7月28日に株式会社タナベ経営と株式会社ハッカズークが共催で行ったオンラインセミナー「退職者を“裏切者”扱いしていませんか?優秀な人材が退職してしまう組織の改善施策を考える」の一部をレポートします。
2019年転職者数は過去最多に。正社員の約半分が転職経験あり
雇用の流動化が指摘されていますが、データからもその傾向は見て取れます。正社員の約半分が転職を経験しており、2019年の転職者数は過去最多となりました。
2020年の転職者数は新型コロナウイルスの影響で減少していますが、今回のテーマである「中核人材となる優秀な人材」はコロナ禍であっても優秀ゆえに転職ができてしまう。ゆえに「中核人材が退職してしまう」という人事担当者の悩みは変わっていないのではないでしょうか。
「嫌いで辞めたわけじゃない」退職者が増加?
一方で、個人の転職への意識にも変化があります。
当社で行ったアンケート調査によると、「過去勤務した企業の中に、再入社のチャンスがあったら再度働きたいと思う企業はあるか」という質問に「ある」「あり得なくはない」と回答した人は約6割。その理由として「嫌いで辞めたわけじゃないから」が50%近くを占めました。
従来の退職は、会社が嫌だったり不満があったりといった理由が多い印象でしたが、「嫌いで辞めたわけじゃないから」をはじめ、ポジティブな退職の増加が見て取れます。
安定性の定義が「その会社を出ても働けるか」に変わりつつある
その背景として、若手人材の転職やキャリアへの考え方の変化も影響していると考えられます。
入社を希望する、もしくは入社予定の企業の「元従業員の退職後のキャリア」に関心があると答えた学生は約7割。そして、そのキャリアが魅力的だった場合に「志望度が上がる」と答えた人は半数を超えました。
退職後に新しい挑戦ができるのか、その会社で得たスキルや知識が外に出ても通用するのかに関心が強い傾向が伺えます。
『採用学』の著者・神戸大学の服部泰宏先生もおっしゃっていましたが、安定性の定義は「一社でずっと働けるか」から「その会社を出ても働けるか」に変わってきています。その変化を敏感に感じているのが、若い世代なのだと思います。
退職理由の共通点「会社の全てが嫌だから辞める人」は少数
退職理由については、アンケート上は上司・同僚、仕事内容が多いものの、企業ごとのアンケート結果は各社さまざま。本当に多様な声があり、企業によって傾向は異なります。
ただ一つ共通しているのは、その会社の全てが嫌だから辞めるという人は、実はそれほど多くないということ。アンケートでも「退職理由が解消されたら、再入社する可能性が高まるか」という質問に「はい」と答えた人は約7割となっています。
そこで重要性が増すのが、退職者の本音を聞くこと。
例えば上司・同僚への不満から退職を検討するケースは、異動で解決するかもしれません。本音の退職理由が把握できれば、引き止めの可能性は高まるわけです。仮にすぐに解決策がなくても、長期的に不満を解消できれば、再入社の可能性が生じます。
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・退職者の本音を聞く土台「オフボーディング」
・オフボーディングの鍵を握る、退職面談
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文/天野夏海