2005年に新卒でパナソニックグループ(当時は松下電器産業)に入社した岩坂潤さん。約15年間、人事部門に携わり、現在は株式会社SCREENホールディングスで人事として活躍しています。
もともとは営業職を希望していたという岩坂さんが、人事の仕事にのめりこむようになったきっかけや、パナソニックでの経験が今どのように活きているかなどを伺いました。
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人材開発のダイナミズムを感じられた、パナソニックでの経験
ーー新卒でパナソニックグループに入社した岩坂さん。どんなお仕事をされていたのか教えてください。
入社して以来ずっと人事部門で、給与・福利厚生から組織開発・人材育成まで一貫して携わりました。
最初の9年間は、オートモーティブシステムズ社に所属。その後退職するまでの間に、インダストリー社やメカトロニクス事業部への異動を経験しました。
ーー入社当初から人事を志望していたのでしょうか。
実は、営業職を希望していたんですよ。ただ社内的な事情で、営業部門に新人を配属することが難しくなって。私の適性を見て、人事部門との親和性が高いと判断して決まったのだと思います。
でも、当時はかなり落ち込みましたね(笑)。営業に比べて、人事の仕事は成果が見えにくく、長期的なコミットメントが必要です。それを1年目の頃はまだ理解できていませんでした。かなり不良社員だったと思います。
ーー結果的には、20年以上人事の仕事に携わることになりますよね。それはなぜでしょうか。
入社3年目までは、給与や福利厚生、研修の運営といったオペレーションに携わっていました。その後、人材開発や組織開発に関わるようになったんです。例えば、営業職のキャリアパスを描いて、それに沿って人材のローテーションを考えるなど、戦略的な業務に関わるようになりました。
また、社員のキャリアの転機に関わったり、社内のレイヤーの高い人と早くから接点を持つことができたりと、人事だからこそできることも分かってきました。この時期を境に、徐々に人への投資や人材育成に携わることの意義を感じられるようになりました。
ーー印象に残っている仕事はありますか。
イノベーションを生み出すことを目的に立ち上げた「新創塾」という活動です。社内公募でメンバーを募集して5人1チームを作り、半年間でプロトタイプと事業提案を作ってもらうというものです。
この活動では、人の成長や事業の誕生の瞬間に立ち会うことができました。ある人は、もともと工場での現場業務に携わっていましたが、塾活動を経て事業企画ができるようになり、キャリアチェンジすることができたんです。ほかにも、塾で生まれたプロジェクトで、売上が立ったという事例もありました。人材開発のダイナミズムが感じられる、いい経験をさせてもらえました。
異なる業界での挑戦
ーーパナソニックを退職した経緯を教えてください。
当時は、パナソニックがホールディングス化を控えていた時期でした。私が所属していたインダストリー社も、一事業会社としてジョブ型人事制度を企画していました。ただ、それが現場に落とし込まれていくまでは、時間がかかるだろうなと思っていて。ゆっくり変化を眺める以外の道もあるんじゃないかと考えたんです。そんな時に、たまたま声をかけてもらったのがアマゾンジャパンでした。
ーーアマゾンで働いてみていかがでしたか。
私が配属されたのは、比較的新しくできた部署でした。スピード感があり、事業を発展させていくための人材育成に携わることができたのは面白かったですね。
また、アマゾンの文化そのものも前向きにとらえることができました。アマゾンには「OLP(Our Leadership Principles)」という行動規範があります。パナソニックの七精神を横に置いて見比べてほしいと思います。基本的に同じことを言っています。
ーー約2年間、勤務したアマゾンを退職したきっかけは何だったのでしょうか。
私自身、製造業に携わってきたこともあり、文明的な価値よりも文化的な価値をもたらせる事業に携わりたいと思うようになりました。アマゾンの事業が提供している価値は、お客様の時間をいかに作るか。突き詰めると、生産性や利便性をいかに高めるかにたどり着きます。一方で、モノづくりは、商品を通じて「くらしの豊かさ」を提供します。そこには作り手の創意工夫があり、作り手の成長が事業の展開につながっていきます。
もちろん、どちらの価値も世の中には必要なものです。私はそれぞれの業界を経験してみて、改めて製造業が自分の求める環境だと気づいたんです。
「パナソニックではどうしていたか」を考え、今の仕事につなげる
ーー株式会社SCREENホールディングスを選んだ理由を教えてください。
製造業の中でも、SCREENホールディングスは、半導体事業が伸びて成長している企業です。さらにライフサイエンス分野やエネルギー分野など新しい事業展開も行っていて、面白い会社だなと思いました。
モノづくりという点ではパナソニックと同じです。しかし、規模はパナソニックほどではなく、これから大きくなっていくところ。攻めの手をどんどん打てる環境にあり、自分の経験を活かしながら、人や組織の成長に関わることができると考えました。
ーー現在はどんなお仕事に取り組んでいますか。
グループ全体のエンゲージメント施策の立案推進と、人材ポートフォリオの達成に向けた取り組みに携わっています。エンゲージメントサーベイの結果をもとに、どのように組織開発に取り組んでいくかを検討したり、次世代の人材育成や女性活躍の環境整備をしたりしています。
人が育つためには、「余白」や「ゆらぎ」が必要だと思うんです。普段の業務とは異なる環境を研修の場として作ったり、人と人が交流できる場として作ったりする。それができるのが人事の仕事の面白さですね。その一つ一つが最終的に組織文化の醸成につながっていくことに、やりがいを感じます。
ーーパナソニックでの経験はどのように役立っていますか。
退職してから、「パナソニックは一体感がある」と言われるシーンによく遭遇するんですよ。そう言われるのはなぜかというと、やっぱり経営理念だと思います。松下幸之助の言葉に沿って、経営のあり方を考えるーーその経験ができたことは財産です。アマゾンのOLPにも、SCREENホールディングスの企業理念にも、パナソニックとの共通点があります。どこに行っても通用する考え方を身につけられたことに感謝しています。
あとは月並みかもしれませんが、人脈ですね。パナソニックのメンバーとは今でもやり取りしていますし、当時一緒に仕事していたメンバーとは今でも良い関係です。また、会社の規模が大きくなるにあたって、「パナソニックではどうしていたか」と考えることが考えを整理するヒントとなっています。
ーー今後の目標を教えてください。
これからも、事業を発展させていくための人づくり、組織づくりに携わりたいと考えています。そのためには文化をどう作っていくかが重要だと思います。
また、現在務めているSCREENホールディングスは半導体事業が強みなのですが、それ以外の事業の柱も立てていけるよう貢献していきたいです。
パナソニックアルムナイだからこそできることをやりたい
ーーアルムナイネットワークでやってみたいことはありますか。
アルムナイネットワークでやってみたいことはたくさんあります。パナソニックでいろいろな経験をしたみなさんと、何か新しいものをつくっていくことはずっと想像していることです。例えば、パナソニックでは、経営理念が社員一人ひとりに浸透しています。額縁に入れておいておくだけの理念ではなく、それを日々の行動の中にどう落とし込んでいくか。パナソニックアルムナイだからこそ一緒に考えられるテーマだと思います。
ほかにも、中間管理職を元気にするための取り組みについても話し合ってみたいですね。パナソニックでミドルマネジメントの育成に携わっていた頃、「中間管理職は、経営と現場の交差点だ」とよく言っていました。現在、マネジメントをタスクマネジメントとピープルマネジメントに分けるという取り組みもあると聞きます。そういう新しいことに一緒に挑戦できたら面白いだろうなと考えています。
ーー最後に、パナソニックやアルムナイへメッセージをお願いします。
パナソニックでの経験に対しては本当に感謝しかありません。実際に、パナソニックの外から見ても、中にいる人材や、それ以外に使えるリソースにも恵まれた環境だと思います。今後もさまざまなチャレンジをしていく組織であってほしいですし、また一緒に何かやれたらと願っています。
※こちらは過去にパナソニックグループに在籍していた方専用のネットワークです









