
退職で終わらない「県と個人の新しい関係」を築くために、宮城県は2025年9月24日に「みやぎアルムナイネットワーク」の運用を開始しました。
即戦力となる人材確保と組織の活性化を掲げ、東北の自治体(都道府県)としては初となる「カムバック採用」を導入するなど、人事戦略の大きな転換期を迎えています。
なぜ、宮城県はアルムナイネットワークを立ち上げたのか。
そして、アルムナイの取り組みを通じて、どのような“新しい関係性”を描こうとしているのか。
人事課の皆さんに、その背景と未来のビジョンについてお話を伺いました。
※こちらは過去に宮城県庁に在籍していた方専用のネットワークです
立ち上げの背景:人材確保への危機感と組織の変革
——まず、アルムナイネットワーク構築に至った背景と目的について教えてください。
最大の背景は、即戦力となる人材の確保と組織の活性化です。
特に、公務員採用試験の応募者が全国的に減少している中、宮城県としても採用活動には大変苦戦をしており、強い危機感を抱いています。
このため、公務員の仕事にもっと関心を持っていただき、より多くの方々に宮城県を就職先として選んでいただくため、令和6年10月、宮城県では「職員確保緊急プラン」を策定しました。
同プランで取り組んでいく施策の変化をアルムナイの皆さんにも知っていただき、県の“いま”を伝えたいと考えています。
——具体的に、宮城県庁内ではどのような変化が起きているのでしょうか。
例えば、勤務制度では、これまで育児や介護などに限定されていた週休3日制の適用範囲を、2026年1月から拡大する予定です。
庁舎内のオフィス改革では、部署ごとのプレゼンを経て予算を獲得できる仕組みを導入しました。職員自らが働く環境を魅力的なものへ改革できるようになっています。
若年層の給与引き上げや福利厚生の充実も進めており、特に、男性職員の昨年度育児休業取得率は98.7%に達するなど、働きやすさへの取り組みを強化しています。
また、宮城県の採用試験を受けてくださる方の中には、県外出身者の方もいらっしゃいます。そういった方々には、宮城県の魅力を知っていただくために、今年度より新たに、県内大学在籍の県外出身学生を対象としたバスツアーを実施したり、採用面接にかかる交通費の支給なども実施しています。
こうした組織の変化を知っていただき、宮城県庁を「素晴らしい職場」だと認識してもらうことが重要だと考えています。

——そうした中で導入された「カムバック採用(再採用制度)」とアルムナイネットワークの関係性について教えてください。
組織の変化は、もちろん、学生の方々等にも知ってもらいたいのですが、この変化を1番感じることができるのは、アルムナイの皆さんだと思っています。
特に、アルムナイの皆さんは、即戦力の人材と考えており、その変化を感じて、「また宮城県で働きたい!」と思っていただける方を採用できるよう、カムバック採用を実施する運びとなりました。
今年度実施の主な要件としては、正規職員として2年以上の実務経験があり、平成28年3月31日以降に退職した方を対象とする予定です。
この取り組みを成功させるためには、県とアルムナイが継続的に顔の見える関係性を持ち続けることが欠かせないと考え、今般の「みやぎアルムナイネットワーク」を構築しました。
アルムナイの皆さんには、退職後に培った貴重な経験や外で得た知見などを、ぜひ宮城県の活性化のために活かしていただきたいと考えています。
アルムナイは「宮城の財産」。採用だけではない未来予想図
——これまでは、アルムナイとの公的な繋がりはなかったと伺っています。今後はどのような関係を築いていきたいとお考えですか。
大きく二つの方向性で関係を築いていきたいと考えています。
ひとつ目は、カムバック採用を通じて再び宮城県で活躍していただくこと。
ふたつ目は、県外・他組織で活躍しながらも、宮城県と”並走するパートナー”として関係を続けることです。
アルムナイの方々にとっては、県とのつながりが新たなビジネスチャンスになり、県にとっては、外部から意見をもらったり協働できる機会になる。そんなWin-Winの関係性を築いていきたいと考えています。

——特に「Win-Winの関係」について、どのような連携を想定していますか。
ビジネスにとどまらず、幅広い連携の可能性を見ています。
• 政策のブラッシュアップ:
アルムナイネットワークのアンケート機能などを活用し、様々な背景や立場を持つ方々から、県の施策や事業についてフラットな意見をいただき、ブラッシュアップに活かしたいと考えています。
• 知識共有とコミュニティ:
専門的な知見を持つアルムナイにセミナーの講師を務めていただいたり、また、アルムナイ同士の繋がりを促進し、リアルな交流会などを開催することで、新しいシナジーやコラボレーションが生まれる場にしたいと考えています。
——復職とは別の、アルムナイの皆様に期待する役割は何でしょうか。
アルムナイの皆さんには、宮城県を離れてからも「宮城県のファン」、あるいは「PR大使」のような、応援団の役割を担っていただきたいと考えています。
アルムナイの皆さんから「宮城県は今こんな取り組みをしている」と発信いただくことで、県全体の魅力向上につながります。アルムナイネットワークを通じて、宮城県の“進化”や”変化”を伝え、広げていくことに大きな価値があると感じています。
あなたの声が未来の制度を作る
——最後に、アルムナイの皆様へメッセージをお願いします。
アルムナイの皆さんは、宮城県を離れてからもさまざまな分野で貴重な経験を積まれている事と思います。
そんなアルムナイの皆さんには大きく二つのお願いがあります。
ひとつ目は、今、外部で活躍されている方から見た県政がどう映るか、県民サービスが適切に提供できているかについて、率直なご意見をいただきたいです。
もし「前はできなかったけれど、もう一度宮城県に戻って外で得た経験を活かしたい」という思いをお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひカムバック採用を通じて新たな挑戦をしていただきたいと願っています。
ふたつ目は、育児や介護などでやむなく離職をされていた方へ。
復職を検討する際、「こういう制度があれば働きやすい」といった声をぜひ届けてください。そうしたフィードバックが、次の制度づくりの原動力になります。
私たちは、アルムナイの皆さんを単なる元職員としてではなく、共に東北・宮城県を盛り上げるパートナーとして新しい関係性を築きたいと思っています。
皆さんのキャリアを尊重し、支え合いながら成長ができるコミュニティを目指してネットワークの運営を進めてまいりますので、ぜひお気軽にご参加ください。

※こちらは過去に宮城県庁に在籍していた方専用のネットワークです









