理念を共有できるかけがえのない「共創パートナー」へ エーザイがアルムナイと共に目指す、組織文化の変革

座談会にご協力いただいたエーザイアルムナイ3名

エーザイ株式会社(以下、エーザイ)は今、組織文化の大きな変革期を迎えています。
かつてエーザイでhhc理念の下でともに働き、様々な理由で退職された皆様との関係性は、当社の大切な財産と考えており、「応援し合う仲間」として共に成長するアルムナイネットワークの構築を推進しています。

この取り組みの一環として、様々な時期に同社を卒業された3名のアルムナイをお招きし、2025年9月に座談会を実施しました。エーザイ卒業後のキャリアや、離れたからこそ気付いたエーザイの魅力、率直な意見などを伺いました。

※こちらは過去にエーザイに在籍していた方専用のネットワークです

エーザイアルムナイ 森田さん、滝井さん、篠さん

<プロフィール ※取材当時>
森田 翔さん 写真左
2008年に新卒でエーザイに入社し、約12年間在籍。在籍中はMRとして、クリニックから大学病院まで幅広い医療機関を担当した。
卒業後はプレゼンテーションスキルを教える講師として独立し、日本つかみ協会の代表を務める。現在は、プレゼンスキル向上を目指すコミュニティの運営、大学での講義、企業コンサルティングなど多方面で活動を展開している。

滝井 祥平さん 写真中央
2005年に新卒でエーザイに入社し、約17年間在籍。在籍中はMRを13年間務めた後、本社部門にて経営戦略および事業開発を担う組織に4年間従事した。
現在は、医療ICT分野のベンチャー企業である株式会社アルム(DeNAグループ)に所属し、製薬企業との協業窓口を務める事業部の責任者を務めている。

篠(湯浅) 美穂さん 写真右
2006年に新卒でエーザイに入社し、約9年間在籍。在籍中はMRとして地方および都内の大学病院を担当した後、認知症領域のナレッジリーダーとして活躍した。
現在は自身でMoonBell合同会社ララコミュニケーションズ合同会社を設立し、ファイナンシャルプランニング事業と携帯電話販売代理事業にかかわる2社を経営している。

時代と共に変化した退職者への向き合い方

ーまずは、退職を決意された背景についてお聞かせください。

滝井:ちょうど年齢的に40歳という人生の節目を迎え、「何か新しいチャレンジをするなら今しかない」と自問自答を繰り返した結果、退職を選択しました。エーザイの雰囲気は「温かく、家族のような場所」であるからこそ、「このままではぬるま湯に浸かってしまうのではないか」という危機感もありました。「どこへ行っても通用する人材になりたい」と自らを試すために、外の世界へ出ることを決意しました。

森田:MR時代に苦労して学んだプレゼンスキルを「今度は自分と同じように苦しんでいる人に教えたい」という思いが最大の理由です。また、終身雇用が常識ではなくなる時代において、「自ら社会に価値提供できる人間になりたい」という強い気持ちから、独立という道を選択しました。

篠:退職を決意した動機は二つあります。一つは、支援が必要な兄弟に対し、より適切なサポート体制を構築するため、彼に対して自ら雇用を生み出す必要性を強く感じていたことです。
もう一つは、外の世界を見る機会に触れ、そこへの強い憧れを抱いたことです。MRとして全国転勤を繰り返す生活を送る中で、「自分の住む場所や人生を自分自身で選択したい」という思いが強くなり、退職、そして独立しました。

ー退職のタイミングは皆さん異なりますが、退職の意向を伝えた時の周囲の反応はどのようなものだったのでしょうか?

滝井:私の場合は、周囲から気持ちよく見送っていただき、退職間近のタイミングでは、これまでエーザイで培ったキャリアを、在籍している社員の皆さんにお話しさせていただく機会もいただきました。

一方、篠さんが退職された約10年前は、製薬業界の安定性から離職率が低く、「なぜ辞めるのだろう」という空気が社内にあったのではないかと推察します。篠さん、当時の状況はいかがでしたか?

篠:当時、退職を伝えた際に上司からネガティブなことを言われて、「辞めるということはもう”過去の人”という扱いになるんだ」と思ったことを今でも鮮明に覚えています。
ただ、今年の6月に開催された、社員とアルムナイの交流イベントに参加した際は、「こんな会が企画できるほどまでに変わったのか!」と、組織文化の変化に強いインパクトを受けました。

森田:私が退職した5年ほど前は、「寂しいから辞めるなよ」と周囲から声をかけてもらえましたが、最終的には笑顔で送り出してもらい、大変ありがたかったです。さらに退職後は、当時の仲間から、研修講師として呼んでいただく機会ももらいました。在籍時だけでなく、独立後のスタートアップの時期もエーザイに支えてもらい、この会社に恩返しをしたいという気持ちが、現在の仕事への原動力となっています。
アルムナイネットワークが開設されると聞いたときは、エーザイから「また繋がりませんか」と”パートナー”として歓迎されているように感じられ、大変嬉しかったです。

滝井:アルムナイネットワークという取り組みは、エーザイと退職者の関係性を変えていく大きなきっかけになると感じています。中長期的に継続することで、内向きになりがちな社員の方々のマインドが自然に変わっていくことが、理想的だと考えています。

篠:当時、退職の判断をあまり理解してもらえなかった私がそうであったように、退職された方の中には「今更」と感じ、退職後のエーザイの活動に関心を寄せない方もいるのではないでしょうか。辞め方や、その時に自分がどういう立場で退職したかという点は、その後の関係性構築に大きく影響すると感じます。

森田:今回のアルムナイネットワークのような新しい取り組みには、常に賛否や逆風が伴うものだと考えています。だからこそ、懸念やネガティブな意見を持つ方々とも正面から向き合い、本気で、本音で対話を重ねながら、相互理解を深めていくことが大切だと思います。
私自身も、社員の皆さんとともに新しい文化を創り上げていく一員でありたいと考えていますし、同じように考えるアルムナイも多いのではないかと感じています。

退職時の社内の雰囲気について語るエーザイアルムナイ

外部視点から見たエーザイの強みと課題

ー離れたからこそ客観的に見える、エーザイの強みと改善点についてお聞かせください。

篠:本当に素晴らしい「人」が多く集まっている会社だと思います。組織の中で社員が助け合う文化は、昔から続く伝統的な強みだと思います。

滝井:社会人としての礼節やマナーといった基本的な資質が、皆さん一定水準以上備わっている。社員の皆さんにとっては当たり前と感じると思いますが、本当にすごい点です。さらに、企業理念が一人ひとりの社員に深く浸透しており、それをきちんと言葉で語れるという点は、エーザイならではの大きな強みだと、外に出てからより強く実感しました。

森田:社員一人ひとりが、エーザイの一員であるというプライドを強く持っていると感じます。「一人ひとりの基準値が高い」環境で仕事ができたことが、退職後の私のキャリアを形成する土台となっています。

篠:一方で、エーザイに対する社外からの高い評価や、事業内容の素晴らしさが、社内では十分に認識されていないように感じます。例えば、Global100への選定など、社外では非常に高く評価されているにも関わらず、社員の皆さんがその価値を過小評価しているのは、非常にもったいないことです。グローバル企業としてのエーザイの真の価値を、社員の皆さんがもっと自信を持って認識できれば、さらに大きな強みにつながるはずです。

森田: 私が外部の視点から感じる改善点のひとつは、フォーマルすぎる社内の会議です。私が在籍していた当時、目的が見えにくい情報共有のための会議や、形式的に実施される会議がしばしばあったと記憶しています。

滝井: 私も同様に、当時の会議では目的やゴールが設計しきれていないものがあったと記憶しています。現在は改善されている部分も大いにあると思いますが、目的とゴールを明確化することで、会議時間は大幅に効率化でき、社員の皆さんの生産性も上がりますよね。

森田:生産性という観点では、「言われたことだけをやるのではなく、自分の頭で考えて行動に移す」という行動力は、さらに強化できる余地があると感じています。実際の経験として、かつて私が仕事で失敗した際に、上司から「積極的に挑戦をしようとした、その姿勢は認める」と言われたことが、今の挑戦できる自分を作った原点です。失敗を恐れず挑戦する姿勢を認めるという価値観が、会社の風土や文化にさらに根付くことで、より一層、組織の推進力になるものと期待しています。

アルムナイとの連携が生み出す価値

ーエーザイがアルムナイとの関係性構築に取り組む意義は、単なる交流に留まらず、知見の共有による組織としての成長や、アルムナイとのビジネス連携にあります。既に実現している連携や、今後の具体的な期待があればお聞かせください。

滝井:私が現在携わる医療ICTの事業、具体的には「CONNECT-Clinical Trials」という、医療関係者間コミュニケーションアプリを応用した、臨床試験の参加に関するオンラインコンサルテーションシステムの実証化研究に、エーザイにもご参画いただいており、すでに協業が実現しています。民間企業としてエーザイに一番乗りで参加いただけたことは、個人的にも、やはり大変嬉しかったです。

森田:これからの時代、スキル面だけではなく、アルムナイか現役社員かにかかわらず、「あなたと仕事がしたい」と思っていただけるような人間性やマインドを磨いていくことも大切だと思っています。現時点でもエーザイから多くの研修を担当させていただいていますが、今後も継続的にお互いがスキルとマインドの両面で刺激し合いながら共に成長していきたいと考えています。

篠:エーザイの社員の方や、退職された方に対して、個別にファイナンシャルプランニングをさせていただいています。エーザイという会社を理解しながら人生のプランニングをするという専門性を活かしたお手伝いができると考えています。

エーザイとアルムナイの協業実績や今後の期待を語るエーザイアルムナイ

ー連携をさらに深め、アルムナイネットワークの価値をさらに広げるために、アイディアがあればお聞かせください。

篠:社員の方もアルムナイネットワークにアクセスし、アルムナイと直接交流できる形になったら嬉しいです。社員とアルムナイの垣根を外すことで交流がよりスムーズになり、自然と連携が生まれるのではないでしょうか。

滝井:社員との連携だけでなく、アルムナイ同士のコラボレーションが生まれることも期待しています。そのため、コミュニティ内でアルムナイ同士が「今何をしているのか、どのような分野で活躍しているのか」といった互いの現在地をより深く把握できる仕組みがあれば、新たなビジネス連携が生まれやすくなると思います。

また、外部で経験を積んだ方が再びエーザイで活躍している「具体的な事例」も知りたいです。そうすることで、再入社を検討しているアルムナイが「自分もまた活躍できるかも」と具体的にイメージができ、応募意欲が高まるほか、企業文化がさらに開かれたことも伝わるはずです。

アルムナイからの声を受けて、エーザイからのメッセージ

アルムナイからの声を受けて、同社ピープル&コミュニケーション戦略部長の三瓶悠希さんよりコメントをいただきました。

本座談会の様子は、NHK「おはよう日本」に取材いただきました。取材に応じる三瓶さん
本座談会の様子は、NHK「おはよう日本」に取材いただきました。取材に応じる三瓶さん

三瓶:アルムナイの皆様からいただくエーザイに対する率直なフィードバックは当社にとっての大きな財産です。

私たちは、エーザイを離れたアルムナイの方々を、社内の事情を知りながら、同時に外部の視点を持っている極めて貴重な「社外のフィードバックをいただける存在」と捉えています。アルムナイの皆様からいただいた社内にいる我々には見えない課題やご指摘を真摯に受け止め、次に改善すべき組織戦略に直結させたいと考えています。

エーザイアルムナイの皆さんには、このアルムナイネットワークを通じて、社員やアルムナイ同士で連携を深めるなど、このネットワークを大いに活用いただき、退職後もエーザイを大好きな場所にしてもらいたいと考えています。その結果として、やりたいことが当社と重なり、再雇用の機会などが生じれば面白いと思います。

こうしたアルムナイの皆様との組織文化の変革と共創の推進をするため、私たちは具体的な3つのつながりを共に築いていきたいと考えています。

まず、一つ目は、アルムナイの皆様を通じてさらに外に広がる人的ネットワークの構築です。
退職された方も含め、社外のプロフェッショナルを「貴重な人的資本」として捉え、そのナレッジを活かした経営を実践することで、企業価値の向上を図ります。

次に、二つ目は、「知見の共有と共創」です。
多様な知見が交わることで、イノベーションの創出が促進されると考えています。
今後は、協業や出向などの実践的な連携機会、アルムナイとの意見交換、そして社員とアルムナイの共創イベントといった多面的な取り組みを通じて、新しい発想を生み出していきます。

そして三つ目は、「文化の継続的な変革」です。
今回のご要望にもあった、社員がアルムナイコミュニティにアクセスできるようにするなど、アルムナイと社員の間のカジュアルなコミュニケーションの場を拡充し、アルムナイと社員が相互に恩恵を受けられる、エーザイとアルムナイの間の開かれたカルチャーの実現を目指します。

アルムナイの皆様からいただいた声を大切にし、真摯に受け止め、これからの当社の活動に活かしていきます。エーザイは、アルムナイの皆様と共に未来を築き、より開かれた組織へ発展させていきます。

今後とも、率直なご意見と、積極的な連携を心よりお願いいたします!

社内に設置されているHuman Capital Report 2025を広報するためのポップ。あいうえお作文の「あ」は「アルムナイ」の「ア」!
社内に設置されているHuman Capital Report 2025を広報するためのポップ。
あいうえお作文の「あ」は「アルムナイ」の「ア」!

※こちらは過去にエーザイに在籍していた方専用のネットワークです