アルムナイのキャリアや、前職での経験の活かし方、前職との関わり方などに迫るアルムナビのインタビュー。
今回は、パナソニックグループ・アルムナイの矢部大輔(やべだいすけ)さんにお話をお伺いしました。新卒でリコーに入社後、2016年にパナソニックに入社。車載電池の開発などに携わったのち、2022年に退職されました。その後は、コンサルティングファームでの勤務を経て、2025年3月より再び事業会社へ。現在はオリンパス・メディカルシステムズにて組み込みソフト開発戦略に取り組まれています。
インタビューでは、矢部さんがキャリア形成において重視してきたこと、これまでの歩みを経てキャリアについて考えることなどをお話いただきました。
※こちらは過去にパナソニックグループに在籍していた方専用のネットワークです
メーカーの中でも、特に責任感の強い会社だと思った
── まずは、パナソニックに入社されたきっかけからお聞かせください。
「純粋に開発をしたい」という想いがきっかけです。
当時の私は、新卒で入社したリコーという企業で働いていました。その企業でも最初は開発がメインだったのですが、徐々に開発寄りの仕事から離れ、開発企画や他部署との調整といった仕事が増えていったんです。
でも私としては、もう少し現場で開発経験を積みたかった。それができる場所はないか探していたところ、たまたまパナソニックが中途採用をしていました。そこで応募してみた結果、入社することとなりました。
── 実際にパナソニックに入ってみて、ギャップなどは感じませんでしたか?
やりたかった開発の仕事ができるという点では、思っていた通りでした。ただ、文化は最初の会社とはやっぱり違うなと感じましたね。
自らの製品や仕事に対する責任感が非常に強いなという印象を抱きました。メーカーであれば自分たちの製品への責任感そのものは持っている企業がほとんどだと思いますが、パナソニックはその強さが違った。
自分たちのなすべきことを達成するために、「もう何がなんでもやってやるぞ」という気概をもっているのは、パナソニックの特徴的な文化ではないかと思います。
また、創業者である松下幸之助さんが労働組合にも力を入れていたためか、労働組合の強さも感じました。パナソニックの後にも数社経験していますが、ここまで労働組合が強い会社は見たことがないので、非常に特殊な文化だなと今でも感じます。
エンジニア+αを身につけるために決心した転職
── その後2022年にパナソニックを退職されていますが、その理由を教えてください。
1社目でもパナソニックでもずっとエンジニアをやってきましたが、「このままではエンジニアのままで一生を終えることになる」と感じるようになったのが大きいです。
キャリアアップするには、エンジニア+αがないと難しい。その「+α」となる何かを身につけなければならないと考えていました。そしてそれを獲得できる場所として、選んだのが、コンサルティングファームでした。
── コンサルティングファームでは、どのようなお仕事をされていたのですか?
入社が決まった時点では、パナソニックで後半に携わっていた製造DXのコンサルタントとして仕事をする予定でした。しかし、私はパナソニックで車載ソフトを作っていた経験があったので、それを活かすかたちで自動車会社のソフト開発戦略のプロジェクトに参加することになったんです。コンサル時代は、この車載ソフトのプロジェクトが業務の中心でした。
── 当初想定していた仕事とは違ったと思いますが、実際にやってみて感じたことを教えてください。
コンサルタントの仕事は幅広いですが、その中でも人気のポジションである戦略の仕事ということで、やりがいがありました。学ぶことも多かったですね。戦略を考える際にはどんなプロセスで進めればいいか、さらにその考えた戦略を実行する上でどのように計画を立てて進めていけばいいか、などを勉強できたのは私にとって非常に得るものの大きい経験でした。
── 業務でパナソニック時代の経験が役に立った場面や、反対にパナソニックでもっとこの経験を積んでおけばよかったと思ったことはありますか。
パナソニックでの車載ソフト経験はとても役立ちました。
実は、パナソニックに入る時も、元々は別の蓄電池システムの制御ソフトを作る部署に入る予定だったんです。しかし入社する2、3か月前にその部署がなくなってしまい、車載ソフト部門に配属されました。そしてコンサルへの転職後は、その車載ソフトの経験に非常に助けられました。
こうした経験をしたからこそ思うのは、やりたいことと多少ずれていたとしても、与えられた仕事に懸命に取り組んだ経験は、将来必ず自分を助けてくれるということです。
目の前の仕事を一生懸命やって、そこのプロフェッショナルになれば、キャリアは自ずと開けてくるはずです。
そのため特定の業務というよりも、与えられた仕事をもっと一生懸命やっておけばよかったなという想いの方が強いですね。
もちろん当時は当時で懸命に仕事と向き合っていたつもりです。しかし、仕事の量も多く、時間にゆとりがある状態ではなかったこともあり、自分の携わる領域すべてに詳しくなることはできませんでした。今振り返ってみて、「あの頃もっと馬力を上げて頑張っておけば、今の仕事に役立つものがもっとたくさん得られたのではないか」と思うことがあります。
「活躍できる場所はここだ」ようやく見つけた自分のスキルと経験が活きる場所
── コンサルティングファームを経て、現在はオリンパス・メディカルシステムズでご活躍とのことですが、このキャリアを選択した理由について教えてください。
まずコンサルティングファームを退職した理由は、ふたつあります。ひとつは、なかなか思うように自分のやりたいことができなかったこと。
自分で希望するプロジェクトに手を挙げて、仕事を選べる環境ではあったのですが、実際はなかなか思うようにはいきませんでした。たとえば、アサインされる直前にプロジェクト自体が終了してしまったり、実際に行ってみると全然別の業務をアサインされたりということが珍しくなかった。
さらにその頃、プライベートにも変化があり、もう少し時間に融通の効く職場で働きたいと考えていたのがもうひとつの理由です。そして退職を決意したというわけです。
そしてオリンパス・メディカルシステムズを選んだのは、私の経験や知識を存分に活かせそうなポジションだったことと、かつプライベートの時間の確保もできる環境だったからです。「私が活躍できる場所はここだ」と感じて入社を決めました。
── 矢部さんの経験を存分に活かせるお仕事、どのような業務内容なのか気になります。
組み込みソフトウェアの開発戦略を担当しています。社内コンサルタントに近い感じで、会社の戦略をどんどん作っていき、さらに実行に移していくという仕事です。
ちょうど今の当社の状況は、コンサル時代に携わっていたプロジェクトのクライアントが置かれていた状況と非常に似ているんです。これから、海外のオフショアを拡大、国内開発のリソース分配、社外に任せるべき領域と内製するべき領域の切り分けなどをしていかなくてはなりません。
どんな風に考え、どんな判断基準を持ち議論を進めていけばいいか、そして議論の答えが出た後にどう動けばいいかを経験してわかっているので、それをベースに業務を進めています。
── 経験と非常にマッチした環境なんですね。今後のキャリア展望はどのように描かれていますか。
ここから数年間は、今の仕事をきちんとやり切ることに注力したいです。そして将来的には、もう少し自分の仕事の視野を広げたいですね。今はソフト開発部門だけを見て仕事していますが、たとえば製品全体だったり、さらに広げて事業レベルの視点だったりを持って、戦略を考えたりする仕事をしていきたいです。
アルムナイとつながれること自体がうれしい
──スキルを活かして活躍されている矢部さんですが、矢部さんにとってパナソニックのアルムナイネットワークはどのような位置づけですか?
現在所属する部署のミッションには、開発戦略だけでなく、将来の展望、技術選定、顧客ニーズに対して足りていない技術の調査なども含まれています。将来的には、これらのなかで当社内だけでは解決できない問題を、アルムナイネットワークを使って皆さんと議論できるといいなと考えています。
また、自分とは違うキャリアを知れたり、純粋にパナソニックトークができたりする楽しい場だとも捉えています。
── パナソニックの現役社員の方々に伝えたいことはありますか?
パナソニックは組織が大きいこともあり、縦割りに近い組織です。そのため、自分の視野や管掌範囲が限られていると感じることもあると思います。でも、そこを破っていろいろな人とコラボを始めると、自分のアウトプットはきっとより大きなものになるはずです。
私自身も、在籍当時も、いろいろな人ともっとつながりを持っていたら、いい仕事ができたのではないかと思うことがあります。そうした観点で仕事に取り組んでみることをオススメしたいですね。
また、目の前のことに全力で取り組むことが、将来の自分のキャリアにもつながるということも、改めてお伝えしたいです。
── 最後に、アルムナイネットワークの方々へのメッセージをお願いします。
みなさんとつながること自体が楽しいので、ぜひ多くの人とつながっていきたいです。そしていつか仕事でコラボできるような機会を見出せたらと思います。また、パナソニック時代の私を知っている方がいましたら、ぜひご連絡いただけるとうれしいです。
※こちらは過去にパナソニックグループに在籍していた方専用のネットワークです