化されました。
本記事では、そんな「アルムナイ自身がネットワークを活用することで進化する学びとビジネスの場」の実態をレポートしていきます。

※過去にパーソルキャリアに在籍していた方(雇用形態は不問)専用のコミュニティ/登録条件あり

アルムナイ自身が活用するネットワークへの進化

パーソルキャリアは、「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」をミッションに、キャリアオーナーシップを育む社会の実現を目指しています。

パーソルキャリアのアルムナイネットワークは、退職後もこのミッションを共有する仲間としてつながり、情報交換・交流・ビジネス協働・再雇用の機会の創出をするために立ち上げました。2023年3月にスタートし、1,000名を超えるアルムナイが登録しています(2025年12月時点)。

同社はこれまで事務局の主催で「人事・管理系」「経営者・フリーランス」「営業」といった職種別交流会を行ってきた中、一部の職種は分科会となりアルムナイ自身が主体的にイベントの企画や運営をしています。今回は「人事職限定の交流会」の第3回としてアルムナイ自らが企画し、事務局サポートのもと開催されました(過去の人事交流会のレポートはこちら)。

アルムナイが自らネットワークを活用しているのも、パーソルキャリアアルムナイの特徴と言えるでしょう。

オープンデータ活用による潜在層採用の最前線

株式会社XAION DATAの岸川さん登壇

セッションの前半では、株式会社XAION DATAの岸川さんが登壇し、「オープンデータを活用した転職潜在層へのアプローチ」というテーマで講演が行われました。

岸川さんはパーソルキャリアでキャリアアドバイザーやサービス企画に従事し、その後スタートアップであるXAION DATAに参画。現在は人事領域を担当されており、人材とデータを結ぶ最前線に立つ立場から、事業とプロダクトについて語られました。

岸川さんが携わる「AUTOHUNT」は、SNSやメディア上のオープンデータを統合し、約800万件を超える個人プロファイルを構築・活用するAIリクルーティングプラットフォーム。LinkedInやFacebookと連携し、個人アカウントからダイレクトにアプローチを送ることが可能で、まさに“転職顕在層だけでなく潜在層”へのアプローチを実現するツールです。

「登録型のデータベースは枯渇しつつある。これからは“潜在層”のデータをいかに活用し、戦略的に接点を持つかが重要」と岸川さんは語ります。

また、AUTOHUNTでは「タレントプール」機能による中長期的なナーチャリングも可能で、候補者との接点を持続的に育む仕組みも整っています。企業の成長フェーズや業績・従業員数の増減といった条件から企業を抽出し、所属人材を横断的に洗い出す機能なども紹介されました。

海外の採用市場では、オープンデータを活用したダイレクトリクルーティングはすでに一般的な手法となっており、岸川さんは「日本市場も5年遅れで確実にその流れが来ている」と指摘。実際、LinkedInの日本国内ユーザー数が昨年だけで100万人以上増加した事例を挙げながら、採用の地殻変動を実感させるプレゼンとなりました。

最後に、「採用競争力を高めるには、今の方法の“延長線”だけでは足りない。手間をかける価値のある領域に、テクノロジーをどう活かすかが問われている」と力強く語り、セッションを締めくくりました。

対話型AI面接官が変える採用の在り方

株式会社PeopleXの砂田さん登壇

続いて登壇したのは、株式会社PeopleXの砂田さん。「対話型AI面接官による新しい選考体験」をテーマに、サービスの紹介とその社会的意義について語られました。

冒頭では、PeopleXの事業概要や急成長の背景を紹介。創業2期目ながらすでに社員数140名超、M&Aを通じてグループ全体は1000社と取引を有するなど、注目のスタートアップであることがうかがえます。

砂田さんが担当するのは、2025年4月に正式リリースされた「PeopleX AI面接」というサービス。生成AIを活用して応募者と“リアルな対話”を行う面接体験を提供するもので、質問に対してその場で深掘りが行われます。さらには英語での面接やカスタマイズ可能な質問設定など、柔軟性と実用性を兼ね備えています。

また、24時間365日対応可能で、実際には夜間や早朝に受験する応募者が60%にのぼるというデータも紹介。「AIだからこそ実現できる選考機会の提供」が大きな価値であると強調されました。

さらに、面接の結果は動画・文字起こし・要約・スコアの形で可視化され、人事担当者が候補者の人柄や強み・改善点を把握しやすい構成となっています。評価項目も全16項目あり、ポジションに応じた重み付けも可能という設計です。

導入事例も幅広く、製薬大手や人気飲食チェーン、地方自治体・大学法人など多岐にわたり、すでに150社以上に導入されています。特に、書類だけでは分からなかった“光る人材”の発掘や、選考の平準化、属人性の排除といった効果に高い評価が集まっているとのことです。

加えて、AIによる採用選考の倫理・ガバナンス面にも取り組んでおり、行政との連携やガイドライン策定を目的とした協議会(コンソーシアム)も設立。パーソルイノベーション社もこの取り組みに参画していることが紹介され、業界全体として責任ある技術活用を進める姿勢がうかがえました。

「人が限られた時間で判断しきれない部分を、AIが支援することで、より多くの人に“選考機会”を届けたい」。砂田さんのこの言葉は、採用のあり方が大きく変わりつつある現在の流れを象徴するものであり、参加者にとっても大きな示唆となるセッションでした。

登壇者の実体験に基づいたリアルな声が飛び交う時間に

セッション後の質疑応答では、参加者から多くの質問が寄せられ、より深い理解につながるやりとりが交わされました。

ーー潜在層はどのくらい転職を意識しているのか?(岸川さんへの質問)

「潜在層といっても、四半期〜半年に一度は転職を意識する人は多い」と語る岸川さん。自身も現在の会社からの最初のスカウトには返信しなかったものの、3ヶ月後に再度届いたメッセージに応じて転職を決意したというエピソードを披露。「一度スルーされても、接点を持ち続けることが大事」と話し、ナーチャリングの重要性を強調しました。

AI面接はどの場面で活用されているのか?(砂田さんへの質問)

砂田さんは「書類と1次面接の“あいだ”でのスクリーニングや、ポテンシャルのある人材の見落とし防止など、使い方は多岐にわたる」と説明。特に「面接の実施時間を制限されない」というポイントは転職を検討している個人、多忙で時間が捻出の難しい法人どちらにとってもありがたいという声は多くいただいていることも強調しました。

プロダクトの成長段階と今後の展望は?(両者への質問)

終盤では「製品が今どのフェーズにあり、次のステージに進むための課題は何か?」という問いが投げかけられました。これに対し、岸川さんは「技術的な難しさよりも、ユーザー側のリテラシーや運用負荷の壁が大きい」と回答。一方の砂田さんは、「AIを“便利なもの”としてだけでなく、“安心して使えるもの”にするための社会的な整備や理解促進も重要」と述べ、技術と社会の間を埋める視点が必要だと指摘しました。

イベントを通したビジネス連携の兆し

交流パートは、懐かしさを感じる場であるだけでなく、活発な名刺交換が行われ、お互いの経歴や参加背景を踏まえた白熱した議論が交わされる時間となりました。
「まだ聞きたいことがあったが、時間が足りなかった」という声もあり、学びのある会であったと同時に、今後継続的に連絡を取り合うきっかけにもなったことがうかがえます。
また、本イベントを通じて実際にビジネス連携の成果も生まれています。
砂田さんは参加者との間で パートナー契約 1 社の締結、導入商談 2 件 を獲得。
岸川さんも、参加していたアルムナイから逆営業の形で相談を受け、実際に発注 1 件 が成立しています。
参加後アンケートでは「登壇が“フラットな立場”で行われ、営業色や利害関係を気にせず話を聞けたと感じましたか」という質問に対し、回答者全員が「とてもそう思う」「そう思う」と回答しました。加えて、「パーソルでどんなことをしていたのかという経験が分かることで、信頼感につながった」という声も寄せられました。
バックグラウンドを共有するアルムナイ同士だからこそ、心理的安全性が生まれ、メリット・デメリットを率直に話し合える。その結果、通常であれば発生する“ニーズの探り合い”や“信用判断のフェーズ”を飛ばし、連携可能性をすぐ検討できるという点は、アルムナイネットワークならではの価値と言えるでしょう。

集合写真

今回のイベントは、単なる職種別の交流というだけでなく、アルムナイが主体的にHRテクノロジーの最前線を学び、ビジネスの種が生まれる場となりました。

パーソルキャリアアルムナイネットワークが今後どのような価値を生み、広がっていくのか、ますます期待が高まります。

※過去にパーソルキャリアに在籍していた方(雇用形態は不問)専用のコミュニティ/登録条件あり