古巣企業に再入社した2人に聞く体験談「“会社にこだわりすぎるのはよくない”という想いは強くなった」

転職が当たり前になる中、以前在籍していた古巣企業への再入社に注目が集まっています。

退職した当時は合わない点があったとしても、時間が経てばまた希望の仕事や条件が一致することはあるもの。「再入社」という選択肢があることは、キャリアを築く上で大きな影響がありそうです。

そこで実際に過去在籍した企業に再入社した方に体験談をインタビュー!なぜ再び古巣企業で働くことにしたのか。そして、実際に戻ってみてどうなのか。率直にお話いただきました。

TIS株式会社
デジタルトランスフォーメーション営業企画ユニット デジタルトランスフォーメーションマーケティング部

主任 長塚 真美さん(写真右)
2007年、TIS新卒入社。2011年に退職し台湾へ渡る。帰国後、2019年にTISへ再入社

TIS株式会社
金融事業本部 クレジットプラットフォーム第2部
部長  安達 健介さん(写真左)

1998年、TIS新卒入社。2013年に退職し、別の会社を経て、2014年にTISへ再入社

再入社のきっかけは「戻ってこない?」の上司の声がけ

——まず、お二人の再入社までの経緯について教えてください。

長塚:私は2007年にTISに新卒で入社して、2011年に退職して台湾へ行き、2019年に再入社しています。再入社のきっかけは入社1年目の時からお世話になっている上司。Facebookを通じてやりとりをしたり、一時帰国の際にランチに行ったりと、ずっと継続的に連絡を取っていました。

台湾から帰国して一度は別の会社に就職したのですが、食事に行った際に「これまでの経験を生かせると思うんだけどどう?」と、その上司がジェネラルマネージャーをやっているユニット内のマーケティングチームでのお話をいただきました。

——お話を聞いて、即決ですか?それとも悩みました?

長塚:ほぼ即決でした。これまでエンジニアとしてやってきた経験も、海外でやってきたWebマーケティングの経験も、どちらも生かせると思いましたし、何より信頼している上司の下で働けるのが大きかったです。

——安達さんはどういう経緯で再入社に至ったのでしょう?

安達:私の場合は辞めたのが2013年で、戻ったのが2014年と、離れていた期間は1年半ほどです。

私も長塚さんと同じく「新しい部ができるから、もう一度戻って助けてくれないか」と、お世話になっていた上司から話をもらって再入社しました。金融系の大きなシステムを作り直す5年がかりのプロジェクトの時に一緒だった上司で、辞めてからも連絡を取っていたんです。半分飲み友達みたいな感じですね。

まぁ、戻ってすぐにプロジェクトがなくなり、結局その上司とは仕事していないんですけど(笑)

——安達さんはそもそもなぜ一度TISを離れたんですか?

安達:働き方の面が大きかったですね。当時は一番上の子どもが小学校に上がるタイミング。家にいる時間を作りたかったし、時間の柔軟性がほしかったんです。

その時のTISはまだフレックス制度を使って出勤時間をずらすといったことができない頃で、定時に出社しなければいけない風土。それで働き方の融通が利く会社を探そうと思いました。

あとは私は新卒で入社していて、その時すでに15年ほどTISで働いていました。ずっと同じ会社にいれば嫌気が刺すこともありますし、他の会社も見てみたい想いもありましたね。

——そこから1年半で転職した会社を辞めた理由は?

安達:ちょうどプロジェクトが終わったときに、タイミング良く元上司から声をかけられたからです。その頃には子どもは2年生になっていましたし、1年半経って家も回り、どうにかなりそうだというのもわかっていました。会社に戻る時に10時出社を認めてももらえたので、働き方の面もクリアできそうかなと。

「ちょっと知り合いがいる新入社員」みたいな気持ちだった

——戻るにあたって、不安はなかったですか? 元いた会社に再入社って、少し気まずい気持ちもありそうだなと……。

安達:びっくりされるだろうなとは思いましたけど、私はほとんど気にしなかったです。離れていた期間も1年半だったので、あいさつ回りをしていても「辞めてたんだっけ?」みたいな感じ。すぐに馴染めました。

ちょこちょこ社内システムは変わっていましたけど、大きく変わったこともなかったですし、知っている人は知っているし、知らない人は知らないしっていうのは在籍していた頃から変わりません。そんな感じだったので、再入社した当日の夕方にはお客さんの所に行っていました。

——長塚さんはいかがでしょう?

長塚:私も不安はなかったです。一人で海外に行って就職をした経験があったので、その時ほどのカルチャーショックはないだろう、と。不安への耐性はあったかなと思います(笑)

——長塚さんは離れている期間が約8年間と長いですが、そこまで間が空くと再入社というよりは、新しい会社に入るような感覚ですか?

長塚:そうですね。事業部も仕事内容も以前とは全然違いましたし、誘ってくれた上司以外は知らない人ばかり。「ちょっと知り合いがいる新入社員」みたいな気持ちでした。違う会社とまではいかないにしても、新規一転という感じではありましたね。

——外で経験を積んだのちに古巣企業に再入社したことで、新たな発見はありましたか?

長塚:TISは人が良くて、チームで補い合って進む精神がある会社なんだなと改めて思いました。これまで働いた中にはチーム意識が希薄で、個人戦みたいな会社も結構あったんです。

両方を経験して、チーム一丸となって仕事を進めていくやり方は自分に合っていると思ったし、仕事をしていて楽しい。そんな気付きがありました。

会社はあくまで器。重視したいのは「どこで」より「誰と」

——他の会社を見たからこそ、「もっとこうしたらいいのに」と思うこともあるものですか?

長塚:キャリア採用で入ってくる方や再入社する人を受け入れる体制は、もう少し考えてもいいんじゃないかなと思います。

特にうちの事業部は外の風を取り入れるためにキャリア採用を積極的に行っているのですが、少しTISの型にはめすぎてしまっている気がして。キャリア採用の方たちがこれまでの経験を存分に生かしきれる仕事の仕方を、TISが取り入れるような取り組みをした方がいいのではっていうのは感じますね。

もちろん会社として仕方がない部分もありますけど、新しいことをやりたいのであれば、根本を変えるくらいの気概があってもいいのかなと。

安達:私は再入社したことでの発見はないですけど、外に出たことで「どの会社もあまり変わらないんだな」と思いました。私は同業他社に転職したんですけど、それぞれに良いところと悪いところがあると、実感として理解しましたね。そういう面を見れたのは自分の中では大きかったです。

——大差がないのであれば、転職先の会社に居続ける選択肢もあったと思います。なぜ元いた会社に戻ったのでしょう?

安達:単純に声をかけてもらったからですね。「誰とどういう風に仕事をするか」「何ができるのか」を重視しているので、会社に対する想いはあまりない。会社はあくまで器であり、どこかのプロジェクトでまた一緒になればいいという考えです。

あとは、私は退職時点で15年ほどTISにいたので会社内での人脈もありましたし、何かをやろうと思った時にやっぱりTISがやりやすいんですよね。外に出たことでTISが比較的上下や派閥がない、フラットな会社だと気付きましたし、仕事がしやすいのは大きかったです。

今となっては全部で20年ぐらいTISにいるので、知っている人はたくさんいるし、みんな偉くもなっている。自分自身の裁量も大きくなっていますし、やりたい仕事さえ合致すれば、動かしやすい環境で仕事ができていると思います。

——転職して他の会社を知ったからこそ、古巣企業の特徴や良さが明確になったんですね。最後に改めて、実際に再入社をした感想を教えてください。

長塚:ちゃんと自分のことを見て評価してくれる上司やメンバーがいて、本当に戻ってよかったなと思います。もともと私は“TIS愛”が強くて、辞めてからも同期や上司と連絡を取り続けていたんです。

安達:私の場合は離れていた期間が1年半だけなので、部署異動していたぐらいの感覚でした。なのであまり感想らしい感想はないですね(笑)

ただ、「自分はエンジニアであり、あまり会社にこだわりすぎるのはよくないな」という想いは強くなりました。社員一人一人がもっと成長して、市場から認められるようなエンジニアになることが大事なんじゃないかなと。

そうやって成長してTISを出て、またどこかで戻ってきて……という流れでも全然構わない気がしています。

——キャリアの築き方への意識が変わった?

安達:そうですね。あまりTISにとって便利な人材になっても仕方がないと思うようになりました(笑)

エンジニアはこの先ワールドワイドに活躍できるようになった方がいいでしょうから、TISのやり方ではなく、デファクトスタンダードを意識するのがいいのではないか。そんなことを考えるようになりましたね。

取材・文/天野夏海