RJP理論とは?採用ミスマッチ防止に退職者の存在が重要なワケ

「せっかく採用した人が数ヶ月でやめてしまった」「いい人材だと思ったのに、あまり活躍できていない」といった悩みは、採用担当者の多くが抱えたことのあるものではないでしょうか。

今回の記事では、そんな悩みを解決に導く糸口となる「RJP理論」を紹介します。

理論と聞くと何やら難しそうな印象を受けるかもしれませんが、そんなことはありません。RJP理論の考えは極めて単純で、一言で言えば「採用する前に、企業のありのままを伝えよう」ということです。

この記事では、RJP理論が今注目を集める理由やメリットとデメリット、注意点などを網羅的に解説します。これを読んだら早速RJP理論を活用し、これまでの悩みに別れを告げましょう。

RJP理論とは?HR領域で注目を集める理由

RJP理論のRJPとは、Realistic Job Previe(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)の略を指します。

この英語の通り、職場のいい面だけでなく、課題や悪い面も含めたありのままの情報、リアルな姿を求職者に伝えることを推奨する理論がRJP理論なのです。

RJP理論の始まりは1975年。アメリカの産業心理学者ジョン・ワナウス氏により提唱されて誕生しました。日本で注目を集め始めたのは最近ですが、アメリカでは50年近くの歴史を持つ理論であり、多くの企業で昔からRJP理論に基づいた取り組みが行われています。

RJP理論は、この理論の誕生までは一般的だった「求職者にとって魅力的なポジティブな印象を持つことを中心に伝えていく」やり方を批判する形で生まれました。悪い情報も開示するため、従来の採用活動のスタイルよりも、求職者に対してより誠実な手法と言えるでしょう。

また、この理論はワナウス氏の実験によって、離職率の低下に寄与することも証明されているのです。ワナウス氏はこの実験で、採用の際にポジティブな情報のみ与えられた集団と、ポジティブな情報だけでなくネガティブな情報も与えられた集団の離職率を調査しました。

どちらの集団の方が離職率が低かったと思いますか?あなたの予想通り、ポジティブな情報とネガティブな情報の両方を与えられた集団の方が、離職率は極端に低かったのです。離職率を下げたい人事担当の方にとっては、大変魅力的な理論と言えますね。

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ところで、アメリカで昔から提唱されていた理論が、なぜ提唱から50年近くも経った現在の日本で注目を集めているのでしょうか。

最も大きな理由は、人材の流動化だと考えられます。

提唱された当初は、日本では終身雇用が一般的で、離職する人がほとんどいませんでした。そもそも離職率を下げるための取り組みなど必要がなかったのです。

それに引き換え、終身雇用が崩壊した現代では、転職が当たり前となってきています。半数の就活生がセカンドキャリアを意識して就職活動をしているといったデータもあり、若年層ほど転職への抵抗がなくハードルも低いと思われます。さらに、フリーランスや複業など働き方は多様化の一途を辿っています。

また、少子化に起因する労働力減少が叫ばれて久しいことも原因の一つでしょう。年々採用難易度が上がる中、せっかく採用した人が早期離職してしまうことの打撃も採用難易度に比例して大きくなっています。そのため人事としてもできるだけ長く働いてもらうための取り組みをしなくてはいけなくなっているのです。

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求職者の心理的な変化にも理由が潜んでいます。多くのZ世代は広告っぽいものや作られたものは信用していません。友人の口コミやSNSの書き込みで買う商品を決める彼らは、就職活動や転職活動でも作られたものではなく、リアルを求めています。

そして、そんな彼らの求めるリアルを伝える企業こそが信頼され、支持されて採用にも繋がっていくのです。こういったさまざまな理由から、自社のありのままの姿を見せて採用活動を行うことに多くの企業が取り組み始めています。

RJP理論のメリットとデメリット

早期離職やミスマッチのような人事担当の悩みの解決に役立てられるRJP理論ですが、多くのメリットがある反面、もちろんデメリットもあります。ここで、RJP理論を実施するメリットとデメリットを整理しておきましょう。

メリット

入社後のギャップを減らせる

あらかじめ悪い面も見せているので、こんなはずではなかったということが起きづらいのがメリットのひとつです。

特に転職する際は、現職になにかしら不満を持っていることが多い分、転職先の企業が実態以上に良く見える可能性があります。そしてそのように希望や期待に溢れているときほど、何かそれと違ったことがあった際の落胆も大きいものです。その落胆から仕事へのモチベーションが下がり、生産性の低下など更なる負のループを巻き起こしてしまう可能性も。

最初から情報を開示しておけば、期待させすぎることなく、結果的に入社後のギャップ防止に繋げることができます。

自社にマッチした人を見つけやすくなる

ありのままの情報を開示することで、ネガティブな面が許容できない人や「この会社は自分に合わない」と感じる人は選考や内定段階で辞退することが多くなります。そのため、これまで以上に自社にマッチした人だけが入社するようになっていきます。

また、会社に選ばれたというだけでなく、自らも会社を選択したという意識を社員が持ちやすいのもいい点です。これは離職率低下だけでなく、社員のエンゲージメントを高めることに繋がり、社内の組織力向上にも貢献します。

信頼できる会社だと思ってもらえる

ネガティブな情報を伝えることで、「隠し事をしない誠実な会社だ」という印象を求職者は持ちます。たとえその求職者が自社には合わず入社しなかったとしても、その誠実な会社であるという印象は残ることでしょう。転職活動をしている友人がいたら「あの会社はいい会社だよ」と紹介してくれるかもしれません。顧客として商品を検討してくれる可能性もあります。

もちろん入社となった場合も、誠実で信頼できる会社で働いているという意識は、意欲向上や会社への愛着につながり、離職を減らすことができるのです。

デメリット

RJP理論を利用すると、会社のマイナス面を開示することになるので、プラスの面だけ開示していた時に比べてどうしても応募者は減ってしまいます。しかし、そこで減った応募者はもともと自社に合わなかった人物である可能性が高いです。

そのため、あまり深刻に考えすぎなくてもよいでしょう。応募者が減ったからと言って取り組みをやめることなく、仕方のない痛みだと受け止めて粘り強く続けていきましょう。

RJP理論で見落としがちな注意点

ポジティブな情報とネガティブな情報のバランスと伝え方

ポジティブな情報とネガティブな情報は、ネガティブな情報が多くても6:4または7:3くらいがよいでしょう。良い情報だけを伝えないという点にばかり注目してしまい、ネガティブな情報を中心に伝えてしまうと、自社にマッチしている求職者さえも意欲が上がらず応募がしなかったり辞退が増えたりする恐れがあります。

また、伝え方にも気をつける必要があります。

例えば、「最初の研修期間は覚えることが多くてしんどいかもしれないが、研修期間に多くのことを吸収しておくと、実績がしっかり伸びるだけでなくやりがいを持って仕事に取り組める」など、〇〇という課題や大変なことがある分、〇〇というやりがいがあるといった伝え方をするのがよいでしょう。

休日や残業など福利厚生などの労働環境に関することも、「現在は残業が◯時間だが、削減に向けて業務効率化システムの導入が決定している」といった形で解決に向けて取り組んでいることを伝えましょう。

とにかく、ネガティブな点をネガティブなままで放置しているわけではないと求職者に理解してもらうことが重要です。

正しい情報かを確認すること

もう一つの注意するべき点は、せっかく開示する情報が間違っていないかを確認することです。

もし話した情報が間違っていた場合、不信感を招いてしまいかえってネガティブな面を開示したことが逆効果になってしまうことがあります。求職者に伝えていたよりもネガティブではなかった場合はあまり問題がありませんが、逆のパターンは要注意です。

求職者が配属される現場の状況は、組織が大きくなればなるほど人事部には把握しづらくなるものです。人事部単独では、現在の現場の状況を的確に把握できないこともあるでしょう。求職者に開示する情報については、現状と間違っていないか現場に確認をして、必ず正しい情報を伝えられるよう細心の注意を払いましょう。

RJP理論と抜群な相性を誇るアルムナイ施策

PJP理論の実施には、自社の良い面と悪い面を把握することが欠かせません。そこで大きな役割を果たすことが期待できるのが、アルムナイ(退職者)です。

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いい面も悪い面も、自社だけを見るのではなく他社と比較することで発見できることが多いものです。しかし、長年自社にいたり、そもそも転職したことがなかったりと自社の社員だけでは他との比較が難しい場合もあります。

その点アルムナイからは、自社内のことをよく知っているだけでなく、退職後に自社以外も経験したことで客観的かつ中立的な意見を集めることができるのです。こういった意見は、RJP理論を実施する上で大変重要であり大きな力となることでしょう。

RJP理論とアルムナイ施策を同時に取り組みたい場合は、弊社のアルムナイ専門サービスもおすすめです。アルムナイコミュニティの運営サポートも実施しておりますので、アルムナイ施策への取り組みが初めてでも安心です。

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