電通アルムナイ主催の交流イベント「アルムナイクロッシング」第3回レポート

2019年10月にアルムナイ(退職者)特化型クラウドシステム『Official-Alumni.com』を導入し、退職後も企業と関係を継続するアルムナイネットワークを立ち上げた株式会社電通。

2022年8月から交流イベント「アルムナイクロッシング」をスタートしました。これは会社が関与せず電通アルムナイの中で有志メンバーが主導して企画・開催するイベントです。電通卒業生が集まって立ち話を交わす交差点をイメージして「アルムナイクロッシング」と命名されました。

本記事では、2022年11月に開催された第3回となるイベントの様子をレポートします。

ゲストになかじましんやさんが登場!

今回は3つの“初めて“があるイベントとなりました。1つ目は2021年に組織された電通の子会社「ニューホライズンコレクティブ合同会社」の人形町オフィスでリアルとオンラインのハイブリッド開催であったこと、2つ目はアルムナイクロッシングとニューホライズンコレクティブ合同会社の共催であったこと、そして3つ目は電通アルムナイではないゲストスピーカーをお招きしてお話をうかがったことです。お招きしたのは数々のCMを手がけるCMディレクター・なかじましんやさんです。

ゲストプロフィール
東北新社CMディレクター、役員、社長を歴任したのち、2022年6月に退任し現在は顧問を務める。同時になかじましんやオフィス合同会社を設立し、現在もCMディレクターとして精力的に製作に携わりつつ、後進の育成や大学講師を務める。20年間で制作したコマーシャルは数々の受賞歴を誇る。司会の阿部さんの武蔵美時代の先輩。

「これからの広告、そして日本はどこへ行くのか?」

アルムナイクロッシング発起人の一人である阿部光史さんの司会でスタートしました。

まずはなかじまさんの手がけた20年分の広告作品を一気に振り返ります。どれも記憶に残る作品ばかりで、懐かしさを感じるとともに「これもなかじまさんの作品だったのか」と驚かされました。

なかじまさんは子どものころから「周りの人に喜んでもらって、好きになってもらう作戦」をとってきたといいます。視聴者が楽しむコマーシャルを作り、スポンサー企業や商品を好きになってもらうという点で、現在の職業はご自身の生存哲学に合っているそうです。

民間放送が変わってしまった

かつての民間放送は、国民にとって大切な情報インフラでした。良質な番組とコマーシャルは、丁寧なプロセスをへて国民と企業がつながる手段だったのです。見る人を楽しませて幸せにすることで、視聴者とスポンサーの間にポジティブな関係が生まれ”贔屓”になってもらうことがコマーシャルの役割でした。

ところが、テレビ人気が爆発的に広がったことで、テレビは広告の道具として“枠の切り売り”をされるようになり、広告産業へと変化していきます。「売れるコマーシャル」「効果のあるコマーシャル」が求められた結果、販売促進の一翼を担うだけの仕事になってしまい、コマーシャルは面白くなくなってしまっているのではないか?となかじまさんは危惧しています。「情報インフラを広告媒体に貶めてしまったしっぺ返しかもしれない」というなかじまさんの言葉に、会場は息を飲みました。

民間放送に「喜んでもらイズム」を!

このような時代の流れを経て、なかじまさんは民放改革の必要性を感じています。民間放送を「国民を幸せにする情報インフラ」と再び定義し直して、提供者たちが一体となって視聴者に喜んでもらうことによって、放送やスポンサーを好きになってもらいたいといいます。いわゆる「ラテを立て直す」という大きな構想を描いているなかじまさんの力強く前向きな言葉に、参加者たちは心を動かされました。

高度幸福成長の社会を目指そう

最後に「高度経済成長から、高度幸福成長の社会を目指そう」というメッセージでお話が締めくくられました。なかじまさんはCMディレクターとして携わる現場で「みんなを幸せにするコマーシャルを作ろう」と話されているそうです。「若い人にはみんなの幸福度を高めている仕事をしてほしい」「みんなで幸せになるぞ!という渦中にいたら絶対面白い」という想いの中に、なかじまさんの作るコマーシャルが視聴者に愛される理由を垣間見たあっという間の40分間でした。

質疑応答

会場・オンライン視聴者から感想や質問を受けながら、阿部さんとのお話が進みました。

阿部さん:民間放送がどうあるべきか?初心を忘れてないだろうか。という話にハッとしました。テレビ局はパーパスを失っているのでしょうか?

※パーパス…企業の存在意義

なかじまさん:テレビ局は、国民のためのもの、国民の幸せに寄与するものとして国の認可を受けています。広告媒体やオンデマンド放送にはできない、民間放送でしか作れないものに取り組み、テレビの価値を高めていかないといけないと思います。

志高く良い番組を作りたいと思っている製作者はたくさんいるのですが、広告媒体となった時に尺度が視聴率になってしまうのです。日本のポテンシャルを生かす術はまだまだあると思っています。

阿部さん:広告クリエイターはなぜ「面白くしたい」と思うのでしょうか?

なかじまさん:ガマの叩き売り時代から、芸と引き換えに何かを買うという行為をしていました。「買うてやるからなんかおもろいことやったれや」の世界です。人気タレントをとても可愛く撮るでも、良い音楽でも良いので、見てくれる人に対しての礼儀として、商品の自慢をする以上は何か喜んでもらえるものを作りたいと思いますね。

一方で、最近はスポンサーが会社のアイデンティティを見失っているように感じます。その結果、同じ業界で各社が似た表現になってしまっているのではないでしょうか。会社のカラーをもっと打ち出していいのに、と思います。昔の番組はスポンサーの色がもっと強かったですよね。「タダで見せたるで!」というスポンサーのプライドがありました。企業と視聴者が繋がる媒体だったのです。

またスポンサーだけでなく視聴者にも「必死に違いを出さなくてもいいよ、みんなと同じでいいよ。」という認識がどこかにあるのかもしれません。

質問:最近の電通を外からご覧になってどのように感じていますか?

なかじまさん:電通が電通をリセットしているように感じます。企業体質やコミュニケーション手段が増えるなど良い面もあると思うけれど、”放送メディアの広告表現”という電通にしかできないことを大切にしてほしいな、とも思っています。放送局と企業を結ぶ存在として、クリエイティブで幸せを作ってほしいです。出入り業者なのに、偉そうなこと言ってすみません(笑)。

質問:具体的に作ってみたい番組はありますか?

なかじまさん:時間と手間をかけて丁寧に取材をする番組を作ってみたいと思っています。見たこともない世界を映像で提供するのは、とても力がいる仕事です。放送局や番組制作会社はその力を持ってはいるのですが、単独では発揮しづらい。そういう時こそスポンサーの出番です。

良いヒントになる番組は、今もたくさんあります。「うちが提供します!」という企業があれば、その企業のプライドにもなりますし、挑戦してみたいです。

質問:なかじまさんのコマーシャルを見て、禅や歌舞伎にみられる“削ぎ落とす文化“や“間の文化“を大事にしたのかなと思ったことがありました。日本的な要素をあえて盛り込まれたのかどうか、確かめさせてください。

なかじまさん:コピーや音楽を用意したものの、使わずに切れ味の良さを大切にした作品はあります。それが日本的であるという見方は言われてなるほどと思いました。ありがとうございます。

質問:最近のコマーシャルはどれもタレントが踊っているだけのように思えます。日本人の感受性が変わってしまったのでしょうか?

なかじまさん:日本文化の根底に「歌舞伎理論」があると思っています。歌舞伎を観に行く人は、ストーリーよりも役者が見たくて行くのです。同様に、相撲は大きな人の戦いを見たいのではなく力士を見たくて行く。プロ野球は人気選手を見たくて行く。日本人は、実は人気者が大好きで、人気者の言うことを聞く国民性なのです。だからコマーシャルのタレントはやっぱり大事です。

とはいえ、伝えたいメッセージを込めた丁寧なコマーシャルを作り続ければ、反応してくれる人もいると思います。良いものを作り続けることで、見る側の目も肥えてくるのではないでしょうか。

質問:ネット広告についてお考えを聞かせてください。

なかじまさん:YouTubeの6秒広告、実は意外と好きですよ。6秒はスキップができず、見る人も諦めて見てくれるので、実はピュアなコミュニケーションが作りやすいと思っています。「一番美味しいところ見せてください!」と広告主に伝えています。15秒を6秒に縮めるのではなく、6秒で勝負するべきです。

ただ見たい動画に割り込む存在であることは事実です。心の準備がないまま突然広告が始まってしまうので、編成をもう少し大事にしてほしいなとは思います。

なかじまさん:民放はみんなを幸せにするためにできたのですから、幸せを作れるのは電通だけだ!くらいの感覚で、自信を持ってやっていきましょう。自分たちが培ってきたものを大事に見直して、新しい時代の幸せを作ってほしいです。電通や、電通を出て行った人たちがそれをやれば、すごく良い社会になると思います。

阿部さん:幸せシャワーをたくさん浴びました。ありがとうございました。

アルムナイクロッシングに参加しませんか?

1時間以上にわたりなかじまさんのお話を聞かせていただいた今回のアルムナイクロッシング。リアル会場ではアルムナイ同士の交流も叶い、久しぶりの再会や共通の知人を介した新しい出会いで溢れていました。

今後も電通アルムナイとして活躍される方や、その人脈を活かしたイベントを開催していきます。ご興味のあるアルムナイの方は是非サイトにログインしてみてください!

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