「#辞めた会社とアルムナイを応援しよう」キャンペーン参加者2名が登壇したオンラインセミナー「退職者を “応援団” にする秘訣〜再雇用からビジネス連携まで幅広い繋がり〜」。
後編では、アルムナイネットワークに関するパートをご紹介します。古巣の会社に対してやりたいこと、また「アルムナイと交流することで退職者が増えるのでは?」の疑問に答えています。
>>前編:アルムナイが“辞めた会社”を応援し続ける理由「好きゆえに退職交渉のしんどさもあった」
男性育休コンサルタント(ポートフォリオワーカー)
広中 秀俊さん(写真左)
2000~2019年 ミサワホームに新卒入社。住宅営業、財務経理、まちづくり事業、働き方改革推進に従事。2019年4月~独立。男性育休コンサルタントを中心として、ポートフォリオワーカーを実践中
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株式会社ゴーリスト/HR事業部/取締役・HRog編集長
菊池健生さん(写真中央)
2009年大阪府立大学工学部卒業、株式会社キャリアデザインセンターへ入社。転職メディア事業にて法人営業、営業企画、プロダクトマネジャー、編集長を経験し、新卒メディア事業のマーケティングを経て、退職。2017年、ゴーリストへジョイン。2019年、取締役就任。人材業界の一歩先を照らすメディア「HRog」の編集長を務める
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モデレータ:株式会社ハッカズーク 広報&アルムナイ・リレーションシップ・パートナー
築山 芙弓(写真右)
2015年アイタンクジャパンに新卒入社し、長期インターン専門メディア「キャリアバイト」および新卒向けスカウトサービス「iroots」の営業・カスタマーサクセスに従事。2018年8月に親会社のエン・ジャパンへ転籍。2019年3月より現職にて広報およびアルムナイ・リレーションシップ・パートナー(コンサルティング)として、「アルムナイ」という新しいコンセプトを広めるべく奮闘中
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非公式のアルムナイネットワークをつくった理由
築山:お二人には「非公式のアルムナイネットワークを立ち上げた」という共通点があります。どうしてアルムナイ同士がつながれるネットワークをつくろうと思ったんですか?
菊池:厳密には僕が立ち上げたわけではなく、立ち上げてすぐ幹部やらない?と声をかけてもらった感じです。めっちゃミーハーなんですけど、2年前くらいにアルムナイって言葉を聞いて「イケてるな!やりたい!」ってなった(笑)
菊池:具体的にはFacebookグループをつくって、個別に声をかけながら参加者を増やして、年に数回飲み会をやっています。現在は約270人が参加していますね。
広中:私の場合は同じタイミングで辞めた人と2人で「アルムナイネットワークを立ち上げよう」という話になったことがきっかけです。Facebook グループには30人ぐらいが参加しています。
数カ月ごとに飲み会を開催していますが、規模的にはまだ全然ですね。CDCはどうやって参加者の数を増やしたんですか?
菊池:飲み会の写真をアップしたら、それを見た人が続々と集まってきた感じですね。社員同士の距離が本当に近くて、とにかく仲が良かったんですよ。みんながどこかしらでつながっているぶん、参加者を集めやすかったように思います。
築山:セミナー参加者の方から「非公式のアルムナイネットワークをつくるにあたって、やってはいけないことはありますか?」という質問がきています。いかがでしょう?
菊池:あくまで有志の集まりですし、ルールが多いグループにしたくなかったので、CDCの場合は厳密に決めていません。
ただ、SNSで現役社員に対して「早くこっちの世界においで」みたいなコメントをしているのを見かけたときはさすがに注意しています。それはあまりよくないですよね。
広中:現状は飲み会をやっているくらいですので、特にルールは定めていないですね。CDCのアルムナイネットワークで、人事とやり取りすることはありますか?
菊池:全くないですね。SNSで「ALUbum」の記事をシェアした時に、現役の人も「すごく嬉しい」ってシェアしてくれていたんです。そういう個人同士の交流はあるんですけど、会社としての交流は現状ないです。
広中:うちも同じです。せっかくなら人事と連携したいですけどね。
OB/OG訪問感覚で「外部の人との接点」を持てるといいのでは?
築山:人事と連携したいとのことですが、ネットワークを会社が認識して、会社として公式にアルムナイネットワークをつくることになったら、したいことはありますか?
菊池:正直あまりなくて、どちらかというと相談されたことに答えるような形がイメージに近いですね。
広中:相談があるのはやっぱりうれしいですよね。必要とされているってことですから。
菊池:自分がCDC社員だった時のことを振り返ると、社員同士で盛り上がることが多かったぶん、外部の人との接点がめちゃくちゃ少なかったんですよ。
そういう意味では、OB/OG訪問感覚で外部の人との接点を持つ機会ができるのはいいんじゃないかなと思っています。『yenta(ビジネス版マッチングアプリ)』のアルムナイ版みたいなイメージで、「この人は転職してこんな仕事をしている」がわかって、会いたいと思った時に会えるようになるとすごくいいんじゃないかなと。
見ず知らずの自社を理解していない人に正論を言われて納得することってあまりない気がするんですよね。そういう意味では、アルムナイは第三者ではあるものの、社風を理解してくれているのは間違いない。アルムナイだからこその良さというのはあるように思います。
広中:外では通じない社内用語を共有できると、知らない人であっても一気に距離が近づきますよね。私は他に、オープンイノベーションが生まれたらいいなと思っています。卒業生はいろんな分野にいて、建設・不動産系以外に私みたいな育休コンサルタントをやってる人がいたり、広告会社で働いている人がいたりする。
ミサワホームのカルチャーを知った卒業生同士や、ミサワホームとアルムナイがつながることによって、イノベーションが生まれる可能性はあると思うんです。事業開発の文脈でいろいろできたらいいなと。「この部署のリソースとマッチしてるんじゃないか?」みたいな具体的な話もできるでしょうしね。
菊池:アルムナイにとっても「頼られてうれしい」っていう感情の部分と「もしかしたら取引先になるかもしれない」っていう実利と、双方がありますよね。
築山:公式のアルムナイネットワークがあったとして、どんなイベントがあったらいいと思いますか?
菊池:一つは交流会なのかなと思います。外との交流の話と通じる部分ですが、現役の社員も混じって「何をしてるのか」自己紹介からはじめて、興味のある人が見つかればその後も個別に接点を持てるような仕組みがあるといいですよね。
そうやってアルムナイが「気軽に話を聞きに行ける人たち」になれるといいなと思います。
プロジェクト単位で古巣と一緒に仕事がしたい
築山:アルムナイネットワークに参加している人の中には、「機会があったら古巣の会社に戻りたい」という人もいるのでしょうか?
菊池:一部はいるんじゃないでしょうか。ただ、雇用という形ではなく、求人広告の制作や営業を業務委託でやるなど、パートナーとして仕事を受けたいと思う人の方が多い気はします。実際にそういう形で仕事をしている人もいますしね。
前職は設立から約30年の上場企業で、社風が強固になる一方で新しいものを取り入れにくくなっている面はあったと思うんです。そういう意味では、行き詰まった時にベンチャーに転職した人間を会議に呼んでみるなど、100%戻るのではなく、一部分だけ使ってもらうようなのはアリなんじゃないかなと思います。
広中:スポットコンサルみたいな感じですね。「このプロジェクトのこの部分だけ一緒にやってください」という軽いノリで協業できるのはいいですよね。
菊池:「この分野についてヒアリングさせて」なんかもできそうですよね。例えば公式のアルムナイネットワークから「こういうことで困っているのでアドバイスくれる人募集します」みたいなメッセージがあって「それなら僕わかります!」みたいにできたらいいなと。
築山: 古巣だからこそフィードバックをきちんとできる、というのはありそうですね。
菊池:顔色を伺わずに言いたいこと言っていいんだったら、言えることはたくさんあると思うんですよ。むしろそれができないのであればアルムナイと協業する意味はあまりないようにも思います。
広中:アルムナイから「機会があったら戻りたい」という声を聞くことはあまりないのですが、「このプロジェクトに関わりたい」という声は聞くんです。私自身も独立して野生化したこともあり(笑)、社員として戻りたいという感じではないのですが、まちづくりに関わりたい気持ちはやっぱりある。プロジェクト単位で関わることができたらいいなと思います。私自身、ミサワホームに貢献したい気持ちはすごくありますから。
築山:「協力に対して報酬は求めますか?」という質問がきています。いかがでしょう?
菊池:人それぞれだと思いますが、会社側としては最低限のお礼として、何かしら用意した方がいいのかなとは思います。長く続く関係を目指した方がいいと思うんですけど、どちらかが勝ちすぎていると絶対続かないですよね。
ミーティング1回5000円とか、終わったらご飯を奢るとか、何かしらのケアを考えた方が長続きしやすいのかなと思います。
広中: 『ココナラ(知識・スキル・経験を売り買いできるプラットフォーム)』みたいなことができるといいですよね。『ビザスク(スポットコンサルサービスのプラットフォーム)』のアルムナイ版なんかも面白そうです。
「アルムナイとの交流が社員の退職につながる」は本質的じゃない
築山:アルムナイと交流をするメリットは理解しつつも、不安を感じる会社もあります。特に「社員の退職につながるのでは?」という声を聞くことが多いのですが、お二人はどう思いますか?
菊池:たしかにアルムナイとの交流が退職のきっかけになるケースはあると思いますが、本質はそこじゃないですよね。たぶんその人はアルムナイとの接点がなかったとしても辞めていたでしょうし、自社の組織づくりや働く環境にフォーカスした方が健全だと思います。
一方で「アルムナイが引き抜きなどの悪さをするんじゃないか」という懸念もありますよね。これは全くないとは正直言えないですけど、結局は会社を辞める時の体験が大きいと思っています。
義理や恩を感じている会社の社員に対して引き抜きをしようという発想にはなりませんし、「みんな退職しよう!」なんて僕は絶対言えない。そんなこと思ってもいないですもん。
築山:菊池さんは先ほども「辞め方が大事」というお話をされていましたね。広中さんはいかがでしょう?
広中:私はむしろ、アルムナイと接点を持つことで社員のモチベーションアップにつながると思うんですよね。大学生の時に就活でOB/OG訪問で、活躍している人と会うとうれしいし、誇りに感じるじゃないですか。会社も同じだと思うんです。
活躍しているアルムナイと会うことで「ああいう風になれるように自分も頑張ろう」と思う効果の方が大きいんじゃないでしょうか。リクルートのようにアルムナイのその後のキャリアがオープンに共有されると、「今の仕事がそういう未来につながるんだ」とイメージしやすいですよね。
ですから、会社はアルムナイと積極的に接点を持った方がいいんじゃないかと思います。卒業生リストみたいなものがあって、ここで活躍しているっていう情報が共有できたらいいなと。私自身、ミサワホームでの経理の経験が今の社団法人を運営する上ですごく生きているんですよ。外の仕事でも通用するというのは伝えたいですね。
築山: 自社のアルムナイが活躍していると誇らしく感じる。その結果、社員のエンゲージメントも上がりそうですよね。本日はありがとうございました!
取材・文/天野夏海
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