株式会社三菱UFJ銀行(以下、三菱UFJ銀行)は、2023年5月に「三菱UFJ銀行アルムナイネットワーク」(以下、本ネットワーク)の運営を開始してから、今年で2年が経ちました。 同社が掲げるパーパス「世界が進むチカラになる。」の実現に向けて、社外で多様な経験を積むアルムナイを貴重な人的資本と捉えるこの取り組みは、設立から約2年で登録者数が1,000名を超えるなど、着実な歩みを見せています。
本インタビューでは、2025年5月に常務執行役員 CHRO(最高人事責任者)に就任された南宏氏に、同社の経営戦略におけるアルムナイの位置づけや、本ネットワークの現状と未来像についてお話を伺いました。南氏がアルムナイ一人ひとりと真摯に向き合う姿勢からは、本取り組みに対する同社の強い覚悟が感じられます。
※こちらは過去、三菱UFJ銀行に在籍していた方専用のネットワークです
外部環境の変化とアルムナイの価値 〜企業変革の「化学反応」を促す存在へ〜
――市場環境の変化を踏まえ、経営戦略の中で「アルムナイ」をどのように位置づけていますか?
我々金融業界を取り巻く環境は、金利のある世界への回帰など、非常に大きく変化しています。同時に、人材を巡る環境も変わりました。転職によってキャリアを築くことが当たり前の時代となり、かつての終身雇用というモデルはもはや前提ではありません。キャリアの途中で社外へ出る仲間たちと、企業としてどう向き合っていくか。アルムナイの皆様との関係構築は、非常に重要な経営テーマであると捉えています。
――「外の知見」を持つアルムナイが、社内の変革にもたらす価値とは何でしょうか。
MUFGではパーパスとして「世界が進むチカラになる。」を掲げていますが、変化の激しい時代において、MUFG単独でそれを成し遂げるのは困難です。社内の人材が強くなることはもちろん、アルムナイをはじめとする社外の多様な方々の力をお借りして連携・協業することが不可欠だと考えています。
特にアルムナイは、もともと同じ会社で働いた仲間であり、我々の文化を理解してくれています。その上で社外の知見や経験を積んでいるため、現役社員と交わることで、良い「化学反応」を最も起こしやすい集団と考えています。アルムナイとの連携は、我々自身が変化していくための重要なきっかけになると確信しています。
CHRO自らがユーザーに。参加したからこそ感じるネットワークの可能性と課題
――CHRO就任後、ご自身で本ネットワークに登録・参加され、アルムナイともやり取りされていると伺いました。どのような目的があったのでしょうか?
CHROに着任し、本ネットワークの取り組みの報告を受ける中で率直に「どんなアルムナイが登録しているのか、アルムナイや行員がどんな会話をしているのか知りたい」と思ったからです。また、自分自身でもアルムナイの皆さまと交流してみたいと思いましたので、すぐに行動に移しました。
本ネットワークに参加してみて、想像していた以上に多くの方が登録していることに驚きました。また、複数の方からダイレクトメッセージもいただきました。旧知の仲から「就任おめでとう」というメッセージを貰ったり、面識のない方から「現在働いている会社のCHROをぜひ紹介させてほしい」といった連絡もいただいたりと、「皆さんが三菱UFJ銀行のアルムナイネットワークをしっかりと見てくださっているのだな」と実感しました。
――これまでの2年間の取り組みや成果、そしてアルムナイネットワークの今後の可能性について、どうお考えですか?
まず、登録者数が1,000名の大台を超えたことは、素晴らしい成果であり、高く評価しています。 一方で、これからの課題も見えています。多くの方は、「懐かしさ」や「古巣への郷愁」をきっかけに参加してくれたのだと思います。それは素晴らしいことですが、それだけでは同窓会で終わってしまいます。アルムナイの皆さんに参加し続ける「意義」や「メリット」を感じてもらうためには、例えば「仕事で困った時に、アルムナイネットワークにアクセスすれば解決の糸口が見つかるかもしれない」と思えるような、実利的な価値を提供していく必要があるでしょう。そのための仕掛けを考えることが、今後の大きな可能性につながると考えています。
「知のハブ」構想と未来へのアクション
――めざすアルムナイネットワークの未来像についてお聞かせください。
究極の理想は、本ネットワーク自体が、社外の全く関係ない人から見ても「あそこにアクセスすれば、質の高い知見に触れられる」と認識されるような、価値ある存在になることです。そうなれば、アルムナイの皆さまだけでなく、現役の社員にとっても、「三菱UFJ銀行で得たキャリアは、世の中でこれほど価値のあるものなのだ」という誇りや自信につながります。我々が掲げるパーパスを、より広く、深く実現していくことと同義だと考えています。
もちろん、これは遠大な理想です。その理想に向けて、まず始めるべきは、本ネットワークの価値を高めるための具体的な取り組みです。 一つは、当行だけでなく、まずはMUFGのグループ会社間でつながることですね。グループの総合力を高める上で、アルムナイの連携は大きな力になるはずです。
もう一つは、参加者の皆様が行動を起こしやすいような仕掛け作りです。どういうコンテンツを発信すれば皆様の関心を引けるのか、交流会などのイベントをどう設計すればビジネスや新たなつながりに発展するのか、考えていきたいと思います。
アルムナイと共に育てるネットワークへ
――最後に、アルムナイ、および未来の仲間に向けたメッセージをお願いします。
本ネットワークが、皆さんがそれぞれの領域で直面している悩みや課題を共有し、解決策を見出せるような場所であってほしいと願っています。ぜひ皆さんからも「ネットワークにこうあってほしい」「こんなことをしてほしい」というご意見を積極的にいただきたいです。
我々も、当行が今何を考え、何に取り組んでいるのかを、できる限り率直に発信していきます。お互いに情報を交換し、協力し合うことを通じて、この場所から何か新しい価値が生まれるようにしていきたい。そのためには、皆さんのご協力が不可欠です。ぜひ一緒に、この三菱UFJ銀行アルムナイネットワークを育てていきましょう。

※こちらは過去、三菱UFJ銀行に在籍していた方専用のネットワークです